超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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 最近の酷暑で熱中症になりました。
皆さんもお気を付けて。

そんな訳で初投稿です。


記録64

 

 

 

 ゴジータ。それは、ドラゴンボールという作品に於いて屈指の人気を博す最強キャラクターの一人。

 

主人公である孫悟空とそのライバルであるベジータが、フュージョンという特殊なポージングを用いて融合した超戦士であり、最初に出番のあった劇場版ではたった数分にも満たない時間にも関わらず、その活躍で多くのファンを生み出した。

 

圧倒的、絶対的、同じ合体戦士であるベジットと対を為しているゴジータは、自分にとって憧れの対象でもあった。

 

 格好いい。純粋にそう思っていた自分は、テレビに映るその姿を見て、こんな風になりたいとベッドの上で夢想した。

 

 前世……という言葉があるが、果たしてそれが自分に当てはまるのかは今となってはもう分からない。覚えている一番古い記憶は、薬品の臭いがする部屋の中で、身動きの取れない自分がテレビに映る映像を眺めていた事だった。

 

前世の自分が想い、焦がれ、渇望した。こんな風になりたいという空想は、しかして現実のものになってしまった。

 

 後藤甚田。今世ではそう名付けられた自分は、ある日目が覚めたら孤児院の布団の上で目覚めた。今世も相変わらず両親の顔も分からないが、今回の生に於いては全くと言っていいほど苦にはならなかった。

 

身体に満ち溢れる力の躍動感。縮んだ手足も背丈も関係ない、完全なる健康体を手にした事の喜びを前にすれば、両親の不在など些細だった。少なくとも、この時の自分はそうだった。

 

 孤児院の先生である姫野葵先生も、最初は動物みたいな顔をしていた為に驚きはしたが、個性という超常社会という事でそういうものもあるのかと納得できたし、なにより優しく良い人だったので、そこまで悲観的になることもなかった。

 

孤児院も最初は自分だけで姫野先生の負担も軽く、自分は諸々の手続きをしている先生の目を盗んでは新たな自分の身体の性能を確認していた。

 

 如何に個性という異能を持っていても、姫野先生は一般人。ゴジータの身体能力を持つ自分であれば、視線を掻い潜る事など造作もなかった。

 

そうして施設の裏で軽めに運動をすることにしたのだが、この時点で自分の身体能力が桁違いな事であると思い知る事になる。

 

 意識しながらの跳躍、本人的には軽くジャンプしただけなのに、次の瞬間その視界は遥か大気圏上空を映し出していた。

 

それだけの高度を飛び跳ね、地上に落下しても周辺には一切影響を及ばさない足腰の衝撃吸収力。この時点で後藤甚田は確信した。

 

既にこの身はただの人ではなく、文字通り超人のそれである事。眺めている事しか出来なかった憧れのヒーローに自分はなれたのだと。

 

 しかし、その喜びも束の間。身体に巡る力の奔流に目覚め、自覚した俺はその次の問題に直面する事になる。

 

 敵。即ち、前世の自分が記憶している例の物語に登場する規格外の怪物達の事。

 

宇宙の帝王(フリーザ)から完全生命体(セル)魔人(ブウ)、更には邪悪龍達など星を爆竹程度にしか考えないノリで破壊しようとする化け物達。

 

他にも劇場版の事も考えれば、今後現れるかもしれない敵はどんなに少なく見積もっても10体。そんな奴らを相手に果たして自分だけで対応できるのか。

 

 考えすぎだと、最初は思った。自分はゴジータの力を持っていたとしても、ゴジータそのものではない。あくまでゴジータに類似する別物、或いは偽者、そんな自分がいる世界にあんな怪物達がいる筈がない。

 

けれど、誰もその事を否定する事など出来なかった。当然だ、その事を知るのは自分だけだし、その事に納得できるのも自分だけ。否定できる材料なんて自分だけしかいないのに、どうやって奴等がいないという確信が抱けるというのだ。

 

 もし、もしあの怪物達が現れた時、果たして自分は守れるのか? そもそも………戦えるのか? 戦い処か、喧嘩すらマトモにしたことのない自分が、あの怪物達を相手に?

