超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

56 / 106

モンハンが面白くて未だにゼルダ進めていない……。

そんな訳で初投稿です。


記録56

 

 

 

 その日、轟冬美は帰路に就いていた。念願の教師としての日々、大変ながらも充実した毎日を過ごしてきた彼女は、今日も生徒達との授業を終えて一人家族の為に料理の買い出しを行っていた。

 

「やばいやばい、急がないとお父さん達がお腹を空かせちゃう!」

 

 色々と問題の多い轟家。過去の出来事から崩壊しかけている家族を、必死に繋ぎ止めてきた彼女。その献身さ故に二人の弟から感謝されている冬美は、今日も家族の為にその自慢の料理を振る舞う。

 

(────でも、お父さんもすっかり大人しくなったよね。お陰で二人もここ最近食卓に良く顔を出すようになったけど……)

 

 思い返すのは、あれ程オールマイトやNo.1ヒーローの座に固執していた父が、今はすっかり塞ぎ込んでしまっている姿。現No.1ヒーローであるゴジータを生意気な小僧だと一蹴し、活躍の場面がテレビに映る度に激昂する姿は今も記憶に新しい。

 

そんな父が、神野での一件以来から別人のように大人しくなっている。オールマイトの引退記者会見も、抗議する事なく受け入れてしまっている。

 

項垂れ、ただ静かにテレビを眺めている父を、弟である夏雄はザマァ見ろと罵り、もう一人の弟である焦凍はその背中を見ている。

 

 以前のような苛烈さが鳴りを潜め、焦凍に対して過剰なまでの訓練の強制が無くなったのも冬美は嬉しく思うが、同時に妙な危機感も感じていた。

 

今の父は、もしかしたら折れてしまったかも知れない。日々のヒーロー活動も以前より消極的になったと聞くし、もしかしたら父もまた引退を考えているかもしれない。

 

 No.1ヒーローに固執し、執着し、個性婚というやり方に手を出してまで求めていた男。そんな父がヒーロー界からの引退を考えている………かもしれない。

 

有り得ないと冬美自身も思うが、最近の父の落ち込み具合は酷い。だからせめて美味しいものを食べて元気になって欲しいと願いを抱いて、轟冬美は買い物を済ませ、家族のいる家へ向かう。

 

と、そんな時だ。

 

「く、来るんじゃねぇ!!」

 

「ッ!?」

 

 突然、大きな腕が自身の首回りに巻き付く。咄嗟の出来事で何も抵抗出来なかった冬美は、驚きのまま見上げると、恐ろしく顔を歪めた巨人が、自分を掴み上げていた。

 

後からやって来たのは複数のヒーロー達、その多くは父の事務所に在籍しているサイドキックであり、中にはバーニンという見知ったヒーローも其処にいた。

 

「へっへっへ、最近エンデヴァーのクソ野郎がヒヨっているって噂は本当だったか。思っていたよりやり易かったぜ、オラ! 道を開けろヒーローども! 大事な人質ちゃんが死んじまうだろうがァっ!!」

 

「っ、の野郎!!」

 

「よせ! 挑発に乗るんじゃない!!」

 

 ヴィランの挑発に乗ろうとする若手のヒーローを、バーニンが抑える。人質になっているのはエンデヴァーの娘である冬美、その事にいち早く気付いたバーニンはヴィランに気取られないように立ち振る舞う。

 

「あ、あぁぁぁっ!」

 

 しかし、その間にも万力で締め上げられる様な圧迫感が冬美を襲う。加減知らずのヴィランが、このままでは冬美を絞め殺してしまう。

 

 急ぎ救出せねばならないこの緊急事態に、エンデヴァーは何をしているのか。遠巻きに眺めている人々の口から溢れるエンデヴァーへの不信感の声がバーニン達サイドキックの焦燥感を煽る。

 

不味い、そう思っても目の前の状況がバーニン達に二の足を踏ませてしまっている。これ迄の自分達なら犯さなかった失態、エンデヴァーという柱の一つの衰退がこの状況を生み出してしまった。

 

 なら、自分達で何とかするしかない。エンデヴァーを支えるサイドキックとして、ヒーローとして、人質の救出とヴィランの制圧に動こうとした時。

 

「おらよ」

 

「ブッパッ!?」

 

