超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

41 / 106


仕事で忙しく、中々投稿出来ませんでした。

そんなわけで初投稿です。


記録41

 

 

 

 

 

「正直に言おう。俺達1年B組は、A組と違って一歩も二歩も遅れている」

 

 森の中、A組とは別ルートで宿泊施設に訪れたB組は担任であるブラドキングの言葉に悔しさを募らせる。入学式から今日に至るまでカリキュラム通りの生活を邁進していた彼等は、学校側から見ても想定通りの成長を遂げている。

 

けれど、逆を言ってしまえばそれだけで、目を見張る程の飛躍は誰一人成し遂げていない事を意味している。予想通り、想定内。【Plus Ultra(更に向こうへ)】を校訓として掲げ、目標としているヒーロー科の彼等にとって、それは停滞にも等しい事でもあった。

 

No.1ヒーローから直接指導を受けた生徒達は歯痒い思いを抱いている様で、特に宍田や拳藤、庄田といった一部の生徒達は未だに殻を破れていない自分達の事を不甲斐なく思っていた。

 

 そして、そんな生徒達の気持ちを代弁するかの如く、ブラドキングは続ける。

 

「だが、二学期こそは我々B組が台頭する。俺がそうさせる。今回の合宿で己の個性を超克し、お前達もPlus Ultraを果たしてみせろ!!」

 

「ぶ、ブラド先生!!」

 

外見同様、熱い志を持つ担任の言葉に同じく暑苦しい位にテンションの高い鉄哲が男泣き。その暑苦しさに若干腰が引けるも、総じて同じ気持ちであるB組の面々は望むところだと気合いを入れる。

 

「でもブラキン先生、個性を超克しろと言いますけど、具体的にはどうしたら?」

 

「個性とは人体における筋肉と同じ、使えば使う程に磨耗し、断裂し、再生………そして、その力を増していく」

 

 即ち、個性を鍛えると言う事は個性を痛め付けると言うこと。酷使し続け、磨り減ってでも使い倒していく事。

 

「そして此処が、その為の場である!!」

 

 森を抜けたその先、光と空間が広がった先に待っていたのは………地獄だった。

 

個性を拡大、拡張させるために個性を使用し、極限まで酷使し続けるA組の生徒達。委員長の飯田はひたすら個性を使い、時々急加速を併用しながら機動力を高め。

 

瀬呂は肘からひたすらセロテープを放出し続け、テープの飛距離と長さを拡張。麗日と上鳴は個性を使い続け許容量の増大。常闇は黒影の力の増強と制御を成し遂げる為の暗闇での特訓。

 

他にもそれぞれの個性に見合った過酷なトレーニングを課せられる一方で。

 

「そうら切島少年、緑谷少年、まだまだ行くぞゥ! SMASH!!」

 

「今度こそ止めて………ブワァァッ!?」

 

「切島君! プァーッ!?」

 

 鉄哲と個性の似ている切島と緑谷が、オールマイトの放つ拳圧によって吹き飛ばされていた。

 

「ちょっとオールマイトさん、他にも特訓している生徒達がいるんだから、もう少し加減してやってください」

 

「やや、済まない。期末試験のノリでやったらつい……」

 

「今回は貴方にではなく緑谷に負荷の装置を付けてるんですから、くれぐれも加減を誤らない様に、ね」

 

「あ、はい。ごめんなさい……」

 

 ジト目で睨み、心なしか少し髪をざわつかせる相澤にオールマイトは萎縮しながら謝罪した。

 

「く、くぅ……流石はオールマイト。本気で止めようとしたのに、まるで歯が立たねぇ。済まねえ緑谷、大丈夫か?」

 

「う、うん。大丈夫だよ切島君、気にしないで」

 

背中で下敷きになっている緑谷に謝りながら手を伸ばすのは、全身を硬化させる個性を持つ切島鋭児郎。自らの個性を伸ばす為、ゴジータの薫陶を参考に倒れず、何物も通さない盾としてのヒーローを目指す事にした彼は、最高のヒーローであるオールマイトから緑谷を守るという特訓を行っていた。

 

対して緑谷は、そんなオールマイトの攻撃を受ける切島を支える為の柱として鍛練に励んでいるが、現在緑谷の両手両足には、期末試験の時に教師陣が付けていたハンデ用の負荷装備が取り付けられている。

 

