超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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水星の魔女、怒涛の展開に目を回そう。

そんな訳で初投稿です。


記録53

 

 

 

 神野区での激闘から一夜明け、多くのヒーローが自衛隊らと共に瓦礫撤去などの作業に勤しんでいる中、今回の戦いで傷付いたヒーローは近くの大手病院へと搬送されていた。

 

 個性社会の歴史を紐解いても希に見る大規模な戦闘、二大巨頭のヒーローの活躍に、世の市民達は未だに興奮が覚めないでいる中。

 

「ムグムグ、すんませーんカツ丼の御代わりくださーい」

 

 当事者の一人であるゴジータは、呑気に病院の食堂で丼ものを頬張っていた。机には大量の空の丼が乗っている。

 

「────君は、オールマイト以上に負傷していたと記憶していたが?」

 

 搬送されたヒーローの中でも、比較的軽傷なベストジーニストは目の前のNo.1ヒーローに呆れていた。あれだけの傷を負いながら、まるで堪えていない様子のゴジータ。

 

 身体中にあった傷も既に塞がっていて、あるのは申し訳程度に巻かれた包帯だけ、身に纏う入院者特有の病衣も格別に似合っていなかった。

 

「んあ? ンなもん此処に来た時点で塞がってるっつーの、本当なら俺も瓦礫の撤去作業を手伝いたかったけど、オールマイトが入院する手前、我慢しただけさ」

 

「やれやれ、世の医学に正面から喧嘩を売ってるな、君は」

 

 フーンとそっぽを向くNo.1ヒーローにベストジーニストは苦笑いする。No.1ヒーローが重傷と聞いて、急ぎ諸々の準備をしてきたのに、入院する必要もない程の回復ぶりに医師がエ◯ル顔を晒したのは記憶に新しい。

 

とは言え、ゴジータがダメージを負っていたのは事実、世間の事も考え、今日一日位は大人しく入院しているつもりだとゴジータは言う。神野区の瓦礫撤去の手伝いはその後とも。厨房から御代わりのカツ丼が出来たことを確認すると、ゴジータはウキウキとそれを取りに行く。

 

「俺よりもそっちはどうなんだよ、Mt.レディが庇ってたみたいだけど、ギャングオルカもアンタも結構やられてたみたいだけど?」

 

「あぁ、君の言う通り、Mt.レディが庇ってくれたお陰で大事には至らなかったよ。復帰にはある程度のリハビリを要するが………なに、すぐに前線に戻ってみせるさ」

 

 因みに、Mt.レディも気絶したりしているが、怪我自体は大した事はなく、数日中には退院も可能だという。

 

「頼むぜ、アンタ達ベテランはいるだけで若輩達の支えになる」

 

「やれやれ、No.1ヒーローに言われては、おちおち休んでもいられないな」

 

「嘘つけ、そんなつもりなんてないくせに」

 

 やれやれと肩を竦めるベストジーニストにゴジータは笑みを浮かべて指摘する。その通りなのか、指摘を受けたベストジーニストは不敵な笑みを浮かべた。

 

「───さて、そろそろ時間か」

 

 何杯目か分からないカツ丼を平らげ、ゴジータは席を立つ。

 

「ん? あぁ、例の男性の………もう面会が?」

 

「形式上は、だけどな。そろそろアイツ等が来る頃だろうし、俺はもう行くよ」

 

 これから向かう先、それが誰の面会なのか何となく察したベストジーニストは食堂から去るゴジータに一声掛ける。

 

「ゴジータ」

 

「ん?」

 

「君は、君のベストを尽くした。今回の件は恐らく我々が考えられる中でも最高の結果だ。だから────あまり、気負うなよ」

 

 それは先輩ヒーローとしての助言。気を遣ったベストジーニストにゴジータは笑みを浮かべ、ヒラヒラと手を振りながら食堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピッ、ピッ、心電図の音が辺りに響き、病室に浸透していく。ゴジータの不思議な技によって変えられていた姿を取り戻したその男性は、個室の病室にて今もなお眠りに就いていた。

 

「───────」

 

 死んでいるように眠る男性、そんな彼のすぐ側で男性の面影がある少年が椅子に座って黙って見ていた。

 

 ゴジータとオールマイトが例のヴィランを倒してから数時間、秘密裏にゴジータから塚内へ男性の身元の情報を提示すると、塚内はすぐさまゴジータの家へと直行し、代表者を一人決めて病院へと連れてきて貰っていた。

 

本当なら保護者である姫野葵も付いていこうかと思ったが、それは代表者である御幸が固辞した。

 

 ヴィランに変わり果てた父を見られたくなかったのか、ヴィランとなって兄と殺し合いをした父を見た自分の様子を見られたくなかったのか、眠る実父を前にして恨み言の一つや二つあった筈なのに、今はもう、なにも考えられなかった。

