超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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ヒロアカの物語もいよいよ佳境……。

そんな訳で初投稿です。


記録85

 

 

 

 それから少しだけ時間が進み、その間にも様々な事件が世間を賑わせていた。

 

個性を増強させ、暴走させる【トリガー】を爆弾に変えてテロとして悪用し、個性保有者だけを殺す過激思想団体【ヒューマライズ】。

 

世界中を巻き込んだ騒動は、世界中のヒーロー達が対処する事で沈静化。中でもヒューマライズの本部は日本のNo.1ヒーローであるゴジータが壊滅させたと表向きには報じられている。

 

 その裏で活躍していた三人の若いヒーローと現地の青年、彼等が本来の事件解決の立役者である事を知っているのはゴジータと、一部の関係者だけである。

 

 その後も、Mr.スマイリー等といったヴィランを逮捕したりなど、ゴジータのヒーロー活動は順調に進んでいき………そして。

 

遂に、その日を迎えた。

 

某県境にある山中、其処には数多くのヒーロー達がとある大規模作戦の為に陣取り、様子を伺っていた。

 

新旧問わずの人員投下。相手にする組織規模の大きさにより、既に全国規模で展開されているこの作戦の中には、プロのヒーローだけでなく仮免の………つまりは学生である生徒達の姿も確認されていた。

 

「な、なぁ、本当にオイラ達って此処にいていいのかよ? 明らかに場違いじゃねぇか?」

 

「今更言いっこ無しだぜグレープジュース、皆で決めたじゃねぇか。今回の作戦は本人の自由意思を尊重するモノ、それを俺達皆が話し合って決めたんだろ」

 

 学徒動員。本来なら未だプロには至れていない生徒達を作戦に動員させるのは憚られるが、今回のヴィラン組織の規模は先のヒューマライズ以上とされており、万が一の取り零しに備えて仮免の生徒達は後詰め要員として動員されていた。

 

 とは言え、未成年を危険な場所に巻き込む以上最低限の事情説明は必要だと、各学校のヒーロー科担当の教師は生徒達に諫言令を厳しくしながら、人知れず説明責任を果たし、生徒達も充分に時間を掛けながら話し合い、そして作戦に参加することを決めた。

 

「け、けどよぉ! 此処まで大規模だなんて予想できっかよぉ!」

 

 しかし、それはそれとして嘗てないヒーローを動員しての大規模作戦に若いヒーローの卵達が緊張しない筈がなく、グレープジュースこと峰田実の言葉に誰も強く反論できなかった。

 

何故なら、此処には数多く存在するヒーロー達だけでなく。

 

「なんだぁ? まだぶつくさ文句言ってんのか峰田」

 

「うぉ!? ご、ゴジータ!?」

 

 既に全世界にその存在を認知させている日本No.1ヒーロー、ゴジータが参戦しているからだ。

 

唐突に現れ、背後から声を掛けられたことに驚く峰田は、振り向き様に腰を抜かして地面に座り込んでしまう。

 

 本来ならNo.1ヒーローとして数キロ先にある本陣の先頭で合図を待つべき人間が、自分達の所にいる。その事実に峰田だけでなく他の生徒達にも動揺は広がっていった。

 

「不安に思う気持ちは分からなくもないがよ、そいつはチッとビビり過ぎなんじゃねぇか?」

 

「だ、だってよ、俺達まだ学生だぜ!? まだ仮免しか持っていない奴が此処にいるのは、どう考えてもおかしいだろ!?」

 

それでも自分の意見をちゃんと言える辺り、峰田実はビビりながらも成長していた。

 

「まぁそう言うなよ。此処に来る前に既に話し合いは済ませてたんだろ? 前線の方は俺達で何とかするからよ」

 

「で、でもよぉ………」

 

「それに、此処でもしカッコ良く立ち回れたら、お前も晴れてモテ男の仲間入りだぜ。想像してみろ、自分の個性で女性のヒーローを助けたとあった日にゃ………」

 

「全力で、務めを果たさせていただきます」

 

 何処まで妄想を膨らませたのだろうか。目をキリッとさせ、綺麗な敬礼を見せながら鼻血を垂れ流す峰田に男子生徒達は呆れ、女子生徒達はドン引いている。

 

