今週のヒロアカも色んな意味でヤバかったですね。
そんな訳で初投稿です。
その光景に、少年───爆豪勝己は自身の胸の裡に燃え滾る熱いモノが宿るのを感じた。
画面の向こうに映し出された光、小さかった光が瞬く間に大きくなっていく様子に、爆豪は拳を強く握り締めて眺めていた。
ボロボロになったNo.1、一度は心が折れ掛けたNo.2、どちらも爆豪にとって憧れであり、目標でもあった人物達。
そんな彼等が再び、人々の希望を背負って立ち上がる。並び立つ二人のヒーローに爆豪は自身の体が震えるのを感じた。
「────そうだよ、あんた達は何時だってそうだ………!」
どれだけピンチに陥っても、どれ程の窮地に落とされても、笑って乗り越える。勝つために立ち上がり、助けるために勝利する。その姿に、どうしても憧れてやまないからこそ。
「俺は───俺も、こんなヒーローに!」
なりたい。否、なってみせる。
爆豪勝己は今一度誓う。他の誰でもない、自分自身の魂に───。
◇
「─────行くぞ!」
駆ける。宙に浮かび、自分達を見下ろす悪意の塊を前に、二人のヒーローは走り出す。地を蹴り、音を置き去りにしながら、ゴジータとオールマイトは事の元凶であるAFOへと迫る。
不敵に笑いながら迫る二人、白と金の炎を纏う二人の迫力に圧されたAFOは無意識ながら息を呑み───激昂した。
「───ふざけるなよ」
それは、何に対する怒りか。絶望を簡単に飛び越えたゴジータに? 力を使い果たし、ただの木偶となったオールマイトの謎の復活に? 恐らくは両方。
わなわなと震え、この世の理不尽を嘆くような怒りで、AFOは叫んだ。
「こんな、こんなご都合主義な展開が、罷り通ってなるものか! お前達のやっていることは、世間への歪んだプロパガンダに他ならない!!」
「自分達の行いだけを善とするその意地汚さ! 傲慢だ。傲慢にも程があるだろ、えぇ!? ヒーロー!!」
「たとえ貴様がどれだけ言葉を吐き捨てようと!」
「此処に、お前の戯れ言を鵜呑みにする奴はいねぇよ」
挑発混じりの皮肉も、今の二人には通じない。そうしている間にも、白と金の炎は悪意のすぐそこへと迫り───。
「ッ!?!?」
その一撃を叩き込む。重なり合う蹴りの一撃。それはAFOには読めなかった一撃で、これ迄のオールマイトでは有り得なかった動き。
直線的で直情的、強力無比であるがそれ故に単純。以前のオールマイトなら、少しでもペースを乱せば容易く対応できるモノが、ゴジータという異物が紛れ込んだだけで全くの別物になっている。
長くNo.1の座に君臨していたオールマイト、平和の象徴と呼ばれた男は、その強さ故に並び立つ者がいなかった。
しかし、ゴジータが独りだったオールマイトの可能性を拡張してくれた。短い間のチームアップ、オールマイトと唯一肩を並べて戦った日々。その間、二人は互いを高める為に幾度となく組手をしてきた。
その回数は優に百を超える。互いに全力でこそなかったものの、真剣に取り組んだ事には変わりはない。動きの癖、挙動の緩急、手先の仕草に視線の誘導。
才能に溢れた者同士による化学反応は、オールマイトを更なる段階へと引き上げる。
────即ち、【気】の習得である。
【気】とはなにか、【気】とはどういった代物で、どの様な効果があるのか。至ったばかりの今のオールマイトでは【気】という概念をそこまで深く理解することは叶わない。
ただ一つだけ言えるのは、今の自分でも戦えるということ。それがたとえ、時間制限付きのモノだとしても。
「オオォォォォッ!!」
走る。地を蹴り、翔び、跳躍する。吹き飛ぶAFOに追随し、オールマイトの怒りの鉄拳が炸裂する。
「お、が、アぁぁぁッ!?」
そんな馬鹿なとAFOは憤る。何故自分が殴り飛ばされなければいけないのか、現在の状況の元凶を模索すると………やはり、彼に行き着いた。
(全部、全部! お前だ! ゴジータ!! お前が、全ての元凶!!)