 横から現れた黄金の炎が、巨大なヴィランの横っ面を蹴り上げた。

 

 あまりの衝撃に頬は砕かれ、脳を揺さぶられた巨大ヴィランは失神。その際に、手放された冬美は空高く放り投げられる。

 

突然の解放感、次いでの浮遊と落下。二転三転する状況の変化に唖然となるも。

 

 体を包み込む確りとした感触と人の温かさが冬美を現実へと引き戻す。

 

 ヴィランに捕まる時とは違う安堵感。温かくも頑丈な揺り篭に包まれるかのような感覚、今度は何だと見上げると………。

 

「─────」

 

 黄金の炎を纏った、金髪碧眼の男………No.1のご尊顔が其処にあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒーロー委員会からの依頼を受けて早数日。雄英、士傑と続き、今日もゴジータは仮免試験を受ける生徒達に対して指導を行っていた。

 

 何れも豊かな個性を持ち、様々な使い道が予想される将来有望なヒーローの卵達。多少の疲労を感じながらも、後藤甚田は満足そうに帰路に就いていた。

 

 昨日まで家に住んで貰っていた施設の皆も、既に星の都へ戻っている。一部の子供達は帰るのを渋ったが、最終的には兄貴分である甚田の説得の下、渋々と元の日常へ帰っていった。

 

寂しくなった我が家、今度オールマイトでも夕飯に誘うかと考えていた時、ふと視界に暴れるヴィランの姿を目撃した。

 

 神野の戦いから今日まで、目立ったヴィラン犯罪がなかっただけにその光景はいっそ懐かしくすら見えた。自分とオールマイトのあの戦いを目にしながら、それでも暴れようとする巨大ヴィランにある種の感心を抱きながら、後藤甚田ことゴジータはその場から急降下をして、件のヴィランを蹴り上げた。

 

 一撃で意識を刈り取られたヴィランは、手にしていた人質を手放した。無視するわけにも行かず、ヴィランの確保より人質の安全を優先したゴジータは、迷うことなく人質の体を抱き留める。

 

 所謂お姫様だっこ。人質の負担を考慮して咄嗟の抱き抱えだが、どうやら何ともないらしい。混乱しながらも、元気な様子の女性に安堵していると………ふと、ゴジータは既視感を覚えた。

 

自身の腕の中の女性。

 

───あれは確か、降り頻る雨の日だった筈。諸々の事情を抱え、一時は個性すら使えなくなった頃、学園からの退学すら頭に浮かんでいた自分に、涙混じりで訴えてきた女性。

 

仮令(たとえ)貴方が何者だろうと、貴方は貴方じゃないですか!!』

 

「────アンタは」

 

 久し振りの邂逅。突然の出来事で、会えるとは思えなかった筈の人。奇妙な縁に流石のゴジータも戸惑うなか、視界の端でエンデヴァーが滑り落ちていくのが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ど、どうぞ、大したモノではないですが」

 

「あ、いえ、どうもありがとうございます」

 

 場所は変わって轟邸。あの後、確保したヴィランを警察に預けたゴジータは、女性────轟冬美の身柄を安全な場所まで送ろうとしていた。

 

本来ならこの地区を担当しているエンデヴァーに預けたい所だが、何やら当の本人は憔悴しており、バーニン達サイドキックから頼まれた事もあり、ゴジータは彼女の案内の下、彼女の実家へと訪れていた。

 

 本当は送り届けた後すぐに帰るつもりだったのだが、どういう訳か引き留められ、仕事終わりの空腹時だった事もあり、腹の音を聞かれたゴジータは意外と押しの強い冬美に誘われ、助けて貰った礼として夕飯をご馳走して貰う事になった。

 

※因みに、現在のゴジータはヒーロースーツではなく、予め用意していた年相応の私服に着替えている。

 

 それで、用意して貰った肉じゃがに箸を通し、一口頬張ると………。

 

「────うまい」

 

「ほ、本当? お世辞とかじゃない?」

 

「いや、マジで美味しいですよ。下味もちゃんとしてて、出汁も具材に浸透している。結構手間暇掛けてるんじゃないですか?」

 

「えへへ、うん。私って料理位しか得意なことないから、せめて家族には美味しいものを食べて貰おうと思って……」

 

「そうッスか……」

 

「「────」」

 

 気まずい。冬美は兎も角、体育祭の時結果的に盗み聞きしてしまい嘗ての轟家の家庭事情を知ってしまったゴジータは、ニコニコと笑みを浮かべながら料理を出してくれる冬美になんと声を掛ければいいか分からなかった。

 

 献身的で優しい姉、きっと他の兄弟達からは懐かれているのだろう。端から見れば母を除いて円満な家庭にも見えなくもない………表向きには。

 

(て言うか、エンデヴァーの娘さんだったんかい! 他にも兄弟が二人もいるとか、エンデヴァーとその奥さんハッスルし過ぎじゃない!?)