 

 期待は不安へ転じ、未来は重圧に早変わる。いもしない脅威に怯え、いるかもしれない事実に心臓が早打つ。

 

「だ、誰か……誰かいないのか!?」

 

 次の瞬間、後藤甚田は駆けた。自分以外にいるかもしれない、心強い味方を探しに………。

 

そう、ゴジータとなった自分がいるように、この世界はベジットとして生まれている者がいるかもしれない。自身の膂力にモノを言わせ、自分を探す姫野先生の声を無視しながら、後藤甚田という少年は逃げるように地球という星を駆けずり回った。

 

 山を越えた。一息も要らずに県境を越え、人目につかない程の速さで日本という島国を駆け抜けたが、なんの感情も沸かなかった。

 

 海を渡った。まだ空を飛ぶことを知らず、ただやみくもに海面を走り抜けた。其処に驚愕の意思などなく、ただすがり付く思いが胸中を駆け巡っていた。

 

 世界を見た。前世の自分の記憶とあまり変わらない世界の光景、個性という超常が存在しても、根底としている文明文化に一切の興味を示さず、少年は走り抜けた。

 

 駆け抜け、走り抜け、駆けずり回り、そして………思い知った。この世界に、この地球に、自分が頼りに出来る者はいない。ベジットも、ゴテンクスも、自分の知るZ戦士達は影も形も存在しなかった。

 

(誰も、いなかった。ヤジロベーやヤムチャも天津飯も、チャオズもクリリンもピッコロも、悟天やトランクス、悟飯もベジータも、そして………)

 

悟空も。

 

当たり前か。何せ悟空とベジータが合体したのがゴジータである自分なのだ。……いや、自分はゴジータを模倣している偽者であって、彼等ではないから違うのか。

 

 どれだけ世界を巡っても彼等には出会えず、同時に物語の超重要アイテムであるドラゴンボールの存在も認知出来なかった。

 

やはり、自分の思い過ごしか? ゴジータという存在として此処にいる自分が異質なだけで、実はそんなに危険な世界では無いのではないか?

 

 なんて都合の良い幻想を抱くのも束の間、同時にもう一つの懸念が自分の裡を埋め尽くしていく。

 

(そうだ。奴等が、あの怪物達が実在するかどうかなんて関係ない。俺は、ゴジータだ。あのゴジータなんだ)

 

 疲れた思考。肉体的にではなく、精神的に疲弊した少年が至った答えは、その力を持つが故の当然の帰結。そう、ゴジータという存在をこの世界で唯一知る彼だからこそ、その答えに行き着くのは当たり前の事だった。

 

 ゴジータとは、最強。あらゆる怪物達が束になっても敵わない、最高のライバル二人が融合したベジットと対を為す最強格。

 

不敵に笑い、敵を討つ。ならば、ゴジータとなった───なってしまった(・・・・・・・)自分もまた、それに倣わなければならない。

 

 きっと、人は知れば笑うだろう。何を馬鹿な事をと、己は己であって理想ではない。それ以外になれる事など、決してありはしない。

 

 誰かが言った。憧れは、理解から最も遠い感情だと。その通りだ。憧れとは、理解されないからこそ憧れと言うのだ。

 

 憧れは、その者が心に抱く情景。その者にしか抱かない心の裡が、他人に理解される事は有り得ない。故に、後藤甚田(◼️◼️◼️◼️)は進み続けるしかないのだ。

 

「甚田!!」

 

 ふと、今世における自分の名を呼ぶ声が聞こえる。顔を上げると、目に涙を溜めた施設の創設者である姫野葵が、喜びと安堵に満ちた表情で抱き着いてくる。

 

どうやら、いつの間にか施設────星の都へ帰ってきていたらしい。良かった。どうやら此処を自分の帰れる家と思える程度には、心の拠り所にしていたらしい。

 

 抱き締めてくる先生、彼女が言うには三日もの間行方を眩ませていた様で、地元の人達や警察の人達と一緒になって探していたらしい。

 

(はは、なんだよ。世界中を駆け巡っておいてたったの三日かよ。いや、それでも本家本元に比べたら雲泥の差なんだろうけど)

 

 一見ボロボロな姿の自分を見て、ゴメンねと謝ってくる先生。彼女が悪い所など何一つ無いのに、不安にさせてしまったと泣いて謝ってくる彼女に、後藤甚田は小さくない罪悪感を覚える。

 

けれど………。

 

「先生」

 

「───?」

 

「俺、強くなるよ」

 

 今は、罪悪感(ソレ)すらも煩わしい。自分の事を心配だと気に掛ける先生も、自分の無事に安堵する大人達の善意も、何もかもが今の自分には煩わしかった。

 

 全ては自分が強くなる為、姿形だけでなく、天下無敵の合体戦士になる為、後藤甚田は強くなる事を決めた。

 

(そうだ。俺しかいないんだ。俺が、俺がやらなきゃ────)

 

“誰がやる”

 

 その身に、歪んだ呪いを携えて。

 

 

 

 

 