自分の欲望の為なら多少の恐怖すら呑み込んで見せる。そんなある意味ヒーローらしい峰田にゴジータだけは本心から頼もしく見えた。

 

「おう、頼んだぜ。お前らも、あまり肩肘張らずに気張ってくれ」

 

「「は、はい!!」」

 

 恐らくは不安と緊張で強張る生徒達の様子を見に来たのだろう。程よく解れた様子の彼等を見ると、ゴジータはフッと笑みを溢し、音もなく姿を消した。

 

超スピードによる移動。目にも映らない速さで掻き消えるゴジータに周囲はどよめくも、クラス委員である八百万により場の空気は纏められる。

 

 そして、遥か向こうから伝わってくるより緊迫した空気により、生徒達はそれぞれ確信する。もうじき作戦は始まる。ヒーロー社会始まって以来の大規模作戦に改めて生徒達は気を引き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、怖ぇぇよぉ、皆の所へ帰りてぇよぉ」

 

「此処にもいんのかよ」

 

 そして、先頭グループへ戻ってきたゴジータは涙鼻水を垂れ流しながらベソ搔いている上鳴に若干引いた。

 

「あ、ゴジータ戻ってきたのね。どうだった、後の生徒達は」

 

「あぁ、予想通り峰田の奴がベソかいていたけど、チョロッと煽てたらノッてくれたよ。あぁもノリが良いと別の意味で心配してくるな」

 

 一分と掛からず戻ってきたゴジータにミッドナイトが出迎える。別に騙すつもりも無かったが、彼処まで分かりやすく反応を変える峰田にゴジータは彼の将来について少しだけ不安に思った。

 

そんなゴジータの苦悩に同調するようにミッドナイトが苦笑いを浮かべると、現れたゴジータに気付いた上鳴が鼻水を伸ばしたまま迫ってきた。

 

「ご、ゴジータ!? 皆の所に行ってたの!? じゃあ俺も連れてってよ! 俺こんな前線にいるのなんてヤダよ! 怖いもん! 皆が待っている後方でいさせてよぉ!」

 

「………なんつーか、此処まで来ると却って清々しいわ」

 

 前線に配置される学徒は何も上鳴だけではない。今回の作戦に於ける適正と認められた個性を持つ生徒達が他にも何名もここに席を連ねている。B組のマッドマンこと骨抜やSHEMAGEこと小森希乃子もそう。

 

周囲をヒーロー達で固められ、ヒーローとして色々と覚悟を決めている二人を余所に、此処まで泣きじゃくる上鳴はいっそ清々しく思えた。

 

「まぁ待てチャージズマ、お前も一応ヒーローを志してんだろ? だったらここらで一つ修羅場でも潜っていれば、後々お前の経験にも繋がる。そう思わないか?」

 

「経験も生きているから糧になるんだよぉ! 経験を得ても、死んじまったら意味がないんだよぉ!」

 

「そりゃそうだが……」

 

 このビビり、一丁前に正論で反論してきやがった。泣き言と一緒に弱音も吐き出す上鳴に頬をひきつらせていると、同じくA組から前線にやって来ていた常闇改めツクヨミが側へ寄る。

 

「チャージ、いや上鳴。覚えているか? 学園祭での時の事だ」

 

「え、突然なに?」

 

「あの時、俺はお前をすごい奴だと思った。だから………」

 

「今ギターの腕前誉められても嬉しくねぇよぉ!」

 

「いや、そうじゃなく………」

 

「いい加減落ち着け」

 

 恐らくは常闇なりの激励のつもりだったのだろう。それでも泣きじゃくる上鳴にいい加減鬱陶しくなったゴジータが軽めに小突く。

 

「いいか上鳴、お前が此処にいるのは今回の作戦に必要だと皆が判断したからだ。情報を流してくれたホークスによって今回の作戦が組まれ、それを成し遂げる為に必要なピースとして選ばれたのがお前だ。他の誰でもない、チャージズマが要になると、そう判断したからだ」

 

「……………」

 

「怖いのも分かる。逃げ出したい気持ちも分かる。だが同じく忘れるな。お前の後にはお前が守りたいと思う奴が常にいるかもしれないってことを」

 