 

 諸々気になる所はあったが、一先ず目の前の料理を楽しむことにした。既に事務所には話を通しているし、どうせこのまま家に帰るだけ。ジェントルとラブラバも今日は一日暇を出しているから、今頃街の何処かでのんびりしているのだろう。

 

 誰もいない家に帰るのは少し憚れるから、軽い気持ちで誘いを受けたのに、何だか少し後悔し始める甚田だった。

 

 対して、誘った本人はというと……。

 

(なにやってるのなにやってるのなにやってるの私ィッ!? 何でNo.1ヒーローを食事に誘ってるの!? て言うか男! 家族以外の男の人を誘うとか、色々軽すぎない私!?)

 

 ある意味で甚田よりもいっぱいいっぱいになっていた。久方振りにあった顔馴染み、互いに名前も知らず、何を目的としているか分からない。

 

 ただあの日、ボロボロだった彼を見ていられなかった。周囲を気にも留めず、一心不乱に、苦しそうに踠く彼の姿が嘗ての兄(・・・・)と重なって見えてしまった。

 

だから、余計なお節介だと分かっていても、放っておくことが出来なかった。

 

(じゃ、じゃああれよ! あの時の君がNo.1ヒーローになったから、遅めのお祝いとか、そんな感じで行けばOKの筈よ、うん!)

 

 OKではない。名前も知らなかった相手を家に誘っている時点で、色々とアウトである。

 

(て言うか、何で夏くんは居なくなっちゃうかなぁ! お邪魔虫は退散とか、そんな事頼んでないのに!)

 

 家に帰る前、事前に弟である夏雄に連絡した所、自分の安全を知った弟は安堵し、無事だった姉に喜んだ。

 

 かと思えば、これから助けて貰ったお礼に料理を振る舞いたいから、夏雄にも手伝って欲しいと伝えると、普段は聞き分けの良い弟がどういう訳か拒否してきた。

 

 しかもその声色は何処か軽く、その口振りは電話の向こうでニヤニヤと笑う姿を幻視する程。

 

「遂に姉ちゃんにも春が来たか」なんて軽口を最後に通話を切る夏雄に怒りが込み上げるも、一先ず冬美は一人で甚田をもてなす事にした。

 

 そんな事もあり、可能な限り意識しないように気を付けながら、自分の料理を食べる甚田を見る。

 

(こうしてみると、普通の男の子なんだよなぁ)

 

 ヴィランと戦っている時は怖い程カッコいい癖に、平時は嘘みたいに穏やかだ。人の為に戦い、人の為に守る。そんな次世代のNo.1ヒーローの食事風景を冬美はポーッと眺めていた。

 

「あの、なにか?」

 

「え? あ、うぅん! 何でもない! ごめんね、ジロジロ見ちゃって!」

 

 流石に見すぎだったなと、反省しながら謝罪する冬美を、甚田は然程気にした様子もなく受け流す。しかし、それでも何だか気になったのか、会話を繋げる意味を込めて冬美は口を開いていた。

 

「……本当、懐かしいね。あの時の君が今ではNo.1ヒーローか。何だか感慨深いや」

 

「………その節は、お見苦しい所を見せてしまい申し訳ありません」

 

「あぁいや違うの! 別に責めている訳じゃないの。本当に、嬉しかったの。あの時の君は何だか苦しそうで、私が勝手にお節介をしただけだから」

 

「─────」

 

「でも、そんな君が今ではNo.1ヒーローになって、多くの人達を救っている。それがなんだか……とても誇らしく思っちゃうの」

 

「……冬美さん」

 

「あ、あはは、なに言ってるんだろうね私。自分の手柄みたいに言って、図々しいよね。ごめん、本当にごめんなさい」

 

