今作のAC、難しいと騒ぐ人はいるけど、自分は過去のVの方が難しかった気がする。
でも、クリアした時の達成感は同じだよね。
そんな訳で初投稿です。
あの日から、姫野さんは自分の要望を素直に受け取り、修行にも非常に協力的になってくれた。
重力室の負荷も既に100倍の大台にまで差し掛かり、俺のゴジータとしての修行の日々も漸くスタートラインに立てた……とは、断言しづらい。
ゴジータを目指し、ゴジータとして生きていくと決めている以上、妥協は許されない。何せその大台である100倍の重力負荷にも、既にこの体は適応しつつある。
まだ10歳にも届かない未成熟な体なのに、恐ろしい程の強靭さ。呆れると同時に、やはり自分はゴジータなのだと改めて思い知った。
姫野さんは……あの日以来、あまり自分とは会話をしなくなった。新たに迎え入れた子供達の面倒も見なくてはいけないのもあるのだろうか、それ以上に自分の事は避けている気がする。
まぁ、強くなる為に自傷行為をするという訳の分からない事をしでかす子供とは、関わりたくないのだろう。それは別に良い、彼女の気持ちを鑑みれば充分に理解できる。
それでも自分を追い出さず、要望を聞いてくれる姫野さんには感謝しかない。
ただ、その代わりに幾つか面倒な制約も出来た。自分が修行と称して地下に籠るのは許すが、学校には必ず通って最低でも高校は卒業することを約束させられてしまい、他にも先日行った自傷行為に関しても、今後は絶対にしてはならないとも言及された。
正直面倒臭い。ゴジータになるべく強さを追及していくつもりでいる自分としては、学業に現を抜かしている暇はない。必要性も感じない。全ての時間を修行に割いて、徹底的に鍛えぬくつもりでいた自分としては、この制約は些か以上に厄介だった。
自傷行為に関してもそう。あの後、気を失うように眠りについた自分は、翌日には完全に回復し、それに併せて体の内側から力が溢れてくるような感覚を体験した。
やはり、この体はサイヤ人なのだろうか、彼等と同じ特性を持つこの体は修行を重ねる度に強くなり、耐久力も増していく。
だが、その割りには最も特徴的な空腹感は無く、食欲も並み程度。精々大盛りのご飯を5杯ペロリと平らげる位だが……いや、割りと食べているか?
そんな訳で自分の我儘を許して貰う一方で、色々と制約も課せられた自分は、先日から近くの学校に通うことになった。
因みに学費の件だが、何でも重力制御による技術が何処かの島に高値で売れたらしく、自分や子供達を大学まで通わせる程度には稼げているらしい。
しかも、最近の姫野さんは株までやっているらしく、そちらの方でもかなり利益を上げているらしい。
……ヤバくね?
