青く染み渡った世界、勝利の女神と共に戦う戦場。
………成る程、どうやら自分は銃火器がメインとなるソシャゲが好みだったらしい。
他意はナイヨ?
そんな訳で初投稿です。
自身の情景は理解されない。そんな当たり前の事を再認識した甚田は、今日も今日とて鍛練に勤しむ。
自らを死地に追いやり、実際に死にかけ、そして生還する。学校から帰ってきた甚田のルーティンは相も変わらず続いている。
だが、その生活にも変化が生じた。日頃から血だらけになり、手足をへし折りながら鍛練に没頭していた甚田だが、遂にこの日、保護者であり後見人である姫野葵に知られてしまった。
「甚田? ………何を、しているの?」
「────あ? あぁ、なんだ先生か。今ちょっと手が離せないんだ。悪いが話は後にしてくれ」
「手が離せないって……貴方、その手、折れて……」
「あぁこれ? 問題ないよ。この程度の痛みなんてもう慣れてるし、直に治る。この血だって既に止まっているから、放っておけば勝手に治るよ」
「─────」
施設の地下にある甚田専用のトレーニングルーム、それは姫野葵が開発した重力の制御装置。今は休憩中なのか稼働は停止しており、部屋の中心で自らに手当てしている甚田は、絶句している葵を気に掛けながら、努めて穏やかな口調で話し続けた。
しかし。
「だから、俺の事は心配しなくていいから。先生は自分の仕事をしてきなよ。もうすぐチビ共も起きる頃だろ? 後少ししたら俺も手伝うから、だから────」
「バカな事言わないでよ!!」
それを当然彼女が許す筈もなかった。その眼から大粒の涙を流しながら駆け寄ってくる姫野を、甚田はバツが悪そうに俯く。
「いつからなの、いつから、こんなになるまで………」
近付いたらより明らかになる甚田の身体に、姫野は息を呑んだ。全身の至る所にある傷、それは甚田が最初に見せた自傷行為による傷跡も幾つかあり、特に胸元回りが酷かった。
中には致命傷になっても可笑しくない程に深い傷もあった。医療関係の知識が乏しい姫野だが、そんな彼女でも即刻病院送りだと確信出来る程度には、甚田の身体は酷い有り様になっていた。
「なんで?」
「うん?」
「なんで、此処までするの? なんで、甚田はここまでやるの? 甚田は一体……何がしたいの?」
「ゴジータになる為」
「───は?」
その台詞に、思考が止まる。
「先生、俺はね、ゴジータになりたいんだ。ならなきゃいけないんだ。来るかもしれない脅威を打ち倒すために、最強の存在で在り続けるように、俺は強くならなきゃいけない」
「甚………田?」
「まぁ、分からないよね。理解なんて出来るわけがない。でも、別にいいんだ。それでも、俺のやるべき事は変わらない」
量子物理学の博士号を持ち、若くして天才と言われてきた姫野葵。異形系の個性を持つが故に家族から迫害され、それでも優しい人として育った彼女。
そんな彼女でも、目の前の少年の事は理解できなかった。彼の言葉が、彼の存在が、彼の抱く………情景が。
「大丈夫だよ先生、俺は大丈夫。だから………心配しないでくれ」
既に、甚田の中での線引きは済ませてある。“自分とそれ以外”それが最も分かりやすく、また守りやすい構図。
理解は得られない。得られたいとも思わない。それでも自分のやるべき事を見付けた甚田は、平然とした面持ちで立ち上がり、部屋を後にする。
すれ違う間際、葵は見た。澱み、濁っている彼の眼を。それはまるで………。
「甚田、待っ………」
振り返り、手を伸ばそうとするも届かない。何故なら、自分は一度彼から逃げた。理解できないと恐怖し、理解できないからと彼に関する思考を削いだ。
それは、他ならぬ嘗て自分を虐げてきた家族達。異形という個性を持つ自分にしてきた者達と、同じことをしている。そう自覚してしまった姫野には、彼の手を掴むとこは出来なかった。
「ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい………!」
座り込み、顔を両手で覆う。溢れ、止まることなく落ちている涙。どれだけ涙を流し、謝罪した所で過去の自分の所業は変わらない。
それでも、姫野は謝り続けた。例えその言葉がもう後藤甚田に届かなくても、無意味な事だとしても、彼女に出来ることはもう、それしか無いのだから……。
◇
あぁ、また泣かせた。泣かせてしまった。
その日の夜、久し振りの睡眠を取るために自室のベッドで横になる甚田は、今日の出来事を振り返り一人反省をする。自分を拾い、育て、我が儘を聞いてくれた恩師。姫野葵をまたもや自分は泣かせてしまっている。
ゴジータを目指し、ゴジータとして生きていく自分が、誰かを泣かせるのはあってはならないことだ。彼は何時だって危機や不安を覆す存在で、誰かから心配されるのは決して有り得ない。
まだまだ自分は其処に至れていない。分かっていたけど改めて突き付けられる事実に、甚田は自身の不甲斐なさに歯痒く思った。
もっと力を、もっと強さを。限界なんてモノは言い訳で、それを乗り越えて初めて自分はこの世界に立つことを許されている。
やはり、もっと自分を追い詰めなければならない。よりゴジータとして振る舞わなければいけない。そうなると必然的に邪魔なモノがある。
そう、自分だ。ゴジータとして完成するには後藤甚田という人格は致命的な程に噛み合わない。当然だ。自分はゴジータに憧れる偽物であって、本物のゴジータには程遠い。
だから、せめて強さだけでも本物に追い付こうと、甚田は我武者羅に己を鍛えた。より強く、より強く、より強く。誰よりも、何よりも………ゴジータの様に。
