超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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最近、仕事が忙しくて辛たん……。

そんな訳で初投稿です。


記録69

 

 

 

 タイガーバニーの蹴りを受け、防いだ片腕から伝わって来る衝撃に、死神パーカーこと後藤甚田は目を見開かせて吹き飛んでいく。

 

四方を金網で覆われたリング、ガシャンと音を立てて吹き飛ぶ噂の死神パーカーに、観客からは歓声の声が上がる。

 

早速盛り上がる会場、しかし歓声の叫び声を上げる観客側に対し、タイガーバニーは顔色を青ざめていた。

 

(──なんだ、今の感触は)

 

 蹴った瞬間、タイガーバニーは違和感を覚えた。一見普通の人間と変わらない死神パーカー、これ迄通りなら今の一撃で死神パーカーはKOされていた事だろう。

 

だが、この時タイガーバニーは自身の足に途轍もない負荷を感じた。まるで巨大且つ頑強な肉の山に阻まれているかのような感触、これ以上力を込めれば蹴った自分の足がへし折れる。そんなイヤな未来が彼女の脳裏を過った。

 

 そして、そんな彼女の直感を裏付ける様に、死神パーカーは派手に後ろに飛んでいった。まるで自分の足が折れないように、受けた衝撃をそのまま逃がすように、黒いパーカーの少年は吹き飛んで見せたのだ。

 

(───マジかよ、受ける方にも技術が必要とか、クソ過ぎんだろ)

 

 驚愕し、唖然としているタイガーバニーとは対照的に、死神パーカーこと後藤甚田は苛立って失望し、何なら憤慨すらしていた。

 

「────はぁ」

 

そんな失望混じりの溜め息が聞こえたのか、タイガーバニーの顔に凶悪な笑みが浮かぶ。

 

「上っ等だ。そのパーカー、蹴り飛ばしてやるよ!!」

 

兎を思わせる跳躍力を以て、死神パーカーへ距離を詰める。これ迄幾度も悪漢達をその自慢の蹴りで薙ぎ倒し、闘争心が絶えない彼女はより過激な戦いに身を置くべく、地下闘技場へと乱入していった。

 

 喧嘩、或いは戦いへの嗅覚。野生児とすら思える彼女の本能の五感が目の前のパーカー男の存在を極上の獲物として認識した。

 

先ずはそのフードを蹴破って素顔を拝んでやる。意気込んで駆けるタイガーバニーは、勢いを殺さずに死神パーカーへ無数の蹴りを放つ。

 

拳の突き……ボクシングで言うところのジャブよりも鋭く速いその蹴りは、しかして死神パーカーに全て見切られてしまう。

 

「ッ!?」

 

 偶然か、フードに当たる寸での所を連続で躱す死神パーカーに大いに盛り上がる会場に対して、タイガーバニーは更に怒りを募らせる。

 

「テメェッ、ワザと!!」

 

タイガーバニーの動き、僅かしか見せなかった彼女の動きを見切った事で生まれた余興。プロヒーローですら難儀する彼女の蹴りを瞬時に看破した死神パーカーは、冷めた眼で彼女を見る。

 

最早彼女に見るべきモノはない。攻撃も単調な事からどれだけ速くても見切るには容易いし、何より彼女の俊敏(スピード)も大したことはない。

 

 見るべきものも倣うべき手本も無いのなら、せめて余興(舐めプ)にはなって欲しい。傲慢且つ不遜、しかし二人の間にはそれが成立してしまう程の差があった。

 

「舐めやがって、本気でやりやがれ!!」

 

 兎が吼える。彼女も気付いていた。目の前の死神パーカーは今の自分よりもずっと強い、それこそ、蹴った自分の脚を折らないように気を遣う程に目の前の存在とは実力差が隔絶していた。

 

それでも、喧嘩相手とは対等で在りたい。自分の今の行いが、単なる弱者の遠吠えに過ぎなくとも、例えこの後にどれだけ無惨に敗北したとしても、タイガーバニー(後のミルコ)は対等な勝負をしたかった。

 

しかし。

 

「だったら───俺に出させてくれよ、本気を」

 

 死神パーカーはそのフードの奥で嘲笑う。光の角度の影響か、フードの奥に隠れた黒い瞳がタイガーバニーを明らかに見下していた。

 