お陰で今まで以上に個性の出力調整に時間が掛かるし、維持も難しい。加えて切島を支えるために諸々の筋肉を酷使している為、緑谷も中々の地獄を味わっていた。

 

他にも、爆豪は汗腺を広げて威力向上する為の熱湯地獄。砂藤と八百万はひたすら甘いものを食い続けて個性を発動させまくるという、色んな意味で酷い仕打ちを受けていた。

 

 ありとあらゆる意味で壮絶で、地獄と呼ぶに相応しい光景に1年B組の全員が唖然となる一方で。プッシーキャッツが各々に試練を課していく。

 

個性をイジメ抜き、更なる向上を目指す。今回の合宿はその為の土台作り。意地の悪い笑みを浮かべるプロヒーロー達を前に臆し、怯みながらもB組もまた歩み出る。

 

「……やるよ、皆。此処で追い付かなきゃ、私達は前に進めない」

 

「当然だぜ、拳藤!」

 

「おっしゃぁっ! やァってやるぜ!!」

 

 気合いを入れ、強い決意と意気込みと共に地獄へと踏み入れる。更なる強さを得る為に、更なる向こうへ辿り着くために。

 

ただ、その一方で………。

 

「………どうしよう、オールマイトがいるなんて、きき、聞いていないよ」

 

既に、暗闇に囚われてしまっている少年は眩しすぎる光景を直視できず、ただただ立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんやとっ!?」

 

「個性が、失われた?」

 

 大阪市にある大手の警察病院。先の暴れるヤクザ者のヴィラン達を拿捕、拘束したNo.1ヒーローであるゴジータはとある奇妙なモノと遭遇した。赤い画鋲の様な変わった銃弾、その形状から薬物が込められた特殊な銃弾だと察したファットガムの提案により、銃弾を受けたチンピラヴィランを拘束した状態で病院へ搬送。

 

病院の待合室に通されたファットガムとゴジータは解析を担当していた医者から話を聞かされる。

 

 検査の結果、チンピラヴィランの持つ元々の個性因子とも呼べる部分が再生不能レベルにまでズタボロとなっていた事が判明した。

 

「はい。恐らくはゴジータが返したとされる特殊な銃弾、そこに込められていた何らかの薬物が針を通して注入された結果かと思われます」

 

「マジか。え? じゃあもしかして俺ってば結構ヤバイことやらかしちゃった?」

 

 あの特殊な銃弾には個性を破壊するヤバイ薬物が込められており、そのヤバイ証拠物品もゴジータ本人がダメにしてしまった。

 

 既にあの特殊銃弾の中身は空となっており、銃弾自体もひび割れてしまっている。折角の証拠品とも言える物品をオシャカにしてしまった事実に、流石のゴジータも青ざめた。

 

「いや、あれは仕方あらへんって。ゴジータかてわざとやった訳ではないやろうし、弾き返したのだって殆ど条件反射みたいなもんやろ」

 

「折角の証拠品を、条件反射で台無しにされては敵わんがな」

 

 ファットガムの精一杯のフォローを第三者の鋭い言葉が突き崩す。誰やねんと振り返ると、白いスーツを身に纏うサラリーマン風のヒーローが待合室に入室してきた。

 

「全く、意図した事ではないとは言え、今回は些か笑えないぞゴジータ」

 

「ナイトアイ? アンタがここに来ているって事は………もしかしてこれ、例のヤクザ組織の?」

 

「そうだ。とは言え、未だに調査中で確信にまでは至っていないがな」

 

 眼鏡をかけ直し、ゴジータを見る。其処に若干の呆れを滲ませながら、ナイトアイは続ける。

 

「場所を移そう。ここは少々人目に付きやすい。折角だからファットガム、貴方の事務所をお借りしたいのだが……」

 

「おう、構わへんで。丁度インターンの子が来る頃やろうし、ついでに紹介させたる」

 

なしくずし的に巻き込んでしまったが、そんな事など一切気にした様子を見せず、即答で了承するファットガム。こういう懐の大きい所も彼の人気の秘訣なのだろう。

 

 しかし……。

 

(ここ最近のヴィラン出現規模の頻度といい、出自不明のサポートアイテムといい、何だかキナ臭い出来事が多い気がするな)

 

 度重なるヴィランの登場とそれに拍車をかける正体不明のサポートアイテム、そこへ個性を破壊する物騒な薬物の登場。

 

