超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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ブルアカ三周年、ドカバト九周年。

大きなイベントが目白押しでメジロになる。

そんな訳で初投稿です。


記録81

 

 

 

「オラァッ!! ウチの若頭をさっさと出せぇ!!」

 

「情報はアガってんだ、隠し立てしても容赦しねぇぞ!!」

 

 大阪府警に押し寄せる大勢のヴィラン、声を張り上げ、怒声を吐き出しながら押し寄せてくるヤクザ者達の行進に、警察は自らの防衛に手一杯になっていた。

 

若頭を出せ、解放しろ。ヤクザ達の言葉の意味を理解出来ていない警察は、ただ困惑しながら対処に当たっていた。

 

そこへ、空から大きな影が警察側を庇うように地上へ下り立つ。大きな翼と鋭い爪、爬虫類の様な目をしたそれは物語に出てくる西洋風のドラゴンに酷似している。

 

 リューキュウ。ヒーロービルボードにランキング上位に名を連ねている彼女が、複数のインターン生と共に大阪府警前へ降り立った。

 

「三人とも、もうすぐゴジータがここへ来るから、決して無理はしないように! 安全を最優先にしてね!」

 

「了解!」

 

「フロッピー、私達は警察の人達の援護に!」

 

「ケロ、了解したわ」

 

「私も行くよー!」

 

 巨体であるリューキュウの体から飛び降りる三人娘、ネジレチャンを先頭にウラビティ、フロッピー。彼女達の錬度の高い連携は、勢いだけの素人でしかないヤクザ達を翻弄していく。

 

 しかし、勢いだけとは言え相手は個性を使うことを躊躇しない極道ヴィラン。特に若頭なる人物を取り戻すと息を巻いている一部のヤクザは、それこそ命を掛ける覚悟でリューキュウ達へ雪崩れ込んでいる。

 

「いけぇ力也ッ! ヒーローも警察もまとめて蹴散らしやがれ!」

 

「おぉよっ!」

 

 そんな中、一際巨漢の男がリューキュウへと迫る。首筋に何かのアンプルを注入すると、周囲の警察やリューキュウは途端に力が喪われるのを感じた。

 

(な、急に体から力が抜けて……まさか、今のが昨今噂のブースト薬!?)

 

目の前の力也と呼ばれるヤクザの個性は活力吸収。本来なら触れた相手の活力を己の力とする異能力であったが、首に射たれたアンプル───ブースト薬なる違法薬物を用いた事に個性を変化させ、周囲の人間を敵味方問わず活力を奪っていく。

 

 見境なく活力を奪っていく一方で、力也の力は増していく。軈て体躯も増していき、リューキュウすら上回る彼のパワーは察するに余りある。

 

リューキュウの顔が引き吊り、警察達も怖気付く中……。

 

「取り敢えず、ギリセーフかな」

 

 黄金の炎を纏うゴジータが、体当たりを仕掛けてくる力也の体を片手で押し留めていた。

 

「ッ!?」

 

「ご、ゴジータ!!」

 

「ゴジータ、来てくれたんや!」

 

「ケロ、間に合ってよかったわ」

 

 唐突に現れたNo.1ヒーローに、今度はヤクザ側が凍り付く。特に、自身の出せるフルパワーを以てしても微動だにしないゴジータに、力也は隔絶した力の差に絶望すら抱いていた。

 

「さて、ご近所の目もあるし、取り敢えず全員……寝ておけ」

 

 そんな力也の心情など知る由もなく、ゴジータの回し蹴りが力也の胸元に突き刺さる。鋭く、重い。巨体となった自身の体が浮き上がる程の衝撃を受けた力也は、抵抗する素振りも見せずに地に沈む。

 

組の中でも主戦力だった力也が一撃で沈められた。No.1ヒーローの実力を初めて目の当たりにした一部のヤクザは腰を抜かし、殆どの構成員が戦意を失う中。

 

「ウラビティ、フロッピー! 無事!?」

 

「デク君!」

 

「ケロ、爆豪君にショート君もいるのね」

 

「俺もいるぜフロッピー!」

 

 後からやって来た同じインターン生の緑谷達やヒーロー達も応援に駆け付けてくれた事により、事態は収束していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助かったよヒーロー、特にゴジータ。君の生の活躍を見れるとは思ってもなかったよ。帰ったら息子に自慢できそうだ」

 

「あ、うん。そっすか」

 

