超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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もうすぐ闇の古戦場。逃げたい、でも逃げられない。

自分のペースで頑張ろ。


そんな訳で初投稿です。


記録47

 

 

 

 林間合宿先で起きたヴィラン襲撃事件。緑谷含めた全員が楽しみにしていた林間合宿は、最悪の形で幕を下ろした。

 

軽傷者多数、更にはプロヒーロー一人の行方不明。過去に類を見ない惨状を前に、世間は大いに騒ぎ、不安に震えていた。

 

被害はゼロではない。しかし、それでも狙われた生徒達が全員無事だという報せは、僅かだがメディアの追及を和らげる事に成功した。狙われた生徒達を守るために奮戦したオールマイトを讃える一方、他のヒーローに対し、ネット界隈では心なき罵倒で扱き下ろす者達も少なからず存在している。

 

 今日も暇なコメンテーターが、あれやこれやと難癖付けて雄英を批難している。病室に備え付けられたテレビを消して、舌打ちをしながら爆豪は通路へ歩み出る。

 

「あ、かっちゃん。もう起きてきていいの?」

 

「テメェと違って柔な鍛え方してねぇんだよカス、そういうテメェは、無駄にボロカスになってンじゃねぇか」

 

 通路先でバッタリと出会したのは、身体中のあちこちに手当てを受けた緑谷だった。現在、襲われた多くのヒーロー科の生徒達は同じ病院で厄介になっており、殆どの生徒達は検査入院という形で世話になっている。

 

 爆豪と緑谷もその内の一人、爆豪としては単なるスタミナ切れでバテていただけなので、この様な待遇は正直不満だった。どこも悪くないのに入院とか、人をバカにするにも程がある。悪態を吐き捨てる爆豪に、医者達は大いに困り果てたという。

 

「僕もそんな大した傷じゃないんだけど……親御さんを安心させる為に、念のためにちゃんと治していけって言われちゃって」

 

「─────」

 

 緑谷も身体中に傷こそ付いているが、どれも軽傷で本人が言う通り入院する程の怪我ではない。それでも一応の入院を勧めてくるのは、偏にヴィランに襲われたと言う配慮と、外の人間との接触を一時的に絶つ方便でもあった。

 

現在、入院している者以外のヒーロー科の生徒達はA組B組問わず、自宅で待機状態となっている。家族を安心させる為と、情報の漏洩を防ぐ為である。

 

「……電話越しだけど、母さんに凄く心配させちゃった。かっちゃんはどうだった? おばさん、元気だった?」

 

「クソみてぇに元気だったわ。あのババア、仮にも入院している息子に“あ、そう”はねぇだろ。ったく」

 

「アハハ、相変わらずのようで何より……」

 

 爆豪の母親は良くも悪くも快活の人。所々息子である勝己を軽く見ている節があるが、それは息子の強さを信じているが故の態度であると……信じたい。

 

「「…………」」

 

 そんな中、二人の会話は長く続く事はなく、気まずい空気が流れ始めていた。いや、分かっている。二人が気掛かりとなっているのは、敵連合に拐われたとされる一人のプロヒーローだ。

 

 ラグドール。プッシーキャッツの一人であり、緑谷達の個性伸ばしの特訓に付き合ってくれた恩人。彼女の行方が分からないまま、既に一日が経過しようとしている。

 

「ラグドール、無事だと良いんだけど……」

 

「奴等は殺すんじゃなく誘拐を選択した。その時点で何らかの目的があるだろうから、そうすぐに始末される事はねぇ筈だ」

 

「うん。僕もそう思う。でも、何でワザワザ誘拐なんて手段を取ったんだろう? 身代金? これも雄英の信頼を落とすため?」

 

「No.1ヒーローの身内を襲うには安すぎる理由だな」

 

 そう、林間合宿を中止し、入院することになった爆豪達が次に驚愕したのは、No.1ヒーローであるゴジータの身内を強襲した事だった。

 

 現在、秀治院学園はヴィラン襲撃により休校中。此方も林間合宿の件と同様に大々的に報じられているが、此方はどちらかと言うとゴジータの暴れっぷりに注目が集まっている様だ。

 

 襲ってきたヴィランを一方的に蹂躙していくゴジータ、特に氷を操るヴィランを空中でピンボールの様に弾き飛ばすその様は、お茶の間の人達を騒然とさせた。

 

 空気が弾け、氷は砕かれ、ヴィランが吹っ飛んでいく。それに追い付いて追い討ちを仕掛けるゴジータを見て、人々は畏れ震え上がった。

 

 更に噂ではあるものの、どうやらゴジータの出身施設も襲撃された様で、此方もゴジータ自身が対応し決着を付けたらしい。

 

 以上から、この件もネットでは大いに盛り上がっているそうだ。“ゴジータヤバすぎ”だの、“ヴィラン二人を相手に大人げない”とか“容赦なさ過ぎクソワロタ”など、ネットミーム満載でお祭り騒ぎとなっている。