 

「よう、なんだ。御幸一人なのか? 先生や恵ちゃんは連れてこなかったのか?」

 

 そんな御幸の耳に聞きなれた声が聞こえる。振り返る事なく「あぁ」と返事をすると、声の主であるゴジータは遠慮なしに御幸の隣にあるもう一つの椅子にドカッと座り込んだ。

 

「医者の先生の見立てでは、これといった異常はないらしい。予想では、精神的なモノが原因とのことだ」

 

目の前の男性は外見上目立った傷はない。骨や骨格などから異常は見当たらず、内臓も僅かな薬物反応が出ただけ。その薬物も人体に影響の無い物質だと知らされ、担当された医者からは健康体のお墨付きを貰った程だ。

 

 しかし、現に男性────御幸と恵の父親は目を覚まさない。医者からは体験、或いは経験から来るストレス障害の一種なのではないかと推測された。

 

ゴジータはその可能性を否定できなかった。間近で対峙し、戦ったあの時の白鐘父の様子は明らかに普通ではなかったし、その肉体も外側から弄られたモノでもあった。

 

 AFOという悪意に捕まり、文字通り身も心も変えられてしまったのだろう。そうされた経験も想像を絶するし、体験した記憶も一因となっているのであれば、二人の父親が昏睡状態なのも頷くしかない。

 

如何にゴジータが奇跡を起こしても、起きてしまった出来事そのものを消すことは出来ない。それは他ならぬゴジータ自身が分かっていた事だ。

 

「────俺さ、親父の事、嫌いだったんだ。母だった人には裏切られ、なのに未練がましく情を捨てきれず、遂には俺達兄妹を捨てて何処かへ消えちまってた」

 

「─────」

 

「それで、今になって化け物になって現れて、甚兄と戦って……もう、なにがなんだか分からなかった」

 

 それは、弟分の心からの吐露。小さく、ポツポツと紡がれる言葉は、彼の心の底からの本音だった。我慢強く、頑固な弟分。そんな彼の初めて溢す泣き言をゴジータは黙って聞いていた。

 

「今更、この男を受け入れる事なんて出来やしないよ。どれだけ言葉を並べても、俺達を捨てた事実は変わらない。こいつら夫婦の所為で、俺と恵がどれだけの思いをしてきたと思う」

 

「………そうだな」

 

「でも、でもな甚兄、こんな嫌な男なのに、こんなに憎いと思っているのに………生きていて良かったと、思っている自分がいるんだ」

 

 優しい男だ。初めて会ったときから変わらない弟分の不器用な優しさに甚田は笑みを浮かべた。

 

 憎いのも本当だろう、嫌いなのも本当だろう、それでも父親である彼が生きていた事を、喜んでいられる自分がいると、そう語る御幸に後藤甚田は嬉しく思った。

 

ポロポロと涙を流す御幸、そんな弟分の頭を甚田はガシガシと乱暴に撫で回す。

 

「それでいい。無理に受け入れようとするな。今は、自分の気持ちを優先しろ。なぁに、これから時間は幾らでもあるんだ。じっくりと自分の言いたいこと、ぶつけたい気持ちを今の内に整理しておけ」

 

「────うん」

 

 その日、幾分か気分が晴れた様子の御幸は病院内での電話で妹と話し合い、今後の見舞いの有無を検討する事を甚田に告げると、迎えに来てくれた塚内に甚田の家まで送って貰う運びとなった。

 

 車に乗って病院を後にする御幸を見送り、自身も病室へ戻ろうとする。そんな甚田の下へ、通知の報せが届いた。

 

誰から? 不思議に思った甚田は携帯の画面にはNo.2であり自身の元相棒、オールマイトの実名が表示されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───やぁ、来てくれたね。ゴジータ」

 

 とある浜辺。そこは嘗て不法投棄されたゴミで溢れ、一人の少年の手によって綺麗にされた公園。あれから近隣住民達の協力もあって、今もその景観は保たれていた。

 

そんな浜辺の中心、水平線を一望できる場所にオールマイトはいた。

 

「良いのかよ、怪我人が病院から抜け出して。後から医者の先生から叱られても知らねぇぞ」

 

「ハハハ、その事なら既に私から話を通しておいたよ。かなり渋い顔をされたけど、君と一緒という理由で、何とか外出の許可を得られたよ」

 

「え? なにそれ初耳、俺ダシにされた?」

 

 笑いながらゴメンゴメンと謝罪してくるオールマイト、久し振りの相方との軽口にゴジータもまた笑みが溢れた。

 

そうしてさざ波立つ浜辺を歩きながら駄弁ること数分、バディ時代の活動を肴に談笑し続けていると、オールマイトから話を切り出された。

 

