最近、寒暖差が激しくて風邪引きそう。
インフルもコロナも流行っているし、皆さんもマジで気を付けて下さい。
そんな訳で初投稿です。
青い炎が暗い夜の森を焼き、火の粉が夜空を照らし出す。向けられる殺意と悪意に晒されながら、それでも若きヒーローの卵は黙ってやられるわけにはいかないと、迫り来る炎の波をそれぞれのやり方で回避していく。
「ほらほらどうしたヒーロー!? そんなに避けたら折角の森が炭になっちまうぞォ!?」
「チッ、あの火傷野郎、無茶苦茶しやがる。森を焼いたら追い詰められるのはテメェだって一緒だろうに!」
自分達を焼き殺そうと、ヴィランの放つ青い炎を前に爆豪は持ち前の反射神経と個性でもって回避する。
確かに目の前のヴィランの個性、炎による攻撃は範囲が広く確かに脅威的だ。このまま避け続けても森は焼かれ、何れは此方の逃げ道を塞いでくるだろうし、何より大気が焼かれる事で呼吸できる酸素量も減らされる。
しかし、それは相手も同じ筈。加えて言えばヴィランの炎は確かに高威力ではあるものの、肝心のヴィランが己の個性に耐えきれておらず、体の節々が焦げているのが何よりの証拠だ。
自身の体すらも焼く程の火力。だが爆豪は自らを焼いてでも個性を平然と使っていられるヴィランの精神性こそが厄介だと分析する。
社会に仇なすヴィランの中でも、トップクラスでイカれているクソ野郎。先天性にしろ後天性にしろ、こう言う手合いを無力化するには、生半可な攻撃では足りない。故に、今の爆豪に求められるのは目の前のヴィランを無力化出来る程の最大火力での一撃必殺であった。
しかし悲しいかな、その最大火力を引き出すには今の爆豪には一瞬の間が必要になる。今の自分では目の前のヴィランを倒すことは難しいと、僅かな時間の合間に思考を巡らせて………。
「半分野郎、奴の炎を一瞬防げ。次の瞬間、俺が決めてやる」
最善の一手を模索し、導きだす。迷いながらも、今の自分に出せる最強の一手を繰り出す為に、爆豪は他者を頼るという選択を取る。
「っ、やれんのか、爆豪?」
「やらなきゃジリ貧だ。オールマイトが駆け付けるのを待つだけの木偶になりたくなけりゃあ、俺に従え!」
やれるかやれないかではない。やるしかないのだと、凶悪な笑みでヴィランを見据える爆豪の横顔を見て、轟も腹を決める。どのみち、炎に囲まれている今、自分達に退路はない。
後ろで寝ているムーンフィッシュなる殺人鬼も、いつ目を覚ますか分からない今、この状況を覆せるのは自分達だけ。オールマイトの救援を待つのではなく、自分達で脅威を乗り越える意思と覚悟を示さなければならない。
「作戦会議は終わったかよ。なら、大人しく焼かれろや」
「誰がッ!!」
ヴィランの放つ炎の波を、焦凍の氷の壁が塞き止める。突然現れる氷の壁にヴィランの目は一瞬だけ見開かれるが、次の瞬間その顔を喜悦に歪ませる。
「────流石は最高傑作。エンデヴァーも拘る訳だ」
「っ、テメェ、何を言って───!?」
「話は後にしやがれ半分野郎ッ!!」
意味深な言葉で挑発してくるヴィランに、案の定反応してしまう轟だが、爆豪の怒声がそれを掻き消す。相手の言葉にイチイチ反応せずに己のやるべき事に集中しろと、暗に怒鳴ってくる級友に己の不甲斐なさを噛み締めながらも、轟は氷の出力を上げていく。
「けど、悲しいなぁ轟焦凍、それだけ恵まれておきながら、お前は何一つ成し遂げることは出来やしない。三番手に落ちたエンデヴァーといい、本当に面白いよなぁお前らは」
しかし、純粋な火力では向こうが上なのか、分厚い氷の壁を瞬く間に溶かしてくる。このままでは不味いと轟が焦りを見せた時。
「ゴチャゴチャとうるせぇなぁ、そんなにお喋りしてぇなら────」
爆発が、氷壁ごと青い炎を吹き飛ばしていく。周囲を蹂躙する程の爆風、これ迄とは明らかに異なる爆破の威力に轟もヴィランの男も目を丸くさせる。
「病院のベッドの上で、死にながら語れやッ!!」
遥か頭上から輝く光を炸裂させ、加速度的に迫る爆豪に、ヴィランの男は本能的に嫌な予感を感じた。あれを受けてはならないと、学生でありながらふざけた火力を持つ爆豪に戦慄を覚えるヴィランは、舌打ちと共に青い炎を解き放つ。
しかし、その青い炎が届くことはない。加速し、それでいて尚持ち前の動体視力で避ける爆豪は、離れる轟を認識して一直線にヴィランへ吶喊していく。
「くたばりやがれェッ! クラスターインパクトォッ!」
