超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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仕事が忙しくて更新遅れて申し訳ない。

取り敢えず無事に浴衣ヴァンピィちゃんのけんぞくぅになりました。

そんなわけで初投稿です。



記録65

 

 

 

 姫野葵は、子供が出来ない体質だった。異形型の個性であるが故か、通常なら有り得ない遺伝子情報を持ち合わせている所為で、彼女の肉体は命を宿す器として適切ではなかった。

 

家族の中で唯一異形という歪な姿で生を受けた彼女は親兄弟から蛇蝎の如く嫌われ、親族の誰からも無視されるようになった。

 

まるで存在その物を認めていないかの様な扱い。異形型の個性を持って生まれた彼女は、家族からもいないものとして扱われていた。

 

 しかし、そんな彼女に一つの救いがあった。それは人並外れた頭脳、異形という人間から外れた規格である故か、文字通り人より頭の出来が異なる彼女は10歳に至る前に、既に数多くの論文を公表し、その手の界隈から高い評価を得ていた。

 

たとえ家族から忌み嫌われようと、外の人達は違う。幼いながらもその事に気付いた彼女は、自分を忌み嫌う家族と早々に決別し、外の世界へと羽ばたいた。

 

 世界各国を渡り歩きながら自らの研究を重ね、時折政府に自分の研究成果を提出して結果を示し、充分な生活費と研究費用を獲得していた。

 

 彼女が得意としている分野は量子物理学。特に重力に関する分野を得意としており、これにより彼女は個性黎明期、超常社会が始まって以来あまり着目されてこなかった人類の宇宙進出へ目を向ける事になった。

 

個性という超常社会により、他人との差異がより明確になってしまったことで、それに伴う差別………特に異形型の個性持ちの人々に対して、より一層酷くなっている。

 

 それでも、宇宙開発が進めば人々の目や関心は広い世界へ目を向ける様になり、差別等の社会問題も一定の変化を見せるのではないか。

 

そんな淡い期待を抱きながら研究を続けていたある日、姫野葵は一人の幼子と出会う。

 

 その少年はいつから其処にいたのか、何処から来たのか、十数年以上経った今でも分からない出自の分からない少年だった。

 

その日は雨が降っていた日、傘も指さずにずぶ濡れになりながら、その少年は街の中を彷徨い歩いていた。周囲の人間は見て見ぬふりをして、その内ヒーローが来てくれると、決して自ら動こうとはしなかった。

 

 姫野は愕然とした。この社会で、降り頻る雨の中で、周囲の人間はおろか交番の警察すら見て見ぬふりをするその有り様に、姫野は言葉に出来ない感情を抱いた。

 

 それは脳裏に浮かんだ嘗て己が家族親族から受けた所業を思い出した事に対する憤りか、憐れみか、或いは両方か。気付けば姫野はその少年───後藤甚田に向けて駆け寄っていた。

 

 少年の目は虚ろとしていた。生気がなく、まるで今この世界に生まれたばかりのようなあやふや感。このまま放ってしまえば消えてしまいそうな程に儚い少年を、姫野は見捨てる事が出来なかった。

 

その後、その子供を連れて直ぐに近くの交番に押し入った彼女は、面倒くさそうにしている警官を怒鳴り付け、少年の身元の確認を急がせた。

 

 しかし、どれだけ調べても少年の素性は判明することはなかった。親の存在も、名前すらも分からない。目の前にいるのに誰も少年の存在を認めるものが何一つなかった。

 

そして、いい加減少年をどうにかしなければいけない段階へと差し掛かってきた時、姫野は決心した。

 

「───この子は、私が預かります」

 

 それは自己満足だった。同じ存在その物を否定された者同士、同情と義憤が彼女を一つの決心を抱かせた。

 

これから生まれてくる子供達。親親族から疎まれ、蔑まれても、せめてもの寄る辺になってあげよう。独善的で、偽善的と罵られようと、自分のできる限りの事をしよう。宇宙開発を進めるのは、その後でも良い。

 

 その後、I・アイランドからのオファーも蹴り、すべてのプロジェクトを一時凍結させて姫野葵は児童養護施設“星の都”を創設、少年を初めとした孤児達を引き取る事になる。

 

そして……。

 

「それじゃあ、あなたの名前を決めなくちゃね。何か希望があったりする?」

 

「ご………じ………た………」

 

「ごじた? うーん、何かのキャラクターかしら? なら────」

 

そうして、少年の今世での名前が決定する。

 

「甚田、後藤甚田なんてどう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴジータとして生まれ、ゴジータに成るべく俺が最初に覚えたのは力加減の仕方だった。

 

ゴジータに成ると息巻いておきながら、覚えるべき事は加減の仕方。全力を出したこともないお子さまが口にするにはお笑い草だと思われるかも知れないが、星を片手間で粉砕できる世界観の住人としては割りと急務な事だと思う。

 