上等。凶悪な笑みをより深くさせ、両脚に力を入れて跳躍する。地面を陥没させる程の膂力、地面から天井に向けて一直線に飛び上がるタイガーバニーを、死神パーカーは静かに見据える。

 

 天井に張り付けるように着地、ギチギチとタイガーバニーの太股から筋肉の脈動が伝わってくる。ド派手な演出に会場は更に沸き立つが、対する死神パーカーはやはり冷めていた。

 

「行くぜ、オラァッ!!」

 

 天井に張り付いた時の負荷からの獲物に向けての垂直落下。諸々の勢いを乗せたタイガーバニーの一撃には、確かな殺意が込められていて、周囲の熱狂は更なる盛り上りを見せていた。

 

しかし……。

 

「軽いな」

 

「ッ!?」

 

 タイガーバニー(後のトップヒーロー)の渾身の一撃は、自分よりも年下の子供にあっさりと受け止められてしまっていた。

 

片手で、一切ブレる事なく、その上で彼女に反動のダメージを与える事なく、全ての衝撃を受け止めた上で、死神パーカーは彼女の一撃を受け止めて見せた。

 

 目の前の事実に、盛り上がっていた観客達は息を飲む。今のはタイガーバニーにとって必殺の一撃であった筈、喧嘩に明け暮れたチンピラも、喧嘩を見慣れた観客達も、その事は分かりきっていた。

 

しかし、そんな彼女の一撃は死神パーカーを傷付ける処か、その場から一歩も動かす事が敵わなかった。一体どういう事なのか、それとも相手の攻撃や衝撃を無効化するのが、死神パーカーの個性なのか。

 

誰もが理解できないでいる状況、そんな場に突如として乱入者が現れた。

 

「此処だな、個性を用いての違法な格闘技をしている現場は。全員動くな!」

 

「け、警察だと!?」

 

「クソが、どっかの馬鹿が付けられたな!!」

 

 突然現れた警察、中には武装した者や通報を受けて駆け付けたヒーロー達も押し入ってくる。違法な賭博も横行していた地下闘技場へのガサ入れ、予想外の事態に大慌てで逃げていく主催者や観客達とは別に、タイガーバニーこと兎山ルミは目の前の光景に唖然としていた。

 

「────いねぇ」

 

既に其処に死神パーカーの姿はなかった。ほんの一瞬、警察が突入してきた時に視線が逸れた瞬間にあのパーカー野郎は影も形も無くなっていた。

 

速い。自分に認識することすらさせず、気配すら感じさせないで消え失せるその動きは、最早人の範疇を越えていた。

 

 それだけじゃない、戦いが始まってからずっと自分は遊ばれていた。……否、あれはそもそも戦いではなかった。

 

あのパーカーは、ずっと何かを試していた。目の前の自分ではなく、全く別の事柄に意識を割いていた。

 

そう、奴にとって自分は対等の対戦者ではなく、有象無象の障害ですらない。ただの────。

 

(上等だ。次会った時、絶対(ぜってぇ)蹴りを入れてやる!!)

 

 初めて味わう屈辱、怒りを己の力に変え、兎もまた会場を後にする。いつか再び出逢える事を祈りながら、一方通行な気持ちを胸に秘めて……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局、あまり意味は無かったか」

 

 帰り道、警察やヒーローに己の存在を認識すらさせずに帰路に就いていた甚田は、自分の思う通りの事が何一つ叶わなかった事に対して、憤りを通り越して失意で満ちていた。

 

世話になっている恩人に迷惑が掛かるかもしれないリスクを負って、それでも挑んだ地下格闘技。謳文句にはそう呼ばれているが実際に参加して見た所、甚田には地下闘技場というより、個性という力を持て余した子供が遊ぶ遊技場にしか見えなかった。

 

 どいつもこいつも自分に力があると錯覚した奴等ばかり、力を極めることも、技を磨くこともしない奴等は、ヴィラン以下のボンクラに過ぎない。

 

自分の対戦相手だった………なんだったか? 何とかバニーは多少の心得があった様だが………それだけ。

 

「やっぱ、自分の力で何とかするしかない、のかなぁ……」

 