 駆け付けてきたゴジータとヒーロー達の活躍のお陰で、暴徒と化した死穢八斎會のヤクザ、その全員を取り抑える事に成功した。握手を求めてくる警察のお偉方に若干目を泳がせているゴジータに大阪府警に直接赴いていたリューキュウ達は首を傾げている。

 

「ゴジータ、なんか居心地悪そうだけどどうしたん?」

 

「あ、アハハ、まぁちょっと……ね」

 

 まさか自分の行動で一つの組を暴走させたとは言えない。訊ねてくる麗日にデクは苦笑いで誤魔化すしかなかった。

 

「ともあれ、これで死穢八斎會も終わりか」

 

「まだだ! まだ終わっちゃいない!」

 

 若頭である治崎も確保し、これで旧きヴィラン組織も潰える。誰もがそう思われ一人の警官が呟いた時、一人の青年が声を張り上げる。

 

「俺達の、廻の夢は終わらない!死穢八斎會の、極道の未来は、まだ、潰えちゃいねぇ!!」

 

「あれは?」

 

「構成員の一人、玄野針。死穢八斎會の一人で、若頭である治崎廻の側近です!」

 

 金色のペストマスクの奥から見せる激情、玄野と呼ばれる青年の瞳にはゴジータに対する怒りが滲み出ていた。

 

「ゴジータ、お前さえいなければ何もかも上手く行ってたんだ! 廻の夢、組長(親父)の願い、全てが叶っていたんだ!! それを!!」

 

「その結果、年端もいかない幼女に暴行虐待………ねぇ? はっ」

 

 玄野の語る若頭と組長の夢、それがどれだけ高尚で尊いモノだとしても、それがあの傷だらけの少女に繋がるのであれば、ゴジータとしては鼻で笑うしかない。

 

「笑わせんなよ。お前の語る夢ってのは、一人の少女の犠牲に成り立つモノなのか? だとするならお前らは………ほとほと救いようがねぇな」

 

「ッ!?」

 

 ゴジータの脳裏に過るのは施設に住まう子供達。皆、それぞれの理由で両親から捨てられ、心身に大きな傷を負っている。そんな子供達を元気に健やかにしようと、日々奮戦している姫野葵には本当に頭が下がる思いだ。

 

ゴジータ………後藤甚田にとって、彼女こそが大人としての理想像。自身に至らぬ所があっても、それでも子供達の為に努力を続ける彼女こそが、大人そのものだった。

 

自分も、そんな姫野に救われた。………だから。

 

「小さな女の子一人に縋らなきゃならねぇ組織なんざ………とっとと滅びろ」

 

 この瞬間、死穢八斎會はゴジータの明確な敵となった。

 

「うぅ、うわぁぁぁぁっ!!」

 

「ッ、コイツ、薬を!!」

 

 ゴジータの言葉に何一つ言い返せなかった玄野は、拘束された手足を無理やり動かしながら懐にある一本のアンプルを取り出す。

 

手錠で填められた手を無理に動かした事で手首周辺から血が噴き出してくるが、玄野は止まらない。

 

直ぐ様拘束しようと周囲の警察及びヒーローは動くが、それよりも早く手にしたアンプルを自身の首に打ち付けると。

 

瞬間、力が濁流となって溢れ出る。濁流は暴風となり、周囲を吹き飛ばしていく。目の前の現象に既視感のあるゴジータは目を見開き、ファットガム達は驚嘆している。

 

「コイツは………」

 

 思い返すのは神野での一戦、城鐘兄妹達の父を凶暴化させた時の事。目の前の現象にはそれと幾つも類似しており、何より……。

 

「は、ハハハハ、何だよこの力、スゲェよ!! こんなんじゃあ他の奴がゴミみてぇに見えちまうのも仕方ねぇよなぁ!!」

 

 白い炎を纏い、筋骨隆々となり、髪の逆立った玄野を見てゴジータは確信する。

 

「───どうやら、してやられたみたいだな」

 

死穢八斎會、そこに通じている組織。そこには自分の血を利用して何やら目論んでいる輩がいることはこれ迄の調査で分かっていた。

 

だが、実用化に至るまでまだ暫く時間を有すると思っていた。奴の───A.F.Oに与する研究者と言うのは、思っていた以上に面倒な奴らしい。

 

 舌打ちを打つゴジータに、力を得た玄野は笑みを浮かべる。

 

「これなら、すぐにでも廻を助け出せそうだ。俺の命に変えても、アイツの夢を叶えさせる。そうすれば組長………親父だって、認めざるを得ない筈だ」

 

「させると思ってンのか!」

 