 本当に図々しい。まるで当時の彼を救ったのは自分のように語るその口振りが、冬美自身を嫌悪にさせた。戦い、救ってきたのは目の前の甚田なのに、まるでそうなったのが自分のお陰のように語る。図々しさに冬美は激しく自己嫌悪した。

 

「───今の俺が在るのは、他ならない俺自身の積み重ねです。誰か一人のお陰とか、そう言うんじゃない」

 

「………うん」

 

「でも、その積み重ねてきたモノの中には貴方の事も含まれている。あの頃、周囲も自分すらも見えてなかった俺には、貴方の言葉はとても衝撃的だった」

 

「────え?」

 

「ありがとう、冬美さん。今の俺の中にはあの時の貴方の言葉も刻まれているよ。それに、余計なお節介はヒーローの本質、あの時の冬美さんは俺にとって間違いなくヒーローだったよ」

 

「─────あ」

 

 何様だと、そう思える程に傲慢な自分の言葉を、目の前のヒーローは笑って受け入れてくれた。その笑顔に、轟冬美の思考は固まり………。

 

「それじゃあ、俺はもう行きます。夕飯、ご馳走でした」

 

「ま、待って!」

 

「?」

 

 気付けば、立ち上がって去ろうとする彼の手を握り締めていた。

 

 大きい。ゴツゴツして、硬くて、それでも暖かい温もりのある手。父や弟達とは似ているけど違う、異性の初めての温もりに、冬美の顔は赤くなる。

 

「冬美さん?」

 

「…………敬語」

 

「はい?」

 

「敬語! 次会うときは敬語とか要らないから! 他の人達みたいに、呼び捨てで良いから!」

 

「は、はぁ……?」

 

「分かった!?」

 

「わ、分かった」

 

 何故か、勢いに任せてとんでもないことを口走っている気がするが………もう止まらない。食べ終えた食器を手に台所に引っ込んでいく冬美をポカンと見送ると、改めて甚田は轟家を後にする。

 

 その際。

 

「ただいまー。悪い冬姉、なんか食べ物ある……って、ゴジータ?」

 

「ん? おぉ、焦凍か。邪魔したな」

 

「え? な、なんでゴジータが、家に?」

 

「ちょっとお前の姉ちゃんに世話になってな。もう帰るから、ゆっくり休んでくれや」

 

「は、はい。ありがとうございます?」

 

「………良い姉ちゃんだな。大事にしろよ」

 

 玄関前で遭遇した焦凍に簡単に言葉を交わすと、甚田は空を飛び、自宅へと帰った。

 

 その後、用意して貰った蕎麦を啜りながら……。

 

「────冬姉、もしかしてゴジータと結婚するのか?」

 

 彼の優秀な脳内CPUによって弾き出された答えは、轟冬美を噴き出させ。

 

「しないわよ!!」

 

 初めて目にする顔を真っ赤にした姉に、焦凍は目を丸くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、ゴジータによる学生の戦力底上げの指導は続いた。西に東に、北へ南へ、連日仮免試験を備えて鍛練を重ねている生徒達にゴジータは自身の出来る限りのアドバイスを注ぎ込んできた。

 

 これで次の仮免試験は面白いことになる。自身が鍛え上げてきたジェントルの事に加え、楽しみが増えたと笑うゴジータは本日、オールマイトと共にとある場所へ向かっていた。

 

 そこは本土から五キロ程離れた沖に建てられた施設。ヴィラン犯罪者特殊収容施設と呼称される実質的な刑務所────通称“タルタロス”。

 

 明日の仮免試験を前に個性社会の闇へやって来たゴジータとオールマイト、海風に髪を靡かせながら、二人は冥府(タルタロス)の奥深くへ進んでいく。

 

 幾つもの厳重な警備を潜り抜け、訪れた先では……。

 

「やれやれ、今日は僕の処刑日かい? いつから日本は私刑を許される世の中になったのかな?」

 

 皮肉を交えながら煽ってくる、顔面梅干し面白男が拘束された姿で其処にいた。

 

 

 

 

 





Q.エンデヴァーは何してたの?

A.事後処理。

Q.ゴジータと冬姉は結婚するの?

A.しませんってば! そんな余裕今はないから!



兎&山&☆「!?!?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。