 

────閑話休題。

 

 学園の方はゴジータが駆け付けてくれたお陰で学校施設以外で大した損害は出ておらず、休校状態が解除されるのも時間の問題だろう。しかし、二人が問題視しているのは全く別の事だ。

 

 恐らく、今回の襲撃事件は予め企てられたもの。秀治院学園と雄英の林間合宿、そして施設。これら三つの場所を同時にヴィランが襲撃したのは決して偶然などではない。明らかに何らかの目的を持った同時多発のテロだ。

 

 だが、その核となる理由が分からない。計画的でありながら何処か散漫なヴィランの動きに二人が頭を悩ませていると、通路の奥から第三者達がやってきた。

 

「緑谷、爆豪! 二人とも元気そうで良かったな!」

 

「上鳴君! 峰田君も! お見舞いに来てくれたの?」

 

「あぁ、本当は家で自粛しているべきなんだろうけど、どうもジッとしてらんなくてさ。先生に直談判してクラスメイトの見舞いという形で外出する許可を貰ったんだ」

 

「うちらもいるよー!」

 

「二人とも、思ったよりも元気そうで安心したよー! A組から入院者出たの、緑谷と爆豪とヤオモモ位だもんねー!」

 

 続々現れるクラスメイト達、その中には一時的とは言えヴィランに捕まっていた障子と常闇、そして一緒に戦った轟の姿もあった。

 

「爆豪、あの時は足引っ張っちまって悪かった。お前の判断がなけりゃあ、俺は多分あの荼毘ってヴィランにやられていた」

 

「俺もだ。オールマイトから聞いたが、お前がヴィランを足止めしてくれたんだな。なのに俺は………本当に済まなかった」

 

「誠に陳謝……!」

 

「ウッゼェな、雁首揃って頭下げんな暑苦しい。そんで此処は病院の通路だ。周りの迷惑にならねぇように散れや!」

 

 先日の自分のいたらなさを痛感し、思い知った三人は、爆豪の足を引っ張ったと思い素直に頭を下げる。対して爆豪は足を引っ張られた覚えはない為、純粋に彼等から頭を下げられる意味を理解していなかった。

 

「ケロ、相変わらずのようで安心したわ」

 

「B組の連中も全員無事だったし、後はラグドールを見付けるだけだな」

 

「その事なんだけど、オイラさっきナースの人達が話をしているのを聞いたんだ」

 

「聞いたって、何を?」

 

「今、オールマイトとゴジータが警察の人と一緒に八百万の所に来ているみたいなんだってさ!」

 

 峰田のその言葉に、A組全員が理解する。

 

反撃に出るんだ。遂に始まったヒーロー達の逆襲に、緑谷はゴクリと喉を鳴らして唾を呑み、爆豪は不敵に笑みを溢した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、君がヴィラン達への発信器を取り付けたのか」

 

「私はあくまで発信器を創造しただけ、あの状況下で私の言葉を理解し、信じて行動してくれたのは泡瀬さんですわ」

 

 同・病院の別室。ヴィランの放つガスにて一時的な麻痺症状に犯された八百万百(やおよろずもも)は軽い症状で少量とは言え、ガスを吸い込んでしまった事を危惧し、他の生徒達と同様に用意された部屋にて安静にしていた。

 

 元々大した被害では無かった為、警察との応答が出来るだけの体力もあった彼女は、やって来た警察に話を通し、簡単な事情聴取を受けることとなった。

 

「ありがとう八百万少女、君のお陰でヴィランの根城を特定出来るかもしれない。あの緊迫した状況の中で────大したものだよ」

 

「私の行いは微々たるもの、それで皆さんのお役に立てるのなら安いものですわ」

 

 あの時、ガスを吸い込み意識が朦朧としていた所を、B組の泡瀬洋雪に助けられ、幾多もの幸運のお陰で生き延び、発信器というヴィラン達の拠点を暴く最初の一手を差し込む事が出来た。

 

八百万のヒーローとしての矜持。学生でありながら、それでも立ち向かう少年少女達の勇気に、オールマイトは素直に嬉しく思った。

 

 ウンウンと頷くオールマイト、警察としては複雑な心境な塚内。そんな二人の間をゴジータが通る。

 

 強い瞳で見上げてくる八百万。後は任せると、そう伝えてくる彼女に笑みを浮かべて………。

 

「────頑張ったな」

 

ワシワシと頭を撫でた。

 

「お前の……お前達の勇気、絶対無駄にはしない。ヴィラン達を捕まえてラグドールも必ず助け出す。だから───安心して休んでろ」

 

 体育祭で成績が揮わず、一時期成績不振に陥った八百万だったが、クラスの皆との生活の中で持ち直し、期末テストでは見事合格を勝ち取った。

 