 手錠を訳もなく引き裂き、一瞬にして自由の身となった玄野は、改めて廻を助け出そうと警察へ向き直る。力に溺れ、尋常ならざる眼をした玄野に警察一同は怯むが、そんな事に構わず爆豪が彼奴の頭上に躍り出る。

 

 死角からの強襲、しかも頭上からの完璧な不意打ち。しかし、とある細胞を注入された玄野の五感は極限まで研ぎ澄まされている。迫り来る爆風を前に玄野は爆豪へ視線を向ける。

 

「出来るさ。少なくとも、此処にいる全員を皆殺しには出来るだろうね」

 

 刹那、背後からの声に爆豪は目を見開き、驚愕していた。今まで、玄野は自分の眼下にいた筈。それなのに爆風に視界が一瞬だけ遮られたかと思えば、奴は自分の背中に回っている。

 

(ンだ、この速さは!?)

 

「かっちゃん!!」

 

「爆豪!!」

 

 咄嗟に走り出した緑谷が振り上げた玄野の腕に蹴りを入れ、轟が氷で動きを止める。二人の本気の一撃はしかして玄野を止めるには至らず。

 

「邪魔だ」

 

「「「ッ!?」」」

 

 軽くその腕を震うだけで氷は弾け飛び、三人は吹き飛んでしまう。

 

「あ、危ない!!」

 

「何の任せい!!」

 

 吹き飛ぶ三人をファットガムがすかさずキャッチ。クッション性のある彼の体に収まった三人は事なきを得るが、既に玄野は次の手を打っていた。

 

「全員、暫く止まってろ」

 

 玄野針の操る個性は【クロノスタシス】。薬で超劇的に強化された彼の個性は、頭髪の一本一本まで個性の力が宿っている。自在に伸びるその短針と長針に触れられたモノは須く遅くなり、その影響力は自由落下等の物理的現象にすら及んでいる。

 

 無数に伸びた短針は悉くヒーロー、警察の面々に刺していき無力化していく。向こう一時間自由を奪われた面々は目を見開き固まってしまっている。

 

「は、ハハハハ!! この力さえあれば俺は無敵だ!! 何人も、俺達の夢を阻ませは………!」

 

「おい」

 

「ッ!?」

 

「お前、ちょっと調子に乗りすぎたな」

 

 その中で、唯一短針から逃れていたゴジータは呆れとも侮蔑とも取れる視線を玄野に向ける。だが、その程度で玄野が止まる訳もなく、いつまでも余裕の態度のゴジータを如何にして崩してやろうかと言う獰猛な思考で埋め尽くされていた。

 

「あぁ、そりゃ乗るだろうよ。こんなスゲェ力を独占しちまったらよぉ!!」

 

 それは、最早瞬間移動とも呼べる速さだった。ゴジータとの間にあった距離を一瞬で零にまで縮め、振りかぶった拳には特大の殺意を込めて振り下ろす。

 

直撃すれば地盤もろともゴジータを叩き潰せる。それだけの威力を込めた一撃は………。

 

「───舐められたもんだな」

 

 しかして、当たることはなかった。

 

「がっ、あっ……?」

 

 懐に潜り込み、玄野の腹部へ肘鉄を捩じ込む。カウンターを利用しての一撃は、玄野の体を硬直させるには充分な威力を秘めており。

 

「ただ力を得た。それだけで俺と張り合えると驕るその思い上がり、叩き潰してやるよ」

 

「や、やぁめ───」

 

「シッ」

 

 玄野の口から溢れる懇願、それをゴジータは蹴りを以て吹き飛ばす。瞬く間に遥か彼方へ吹き飛んでいく玄野、数秒後には日本を一望できる高さまで吹き飛んでしまう彼の背後から、更なる一撃が襲い掛かる。

 

「フンッ」

 

「────ッ!?!?」

 

 握り締めた拳を振り下ろし、玄野の背中へ直撃する。その衝撃と痛みで既に意識を失った玄野は、泡を吹きながら地上へ落下。

 

既に回り込んでいたゴジータが、片手でキャッチ。意識不明となったヴィランを無造作に地面へ投げ捨てると、改めて警察へ逮捕を促す。

 

「────チッ、嫌な予感がするな」

 

 端から見ればゴジータの完全勝利。しかし対照的に、ゴジータの表情は何処か暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで? 今後は君の協力を仰げると、そう判断しても良いのかね?」

 

「勿論。自分としても、かのNo.1ヒーローは色々と目障りですので」

 

「……そうか、なら精々期待するとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

────ホークス。

 

 

 

 

 





最近寒さがヤバくて風邪引きそう。

皆様もお気をつけて。
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