気が付けば、季節は過ぎていた。林間合宿も、インターンも、ヒーローを目指す雄英生にとって大事なイベントも、甚田にとっては取るに足らない雑事に過ぎない。
誰かが何かを言っていた気がするが……知らない。誰かが誰かを気に掛けるような声が聞こえた気がするが……聞こえない。
期末テストで、何やら教師達が言っていた気がするが………聞こえない。彼等の声では、自分の耳には届かない。
軈て、寝る間も惜しんで鍛練を続け、身体の至る所に傷や包帯が出来ているが………関係ない。今の自分には誰かの声に耳を傾ける余裕も、未来に眼を向ける暇もない。
ただ強く。只管に強く。限界を超え続け、果てしない頂きに少しでも近付けるために、後藤甚田は今日も自らを追い詰め続けた。
そして………。
◇
─────夢を見ている。そうハッキリと認識出来る程の明晰夢、どうやら自分は1500倍の重力での鍛練を終えた後、気絶してしまったらしい。
相変わらず情けない自分に嫌気が指す。これではいつまで経っても本物のゴジータに近付ける事は叶わないだろう。
この明晰夢もきっとそんな自分の精神状態から来ているモノなのだろう。でなければ、目の前で佇んでいる存在の説明がつかない。
『『──────』』
ゴジータ。最強無敵で、あのベジットと比肩する合体戦士。見間違う筈がない、見誤る事などあるわけがない。
自分の憧れそのものが、明確な形となって自分の前に佇んでいる。けれど、その表情は何処か影が掛かっており、その眉間には深い皺を寄せている。
まるで頭痛がするという風に額に手を添えるゴジータに、俺は彼が何を言いたいのか何となく理解した。
『は、はは………やっぱりダメか。こんなに頑張っても、俺じゃあアンタの影すら踏めないって事か』
目の前の幻影、自分の中にあるゴジータはきっとこう言いたいのだ。“お前ごときがゴジータを名乗るのは烏滸がましい”と。
どれだけ頑張っても超サイヤ人2の枠組みから抜け出せず、未だ超サイヤ人3に至れていない。
失望、落胆、ため息を吐きながら頭を抱えるゴジータに、俺はそう解釈をせずにはいられなかった。
………あぁ、分かっていた。そんな事は分かっていた。
けど。
『分かってんだよ、俺のやってることはただの自己満足だって、けど仕方ないじゃないか! 俺は、ゴジータになっちまったんだから!!』
『知ってんだよ、俺がゴジータになれないことは!! そんな事、俺が一番理解している!!』
どれだけ自らを追い詰め、鍛えようとも、自分がゴジータになることは有り得ない。何故なら自分は悟空でもなければベジータでもない、あの作品が好きで、ゴジータというキャラクターに憧れたただの人間でしか無いのだ。
けど、だからこそ自分が許せない。弱いゴジータでいる自分が、今後現れるかもしれない脅威に怯えている事が。
情けない。こんな自分が心底嫌になる。痩せ細った自分の手足を見て、◼️◼️◼️◼️の眼から涙が溢れた。
『でも、それでもならなくちゃ行けないんだよ。俺が、俺がやらなきゃ………』
『誰が、皆を守るんだよ』
ポツリと溢れた呟き、その台詞は目の前の
残念そうに首を横に振ると、彼は霧の様に消えていった。
ああ、やはり自分は失望されたのだと、消え行く憧れの存在に歯を噛み締める。
翌日、いつもと変わらぬ朝を迎えた甚田はこの日以降、超サイヤ人になれる事はなかった。
次回、出会い。
その日は、鬱陶しい程に雨が降る日だった。
「遂にゴジータと冬姉ぇの出会いの日か」
「さらに向こうへ、Plus Ultra!!」
各教師から見た後藤甚田。
相澤消太
甚田の言葉の意味に理解が及ばず、咄嗟に素で反応してしまった。自分の態度に生徒を傷付けてしまったと落ち込むが、それでも何かに囚われている甚田を何とかしようと奔走する。
山田ひざし
最初は何だか生意気な生徒だが、強い個性を持ってたらそうなるかと軽く思っていたが、実際はその真逆。誰よりも強い個性を持つが故に、誰よりも苦しんでいた甚田に気付けず、発覚後かなり落ち込む事になる。
それでも持ち前の明るさで立ち直り、甚田を良いヒーローにしてやると決意を新たにする。
例え甚田自身がヒーローを望まぬとも、いつか彼がヒーローを志す時、少しでも力になれるようにと。
山田ひざし、教師としての才能が開花する瞬間である。
修善寺治与
その観察眼から、甚田が日頃から自身の肉体を酷使していることを見抜き、強制的に治癒を施している。
けれど、どんなに咜り付けても改善しようとしない甚田に頭を悩ませる。何故其処まで強くなるのか、何故其処まで強くなろうとしているのか、何に怯えているのか。それとなく訊ねた際。
『俺は………ゴジータだから』
そう笑う甚田に、修善寺は彼がこうなる理由を垣間見た気がした。
「あの子は、度しがたい程に優しい子だよ。果たさなくても良い責任を、あたかも自分の所為だと思い込んでしまっている」
「背負わなくて良いものを背負い、一人勝手に悩んでいる。だからこそ、ああ言うのは言葉では止まらないのさ」
根津校長
例えヒーローに興味がなくても、健やかに育ってくれればそれでいい。彼もまた雄英の生徒、自分達が守るべき子供達の一人。
彼が起こす全ての責任は自分が背負う。それが、教育者に過ぎない自分に出来る唯一の出来る事なのだから。
「いつか、君が本当になりたいものを見付けられるよう、見守ってるよ」
セメントス&スナイプ&13号
期末試験でゴジータに理解らせられた。