超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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ぼっちなロック、いいよね。

そんな訳で初投稿です。


記録42

 

 

 

「さぁ、いよいよやって来たぜ肝試し! 生徒達のみんな、準備は出来てるかァッ!」

 

「オールマイトテンションたけー」

 

「て言うか、何でオールマイトも参加側?」

 

 宿泊合宿も大詰め、辛い特訓の日々を乗り越え、漸くエンタメの時間へと辿り着いた生徒達。身体の節々から痛みを感じながらも、それでも一夜限りのイベントはそんな疲れを吹き飛ばす程に魅力で満ちていた。

 

特に、こう言った学校行事とは縁の無かったオールマイトは、学生に混じって体験できる事に大人気なくはしゃいでいた。今回の催しは肝試し、時期的にもピッタリなイベントに既に平和の象徴は浮かれていた。

 

「おっと、肝試しというイベントだからって、夜の森には危険が一杯だ。道を逸れたりしないように、くれぐれも気を付けるんだよ」

 

「はーい」

 

 それでも教師としての注意喚起は忘れない。プッシーキャッツが用意した肝試しする為に用意された区画とは言え、オールマイトが言うように夜の森には予想外の危険が付きまとう。

 

ヒーローを志す生徒達へのサプライズ的な催しであると同時に、暗闇の中での心の平静さを保てるかを試すちょっとした試験でもある。尤も、あくまでイベントの催しであってこの件が成績の評価に繋がる事はないが……。

 

「でも………うん、みんな、本当に強くなったね」

 

「オールマイト?」

 

「個性を使えば体を壊してしまう緑谷少年、その個性故に自尊心が高すぎた爆豪少年。変わった二人を中心に、A組……いや、ヒーロー科は今後ドンドン強くなっていくんだろうな」

 

 それをもたらしたのは自分でない事に一抹の寂しさを覚えるが、他ならぬオールマイト自身がこの場にいる誰よりも救われている。

 

今まで自分を蝕んでいた傷はもうすっかり癒え、自身の後継となる少年も、今ではもう見違える程に逞しく成長している。

 

それもこれも、あの生意気且つ最強の相棒がいたから、彼という次世代のヒーローが現れてくれたからだ。

 

「………この分だと、私のカーテンコールも近いかな」

 

 何処までも穏やかで、優しい笑みを浮かべる平和の象徴。今日までの合宿で目的を持つ少年少女達の成長ぶりに、改めてオールマイトは世代交代を実感した。

 

オールマイトの引退。それは決して避けられない話であり、そう遠くない時に訪れる現実。微笑みを浮かべながら、その時が来ても受け入れられるオールマイトの心境を察した緑谷は、その両目に涙を滲ませ、それでも笑みを浮かべた。

 

「大丈夫です、オールマイト」

 

「ん?」

 

「僕達が、います」

 

 拳を握り締め、そう言い切る緑谷にオールマイトは目が点になる。それはこれ迄に幾度となく己が使い潰してきた言葉、助けを求める誰かを安心させる言葉であり、ヴィラン達に対する抑止力であり───。

 

自分自身に言い含めてきた言葉。自分がいる、自分がやらねば誰がやる。平和の柱となることを決意した自分への(まじな)いの言葉。

 

それが、目の前の弟子の言葉で意味がガラッと変わった気がした。平和の象徴、己だけを柱として人々の安堵と平和に費やしてきた人生。

 

 その成果が今、初めて報われた気がした。

 

報われる事を願った訳ではない、見返りを求めた訳ではない。けれど、今の緑谷の言葉は何よりもオールマイトの胸に強く響いたのも事実で。

 

「……こぉの緑谷少年! 何だか最近調子にノリ過ぎているんじゃないかい!? えぇ!? 次のNo.1は僕だなんてカッコいい事言っちゃってぇ! 」

 

「え、えぇ!? いやその、別に僕はそんなつもりで言った訳じゃあ!?」

 

「クソデクテメゴラァッ! No.1ヒーローになるんは俺だと言ってんだろうがぁ!! 俺の道を阻むってんなら、今ここでぶち殺してやんよぉっ!!」

 

「ひぃぃ! 飛び火したァッ!?」

 

 だから、オールマイトはその腕に緑谷の頭をロックする形で抑え込み、照れ隠しの揶揄を溢すしかなかった。

 

うっすらと嬉し泣きの雫を溢す自分の顔を、見られないために。

 

 自分を超えた新たなNo.1ヒーロー、そして次代を担う子供達。平和の垣根は新たな段階へ進もうとしている。ならば、自分はその礎になろう。

 

改めて決意を固めるオールマイト。────しかし。

 

悪意というのは、何処までも日常の影に忍び寄るモノで。

 

「我等敵連合、開闢行動隊!!」

 

「あらやだ。可愛い男の子がイッパイじゃない!」

 

「─────ん?」

 

「「──────あれ?」」

 

 その光景は、いっそシュールですらあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“No.1ヒーローゴジータ、今日もヴィランを瞬殺”か、No.1になってから活躍してるなぁ」

 

