超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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多くの感想、評価ありがとうございます。

今回は光と影みたいなお話。

それでは初投稿します。


記録5

 

 

 

「チームを組む? 俺と、オールマイトが?」

 

「あぁ、尤も期間限定と付くがね」

 

 目の前のヒーローからの提案に、ゴジータは表情にこそ出さないものの愕然としていた。如何にNo.1の座からまぐれで落とされたとしても、相手は依然と平和の象徴。その実力の高さはヒーロー歴の浅いゴジータからみても相当なモノだと認識している。

 

ヴィラン退治もそうだが、なにより彼は人々を救うことに躊躇はせず、いつも最短距離で結果を出している。如何にインターンで下地を築いてきたゴジータであっても、彼処まで綺麗に人助けをするのはまだ難しい。

 

勿論、いずれは自分もその領域に辿り着くつもりだが、それでも目の前の人物がヒーローとして自分の数歩先にいる事は紛れもない事実だ。

 

平和の象徴オールマイト。彼とチームとして組めば、ヒーローとして大きく成長出来るだろう。

 

「その、申し出は素直にありがたいのですが………でも、何故俺なんです? 俺は確かに今でこそNo.1ヒーローとされていますが、経歴の浅い新米。貴方にメリットを持たせるのは難しい事かと思いますが?」

 

「メリットなら、もう受け取っているよ」

 

「え?」

 

 チームとして組んだとしても、得られるのは新米ヒーローである自分のみ。得られてばかりで何も返せないのであれば、それは果たしてチームを組む意味があるのだろうか。

 

そうゴジータが疑問に思うのも束の間、意味深に笑みを浮かべるオールマイトの身体から突如、煙が吹き出してくる。

 

「オールマイト、煙が!?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。ちょうど“時間”が来ただけさ」

 

 オールマイトの身体から吹き出てくる煙の様な不可思議な現象、何事かとソファーから立ち上がるゴジータを余所に、オールマイト本人は極めて冷静だった。

 

軈て、煙がオールマイトの身体を包み込んでいく。何が起きるのかと固唾を呑んで見守っていると……。

 

「これが、今の私の本当の姿(トゥルーフォーム)さ。ゴジータ」

 

「なん……だと………!?」

 

 萎み、まるで枯れ木の様な華奢な身体。筋骨隆々なマッチョマンが、途端にひ弱なガリガリ君へビフォーアフターを遂げている。なんと言う事でしょうなんてレベルじゃない変わり様に、ゴジータは……。

 

「オールマイトは、ガリブウだった!?」

 

「いや誰それ」

 

二つに分かたれたガリガリな某魔人が脳裏に過っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワン・フォー・オール(OFA)オール・フォー・ワン(AFO)。個性社会の黎明期からそんな因縁が……」

 

「突然な話で信じられないかも知れないが、事実だ。現にこの事は私の他にも知る人はいる」

 

「あぁいや、別に疑っている訳ではないですよ。ただ、純粋に驚いていただけです」

 

 個性の力が解かれ、萎んでしまった姿を晒すオールマイト改め八木俊典。彼の口から紡がれたのは個性社会の黎明期より続く一つの悪の物語。

 

その人物は個性という超常の力による異能社会に先駆け、個性を“奪う”力を以て人々の頂点に君臨し、悪意を振り撒いてきた。

 

それに抗うのがその悪の親玉の弟、その人物から聖火の如く受け継がれてきたのが、オールマイトが有する個性“OFA”。個性社会の黎明期から続く二つの個性の戦い、それがOFAを受け継いできた者の宿命であり、この傷はその時に出来たものだと、左の脇腹の傷を見せながら締め括る事で、話は一旦止められた。

 

ゴジータ………後藤甚田は、眉唾に思えるその話を驚きはするものの、疑問に思う事はなかった。何せ、この身に宿る力は憧れたあの超戦士のモノ。テレビ越しでしか見られなかった超弩級の力が自分と言う形として現れているのだ。

 

転生。自分こそがこの世界に於ける特殊な事例だと自負しているゴジータにとって、オールマイトの話は充分信憑性に満ちていた。

 

「では、その諸悪の根源っぽいヴィランは、今もまだ生きていると?」

 

「可能性は低いと思うけどね。奴の顔に拳を叩き込んだ瞬間の手応えは今でも覚えているからさ。この傷はその時に出来たものだ」

 