オールマイトがゴジータと似た力を発現しているのも、オールマイトが予想より弱っていなかったのも、全てはゴジータが原因。ならばお前を始末してやると、指先から鋭く黒い触手を伸ばすが………。
「なんだこれ? 脆ッ」
当然のごとく、ゴジータはそれらを粉砕する。並みの硬度なら微塵切りも訳はない自身の爪がアメ細工の様に砕かれる様を見て、AFOは狼狽える。
(何がヒーローだ。化物め!)
確かにゴジータは見た目こそはボロボロだ。身体中から血を流し、服が上半身はだけた事でそのダメージの深刻さは素人目から見ても明らかだ。
しかし、それだけのダメージを受けて尚、ゴジータは平然としている。痛みがないのか、そもそもダメージになっていないのか、それとも………この程度の痛みは日常茶飯事だったのか。もしも最後のが正解だとすれば、目の前のヒーローは間違いなくイカれている。
(だったら、選択肢を増やしてあげよう!)
背中───脊柱から生える無数の黒い触手。指先だけでなく身体中至る所から生えるその姿は、異形よりも異形だった。
だが、次にAFOの気配が強くなるのを感じ取ったゴジータは奴の目的をいち早く看破する。自身を中心に集まるエネルギーが一つの方向に向けて収束されていく、それが離れた場所の町だとゴジータが察した瞬間、AFOの背中から巨大なプラズマ波が放出される。
「ッ!?」
「ハハハハ! 漸く表情を歪めたねオールマイト! そうさ、君はまた間違えた! 君の過ちで、まだ無関係な人が死に絶えるぞ!!」
遅れて気付いたオールマイトの顔が歪む。無関係の人間が巻き込まれる、それはヒーローである者であれば一番嫌う外道的行い。これでオールマイトの隙が生まれる。其処から崩してやろうとAFOの口元が歪んだ瞬間………。
「舐めんなよ」
光が迸る。輝き、瞬く間にプラズマ波を追い抜いたゴジータは、町に向けて放たれたプラズマ波を
粒子を蹴り上げるという不思議な光景に、AFOを含めた全員が目を見張る。物理的に有り得ない事象、物理学者なら発狂してしまいそうな事を平然とやってのけるゴジータに、オールマイトは笑みを浮かべた。
(あぁ、本当に、本当にスゴい奴だぜ君は)
今だから分かる。気という力に触れ、扱うようになったオールマイトは、ゴジータが普段から課していた枷に舌を巻く。
(もし、もし自分の考えが正しいのなら。ゴジータ、君は………)
「っ、それがどうした。此処で君達が僕を倒そうとも、訪れる未来は変わらない。オールマイト! 君はその力で、師の血を絶やす気かい!? 志村菜奈の孫を! 唯一の繋がりを!!」
「ッ!?」
瞬間、AFOの渾身の挑発がオールマイトの神経を逆撫でた。どの口が、溢れる怒りに思考が焼き付いた時、AFOの口元が喜悦に歪む。
此処だ。激昂するオールマイトが見せる特大の隙、せめてもの
狙うは心臓、どんなに奇跡が起きても確実にヒーローの命をここで断つ。悪意と殺意に乗せられたAFOの黒い一撃は……。
「させねぇよ」
「ッ!?」
「さっきからごちゃごちゃと、狙いがバレバレなんだよ、お前」
しかして、薙ぎ払うゴジータの拳によって砕かれる。
「ご、ゴジィィィタァァァァッ!!!」
ここでも、どこでも、何一つとして自分の思い通りにならない事に、遂にAFO は憤怒に満ちた怒声を発した。今のオールマイトを殺れた千載一遇のチャンス、それが、さも当然の様に潰された事実にAFO の余裕は完全に消し飛んだ。
「───ゴジータ」
(あぁゴジータ、やっぱり君は………)
凄い奴だ。頼もしい後輩の背中に、オールマイトは自分の迂闊さに恥ずかしくなりながら、同時に頼もしく思えた。
目の前のヒーローは、文字通り全てを守れる。人も、ヒーローも、ヴィランさえも。
例えそれが、
そう、オールマイトも薄々感づいていた―普段から振るわれる彼の力は…ほんの一部に過ぎないという事に。【気】という力の一端に触れたことでその事実に気付いたオールマイトは、たとえ制限された環境の中でも、それでも人々の為に立ち上がってくれる彼に、申し訳なく思うと同時に、嬉しさを覚えた。
「───オールマイト」
「っ!」
「アンタが決めろ、俺が合わせてやる」
