超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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僕達のルシファーが念願の獣神化改!!

そんな訳で初投稿です。


記録61

 

 

 

『爆豪勝己君、並びに飛田弾柔郎君の合格者二名は速やかに会場から退出してください』

 

「流石かっちゃんだ。行動が速い」

 

 仮免資格の為の試練、その第一の関門を開始10分足らずで合格した二人。相変わらず即断即決な幼馴染みに緑谷は誇らしげに笑った。

 

しかも遠巻きで見た限りでは、例のジェントルと割りとガチめにバトっておきながら、ついでとばかりに脱落者を叩き出している。二人とも期間こそは異なるが、ゴジータとマンツーマンでしごかれてきた者同士、その戦いは緑谷や他の雄英生徒達のやる気に火を付けるには充分なモノだった。

 

「僕も、負けてられない!」

 

 押し寄せてくる他校の生徒達、その手に幾つものボールを握り締め、自分達のターゲットに向かって投げ付けてくる。オレンジ色の弾幕、避けようの無い敵意の壁に向かって……。

 

「セントルイススマッシュ・エアフォース!!」

 

 OFA、その50%の力を込めた蹴りの一振が弾幕の壁を突き破る。勢い余って突風に飛ばされる生徒達、そんな彼等に向けて幾本もの白いテープが伸びる。

 

セロハンテープの個性、瀬呂の狙いは空中に飛ばされた生徒達ではない。緑谷の蹴りの一振で不自然に吹き飛んだ岩の数々、それにくっ付けると何処からか「解除ッ!」の声が辺りに響く。

 

 勢いも無くなり、重力に囚われる事になった生徒達は、瀬呂のテープに巻き取られ、麗日の無重力から解放された岩と共に落下し、予め置いておいた下へ敷き詰めておいた峰田のモギモギによって身動きを完全に封じられてしまった。

 

「う、嘘だろ。俺達だってゴジータから指導を受けたのに……!」

 

 短い間とは言え、自分達もゴジータから指導を受けた者。短期間でありながら非常に有意義だったその時間は、生徒達に多くの可能性を示し、明確に実感できる程に強くなった。

 

しかし、それでも圧倒的な開きが其処にはあった。雄英の生徒達、例年通り最初は厄介な雄英から潰そうと躍起になったのに、今年は例年以上に圧倒されてしまった。

 

 一体、自分達の何が悪かったのか。気持ちもヤル気も例年以上ではあったが、初動の動きだけは例年通りだった筈。

 

 そこまで考えて気付いた。ヤル気も気持ちも例年より上がっていたのに、合格する際のやり方だけは例年通りだった。

 

気持ちも、強さも、何もかもが違っていた。ならば、其処に掛けるやり方もまた、変わるべきだった。雄英を潰す事に固執せず、もっと広い視野を持つべきだった。

 

そんな、当たり前の事に今更気付いた生徒は、歩み寄ってくる緑谷を見上げ───。

 

「────完敗だよ」

 

「…………失礼します」

 

 笑いながら、自分の敗北を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー、緑谷達も合格したか。流石は相澤先生、いい指導してますねー」

 

「ふん、嫌味はよせ。あれらが力を付けてきたのはお前の横槍があったからだ」

 

「いやいやそんな事ねーよ、実際に面倒見てきたのは先生なんだから、あまり自分を卑下するなよ」

 

 次々と脱落者を出し、同時に合格者を出していく会場内。今日まで切磋琢磨の日々を積み重ねてきた生徒達の成果を目の当たりにしながら、二人の教師と一人の観戦者は呑気に談笑に浸っている。

 

「いや、ていうかお前等のところのジェントルと爆豪、普通にヤバくね? アイツ等の動き並みじゃねぇよ。プロでもいないぞあんな風に動ける奴、どんな教育したらああなるんだ?」

 

これ迄の快活な笑みとは違い、頬をひきつらせているMs.ジョーク。一瞬だけ見せた二人の戦い、並みのプロを遥かに凌駕する動きと戦いのセンスを目の当たりにした彼女は、酷く引いた様子でゴジータに訊ねた。

 

「別に難しい事はしてねぇよ。どっちも自尊心を挫けない程度にボコっただけ、特に爆豪は反骨心が強いからな。叩けば叩くだけ響く奴だから、職場体験の時は結構楽しめたぜ」

 