「ゴジータ、今回の戦いで私は個性を使いきってしまった。もう二度と、私はオールマイト………平和の象徴として戦うことは出来ないだろう」

 

「……………」

 

 告げられるのは、一つの事実。AFOという長年の宿敵を打ち倒し、一つの時代を終わらせたと確信しているオールマイトは淡々とした口振りでその事を告げる。

 

「けれど、奴は……AFOは、最後に私に呪いを掛けた」

 

「呪い?」

 

「あぁ、奴が後継として育てていた死柄木弔、彼の本名は志村転弧。お師匠の………私の前の代の継承者の血縁にあたる者だ」

 

「─────そういうことか」

 

 あの時、柄にもなく膝を折りかけていたオールマイトの姿の訳を、ゴジータは何となく理解した。オールマイトの言う先代、志村奈菜はAFOとの戦いで命を落としたと言う。

 

 オールマイトにとっての恩師、或いはそれ以上の存在とされる彼女は、苦渋の決断で実子と訣別し、我が子を戦いから遠ざけた。なのに、巡り巡って孫である志村転弧はAFOの後継者として見初められてしまっている。

 

その事実はオールマイトにとって重すぎる真実であり、志村奈菜にとっても報われない話である。

 

 ………恐らく、オールマイトは死柄木弔とは戦えない。恩師の血族を自らの手で断ち切るには、オールマイトは優しすぎる。

 

「分かった。死柄木弔は俺に任せろ」

 

「─────済まない」

 

 そんなつもりは決してなかった。けれど、結果的に彼の了承の言葉で救われたオールマイトは頭を下げることしか出来なかった。

 

「止せよ。相棒に頭を下げられるのは流石の俺も寝覚めが悪い。それに、平和の象徴として戦うことは出来なくても、オールマイトとして出来ることはまだあるだろ?」

 

「それは………うん、そうだね」

 

 恐らく、既にオールマイトの中では一つの決意が定まっているのだろう。

 

「幸い、今回ヒーロー側には目立った損害はない。俺が作る仙豆擬きももうすぐまとまった数が出来上がるし、一週間以内にはベストジーニストもギャングオルカ、Mt.レディも復帰できるさ」

 

「ハハハ、また公安の人達が渋い顔しそうだね」

 

「今後の日本の進退/盛衰が懸かっているんだ。多少の胃痛くらい抱えて貰うさ」

 

 ハハハと、オールマイトと再び笑い合う。

 

憂いもある。後悔もある。無念も、悔しさも残るオールマイトの胸中を、全てゴジータが引き受ける事を決め、オールマイトも託す事を決めた。

 

だから、自分は一度前線を退くのだ。自分の中に芽生えつつある、新しい力を完全にモノにする為に………。

 

「ゴジータ、手を」

 

「ん?」

 

 差し出される手を、軽く叩く。パンッと乾いた音が小さく鳴る、一体なんのつもりなのか、オールマイトの意図を図りかねていたゴジータはキョトンと目を丸くさせると……。

 

「バトンタッチさ、後の事は────任せたよ」

 

「──────」

 

 その一言に、ゴジータは目を大きく見開いた。嘗てNo.1ヒーローとして君臨し、長い間日本の平和を守り続けてきた平和の象徴。

 

自分の先達であり、偉大なヒーロー。幾度となく人々の危機を救い続けてきた男からのバトンを受け取ったゴジータは………。

 

「………あぁ、任せろ」

 

 そのバトンを手放さないように、強く、握り締めた。

 

 

 

 

 

────朝日が二人を照らし出す。笑い合い、託し託された両者はこの日、一つの時代が迎えた終わり、そして新たな時代の到来を予見させた。

 

即ち、オールマイトの実質的な引退。

 

 翌日テレビの前に現れるオールマイトは、引退を口にする。多くの人々が引退を惜しむ中、オールマイトは一言言葉を紡いだ。

 

『───次は、君の番だ』

 

不敵に、大々的に告げるその一言はヴィラン達に恐怖を、民衆に期待を抱かせて、オールマイトは壇上から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 





はい、そんな訳でオールマイト引退の巻でした。

平和の象徴という柱が失くして、果たして日本社会はどうなるのか。

ヴィラン犯罪に対して、ヒーローは抑止力足り得るのか。

次回、必殺技

「名付けて、とある雄英の超電磁砲」

「う、うぇぇぇい?」

「か、上鳴くぅぅんっ!?」




オマケQ&A

Q.ゴジータの学生時代の同級生って、どんな人達がいたの?

A.腕を伸ばしたり、体から湯気だしたり、最終的には白くなったりする奴とか、護る事を信条に黒い斬撃飛ばす奴とか、◯影を目指しているという自称忍者とか、無下限を操る自称術師とか、個性豊かな同級生がいる予定でした。



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