明らかに裏社会で何かが起きている。その事を肌で感じながら、ゴジータは二人の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良く来てくれたね、同志諸君。心から歓迎させてもらうよ」

 

 薄暗い闇の底。光の届かない裏の世界で笑うのは一つの悪意。個性黎明期より存在し続けるその男は一つの目的の為に集まった彼等を敢えて同志と呼んだ。

 

モニターの向こう側に佇む幾つもの影、それは男と同様に闇に潜み、日陰の中でしか生きられないはみ出しモノ。人の言葉になど従ったりはしない、傲慢で力に溺れる者達………即ち、正真正銘のヴィラン。

 

『それで? 今度は一体何の用件なのかな? 生憎と此方も公安からの追及を躱すのに忙しい。出来れば手短に頼みたい』

 

「あぁ、君の所の商品は優秀だからね。僕もつい頼ってしまう。けれど、今回で一つの区切りになる。どうかここは目を瞑ってくれないか?」

 

 笑いながらの言葉だけの謝罪に、影は鼻で笑う。が、それでもこの関係性を崩さないのは、彼等も分かっているからだ。

 

今、世界は嘗てない程に希望に満ち溢れている。それもこれも、オールマイトを超える新たなヒーロー、ゴジータの所為だ。

 

 奴が存在している限り、自分達に安息はない。裏で糸を広げ、いずれ来る革命の日を迎えるには彼のヒーローの存在はあまりにも邪魔が過ぎる。

 

そんなゴジータを何とかするには自分達だけでは到底無理だ。どれ程の数を募らせても、どれだけの精鋭を揃えても、奴には決して敵わない。

 

だからこその同盟、とある解放の戦士の血を引く男も、それを理解しているから目の前の【魔王】の手を掴む事にしたのだ。

 

「今回、僕の知り合いが面白いものを見つけてね、君達にはそれを手に入れるための手伝いをしてもらいたいんだ」

 

『………生憎と、内からは兵隊は出せないぞ。例の弾薬もまだデータが不充分だしな』

 

「なら、そのデータを得る為の試作品を幾つか此方に回してくれるだけでいい。その内の一つをドクターに回そう、彼ならばきっと上手く活用してくれるだろう」

 

『─────』

 

 男の言葉にその影も黙り込む。拾ってくれた恩人への恩返しのために、自ら狂った方角へ突き進むその影は、魔王たる男に目線を送った後、『良いだろう』と一言返事を返す。

 

『何人か兵隊を見繕ってやる。但し、其方で出来上がったブツは最優先で此方に回してもらうぞ』

 

「勿論だとも。此方の我が儘を聞いてもらうのだから、それぐらいは融通するともさ」

 

 そう言いながら男が手にしたリモコンを操作すると、壁に一つの映像が浮かび上がる。映し出されるのはとある日常風景、学校から自宅へ帰る学生達の姿。

 

「今回、僕達が手に入れるのは二人の学生。彼等の個性は中々に有用性が高くてね、是非とも欲しいと言うドクターからのリクエストなんだ」

 

『コイツ等、確か秀治院って金持ちのガキ共が通うとこの学生じゃないか。こんなガキに用があるってのか?』

 

「この二人には得難い個性がある。上手く利用すれば、僕の超回復の個性の代用品になれるかもしれないんだ。僕の方からも何人か出すから、どうか手を貸してくれないか?」

 

 画面に映し出される仲睦まじい兄妹、喧嘩しながらも肩を並べ、下校していく二人にはとてもこの魔王が狙うだけの価値があるとは思えない。

 

 明らかに何かを隠している。それを追及したくとも、追及出来る程の材料が自分達には存在しない。

 

ならば、今は分かっていながらも従うしかない。そんな、忌々しく男を睨む複数の視線に………。

 

「頼むよ同志のみんな、僕に力を貸しておくれ」

 

男は、嗤いながら断れない要求を突き付ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、本当に面白い因縁だ。折角あの時君は自分の命と引き換えに子供達を逃がしたと言うのに、結局この結末は変わらないんだね」

 

「でも、それも仕方がないことだ。だって全ては僕の為に在るのだから……!」

 

 

 

 





「次回、ゴジータの髪が伸びるかも!?」

「更に向こうへ、Plus Ultra!!」

※全てウソです!(トランクス感)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。