「じゃあ、その話を俺にした理由は? ………まさか、俺がオールマイトの後継者に?」

 

Exactly(そのとおり)!! 君こそ、私の後継に相応しい! ─────と、あの時、巨大隕石を破壊した君を見た時はそう確信していたさ。でも………」

 

「でも?」

 

「それは、ちょっと違うんじゃないかなって」

 

 寂しいような、残念そうな表情でオールマイトは笑う。

 

「君は、既に君だけのヒーローの“像”を持っている。泣いても良い、転び、辛くて泣いても良い。其所から立ち上がる者こそが、ヒーローなのだと。そう断言した君を見て思い止まったよ」

 

「─────」

 

「君は、君の思う道を進みなさい。私は、その道を往く君の背中を信じることにするよ」

 

「オールマイト………」

 

「それに私達の個性、“OFA”は否応なしにその人の人生を歪ませる。受け継いできたお歴々の方の意思、私の意志が次代の継承者の在り方を歪ませるかもしれない」

 

「じゃあ、OFAはオールマイトで終わりだと?」

 

「分からない。けれど、もしこの個性を誰かに受け継がせたら、必ず君にも伝えるよ」

 

「そう、ですか」

 

 重い沈黙がリビングに満ちる。一つの悪意から生まれた個性と、悪の親玉との戦いの歴史。始まりも繋がりも、重くて濃い。思っていた以上にヘビーな話、これでは不味いと思ったゴジータは改めてオールマイトに問うた。

 

「えっと、それなら結局……どうして俺なんかと組むと言う話になるんです?」

 

「え? だって今君、メッチャ困ってるでしょ? 特に書類関係で」

 

ホラ、とオールマイトが指差す方向には積み上げられた書類の山。これ迄の会話ですっかり忘れていたゴジータはしまったと頭を抱える。

 

「私も、事務処理的な仕事は中々苦手でね。昔はヒーロー活動との両立に苦労したよ」

 

「オールマイトも?」

 

「あぁ、特に君は独立したてで分かっていない事が多いんじゃないか? 確定申告とか、その辺りの事務仕事を疎かにしていると………後で地獄を見る事になるよ?」

 

表情に陰を落として断言してくるオールマイトに、それが脅しの類いでないことはゴジータにも伝わった。今はガリガリな状態である為、尚その迫力が際立つ。

 

「君と私が組めば、事務処理も一時的に併合される事になる。私の事務所には能力的にそういったモノに秀でた者も多い、君がNo.1ヒーローとして人々に認知され、新たな抑止力として浸透するまでの間、私が色々と教えて上げるよ」

 

「どうして、そこまで?」

 

「誰かが困っているなら、助けるのは当然の事さ。余計なお世話は、ヒーローの本質だからね」

 

「─────」

 

 そう言って笑う平和の象徴にゴジータは彼の本質を見た気がした。何処までも他人本意で、自分の事を蔑ろにする人間。目の前の八木俊典なる人間はそう言う人種なのだと、ゴジータとしての本能がそう囁いていた。

 

今後、この人は際限なく他人の為に自分を使い倒すつもりなのだろう。助けを求める人がいる限り、ヒーローとして最期まで。“人柱”。彼の笑みを見たゴジータの頭に、ふとそんな言葉が過る。

 

彼は、これからも戦い続けるのだろう。たとえ、その果てに惨たらしい末路が待っているのだとしても、その歩みは止められない。なら、そんな人間に対して後藤甚田が出来るのは一つしかない。

 

「────オールマイト、ちょっと此方に来てくれますか?」

 

「そっちは………階段? もしかして、地下室かい?」

 

「貴方に一つ、見せたいモノがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、お洒落なリビングの地下はこんな風になってるんだ」

 

「雄英の技術班にお願いして、ある研究者に頼み込んで作らせたモノです。一応、敷地内から出ない範囲での作りになっています」

 

 細身になったオールマイトを連れて、やって来たのは地下室。普段は修行鍛練に集中する為に雄英の技術職員に頼み込み、その伝でインターン時代の貯金で支払って造って貰った特別製の修行空間。

 