瞬間、轟音が周辺一帯に轟き、爆風が大地を抉る。回転という遠心力を加えての威力の底上げは、想像以上に跳ね上がり、その一撃は周辺の木々を根刮ぎ吹き飛ばし、着弾地点は巨大なクレーターが出来上がっていた。
「はぁ、はぁ、クソが」
しかし、その一撃を放つことが出来ても、爆豪の表情は暗いまま。忌々しそうに歯を食い縛る爆豪の横顔を見て、轟はまさかと青ざめる。
「いやぁ、危なかったねぇ荼毘。おじさん、結構良い仕事したんじゃない?」
「………おせぇぞコンプレス、何処で遊んでいやがった」
クレーターの端、未だ生い茂る木々の上に佇むヴィラン。その横には新たに現れた仮面のヴィランが明るく振る舞いながらそこにいた。
「おじさんはおじさんでお仕事さ。ほれ、取り敢えず二人。此方でゲットしておいたぜ。ていうか、先ずは助けてくれたことを感謝しろよ。マジでギリギリで死ぬかと思ったんだけど?」
「──────」
コンプレスと呼ばれるヴィランは、自慢げに懐からそれぞれビー玉サイズのそれを二つ取り出す。それらを見てまさかと爆豪と轟は目を見開く。
コンプレスの手中にある二つのビー玉、その中には同じクラスメイトである障子目蔵と常闇踏陰が閉じ込められていた。
直後、爆豪は掌のニトロを爆発させて加速。二人を取り戻そうと手を伸ばすが……。
「おっと、なんだ、やっぱりバテているか」
「あれだけの威力なんだ。そりゃデメリットもあるわな」
先のクラスターインパクトは、サポートアイテムという補助があって初めて使われるべき技。己の手と腕、更に内部の汗腺を著しく消耗させてしまった爆豪には、既にこれ迄の様な爆発的加速は見込めなくなっていた。
「爆豪ッ!!」
既に限界に差し掛かっている爆豪を助けるため、氷壁を作ってヴィランの間に割って入る。
「爆豪! 兎に角今は此処から離れるぞ!」
「出来るかバカが! 向こうにはクラスの連中が二人も捕まってるんだぞ! 此処で取り返さねぇでどうする!!」
「けど、その体じゃあ!」
駆け付け、助け起こそうとする轟の手を爆豪は振り払う。逃げようとする轟に対し、爆豪は逃げないと反論する。
それは、己の自尊心からではない。目の前の捕まったクラスメイトを助けなければというヒーローとしての素養が、爆豪から撤退の選択肢を消してしまっている。
此処で自分が食らい付かねば、誰が二人を助け出す。ふらつく体に力を入れながら立ち上がる爆豪に対して……。
「────悲しいなぁ、轟焦凍」
「ッ!?」
轟の張った氷の壁は呆気なく脆く崩れ去ってしまう。氷壁の先に佇む二つの影、三日月のように口元を歪めるヴィランの顔には微塵も自分達の敗北を予期していない。
「お前だけだ。この状況で、お前だけが取り残されている。本当に期待はずれだぜ、それでもお前はエンデヴァーの最高傑作かよ」
「───一体、テメェは何なんだよ。なんでそんなにもエンデヴァーを引き合いに出してくるんだ!」
先程からずっと、事ある度にエンデヴァーを引き合いに出してくる。やたらと此方に干渉してくる荼毘なるヴィランに、いい加減苛つき始めた焦凍に対し、荼毘は何処までも虚仮にするかのように嗤う。
「ウッゼェなぁ、いい加減その口を黙らせてやる。掛かってこいよクソフランケン」
「ハッ、其処まで強がれれば大したもんだ。だが、状況は正しく把握しろよヒーロー。そんな状態で俺の炎を避けられるのか?」
「関係ねぇ、テメェはヴィランで、俺はヒーローだ。だったら、やることは変わンねぇだろうが」
「ハハ、いいなお前。焼き殺してやるよ」
青い炎が迫る。この距離では外しようがないし、避けようがない。迫り来る熱の凶器を前にそれでも前に進もうと前屈みになる爆豪を前に……。
「デトロイト───SMASHッ!!」
それは現れた。離れた位置から繰り出される拳、拳圧となって吹き荒れるそれは、荼毘の放つ青い炎を蝋燭の火の如く掻き消していく。
「済まない二人とも、もう大丈夫。何故って? ───私が来たッ!!」
男が、空から降ってくる。その顔に満面の笑みを携えて、最高のNo.2はやってきた。
オールマイト。有り得ざる存在を前に、コンプレスと荼毘は頬をひくつかせた。
◇
「CAROLAINA───SMASHッ!!」
交差した両手の手刀から繰り出される一撃、OFAの45%にまで引き上げたそれは、目の前のヴィランの肉体にXの打撃の痕を刻み込んで吹き飛ばす。
岩壁に叩き付けられ、動かなくなった脳無。自分の力で初めてヴィランを打ち倒せた事に戸惑いながらも、デクは傷だらけとなった自身の体を構うことなく、出水洸汰を背にして残された少女のヴィランへ向き直る。