そう言って振り返り、不敵に笑いながら口にするゴジータにオールマイトもまた不敵に笑った。
「全く、本当に生意気なヒーローだよ、君は!」
「そいつは重畳、………さぁ、行くぞ。気を解放しろ!!」
力を爆発させる。ゴジータに言われた通り、全身から噴き出す力の奔流を最大限に解放してAFO に吶喊する。空を駆ける白と金の流星、AFOは自身の持てる全ての個性を使って迎え撃つも……。
その悉くが砕かれる。拳で、蹴りで、技で。人が織り成す人の力で、AFOの奪って来たモノを打ち砕いていく。
「これで終わりだ! AFO!!」
「オールマイトぉッ!! ゴジータァッ!!」
高まり、折り合い、重なる力。怨嗟の声をあげる悪意の塊に、振り下ろされるのはヒーローの拳。
「「
「「デトロイトォォォ───SMAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA SH!!!」」
繰り出される拳の一撃を前に、AFOは最後の賭けに出る。
“筋骨発条化”
“瞬発力×2”
“膂力増強×3”
“増殖” “肥大化” “鋲”
“エアウォーク” “槍骨”
他にもプラズマ化や巨大化等の無数を掛け合わせ、巨大な握り拳を作り上げる。大きな、見上げる程の巨大な肉の塊を前に。
二人のヒーローは不敵に笑う。
瞬間、ぶつかり合う力が衝撃波を生み出し、周囲の雲を吹き飛ばしていく。嵐となり吹き荒れる衝撃の暴風、他のヒーロー達では決して割って入れない光景を前に……。
「─────あぁ」
立ち消え間近の炎を身に纏うNo.3が、焦がれる様に見つめていた。
均衡は一瞬、勝利したのは────。
「更に───」
「向こうへッ!!」
やはりこの二人。弾き飛ばし、無防備になったAFOに迫るのは力を解放した二人のヒーローの握り拳。
「「Plus────Ultra!!!」」
解き放たれた一撃は、確かにAFOを捉えて。
次の瞬間。衝撃が、地球を一周した。
◇
「────一体、何が起きたのでしょう。常人でしかない我々では、状況の推移に頭が付いていきません」
神野区で起きた出来事、それら全てを理解するのに、なにも知らない人々は多くの時間を費やす事になるだろう。
多くの疑問、疑念が積み重なっている現状。しかしそれでも、一つだけ、たった一つの揺るがない事実があった。
「しかし、それでも確かな事実が此処に。巨悪は倒された。二人の偉大なるヒーローに!!」
ヘリに乗る女性レポーターは声を張り上げる。
「勝ったのは、ゴジータ&オールマイト!!」
陥没した大地。その中心に佇む二人のヒーロー、それぞれの拳を天高く掲げ、立ち尽くすその姿は勝利のスタンディング。
二人の姿が全国に映し出されると、日本全土から歓声の声が上がる。ボロボロになりながらも、しかしそれでも揺るがずに聳え立つ二人のヒーロー。
朝日が昇る。漸く訪れる夜の終わり、それでも人々の歓声は止むことはなく、万雷の喝采は鳴り続ける。
(……なぁ、オールマイト。これいつまでやんなきゃいけないの?)
(……わ、分かんない)
一方、素に戻った二人はやめ時をすっかり見失っていましたとさ。
次回は事後処理の話。
オマケ。
いつか、あり得たかもしれない未来。
「私、ゴジータのお嫁さんになる! アイドルになって、ゴジータと結婚するんだ!!」
「ん? あぁ、いいぞ。お前が大人になる前に、No.1アイドルになったら考えてやる」
「わーい! 約束だからね!」
「ちょ、良いのかよ甚兄」
「なぁに、あの歳の子が言うことだ。直ぐに忘れちまうよ。それに、アイならきっとすぐに俺なんかより良い男を見付けられるさ」
「いや、そうじゃなくて……」
「なんだよ……あ、アイドルの方か? そっちも心配いらねぇよ。アイの入る事務所は業界では新参らしいけど、全うな会社だ。アイの事を全面的にバックアップしてくれるし、万が一ヤバくなったらすぐに俺に連絡するよう言い含めてある」
「そういう事でもないんだけど………あぁもう、なんでもいいや」
「ん? 変なことを言う奴だな」
○年後に(社会的に死ぬ)ゴジータ、開幕。
「───ハイッ全て嘘です!」