今回も短めすみません。

次回から本格的に過去編に入ります。

主人公の心の重責、或いは呪いは果たして晴れるのか。

お楽しみに。




オマケ。


オールスター千年血戦篇



 ────卍解が奪われた。

突如として現れた滅却師の集団、星十字騎士団なる者達によって、尸魂界は未曾有の危機に瀕していた。

尸魂界を守護する護廷十三隊の隊長達も、その半数近くが倒れ、多くの隊士達が死に絶えた。

まさしく前代未聞。されど、それ以上に厄介な滅却師達の進軍は止まらない。千年モノの間、影から死神達を監視し、機を待っていた彼等が止まることはなかった。

「あーあ、隊長格っつってもこの程度かよ」

「ちょっとバズビー、アタシの獲物まで取らないでよ」

「あぁ? テメェに任せたら辺り一面更地になるだろうが」

「確かに」

「バンビちゃんってば色々杜撰だから」

「散らかし放題」

「なによ! 文句あんの!?」

 死屍累々。抉られ、焼かれ、死体だらけとなったその場所で、似つかわない弾んだ声の少女達。地獄を生み出しておいて何ら気にかけない連中の恐ろしさに生き残った隊士は動けることなく震え上がっていた。

「つーかバズビー、アンタだって残しているんじゃない。先鋒任されたのなら、きっちり平らげなさいよ」

「チッ、るっせーな。そんなに食いたきゃ勝手にしろ残飯女」

「あんですって!?」

 売り言葉に買い言葉、同じ滅却師でありながらいがみ合う両者。今の内に逃げようとする隊士は………しかして、放り投げられた石が目の前で爆発する。

「ふん、まぁ良いわ。私もとっとと隊長格の卍解奪ってやるんだから」

「ったく、相変わらず下品な女────」

 確認する必要もない。爆発地点を見て、周囲の死神を諸とも始末したと確信した少女………バンビエッタ=バスターバインだが。

「あーあ、嫌だねぇ弱いものいじめをする奴って」

「仕方ないさ悟。彼等は滅却師、千年近く影に潜んでいたらしいのだから、陰湿なのも仕方がないさ」

 突如として聞こえてきた二人の男の声、有り得ない第三者に滅却師達は揃って声の方へ振り返る。

「おら、其処のお前、邪魔だからとっとと帰れよ」

「あぁ、ついでに別の隊の人達と合流したら伝えてくれ。ここは我々に任せてくれと」

 頷き、膝が笑いながら逃げ惑う隊士を尻目に二人の男は滅却師に向き直る。

「───誰よ、コイツら」

 知らない男、しかしなにやら此方の事情は把握しているらしい。挑発的な笑みを浮かべている白髪の男にバンビエッタが苛立っていると………。

「コイツ、まさか番外特記戦力の五条悟か!?」

「「「ッ!?」」」

「おー、流石は悟。知られてるねぇ」

「番外特記戦力とか長、もっと短くまとめろよ」

「じゃあそっちの変な前髪が夏油傑!?」

「変な前髪って………そんな変かい?」

「傑も認知されてんじゃん」

「どういう事よ。連中とやりあうのは死神達を殲滅した後なんじゃなかったの!?」

「知らねぇよ。だが、好都合だ。コイツらを此処で殺せば、陛下の負担が格段に減る」

「他の連中が来る前に、とっとと片付けるぞ」

「いやぁ、それは無理なんじゃない?」

「あ?」

「だって君たち………弱いもぉん♪」

無邪気に笑いながら一言、そう口にする五条悟に対し、夏油傑はこれから起きる惨劇を予見して空を仰ぎ見た。




「むぅ! 我が正義の前に現れるとは、何奴!!」

「俺はモンキー=D=ルフィ、宜しく!」


「こりゃあ、致命的な展開になりそうだ」

「これが噂の滅却師か。つーか一護はどこだってばよ!?」



追い詰められた尸魂界。卍解は奪われ、為す術無くなった総隊長。降り頻る雨の中で対峙しているその者は薄ら笑う。

これで、一つの決着は着いた。既に己の勝利が揺るがないモノだと確信している星十字騎士団の首魁は、その手に輝ける光の剣を握り締めて宿敵である死神の総隊長に向けて振り下ろす。

 老いた肉体を両断せしめる凶刃。されど、その一撃は届くことはなく………一人の人間の手によって文字通り止められていた。

「っ!? 貴様は………」

「お主、何故此処に……?」

 死神も滅却師も、その人間の登場に驚きを露にしている。本来ならば有り得ない救援、有り得ない人物の乱入に両者とも目を剥かせる中。

「久し振りだな山のじっちゃん。んで、そっちが例のユーバ……ユーバリオンか」

「ユーハバッハだ」

 血で血を洗う血戦にて、ゴジータ一行───参戦。










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