何せ、今世の俺は血の繋がりが無くとも世話をしてくれる人がいる。姫野葵さん、色々と面倒見の良い彼女に迷惑を掛けられないことを考えれば、割りと必須な能力かと思われる。

 

 唯でさえ先の失踪により心配をさせてしまったのだ。これ以上の心労を掛けるには忍びないし、何よりゴジータが力加減も出来ない阿呆だと思われるのは嫌だ。

 

ゴジータは手加減も出来ないパワー馬鹿ではない。必要な時に必要な力だけを引き出して、敵をスタイリッシュに討ち勝つ。その為には日常生活から戦闘時での力加減の差を体に染み込ませる必要性がある。

 

 そう思いイメージトレーニングやら加減を覚えての生活を試みた所………普通に出来た。剰りにも、呆気なく。

 

流石はゴジータボディ、力加減などデフォで付いているらしい。皿洗いも割ることは無かったし、寧ろ姫野さんが落とし掛けた皿をキャッチしてやれる程度には力加減の出力が細やかに制御出来ていた。

 

 これならばゴジータを目指して鍛練に励むことも支障は無いだろう。その日から俺は姫野さんが寝静まった頃に施設から抜け出し、朝方まで山奥で鍛練に励むことになった。

 

鍛練といっても、前世含めてマトモにトレーニングなどしたことない俺には、鍛えるという概念自体あまり理解出来ていなかった。鍛えるというのは体に負荷を掛けるという事、漠然とそれくらいしか理解できていない俺は、一先ず思い付く限りの筋トレを行った。

 

 腕立て伏せ────万回やっても何も感じない。

 

 腹筋─────同上の回数をこなしても痛み処か疲弊すらない。

 

 スクワット────一説には、限界を迎えれば太腿が燃えるように熱くなると聞いたが、全くその様な現象は起こらなかった。

 

 他にもうさぎ跳びや岩を背負ってのランニングなど色々と試してみたものの、自覚できる程の負荷を感じる事はなかった。

 

 ゴジータという規格外の肉体を持つが故の弊害。生半可なトレーニングではこの体を成長させる事は出来やしないのだと、俺はこの日悟り、絶望した。

 

このままではゴジータの名に傷を付けてしまうし、この程度の力ではいるかも知れない化物達と出会した時、為す術もなく殺されてしまう。

 

自分を拾い、面倒を見てくれると言ってくれた姫野葵さん。せめて彼女を守れるだけの力は身に付けないと……。

 

(────待てよ、確か姫野さんって結構な科学者だって聞いたな)

 

 それは一昨日、施設にやって来た一人の男性。彼は何とかって島からのオファーを断った姫野さんを説得にやって来たのだという。

 

何でも姫野さんは物理学に精通していて、中でも重力に関する分野が得意なのだとか。

 

(────もしかしたら、出来るのでは?)

 

 もし、彼女が自分の想像通り………いや、想像以上の技術力を持っているのなら、ワンチャン出来るかもしれない。

 

DBワールド御用達の、特訓部屋。即ち────重力室が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、私は初めて母性と言うものを自覚した。

 

自分が保護して1ヶ月、造り上げた施設内にて必要最低限の会話しかしてこなかった少年、後藤甚田。

 

親も分からず、自らの出生も分からない彼。きっと自分が何者であるかも良く分かっていない彼は、それでも拾ってくれた私に報いろうと、懸命に家事を手伝ってくれた。

 

 まだ設立したばかりの施設で、色々と分からない事の多い日々。そんな私を見かねて少しでも役に立とうと、あれこれ手伝ってくれる彼を嬉しく思い、同時に申し訳なく思った。

 

寂しくさせないよう気を付けていたのに、気を遣わせてしまった自分の不甲斐なさと、彼の優しさに泣きたくなった。

 

 そんな彼が、申し訳なさそうに俯きながら話し掛けてくる。どうしたの? 不安にさせないように声色に気を付けながら話し掛けると………。

 

「姫野センセー。俺、強くなりたい! 誰よりも!」

 

 そう強く決意を秘めた彼の瞳を見て、私は思った。

 

この子は、きっと強いヒーローになる。それこそ、現在大活躍中のオールマイトすら越える程のヒーローに。

 

 一ヶ月にも満たない共同生活なのに、もう保護者面か。我ながら傲慢な人間だなと、私は自分自身に呆れながら……。

 

「───分かった。その夢、先生も応援するよ」

 

 遥か高みを目指す少年の夢を、後押しする事に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 けれど、この時私は………姫野葵は決定的にズレていた。

 

後藤甚田が望んでいたのは、比喩ではなくそのもので。彼が目指すモノの高さとそのおぞましさを。

 

 子供が目指すには、剰りにも痛々しい地獄なのだと。

 

この日の私は、想像も出来なかった。

 

 

 

 

 





姫野葵さんは子供好きな優しい人。

そんな人が次回から曇天顔になる模様。



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