「人の生徒を玩具扱いしやがって……」

 

「その分ちゃんと結果は出してるでしょ? 合理的に行こうぜ先生」

 

「お前は合理的云々の前に人の心を学べ」

 

 何て事無い様に語るゴジータだが、イレイザーは知っている。この男の“叩く”という表現は、文字通り以上の意味合いを兼ねているという事。自尊心までは砕かない迄も、職場体験の時爆豪はこれ迄の自分の持つ常識を悉く破壊されている。

 

現に、職場体験後の爆豪はこれ迄肥大化していた自尊心もナリを潜め、大人しく且つ冷静に物事を見て判断している。いや、元々あった素質と才能がゴジータの扱きという研磨剤でより磨かれたといっていい。

 

そんな爆豪が自分の出来ないことを把握し、出来る事を広げ続けてきた。才能持つ者がその者を凌駕する怪物に鍛えられたのだ。強くならない道理がない。

 

 ジェントルに関してもそうで、時折動画を見返していたイレイザーだが、彼に対するゴジータの指導は合理的に見えた。

 

トライ&エラー。詰まる所、ゴジータの指導とは相手の出来る事と出来ないことを徹底的に相手に叩き込むスパルタ方式にあった。言葉だけで聞けば然程大した事に聞こえず、内容も学校で教えている事と然程変わりはしない。

 

ただ、其処に実戦形式という言葉が付かなければ、だ。ゴジータの教え方は基本的に肉体言語、痛みで指摘し、痛みで導く。殴り、叩き、時には蹴る。プッシーキャッツの虎もドン引きするスパルタぶりである。

 

 当時、生放送の動画を見ていた視聴者の一人が「もうやめたげてよぉ!!」と、一万のスパチャを投げたのはいい思い出である。

 

………いや良くねぇな。

 

「ま、何れにしても、アイツ等が先にいると感じたのはそれだけ自分を追い込んだって事さ。他の連中との間に差があるとすれば、そこだけだとしか言えないな」

 

「………うちらの追い込み具合が足りなかったって事?」

 

「或いはその逆かもしれないぜ? 無茶を重ねれば壊れるのは自分の体だ。その線引きも分からない奴に、ヒーローが勤まると思うか?」

 

 ただその時だけ頑張るのでは意味がない。継続する事が力を得、伸ばす為の方法だと、暗にそう語るゴジータにジョークはなにも言えなくなっていた。

 

「…………」

 

「なんだよ先生、そのジト目は」

 

「いや、お前が言うのかって思ってな」

 

ただその横でしたり顔で語るゴジータを見て、彼の無茶無謀を間近で眺めていたイレイザーヘッドこと相澤はお前が言うな感が凄かったようだ。

 

呆れ、ジト目で睨んでくる嘗ての恩師に咳払いをしながら誤魔化し、改めてゴジータは会場の方へ視線を向ける。

 

「しっかし、残念なのは士傑の坊主、アイツどうしたん? なんか急激に動きが悪くなったように見えるけど?」

 

「そう言えば、例のジェントルに落とされてからトンと動きが悪くなったように見えるね。頭とか打ったとか?」

 

「その割りには意識がハッキリしているように見えるが………仮にも西の士傑が体調管理が出来ていないとは思えないが」

 

 ゴジータに促されて見るのは、帽子を被った士傑高校の若きエース、風を操る個性で一番に最初の試験を突破するかと思われた有望株である夜嵐イナサ。

 

そんな彼が意外にも苦戦している光景に、三人とも不思議そうに眺めていた。

 

「んん? 囲まれたぞ」

 

「風を使って抜け出そうとしているが………周りの連携で飛べそうにないな」

 

「危な、今ターゲットにボールがかすったぞ」

 

 何やら不調で思っていたより動けていない様子、そんな彼を格好の鴨として他校の生徒達が押し掛けてくるが、それでも西の士傑の一員としての意地か、個性を用いて風の壁を作ることで投げ付けてくるボールを悉く弾いていく。

 

しかし、それでも他校の生徒達からの猛追は止まらない。弾けば弾いた分だけ数は増していき、イナサは徐々に追い詰められていく。

 

