超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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最近、推しの子がゲッター線に染まりつつあるとか。

この場合、どっちが凄いん?

そんな訳で初投稿です。



記録50

 

 

 

 ハイエンド。目の前の鉄の仮面を取り付けたヴィランが言うには、囲んでいた脳無はその何れもが精鋭と呼ばれる個体だった。

 

ベストジーニストも、ギャングオルカも、長年のヒーローとしての勘で理解していたし、ベテランヒーローである虎もまた察していた。

 

 一体一体が自分達では厳しい手強い怪物、その全てがたった一人のヒーローによって瞬殺された。保有していたであろう再生の余地すら残さず、跡形もなく弾け飛んだ光景に、ヒーロー側だけでなく救助された人々も、そして目の前のヴィランも固まって言葉を失っていた。

 

圧倒的。普段から人々はゴジータにその言葉を送っているが、最早その範疇にすら収まらない気がする。体のあちこちが傷付き、血を流していても、当のゴジータ本人は全く堪えた様子がない。

 

 立ち尽くすヴィラン、挑発的な煽りはナリを潜め、驚愕がその思考を埋め尽くしている。

 

「───どうした顔面工場、お得意の挑発は品切れか? 正直期待外れだが………タイミング的には申し分無い」

 

「ッ!?」

 

「私がァ、来たッ!!」

 

 次の瞬間、ゴジータの隣に何かが飛来する。砂埃を舞い散らしながら、瓦礫等は決して周囲に散らばらせたりしない絶妙な力加減、相変わらず上手いなと感心するゴジータの隣で、現No.2ヒーロー(オールマイト)は立ち上がる。

 

「済まない。待たせたなゴジータ、皆も!」

 

「いや、良いタイミングだぜオールマイト。そっちの方はどうした?」

 

「あぁ、情けないことに死柄木弔とワープ個性の黒霧、そして青い炎を操る荼毘、これら三名は突然現れた脳無のどさくさに紛れて逃がしてしまった」

 

「そっちも、中々に大変そうだな」

 

「あぁ、だが向こうは塚内君達が詰めている。彼等が捕まるのも時間の問題さ。…………さて」

 

 相変わらず人を安心させる笑みを浮かべるオールマイトだが、眼前のヴィランを見るとその笑みを消す。

 

「久しぶりだなオールフォーワン、まさか本当に生きていたとはね」

 

「───オールマイト、君もまだヒーローに固執しているのか。若い次代にNo.1の座を明け渡したのなら、いい加減引退すれば良いものを」

 

「HA!HA!HAァッ!! 言われなくてもそのつもりさ。やり残しさえ片付ければ、喜んで引退を受け入れよう」

 

 苦々しく吐き出す呪詛も、今のオールマイトには通用しない。過去の因縁から、己には決して軽くない恨み辛みを抱いている筈なのに、目の前のオールマイトからはその片鱗が微塵も窺えない。

 

寧ろ、自分の姿を見て余裕すら保っている。鉄仮面の男────AFOは、そんなオールマイトの様子に内心で苛立ちを募らせる。

 

「それに、貴様は一つ勘違いをしている。私はNo.1の座を譲ったのではない。彼が、自分の力で勝ち取った結果さ」

 

(望んで得たものではなかったけどな)

 

 不敵に笑うオールマイトに聞こえないようにゴジータは当時の感情を吐露する。しかし、嫌ではない。

 

「お前の言う通り、時代は進む。なら、私は大人しく次に託し、潔くヒーローから足を洗おう。……だがなAFO、それはお前と言うやり残しを片付けてからだ!」

 

「2対1だ、卑怯とは言うなよ? 最初に数の利をかけてきたのはテメェだ」

 

 救助された人々をベストジーニスト達に任せ、ゴジータとオールマイトは巨悪であるAFOに一歩ずつ進んでいく。並び立つNo.1とNo.2の、画面越しでメディアから流されるその光景にファンもそうでないものも期待に胸を膨らませた。

 

もう負ける気はしない。誰もがそう思う中……。

 

「───く、クックック」

 

 悪意は嘲笑する。

 

「「?」」

 

 笑っている。この追い詰められた状況で、嗤っていられるその精神性に二人のトップヒーローは僅かに困惑する。

 

追い詰められ過ぎて錯乱したか? いや違う。目の前の悪意の塊は自棄になって笑うなんて事はしないし、そもそもこの男は常に嗤っている。

 

何か隠しているのか、ゴジータが周辺に気を配り始めた時─────そいつは来た。

 