◇
最近、学校に通って思った。昨今の小学生の学力、ヤベェ。人生二回目の自分が所々遅れを取る位、この時代の小学生の学力は進んでいた。
いや、元々俺は勉強は出来なかった方だし、前世の学歴に至っては中学まで。高校は……一日、二日程度しか通えなかったから、仕方ないのだ。
た、体育の方は満点だし。跳び箱だって余裕で10段飛べるし、てか手を抜いたって出来るし。体育の一点に絞れば、学校の連中全員が相手でも勝てるし。
───違う、何小学生相手に張り合っているんだ俺は。どうやら先日漸くあの姿に至ったお陰で変にテンションが高くなってしまっているらしい。
ゴジータとしてはこの程度で浮かれるのは憚られるが……今回だけは目を瞑ろう。何せ前世から憧れるあの【超サイヤ人】になる事が出来たのだ。
100倍の重力に適応し、いざ150倍の重力に挑もうと全身に力をいれた時、それは発現した。
黒髪は金色に逆立ち、瞳は翡翠色に輝きを宿し、全身には黄金の炎を宿す。テレビの中で幾度も見た天下無敵の最強戦士の面影が其処にはあった。
感動して震えた。何せ、これで自分は漸くスタートラインに立てたと胸を張れるのだから。この世界に生まれ変わって早一年、後藤甚田漸くの芽吹きである。
超サイヤ人になれるようになった影響は凄まじく、身体能力や飛行能力が変身前より比べ物にならなくなり、その膂力は単純な跳躍力で大気圏外を余裕で突破する程で、飛行能力に至っては秒で世界を一周する事が可能となった。
色々と規格外なこの肉体だが、肝心な超サイヤ人に至った経緯がよく分からなかった。超サイヤ人は穏やかな心を持ちながら激しい怒りを持つことで覚醒する戦士。サイヤ人が持つ特性の一つで、その特性は主人公達の子供達にも濃く受け継がれている。
だが、自分には怒りで覚醒できた自覚がまるでない。サイヤ人特有の食欲も無いことから、自分は本当にサイヤ人なのかと疑問に思ってしまう。
けれど、この身に宿る力の奔流は最早誤魔化しは効かない。取り敢えず超サイヤ人の姿は【個性】という事にして、上手く誤魔化していこうと思う。
そして、超サイヤ人になりながら重力室での修行は剰りにも楽だった。150倍の重力にも瞬く間に適応し、修行と呼べない程にまで簡単なものになってしまっている。
やはり超サイヤ人の力はまだ使わない方がいいだろう。通常の状態での強さを極めるべく、俺は今日も血反吐を吐きながら修行を続けた。
────そう言えば新しく来た城鐘って兄妹、なんか訳ありそうだったな。
ま、子供が施設に来るって時点で、訳ありも糞もないか。
─────そう言えばで思い出した。俺、ずっとここで修行してたけど、肝心な対人の戦闘経験がゼロやんけ。
なんとかせねば!
◇
─────城鐘御幸にとって、世界は自分と妹だけだった。
母は自分達が幼い頃に蒸発し、仕事一辺倒だった父は自分達の面倒を見るのが嫌になったのか、ある日に仕事に行ったきり帰ってこなかった。
二日か三日か、或いはそれ以上か。不思議に思った近隣住民が警察に通報し、駆け付けた警官とヒーローによって二人は保護された。
しかし、蒸発した親の子供という厄介な置物を引き取る物好きは彼等の親族にはいなかった。子供の事をあの手この手で押し付け合おうとする親族達、明らかに厄介者扱いをする大人達を目の当たりにした二人が、大人相手に不信感を抱くようになるのは然程難しくはなかった。
その後、誰の手にも借りずに自分達だけで生きていこうと決意し掛けた時、二人の前に一人の女性が現れた。
姫野葵。児童養護施設【星の都】の創設者である彼女は、親族達からの連絡を受け、自分達の前に現れた。
異形型の個性らしく、人の枠組みから外れた容姿の彼女。しかしその小動物な外見故か、妹である城鐘恵の受けは良く、その後はとんとんと話が進み、二人は星の都に引き取られる運びとなった。
施設での生活は悪くはなくとても清潔で、部屋も妹と二人同じにして貰い、食事も朝昼夕とキチンと出される。姫野葵自身も優秀な学者であった為、勉強も少しずつ教えて貰えるようになった。