 これ迄とは違う、叱咤するように諭してくるゴジータに上鳴の嗚咽は止まる。恐る恐る振り向き後を見ると、次に何を思ったのか上鳴が「ウス」と気合いと共に自身の顔を叩き、表情を引き締めていた。

 

きっと彼なりの守りたいものとやらを見付けたのだろう。ヒーローとして一つ成長した上鳴に満足したゴジータは、今度こそ自分の持ち場へと戻った。

 

「ねぇゴジータ、アンタ教師に興味はない?」

 

「いきなりだなミッドナイト。俺が教師? 冗談はよしてくれ、俺みたいな奴が教師になったら、生徒が可哀想だろ」

 

「そうかしら? 今のやり取りを見るに、案外的外れではないと思うけど?」

 

「施設ではいつもチビ達の面倒を見ていたりするからな。ガキの面倒を見るのと生徒を導くのでは、やり方は全然違ってくるだろう?」

 

「そうかしら? 私は案外似合っていると思うけど?」

 

 教壇に立ち、生徒達に勉強を教える。そんな自分の姿がとても想像できないゴジータはミッドナイトの言葉をやれやれと受け流す。と、そんな時だ。

 

眼前に聳える施設から轟音が聞こえてくる。いよいよ作戦が開始されたのだと、確信したゴジータは周囲のヒーロー達と共に前に出る。

 

 遂に始まった二大拠点同時攻撃。今度こそ根を張った悪意を殲滅するため、ヒーロー達は走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、ヒーロー達が攻めてきたぁ!!」

 

「嘘だろ!? 何処から計画が漏れたんだ!?」

 

 これ迄極秘裏に、何処までも秘密を保ててきた事を自負してきた超常解放戦線だが、この日は巣穴を突かれた蟻のごとく騒ぎ立てていた。

 

偽装と工作を重ねたハウスの外装は引き裂かれ、外からはヒーロー達が大勢やって来ている。今日まで構成員の誰もが機密を遵守してきただけあって、動揺ぶりは深刻だった。

 

(何処からだと? 決まっている、ホークスだ! 奴が外へ情報を漏らしたんだ!!)

 

 幹部の一人であるスケプティックは目の前の光景を忌々しく思い、睨み付けながら分析する。

 

この騒動の引き金となっているのは、ホークスが原因と見て間違いない。此方に同調する口振りで近付いて来たのは、全てはこの日の為のブラフだったのだろう。

 

 疑問に思うのは身体の至る所に監視用のマイクロチップを埋め込まれておきながら、それでも情報を外へ流した手腕。一体どのような手段なのか、今のスケプティックが結論を出すには色んな意味で情報が足りていない。

 

「始めてしまえば良かったのだよ、死柄木弔の目覚めなど待つ必要もなく」

 

「お、お前は……!」

 

 動揺している同志達の士気を立て直す様に、その男は前に出る。

 

「此方は既に数は揃っている。手札も揃い、切り札であるあの薬の数も充分。ただ、始まりの合図を向こうに取られただけ、そうだろう?」

 

 男は嗤う。この程度、何の障害にもならないと。強い自信と自尊を携えながら、男はヒーロー達の前に躍り出る。

 

「我が前に数など無意味。増電、増やして放つ。我が個性こそ最強にして至高!!」

 

 青い電撃が迸る。バチバチと、周囲の空気を焦がして尚広がるソレは、正しく一網打尽な電気の網。

 

「制圧放電・雷網!!」

 

斯くして、それは放たれる。面制圧に秀でた、殺意剥き出しの攻撃を前に………。

 

しかし、その牙が突き立てられる事は無かった。

 

(バカな、我が雷が……吸い込まれていく、だと?)