「出久兄ちゃん、傷が!」
「大丈夫。急所は外してあるし、殆どは掠り傷さ。でも気は抜けない。ごめんだけど、もう少し僕の後ろに下がってて!」
デクの体は、今倒した重機の様なヴィランと目の前の少女によって傷だらけとなっていた。しかし、何れも軽傷や掠り傷程度で済んでおり、戦闘続行には問題ない程度。
しかし、脳無の方で時間を取られてしまった所為で状況の方は把握出来ていなかった。先の大きな爆発音といい、他の皆は無事なのか。気取られないように振る舞いながらも、それでも不安に思ってしまう出久の視界に、白刃が割り込んでくる。
急所へ目掛けて振るわれるそれを、咄嗟に回避する。相手の死角を突いた嫌な攻撃、これ迄幾度となく振るわれた凶刃を出久は寸前で回避する。
しかし、少女の刃はそれで終わることはない。手にしていた刃の持ち方を変えて、横へ薙ぐように振るわれる。明らかに慣れた手つきに驚くが、これも脳無と連携されて何度も見てきたモノ。体をのけ反らせ、バク転の要領で回避し、その足で少女の手にする刃を弾き飛ばす。
次の瞬間、反撃に転じようとしていた出久の動きを察した少女は、笑いながら距離を取る。その身のこなしと明らかに戦い慣れしている少女の動きに出久は戦慄を覚えた。
加えて。
「────あは、格好いいなぁ、可愛いなぁ、傷だらけであの脳無に勝っちゃう出久君、最っっっ高にカッコかぁいいなぁ、出来ればお持ち帰りしたいなぁ。そしてそのまま結婚を前提にしたお付き合いをしたいなぁ」
これである。好意なのか殺意なのか、それとも別の感情を抱いているのか、顔を赤くさせながらモジモジしている少女に出久はどうもやりにくさを感じる。
「どうして、どうして君みたいな子がこんなことをしているんだ。結婚、お付き合い? 一体、何を言って…」
「出久兄ちゃん……」
「僕は君の事なんて何一つ知らないぞ!!」
「出久兄ちゃん……」
相手がヴィランとは言え、自分の事を好きだとか結婚してとか宣ってくる元陰キャな出久も、どうやら一杯一杯なご様子。若干テンパりながら見当違いな事を口にするヒーローの卵に、流石の洸汰も引き気味だった。
「トガです。渡我、渡我被身子。是非とも覚えていて下さい。出久きゅん。趣味は好きな人の血をチウチウする事。最近の専らの推しはヒーローデクこと緑谷出久君です!」
「っ! 僕のヒーロー名まで!?」
「私、好きな人の事は全部知りたい質ですので」
ヒーローとしてデビューしておらず、クラスメイトか学校側でしか知られる筈のない情報まで掴まれている。此処へ来て事の重大さに気付いた出久は表情を引き締めて目の前の渡我被身子なるヴィランの確保に意識を切り替える。
「────このまま、君を逃がす訳にはいかない。大人しく捕まって貰うぞ、渡我被身子!」
「出久君が私の事を知りたがっている!? あはぁ、今日は本ッッッ当に最高です!!」
赤く、悦びに満ちたその顔を、更に喜悦に歪ませる渡我被身子。スカートの中で隠していたもう一本のナイフを取り出し、腰を低くさせて獣のように鋭く走る彼女に対し、出久は落ち着いてその動きを予測する。
既に、彼女の行動パターンは掴んでいる。伊達に何度も切り付けられていないと、緑谷出久は拳を握り締めて次の一撃に備える。
そして、互いに間合いに入り、一撃を放とうとした時。二人の間に黒い靄の壁が現れる。
「ッ!?」
「これは、黒霧の!?」
USJの一件で、目の前の靄が敵連合のモノだと知った出久は巻き込まれないよう咄嗟に洸汰を抱えてその場から跳んで距離を取る。
幸い、呑み込まれる事の無かった出久だが、渡我は靄に呑まれたのか「そんなぁー! もう少し出久きゅんとお話ししたかったのにィィーー!!」という叫び声を残して消えていった。
残された緑谷出久と出水洸汰 。二人のいる空間はまるで今までの戦いが嘘だったかのように静まり返っている。しかし、出久の全身に走るジクジクとした痛みが夢ではないと物語っている。
ともあれ、突然のヴィランによる襲撃はヒーロー側の勝利という形で幕を下ろした。しかし、被害はゼロで終わる事なく……。
プッシーキャッツの一人、ラグドールがヴィランによって連れ去られた。
Q.連れ去られたのはラグドールだけなん?
A.はい。障子君と常闇君はオールマイトのお陰で取り戻しましたが、生徒四人を庇いながら荼毘とコンプレスを捕まえる事は敵わず、取り逃してしまいました。
Q.どうしてラグドールは捕まったの?
A.ヒントつ数の暴力
次回からいよいよ神野決戦。
No.1とNo.2が揃うかも!?