妹と二人で過ごせて、親族にたらい回しされることも飢えに喘ぐ心配もなくなった。両親に捨てられるという最悪の体験をしても、どうにか生きていける目処が出来た。
しかし、そんな何かと裕福な星の都で生活して暫くして、城鐘御幸は一つの疑問に行き着いた。
後藤甚田。自分達と同じ施設の子供であり、姫野葵に最初に拾われた親無しの子。自分達と同じ、親に捨てられたであろう境遇でありながら、その事を全く気にしていない年上の子供。
そんな彼はいつも何処かへ一人ふらっと消えていく。食事時にも姿を見せず、見かけるのは然程多くはない。
学校に通ってはいるみたいだが、友達等が出来ている様子はなく、いつも帰って来るかと思えば何処かへと消え、夜まで姿を見せないでいる。
一体彼は何なのだろうか。不気味な年上の男子がいることもあって、この頃妹は少し怯えてしまっている。
保護者である姫野葵に訊ねてもはぐらかされてしまう始末。個人的に気になったし、なによりも妹の平穏の為に後藤甚田の生態を突き詰める事にした御幸は、学校から帰ってきた甚田の後を追い、そして─────。
「なんだよ、これ」
その光景に絶句した。
施設の地下とその奥にある扉、其処に備えられている小さな窓から中の様子を伺うと、血溜まりの中で体を動かしている甚田が其処にいた。
身体中の至る所から血を流している甚田、垂れ下がって腫れ上がっている左腕に注視すると、それが折れている状態であると知った御幸は、口を抑えて嗚咽を呑み込んだ。
良く見れば、足の向きも少しおかしい気がする。手足を折りながら、それでも体を動かしている甚田を見て、御幸は目の前の年上の少年が気狂いの類いにしか見えなくなっていた。
彼は、一体此処で何をしているのか。この事は姫野葵は知っているのか? いやそもそも……この部屋は一体なんだ?
「もしかして俺達、とんでもないところに拾われたんじゃ……」
思い浮かぶのは人体実験の文字。自身が予想する最悪の事態を前に御幸が焦燥感に襲われた時……それは起きた。
大きな衝撃。地下を揺さぶり、扉が吹き飛んでしまう。幸い地面に尻餅をついただけで怪我を負う事はなかったが、扉の奥────重力室の中心にて佇む明らかに姿の異なる甚田の姿に少年は言葉を失った。
腕を折り、脚を折りながらも、それでも自分を鍛えてきた少年。その体は黄金の炎を身に纏い、その頭髪は金色に逆立っていた。
神秘的、且つ絶対的な力。個性というには剰りにも規格外な力の波動。その力を手に入れた少年は………。
「─────は、ハハハ、ハハハハハ」
嗤っていた。歓喜に身体を震わせ、達成感に小さく涙を流す。何故なら………。
「やっとだ。やっと、俺は………スタートラインに、立てたんだ!」
漸く始まる。自分の目的の為の全てが、此処から始まる。
終わりではなく始まり。自らを傷付け、痛め付けてきた自分の、最初の一歩が漸く始まる。そう狂気的に嗤いながら喜ぶ甚田を目の当たりにした城鐘御幸は、言葉に出来ない恐怖を覚えた。
現時点でのプロフィール
後藤甚田
小学校に通い始めた時に超サイヤ人に覚醒できた。漸くスタートラインに立てたと喜ぶ傍ら、肝心の戦闘経験の無さに危機感を覚え、現在頭を悩ませている。
他の施設の子供達には今のところ興味はない。
姫野葵
自傷行為をさせないことと、最低限の学歴を身に付けさせる事を条件に重力負荷の上限を取っ払ってしまった苦労人。
甚田の事は気に掛けているが、最近は他の子供達の面倒を見なければいけないのも重なって余り関われないでいる。
子供の面倒を見るのは楽しいが、最初に救うと決めた甚田を構って上げられていない事を密かに苦悩している。
尚、甚田が修行の際に負った傷は本人の回復力の凄まじさもあって全く気付けていない。
気付いたら確実に病むし泣く。
城鐘兄妹
両親の蒸発に伴い施設に預けられた兄妹。施設の環境は良く、資金にも恵まれているみたいで一先ずは安心。
しかし、最初に施設にいたという後藤甚田の修行場面を見てしまった兄の白鐘御幸は一気に葵に不信感を抱く。
尚、御幸は甚田の超サイヤ人化を最初に目撃した人物である。
次回から時間が少し飛び、ヴィジランテ要素が出てきます。
ヒントつ地下闘技場。
それではまた次回ノシ