 成果があったとすれば、どんなに弱い奴が相手でも、殺さずに無力化させる方法を身に付けた。という位、ゴジータとして生まれたこの肉体は、半端な攻撃は通用せず、寧ろ仕掛けてきた相手の手足を壊しかねない。

 

そうさせない為に、受ける方の工夫も学ぶ必要があり、今回はそれに対応出来るようになった。そういう意味では今回の件は価値があったと言えるだろう。

 

 けれど、まだ足りない。ゴジータとして産まれ、ゴジータとして生きていくには今の自分には何もかもが足りていない。

 

だが、なにをすれば良いのか分からない。鍛えるための環境は用意して貰ったが、未だに自分を追い詰める鍛練しか思い付けない甚田は、行き詰まった自分のこれからに頭を悩ませながら家に着くと……。

 

「甚田、こんな夜中まで何処で何をしていたの?」

 

「────あ、先生」

 

 普段穏やかな彼女とは想像できない、怒りに震える恩人が玄関先で仁王立ちしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「甚田、こんな時間まで何処で何をしていたの?」

 

「────」

 

 答えない。他の子供達は既に寝静まり、二人きりのリビングに通されて早数分。問い質してくる姫野に対して甚田は黙秘を貫いていた。

 

 俯き、口を開こうとしない甚田に姫野は辟易とする思いだが、その感情は決して表には出さない。何せ今日まで殆んど甚田には関わってこなかった自分にそんな偉そうな事を言える資格はないからだ。

 

自分は、甚田から逃げている。あの日、自分を傷付けてまで強くなろうとする甚田を恐ろしく思い、避けてきた。他の子供達の面倒を見なくてはいけないという、尤もらしい言葉を吐いて。

 

(あの日から、甚田は続けている。自分の体を壊す程の負荷を、ずっとその体に掛けている)

 

 それは、まるで自戒の様で、自分自身を罰している様にも見えた。此処ではない何処かを目指して、自分以外の何かになろうとしている。

 

そんな生き方を、これ以上して欲しくなかった。けれど、そんな彼を止める術も言葉も姫野葵は持ち合わせていない。

 

だから。

 

「────甚田。貴方が何を思い、何を目指しているのかは、私には分かりません。だから、私は貴方に一つの提案を示したいと思います」

 

「提案?」

 

 自分の言葉に初めて甚田は反応を示した。それが少し嬉しくて、思わず笑みが溢れそうになるけれど、姫野は口を閉じて表情を引き締める。

 

「甚田、雄英に行きなさい。そこへ入学し、無事に卒業したのなら、私は今後貴方の活動にとやかく口出ししたりはしません」

 

 それは一つの賭け。甚田の抱える悩みを少しでも減らしてやりたいと願う姫野葵が出せる唯一の提案。

 

日本最高峰のヒーロー養育施設であると同時に、最高峰の教育現場でもある雄英。彼処ならきっと、甚田の悩みにも寄り添ってくれる。そんな、他力本願の願い。

 

 情けないと思いながらも、姫野は言う。其処に入学し、無事に卒業しなさいという。

 

ヒーローになれとは言わない。元より彼が目指しているのはそういうものではないと、姫野葵には何となく理解していた。

 

ただ、知って欲しい。世界には貴方の事を考えてくれる人が、自分以外にもいるのだと、学校での生活を通じて友人を、友達を作って欲しい新しい世界を見出だして欲しい。

 

そんな、彼女の密かな願いは……。

 

「────分かった」

 

 取り敢えず、聞くだけ聞いて貰えた。

 

 

 

 





学生時代の甚田。

小中は一貫して目立たない様にし、個性関係も持ち前の怪力としてごり押してきた。

しかし小学生時代のある日、何回か親無しの件で虐められかけていたが、大抵は無視したきた。
しかしある日、恩師である姫野の事を罵倒してきた時は虐めてきた連中まとめて全員【高い高い】してやった。

ゴジータとしての腕力を用いての逆バンジー、いじめてきた連中は揃って白目を剥いて身体中の体液を垂れ流し失禁。

気絶をする際。

「もしまた同じ事ぬかしてみろ? お前らの親兄弟全員同じ目に合わせてやるからな?」

怒気を滲ませてのその言葉に、イジメっ子達は全員不登校になり、後日地方へ転校する事になる。


尚、この後に甚田は重力室で超サイヤ人になれた模様。

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