無機質ながら明るいゴジータの修行場、その作りにどこか既視感を覚えたオールマイトがあちこちに注目していると、彼の歩みはある壁際まで進んでいく。其所へ辿り着くと、壁から音声が鳴り響き、顔認証やら網膜認証等の仰々しいやり取りが続くと、壁に一つの空間が空いた。

 

取り出されるのは小さな小箱、小道具程度しか入らないであろうそのその箱を、ゴジータは後生大事に抱えてオールマイトの下へ戻る。

 

なんだと不思議に首を傾げるオールマイト、そんな彼に対してゴジータは真剣な表情のまま箱の蓋を取り外す。

 

「これは………豆、だよね?」

 

 蓋の下にあるのは数粒程の豆、瑞々しい翡翠色をした枝豆と思わしき豆だった。

 

「これは、俺がある技を完成させる過程の際に作った特殊な豆、【仙豆】。その下位互換になる代物です」

 

「仙豆?」

 

「仙人が食するとされる豆、その効能は空腹を満たし、あらゆる傷も立ち処に治すとされる秘薬。それを、我流で造ったモノです」

 

「せ、仙人? それ、食べて大丈夫な奴なの?」

 

「既に効果は俺が試しています。これを食べたら食欲が四日以上抑えられ、胃痛も治りました。消化も良いですし、今のオールマイトでも何とか食べられるかも知れません」

 

「いや、流れ的にそうなるかなーとは思っていたけど………本気?」

 

「俺を信じてくれるのなら、是非」

 

一粒を手にし、オールマイトの掌へ渡す。仙人が食するとされる豆、見た目はただの枝豆なのに今は何故か毒々しく見える。不安だ。ゴジータと豆、それぞれを二、三回程往復して見やると、平和の象徴は遂に決心した。

 

「────分かった。他ならぬ君の言葉だ、信じよう」

 

 手にした豆を握り締め、頬張る。コリコリと噛み砕くと、久しく味わっていなかった枝豆の味が口内に広がっていく。

 

特にエグミも苦味もない、ごく普通の豆の味。久し振りにお酒が呑みたいなぁ、なんて考えながら呑み込んでも………特に変化無し。

 

あれ? もしかして効果無し? これ迄の流れがシリアス全開だっただけに少し拍子抜けした────その時だ。

 

全身の細胞が、脈打つのを感じた。

 

「─────ゴッ、プッ?」

 

「オールマイト!」

 

 喉の奥から汲み上げてくる異物感。それに抗う暇もなく、オールマイトの口から大量の血が吐き出されていく。

 

黒く、ドロッとした重い血。床一面に吐き出される大量の血は既にバケツ一杯分の量を超えている。明らかに致死量………なのに、苦悶の表情で血を吐き出しているオールマイトの顔色は、悪くなる処か明るくなっている様に見えた。

 

軈て、()()()を全て吐き出し終えたオールマイトは、自身に感じる新たな違和感に愕然となる。

 

「────呼吸が、()()!? ゴジータ、これは、一体!?」

 

これ迄、僅かに呼吸を繰り返すだけで己を蝕んでいた苦しみが嘘の様に軽くなっている。息苦しさも前とは比較にならない程に軽くなり、なにより………()()を感じられている。

 

「恐らく、一番酷いと思われる呼吸器官の修復を優先したのでしょう。この黒い血は、貴方の内で死んでいた細胞そのもの。それを吐き出して新しい臓器を造っている最中なのだと思われます」

 

「ぞ、臓器を造るって、そんな簡単に出来るわけ……」

 

「えぇ、ですからこの豆の存在は他言無用なのです。元々は俺が目指しているある技を完成させる為に、町の八百屋さんから買った枝豆。そこに俺の気を注入する事で、この様な“仙豆擬き”が生み出された」

 

ゴジータ─────後藤甚田が目指している技とは、ゴジータの代名詞と言われる“あの必殺技”の事である。邪悪なるモノだけを廃し、囚われたものを解き放つ浄化の神業。未だ完成には程遠い後藤甚田が、別視点から理解しようと半ば趣味で完成させたモノ、それが“仙豆擬き”である。

 

擬きである事から、本物の仙豆の様に完全に再生されている訳ではない。オリジナルなら四肢の欠損すら回復させる代物だが、あくまでこれはゴジータが自らの気を送ることで育てた謂わば別品種。

 