「あらら、一年坊主追い詰められてるよ」

 

「っかしいなぁ、前見たときはもっと動けてたし、個性の扱いも上手かった筈なんだけどなぁ」

 

 本来なら風を駆使してボールを巻き上げ、お返しとばかりに風と共に叩き付けていた筈なのに防戦一方のイナサ、試験前の特別指導の時はもっと動けていたし、何ならゴジータでも感心する程の個性の扱いに冴えていた彼が、まるで翼を捥がれた鳥のように追い詰められている。

 

らしくないイナサの様子に戸惑うジョークとゴジータ、軽く混乱している二人を余所にイレイザーだけは訳知り顔で思案を馳せていた………その時だ。

 

 突然現れた氷の壁が、イナサに攻撃していた生徒達を囲むように現れる。試験開始から20分、どうやら漸くあの少年が動き出したらしい。

 

「………というか甚田、もう一人のサイドキック候補はどうした?」

 

「ん? あれ、そう言えば………」

 

 それはそうと、一緒に来ていた筈のジェントルの相方が見当たらない。何処へ行ったか辺りを見渡していると………。

 

「キャー! ジェントルカッコ良すぎ!! 好き!!

 

人気の少ない通路で、一人で色々と昂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、くそ、くそ!」

 

「いたぞ、そっちだ!」

 

「囲んで追い詰めろ! 包囲網を崩すな!!」

 

 飛び掛かってくる他校の生徒達からの猛攻を潜り抜けながら苦渋に顔を歪める。こんな筈ではなかったと、最初に予想していた展開とは全くの逆方向になってしまった自分の立ち位置に、夜嵐イナサは悔しさを顕にする。

 

自分の風を操る個性なら、この程度の逆境など訳では無い。それなのにこうも動きに差異がでるのは、一体どういう訳か。

 

分からない。───否、分からないと言うより認めたくないというイナサの思いが、イナサ自身を締め上げていく。

 

「なんで、なんで俺は………!」

 

 こんなところで燻っているのか、何のために憧れの雄英への入学を断ってまで此処に立っているのか。

 

こんな所で足踏みをしてはいられない。相討ち覚悟でボールを手にした時、氷の壁が周辺丸ごと生徒達を呑み込んでいった。

 

何が起きた。唐突に現れた巨大な氷壁に、イナサが唖然とするも……。

 

「一人の人間相手によってたかって追い詰めるのは、ヒーロー的にどうなんだ?」

 

 赤と白で分けられた髪色の少年、轟焦凍の姿に心音が跳ね上がる。

 

「お、お前は雄英の!?」

 

「俺もヒーロー(なりたい自分)を目指している身なんでな。悪ぃが、仕留めさせて貰う」

 

「嘗めんな一年坊!」

 

「一人で来た事を後悔させてやる!」

 

 目の前の少年の実力は、雄英体育祭で把握している。厄介な個性による範囲攻撃も、距離さえ詰めてしまえば対処可能。一人ではなく、複数人で同時に掛かれば充分に封殺出来る。

 

「遅ぇよ」

 

そんな生徒達の目論見を撃ち破るように、膨張した熱の爆風が生徒達を周りごと凪払っていく。圧倒的な場の展開速度、加えて急激な熱運動による衝撃。白目を剥いて倒れる生徒達を尻目に、轟は自身の成長具合を確めるように手を握る。

 

「“膨冷熱波”、まだまだ精度が甘いな。例の技の完熟もしなくちゃいけねぇし、まだまだ課題は多いな」

 

 言葉ではそう言いつつも、口許の弛みは隠せなかった。ゴジータによる指導で自分の目指すべき道、熱と凍の二つの個性を持つ轟はこの二つの個性を融合させて新たな道を模索する道を選んだ。

 

『轟、お前の操る炎と氷の個性は真逆の様で実は同質なモノ、【熱】から来るモノだということは理解しているな?』

 

『あぁ、それは何となく俺も理解している』

 

『なら後は簡単だ。その二つの個性を極限まで同一化させろ。炎と氷、プラスとマイナス、これら二つの熱を一つのゼロに落とし込め、そうすりゃ───』

 

『なりたい自分になれるのか?』

 

『………少なくとも、その第一歩は踏めるだろうぜ』

 