 秀治院学園。個性黎明期より昔、嘗て貴族や士族を教育する機関として創立され、200年以上の歴史を持つ由緒正しい名門校。貴族制が廃止されて久しい現代でもなお、富豪名家に生まれ、将来国を背負うであろう人材が多く就学している。

 

日本のヒーローを育てる代表的な教育機関が士傑と雄英であるならば、秀治院学園は国の代表を育てる教育機関。

 

 事実、この秀治院学園は各界隈の名だたるトップ、そのご子息が通う学校であり、そんな彼等を教え育てる教育のレベルも雄英や士傑より高い。

 

そんな、特権階級や上流階級の人間達が跋扈する学園にて、実力で生徒会長にまで成り上がってみせたのが、外部入学枠の城鐘御幸である。

 

「あー、会長ってばまた携帯でゴジータ見てるー!」

 

「ダメですよ会長、仕事中にそんな事では」

 

「あぁいやすまん、通知の音がなってしまってついな」

 

「もー、次やったら没収ですからね!」

 

「伊衣野さん、そう目くじら立てなくても良いじゃない。今日の仕事は全て終わらせているのですから」

 

「むむー」

 

 頬を膨らませる後輩の役員に苦笑いが浮かぶ。これももう見慣れた光景で、御幸にとって当たり前の景色でもあった。

 

「会長って、何気にゴジータのファンなんですか? この間もゴジータに関するニュース見てましたし」

 

「あー、まぁゴジータって日本の最強のヒーローだからな。ヒーローの数や質はそのままその国の国防に繋がる時があるからな、流石に気にはなる」

 

 城鐘御幸には、二つの嘘がある。

 

一つは自分と妹の恵が、親無しの孤児であり施設育ちの人間であるという事。唯でさえ外部入学の人間は異物として扱われるケースが多いのに、親無しの人間だと知られてしまえば、生徒や保護者問わずに学園に在籍していることに不満を覚える輩が出てくるだろう。

 

最悪、今の生徒会長というポストから引きずり下ろされ、学園から追放されるかもしれない。そうならないように事前に知られないように手を回してくれた校長には、感謝に絶えない。

 

 そして、もう一つがNo.1ヒーローであるゴジータと義理の兄弟であるという事。後藤甚田ことゴジータは今ではすっかり日本を代表するヒーローの一人で、その戦力は世界的に見てもトップクラスに位置付けられている。

 

そんな義兄と自分が繋がっていると知られたら、各界隈からどんな接触があるか分からないし、怨みを買っているヴィランから逆恨みの対象にされるかもしれない。

 

 以上の点から、御幸と恵は頑なにこの二つの嘘を守らなければならないのだ。

 

「私、この間オールマイトとゴジータと一緒にラーメン食べましたよ! ほら、これがその証拠写真です!」

 

「それもう何回も見ましたよ。いい加減飽きましたって」

 

 携帯に映るドヤ顔してラーメンを啜る三人、No.1とNo.2に挟まれながら一緒にご飯とか、ファンが聞いたら血涙間違いなしの話。

 

相変わらず持ってる生徒会書記に良く分からない感心を抱いていると、ふと一人の女子生徒と目が合った。

 

篠宮かぐや。自分と同じ同年代の女子であり、生徒会の副会長。生徒会長である自分の右腕であり………城鐘御幸が告白させようとする意中の相手である。

 

いつか、彼女と結ばれるのを夢見て、今日も城鐘御幸はその頭脳を駆使して彼女とバトルを繰り広げようとした時………。

 

突如、学園全体を揺さぶる程の衝撃が彼等を襲った。何事かと思い窓から外を見れば、校庭を中心に二人の人間が佇み、此方を見据えていた。

 

 一人は周囲に氷を張り巡らせ、もう一人は口許を機械仕掛けのマスクで覆っている。明らかに普通とは異なる存在感、全身から滲み出る悪意の波動。それを目の当たりにした生徒達の脳裏にはヴィランの文字が浮かび上がる。

 

間違いない、ヴィランが攻めてきた。よりにもよって、雄英や士傑よりもセキュリティのレベルが高いこの秀治院に。

 

通常なら、二人のヴィランはセキュリティシステムの前に無惨に敗北し、捕まる事だろう。

 

しかし、それは起こらない。何故なら、この二人は残念な事に………普通のヴィランではないからだ。

 

「全く、リ・デストロからの指示とは言え、なんで俺がこんな奴のお守りをしなければならんのだ」

 

 愚痴りながら隣の相方を睨む氷の男、そんな男の視線になど関知せず、男は歩み続ける。

 

「戴くぞ、俺の……糧……」

 

「我関せずか。だが、それも良いだろう。そろそろ向こう(・・・)も始まる頃合いだろうしな」

 

血走った目、目にしたものの背筋に悪寒を与えるその瞳は、城鐘と、妹である恵を感知して外さない。

 

全ては、己が望む社会のために。ヴィランの歩みは止まらず。

 

それを目の当たりにした御幸は、自身の日常が音を立てて崩れるのを感じた。

 

 

 

 

 




今回は短めです。
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