効果も効能も本家と比べれば微々たるモノだが、それでも常に重症状態のオールマイトには効果があった様だ。

 

「今の貴方の状態は悪い細胞を吐き出し、新しい細胞を造っている最中の筈、これから定期的にこの仙豆擬きを食べれば、全快には至らなくとも日常生活には困らない程度には回復出来る筈だ」

 

「────どうして、私に其所まで?」

 

 自分にこれ程まで親身になってくれるのか? 戸惑うオールマイトに今度はゴジータが不敵に笑う番だった。

 

「オールマイト、平和の象徴よ。アンタにはこれから俺を本物のNo.1ヒーローにして貰う為に色々と手を借りることになるだろう。これは、その前払いと思ってくれ」

 

「け、けれどこれは……余りにも破格すぎる! それに釣り合うモノなど、私には─────」

 

「おいおい、どうしたんだよNo.2。今さっきアンタは俺に言っただろ? 余計なお世話は、ヒーローの本質だと」

 

「ッ!?」

 

「俺は、【超】ヒーローのゴジータだ。アンタの理想には何一つ応えられないが………それでも、アンタから渡される重いバトンを受け取れる様なヒーローにはなってみせるつもりだ。それを見届けて貰うまで、宜しく頼むぜ、先輩」

 

 大胆不敵。生意気で、小癪で、それでいて力強いゴジータの言葉。差し出される掌に、愕然となりながらも、オールマイトも笑みを取り戻していく。

 

「────全く、生意気なヒーローだとは思っていたが此処までとは! してやられたよゴジータ! 良いぜ、その挑発に乗ってやろうじゃないか!」

 

煙が、八木俊典の身体から噴き出していく。細身の身体は太く頑強になっていき、垂れた前髪が再び天を衝く。

 

「改めて、君にチームアップを要請する! 応えてくれるだろ、No.1(後輩)!!」

 

「望むところだ。No.2(先輩)!!」

 

 No.1とNo.2。これが、天下無敵の最強チームが誕生した経緯である。

 

「……さて、じゃあ先ずは」

 

「ここの掃除から、始めよっか」

 

【超ヒーロー】と【平和の象徴】、二人のヒーローが組んで最初に行った仕事は………床一面にぶちまけられた吐血の処理だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソォッ! 何が新たなNo.1だ。何が【超ヒーロー】だっ!!」

 

 荒れる。炎が渦となり、周囲のトレーニングの機材を焼いて、家を荒らす程に燃え散らかしている。

 

嘗て、No.2と呼ばれた炎の男。その足下には紅白に別れた頭髪を持つ少年が横たわっていた。

 

「いつまで寝ているつもりだ! 立て! お前には奴等を超えねばならん使命があるんだぞ!」

 

「お父さん、もうやめてよ! これ以上は焦凍が死んじゃうよ!」

 

「うるさい黙れッ! お前は引っ込んでいろ!」

 

「姉ちゃん。俺は、大丈夫、だから……」

 

「止めて、焦凍も止めて!」

 

 男の怒号に女性の悲鳴にも似た叫びが、少年の耳を叩く。

 

目の前の男の事は普段から心底軽蔑しているが、最近は度を越して酷くなっていく。今此処で下手に反抗してしまったら、その矛先が姉に向けられると確信出来る程に、このNo.3ヒーローは正気を失っている。

 

耐えろ。今は兎に角耐えて、この男の矛先を自分に集中させるしかない。泣きじゃくる姉を守るために、顔に火傷を負っている少年は、疲弊した顔で猛り狂う男へ向かう。

 

その光景を見ている事しか出来ない姉は、ただ祈る事しか出来なかった。

 

“─────誰か、助けて!”

 

 

 

 

 

 

 





こんなのエンデヴァーじゃない! という人が多くいるかと思いますが……。

済まない。作者の初期エンデヴァーさんのイメージはこんな感じなんです。済まない。

でも、そんな轟さん家でも、原作同様に和解できる………筈!

尚、原作のアレって和解しているの? とか言ってはいけない。

特に意味の無いヒロイン予想レースだぜイェーー!!

  • 1.先輩ヒロインミルコ
  • 2.姉系ヒロインミッドナイト
  • 3.後輩ヒロインMtレディ
  • 4.不思議系ヒロインラグドール
  • 5.オールマイト
  • 6.エンデヴァー
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