 突如飛来してくる謎の物体。黒に染まるそれはこれ迄ゴジータが瞬殺していた個体、ハイエンドと呼ばれるモノと酷似している。

 

しかし────。

 

(なんだ、この力は)

 

 砂塵の中から振り抜かれる拳を片手で受け止めながら、ゴジータは目を剥く。これ迄対峙してきたヴィランとは一線を画す力、片手で難なく抑えられる筈のそれは、ゴジータの予想に反してグングン強くなっていく。

 

「仮面の脳無、だと?」

 

 舞い散る煙の中から現れるのは、気味の悪い仮面を被った脳無。……いや、脳無にしては脳が剥き出しにされていないし、人としての規格もそこまで崩れていない。

 

なのに、出される出力の桁が違う。片手で抑えられる筈だった力の差は、しかして振り払われて瓦解する。

 

 再び振り抜かれる拳、崩された姿勢で防ぐのは無理だと、ゴジータは両手を交差して防御に入る。

 

 瞬間、激突された拳から凄まじい衝撃がゴジータを襲い、天下無敵のNo.1ヒーローは、空高く舞い上がってしまった。

 

「────なんだと?」

 

 宙に浮かび、空高く押し上げられたゴジータは仮面の脳無の力に瞠目する。

 

嘗て、此処まで力で圧されたのはゴジータの経験上記憶にない。イメージトレーニングではあっても、現実世界で初めて体験する力に、ゴジータは目を見開く。

 

これ程の力、下手をしなくてもオールマイト以上。いや、純粋な膂力を鑑みれば────。

 

「俺に迫る、か。不味いな……」

 

 自分に近しい強者との初めての戦闘、自身の経験の浅さに舌打ちするゴジータだが、言葉とは裏腹にその口元は微かに喜悦に歪んでいる。無意識レベルでの闘争への歓喜、本人には一切の自覚はなく、しかし確かな心の高揚に気持ちのモチベーションは徐々に高まっていく。

 

 下では自分が吹き飛ばされた事に動揺しているオールマイト、しかし流石は歴戦のヒーローだけあって直ぐに気持ちを立て直し、目の前のAFOへ肉薄している。

 

 救助された人達もベストジーニストやギャングオルカ達のお陰で避難していく。なら、こっちは自分の方で対処するとしよう。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!」

 

 声にならない雄叫びを吐き、脳無が迫る。一度の跳躍で此処まで到達できる辺り、本当に目の前の脳無は特別製なんだと思い知る。

 

再び振り抜かれる拳、しかし既にその動きを見切っていたゴジータは繰り出される拳を受け流し、返しの回し蹴りを仮面の脳無の首に叩き込む。

 

 並のヴィランが相手なら骨がへし折れる程の威力、しかし目の前の改造ヴィランはゴジータの一撃にビクともせず、獣のように首を横に激しく振っている。

 

耐久力も並外れている。なら、もう少しギアを上げようとゴジータが気を解放した瞬間……。

 

「カァッ!!」

 

「ッ!?」

 

 目の前の脳無はゴジータを真似るように、ゴジータ同様に気を解放してみせた。重力に逆らわず空中に佇んでいる事といい、これではまるで自分自身と戦っているみたいだ。

 

けど……。

 

「ガァァァァッ!!」

 

「成る程、確かに面白いな。此処まで俺を模倣しているなら、確かにあの余裕ぶりも窺える。けどな───」

 

 振り抜かれた脳無の拳を、再びゴジータは片手で掴み取る。脳無は…バカめ、このまま振り抜いてやると、さっきと同じ様に力で押し退けようとする。

 

が――動かない。掴み取られた右手は、まるで石化されたかのように動かない。なんだこれはと戸惑う脳無、対するゴジータは……。

 

「この程度で俺を殺れるって思うのは、ちょっと浅はかが過ぎたな」

 

空いた片手で眼の前の仮面脳無にストレートを叩き込む。やはりゴジータは違うと、メディアを通してお茶の間に映し出される光景に、人々は安堵して目を輝かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハ、流石はNo.1ヒーローだ。虎の子のS.ハイエンドが全く歯が立たないとはね」

 

 嗤う。悪意の源はただ笑う。楽しそうに、愉しそうに、目の前の猛るオールマイトを前にして全く感心を示さないその様は、さながら映画を前にした子供のよう。

 

「貴様は侮りすぎた。私の友を、No.1ヒーローを。お前の願いは叶わない。今度こそ此処で終わりにするぞ、AFO!」

 