不敵に笑い、一つの指針を示してくれたNo.1ヒーロー。彼に自分の答えを示す為に轟は自分のやるべき事を一歩ずつこなしていく。

 

「さて、後はボールで叩くだけだな。………ん?」

 

 言いながら手にしたボールを二人のターゲットに押し付ける。これでいいかと改めて辺りを見渡していると、轟は一人の生徒を見つけた。

 

「おい、アンタ大丈夫か? 巻き込まない様に加減はしたつもりだが………」

 

「────」

 

 その場で座り込んでいる少年、夜嵐イナサは愕然とした様子で轟を見上げている。

 

「おい、聞こえてるか?」

 

 何やら酷く思い詰めた様子、顔色の悪いイナサに轟は手を伸ばして立たせようとするが………。

 

「………いいっス、自分で立てるんで」

 

「そうか」

 

直視しないように轟の手から目を逸らし、逃げるようにその場から去っていく。意気消沈となったイナサを轟はキョトンと首を傾げて………。

 

「どこか、具合でも悪りぃのか…?」

 

 心配した様子で天然ぶりを発露させるのだった。

 

 それから十数分、激動の戦闘試験を乗り越えた生徒達は第二の試験、即ち救助試験へ移行していく。

 

 




「色々と拗らせちゃっているイナサ君、果たして彼はこの逆境を乗り越えられるのか」

「次回、プライドの矛先」

「更に向こうへ、Plus Ultra!」






オマケ。


オールスター渋谷事変。

「へぇ、意外と頑丈だな」

地上へ突き抜けた穴から飛び出してきた異能の男、呪いの王である彼は、同じ穴から現れるソイツを睨み付ける。

「───お前は、何者だ。その纏っている炎、呪術の類いではないな?」

「あ、呪術? ………参ったな、お前悟の知り合いか? こういった手合いの奴は一度アイツに話を通す約束だったのに」

 しまった。誰もが恐怖を抱いて死んでいった宿儺である己に対し、目の前の男はまるで臆した様子もなく頭を掻いている。

不愉快。けれど同時に感心もしていた。自分の知る力とは全くの別系統の力、目の前の黒髪の男の実力の底無し具合に、宿儺は食いでのある獲物として狙い定める。

「いいぞ、活きのいい奴は嫌いじゃない。お前という魚を捌き、魂ごと喰らい尽くしてやろう」

「───なんか、三虎みたいな事を言う奴だな。え? もしかしてグルメ細胞案件も含まれてる?」

 何やら勘違いをしているが……知った事ではない。目の前の黒髪の男の臓腑を喰らうために、宿儺は呪術の最奥を顕現させる。

「領域展開────伏魔御廚子」

唐突に現れる禍々しき御堂、笑みを浮かべる宿儺に対して、面喰らう黒髪の男────ゴジータ、そんな彼に次の瞬間無数の斬撃が怒涛に押し寄せていく。

「お、お、お?」

「遠慮はいらん。鱈腹味わえ」

 本来なら領域の外にまで影響を及ぼす宿儺の領域展開。されど今回は一人の男を八つ裂きにするために、その全てを叩き込む。

さらにダメ出し……。

「◼️」

(フーガ)

 その手に炎を纏わせ、矢のごとく変化させたそれを、ゴジータに向けて叩き込む。

瞬間、炎の柱が渋谷の空に顕現し、周囲を大気ごと焼き尽くしていく。骨も残らない熱量、不敵に笑う宿儺は……。

「なんだと?」

 その口元を驚愕に歪ませる。天を突く程の炎の柱、その中から黄金の炎が掻き消しながら現れる。

「───驚いた。まさか俺にその気にさせるとはな」

「──マジでなんなのだ、貴様は」

 黒髪から金髪へ、黒目から碧眼へ。呪いの深奥を熟知する宿儺ですら理解の及ばない現象。

ただ一つ、分かることがあるとすれば……。

「俺にその気になったのは、ユーハ………ユーハミカクトウ以来だな」

今の自分は、一つの岐路に立たされているという事。

「いやユーハバッハな!!」

「あれ? ユバーバじゃなかったっけ?」

「ルフィ、ちょっと黙ってな」

「あーあ、俺知らねぇってばよ」

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