 

 一人、前に出た上鳴が避雷針の如くヴィランの電撃を吸い込んでいく。彼の個性は帯電、増電であるヴィランの個性に対し、上鳴電気改めチャージズマの個性はこれ以上無い天敵となった。

 

「幹部の一人無力化完了! 皆さん、やっちゃってぇ!!」

 

「最高だよチャージ!!」

 

「アザーッス!!」

 

 攻撃力の高い敵幹部の無力化。その勢いに乗ったヒーロー達はこれに乗じて先制を取る。

 

そして……。

 

「あ、あれって………」

 

「あぁ、畜生、やっぱり来てンのかよ……」

 

抵抗しようと仕掛けてくる構成員を、鎧袖一触していく天下無敵のNo.1ヒーロー。

 

「裏からちょっかい掛けるのも今日までだ。終わらせてやるよ、超常解放戦線」

 

 こうして、ヒーロー達による最大にして最後の大規模戦闘が、開かれた。

 

 

 

 





オマケ。

ゴジータになりたくて。その2

「いやー、紹介状出してくれて助かったぜ。オルバさん」

「娘の命の恩人なんだ。これくらいは何てことないさ。しかし、君程の男でも、やはりブシン祭優勝の肩書きは欲しいのかい?」

「いんや、別に其処まで拘ってねぇさ。ただ、強い奴に出会えるか楽しみで参加しただけだからな」

「ハハハ、君のお眼鏡に叶う強者がいればいいが……と、そろそろミリアとの約束の時間だ。済まないがゴジータ君」

「おお、娘さんにも宜しく言っといてくれ」

「あぁ、それと、君の応援にも娘と一緒にさせてもらうよ」

 貴族らしい男性と穏やかに別れ、ゴジータは王都で予約していた宿……ではなく、人気の無い路地裏へと入っていく。

そして、完全に人の目が無くなった所を確認して……。

「さて、そろそろ良いだろ。いい加減出てこいよ」

「ふふ、流石だな。我が気配に気付くか」

 影の中から滲み出るように現れる人影、フードを深く被っている所為か、その表情は伺い知れないが、その存在は何処か超越然としていた。

「俺に何か用か?」

「なに、昨今噂になっている黄金の戦士とやらが何者か、つい気になってな。挨拶がてら様子見に来ただけだ」

 黄金の戦士。そう言われたゴジータはピクリと眉を動かす。この言葉にし難い不気味な雰囲気と存在感、これ迄のなんちゃら教団とは明らかに違う風貌にゴジータは静かに警戒引き上げる。

「フフフ、そう警戒することはない。今回はただの挨拶だ。しかし………この分だと、今回の余興は楽しめそうだ」

「お前もブシン祭に? 意外だな、お前みたいなタイプは裏で何かと企んでいるタイプだと思っていたが………」

「そうでもない。我としても強き者との邂逅は望む所だ。尤も、貴様が我と相対する事が出来ればの話だが……」

 どうやら挑発されているらしい。色々と疑問に思うところはあるが、そろそろ宿に帰りたい所だったゴジータは取り敢えずこの場は乗っかる事にした。

「なら、その時が来るのを楽しみにしておくよ……お互いに、な」

「そうだな。お互いに、な」

 それだけ言うと、影に潜みしその男は文字通り陰の中へと溶けていった。どうやら今回の大会はそこそこ楽しめるらしい。この世界に来て初めて相対する強者にゴジータこと後藤甚田は、ワクワクしながら宿へ戻るのだった。




一方その頃

「ウッヒョー! あのゴジータと戦う約束しちった! いや、絶対僕と同じ転生者なんだろうけど、それにしたって再現度タケー!! オーラ半端なかったぁー! あー! 楽しみだなぁ!!」

 某陰の実力者は、あの一度は憧れた最強の象徴相手に大満足なムーヴが出来た為、色んな意味でテンションが上がっていた。





オマケのオマケ。

Q.ミリアちゃん、生きてるの?

A.偶々偶然通り掛かったゴジータがソウルでパニッた為、完全に回復。ただ、この場合呪いが完全に浄化されているため、ガーデン達のような劇的なパワーアップは出来ていない。

現在は過保護な父親と共に穏やかな日々を満喫している。

尚、ゴジータを神のように崇めている。


Q.オルバは教団入りしていないの?

A.教団が接触する前にゴジータによってミリアが救われている為、教団入りはしていない。
娘の命を救ってくれた恩人であるゴジータを、親友同然に思っている。
今回はブシン祭に参加したい事を相談され、これを承諾。
現在は娘と共に穏やかな日々を過ごしている。

Q.某教団は?

A.ただでさえシャドウガーデンとか鬱陶しい連中が出てきたのに、まためんどくさい奴が出てきやがった。
位の認識。




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