「終わる? バカを言うなよオールマイト、此処からが面白いんじゃあないか。僕の友人がもたらした研究の成果、最強のコピーは果たして本物に届き得るのかってね」

 

 突撃してくるオールマイトをいなし、AFOは愉しげに笑う。

 

「何を訳の分からない事を!」

 

「なに、つい最近面白い物を手に入れてね。No.1ヒーローの血は、果たして脳無にどれ程の力をもたらしてくれるのか。僕の友人はそればかりを追求していてね」

 

 No.1ヒーローの血、その言葉を耳にした瞬間、オールマイトの中で嫌な予感が浮かび上がってくる。

 

「けど、困った事にゴジータの個性因子は並の器には収まらなくてね、どれだけ希釈して薄めても、用意した空っぽの脳無に入れては、素体ごと食い散らかしてしまったよ」

 

 まるで自由研究の成果を嬉々として話す子供のようだった。失敗と挫折を繰り返し、それでも辿り着いた一つの仮定。そこに辿り着いたAFOは鉄仮面の奥で口元を歪ませる。

 

「十数体の脳無が消滅した所で友は一つの仮説を立てた。脳無は元々死んでいた者、ゴジータの個性因子を受け付けられないのは、偏に器が死んでいるからではないのか? てさ」

 

「──────まさか」

 

「そう! 最初から死んでいる脳無でダメなら、生きているモノを使えばいい! 幸いなことに、友人の所には処分するのに困った出来損ないが多くあってね、結果は成功!! 彼は記念すべき適合者第一号って訳さ!」

 

悪意は謳う。

 

「さぁ、ゴジータ。No.1ヒーロー! 君は、可愛い弟妹達から父親を奪うことが出来るのかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────破片が舞う。キラキラと、音を立てて崩れるその仮面はまるでガラス細工の様に脆く、軽かった。

 

まるで防御面として機能していない。呆気に取られるゴジータだが、今までの動きを見て目の前の改造脳無の様子は見切っている。

 

 たとえ相手が何者だろうと倒す。それが、目の前の嘗て生きた人間だったとしても。

 

 そして……。

 

「──────」

 

 今度は、ゴジータの動きが静止した。

 

同時に、脳裏に浮かぶのは一緒に生活して間もない頃の弟妹達の事。

 

『父親に会いたくないかって? 別に、興味ねぇよ。俺達を捨てた親に。どうして今さら顔合わせなきゃいけないんだよ』

 

『………私の家族は、此処にいる皆だけだよ』

 

 どうして、二人の顔が浮かぶのか。どうして、目の前の改造脳無と重なるのか。

 

 瞬間、ゴジータの直感が囁き出す。目の前のヴィランは本当は脳無などではなく………。

 

『み………ゆ………き………』

 

 砕けた仮面の奥から、既視感のある顔が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────親父?」

 

 

 

 





次回、魂の解放





オマケ【少し先の未来】



「アクア、ルビー、お母さんお仕事に行くけど、大人しくしてるんだよー?」

「あーい」

「たーい!」

「あ、でも今日はあの人が来てくれるし、多少騒いでも大丈夫かな? じゃ、行ってきます!」

「────ママ行ったね」

「なんか、気になる事言ってたけど、今日は別の人が来てくれるのかな?」

「だとしても、私のオギャ力で分からせるまでよ、私の駄々っ子力は世界一ィィィィ!」

「悲しくないか? それ」

“ガチャ”

「おッ、来たな」

「速攻で分からせてあげる! 食らいなさい! 乳児ダッシュ!!」

「ん? なんだ、随分と威勢の良い赤ん坊だな。ハハハ」

「「───────」」

「伝わるかどうか分からんが一応言っておくか。オッス、オラゴジータ」

「「────ご、ゴジータだぁぁぁァッ!!??」」

「うわ、びっくりした」


プロフィール更新。

星乃アイ。

施設時代初期では良く一人でいる事が多く、心を閉ざしていたが、姫野葵の尽力によって心を開き、以降は城鐘兄妹や甚田にも普通に接する様になる。

アイがゴジータのファンになった切欠は初めてヴィラン退治を目撃した時。子連れの家族を余裕で守り通し、不敵な笑みを浮かべるゴジータを目の当たりにした瞬間、少女は沼に嵌まった。

そして、甚田や施設の皆と家族の様に過ごす内に彼女自身が家族を欲しがるようになり……。


「────ねぇゴジータ。私、まだ産めるよ?」

「アイ、冗談は止めろ。塚内さんも手錠を懐にしまって!! 顔こえーよ!!」


もしかしたらまた出る、かも?



「ッシャ!」
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