そんな彼女の成長を嬉しく思えたのはオールマイトだけではない。一度だけとは言え、面と向かって指導した事のあるゴジータとしても、彼女の成長ぶりには喜んでいた。

 

「………後の事、お願いしますわ」

 

「おう、任せておけ」

 

 父親以外の男性に初めて頭を撫でられた。しかし、嫌ではない。何処か慣れた手付きで頭を撫でてくるゴジータの手、それが離れるのを少しだけ惜しく思いながら、後を託すとだけ言い残し八百万はベッドに横になる。

 

 そして、彼女の病室を後にした三人はそれぞれやるべき事を成すために通路を歩き出す。

 

「それで、実際どうなんだ塚内さん」

 

「現在、総力を上げて捜索中。とだけ言っておくよ。内容が内容だ。出来るだけ外に情報を漏らしたくはない」

 

 徹底的な情報封鎖。此処まで来るといっそ分かりやすい。今現在世論の動きを鑑みれば、世間は雄英側に問題があると思い込み、これを指摘したい事だろう。

 

なら、タイミング的には雄英の謝罪会見に被せる形か。其処まで先を読んだゴジータは口にする事なく、大人しく塚内の言葉を聞き入れた。

 

「けれど、良いのかいゴジータ。ご家族の事が心配なら、無理に作戦に参加しなくても………」

 

「そりゃあないぜオールマイト、身内が襲われて引っ込んでたんじゃ、No.1ヒーローの肩書きが泣くぜ?」

 

「いや、そうかもしれないが………」

 

「家族は皆俺の家に一時的に避難している。地元の人達も協力してくれるし、次期サイドキックも守りに入らせている。今回の件を片づけるまで、誰一人近付けさせはしねぇよ。………それに」

 

「?」

 

「此処で俺だけ除け者にされたら、俺自身が怒りでどうにかなりそうだ」

 

 ゴジータの一瞬だけ見せたヒーローらしからぬ笑み、底冷えするゴジータの表情に凶悪ヴィランと何度も対峙してきた塚内すらも冷や汗が流れた。

 

「因みにオールマイト、アンタから見てどう思う? 今回の件、例の悪の黒幕が出てくると思うか?」

 

「あぁ、これだけ大きな事が起きたんだ。我々の動き次第では────必ず、奴も動き出す」

 

「そうか、それを聞いて安心したぜ」

 

 自然と、ゴジータの握る拳に力が入る。メキメキと骨がなり、うっすらと気を纏い始める。待機状態から臨戦態勢に入りつつあるゴジータに、塚内は気合いを入れすぎだと呆れた。

 

 そんな時、ふと視線を感じた。なんだと思い視線の感じる方角へ視線を向ければ、向こう側の通路で入院していた筈の爆豪が佇んでいた。

 

何か自分に言いたいことでもあるのか? 不思議に思うゴジータだが、爆豪は一向に近付いてこようとはしない。

 

一体何なのか、そろそろ行かないと二人に置いていかれると少しだけ焦るゴジータに………爆豪はふくれた面で拳を突き出してきた。

 

『負けんじゃねぇぞ』

 

 一瞬、そんな台詞が聞こえた気がした。

 

「───ハッ、卵が、生意気じゃねぇか」

 

 そんな爆豪にゴジータもまた拳を突き出す。当然だと、先の凶悪な笑みとは違ういつもの不敵な笑み。天下無敵の超ヒーローの様子に満足した爆豪は、そのまま振り返って自室へ戻っていく。

 

あの様子から、どうやら二度寝でもするのだろう。これからヴィランとの決戦が始まるというのに、呑気なものだ。

 

 けれど、これで肩の張りが少し和らいだ。いつも通り、何も変わらない。先行く二人に追い付くように、ゴジータは再び歩み出す。

 

病院を抜けた先の空は、少しだけ曇っていた。

 

 

 

 

 

 

 





Q,ゴジータ、B組の子達には会わなかったの?

A,実は裏で会ってます。主に顔を会わせたのは鉄君と拳藤ちゃんの二名のみ。

他の事の絡みは何れ書きたいと思います。


「よぉ鉄、お前ガキに銃弾受けたんだって?」

「おっす! でも全然平気でした!」

「当たり前だ阿呆、お前の個性なら銃弾程度弾くなんて訳ねぇんだ。お前の個性は切島と似ている様で違う、そこに気付いた時、お前は切島とは異なる守護の盾になるだろうよ」

「お、オッス!!」

「拳藤、お前も頑張ったみたいだな」

「い、いえそんな! 私は、鉄哲みたいに前に進めなかったし、場の空気を引っ掻き回しただけで」

「だが、それがヴィランを倒す鍵になった。お前は頭が良い、だから自分の出来ることを直ぐに見付けられる。なら、自分の行いを卑下するな。胸を晴れ」

「ゴジータ……はい! ありがとうございます!」

「────なんか、ゴジータってば私より教師っぽくない?」

「……ドンマイ、オールマイト」


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