後数話で終わりそうな原作ヒロアカ。
寂しく思うと同時にどんな最後なのか楽しみです。
そんな訳で初投稿です。
死柄木弔が属する組織、ヴィラン連合。今年の春から続く世間を騒がる組織は、個性の自由使用を目的とする異能解放戦線と合併し、超常解放戦線として組織は再編された。
個性を使用し、法に縛られない世界を作る。秩序など無用と豪語する彼等は、現体制を崩す為に今日まで秘密裏に活動してきた。
長い年月を経て、デストロの悲願を叶える為にとある条件の下、超常解放戦線の実質的なリーダーである四ツ橋力也はヴィラン連合との組織合併を許諾した。
全てはデストロの悲願を達成し、異能をこの世界から解き放つ為。条件は全て揃い、後は行動に移して
だと言うのに……。
「リ・デストロ! 大変です!!」
「何事かね」
群訝山荘。超常解放戦線の最重要拠点での決起を前に、最後の激励をしようと地下の議事堂に同志を集めていた時、酷く慌てた様子の同志が駆け込んでくる。
「ヒーローが、ヒーローが来ました!! この建物をグルリと囲んで、それはもうすごい数です!!」
崩れる音が聞こえた。いや、実際に外の外壁が崩れているのだろう。地響きと共に聞こえてくる悲鳴と雄叫びが、報告の内容により真実味を帯びさせる。
そう、バレたのだ。これ迄積み上げてきたモノ、その全てが崩れていくような錯覚。嘗て無い危機的状況に……。
「あぁ?」
四ツ橋力也────リ・デストロの個性、【ストレス】が瞬時に最大限に解放された。
◇
「く、クソォ! こんな所で終われるボブッ!?」
「コノォ! 最新サポートメカの威力を受けタブラン!?」
向けられてくる悪意、害意、殺意。この日の為に組織内で厳しい訓練を重ねてきたと思われる超常解放戦線の構成員。
一人一人が文字通り命を掛け、自ら捨て去る覚悟を持った平和の敵対者。そんな彼等を前に、ゴジータによる腕力は容赦なく奮われる。
殺傷能力の高い個性を躊躇い無く人に向ける。悪意や殺意といった強く剥き出しの悪感情を向けられて、それでも尚、ゴジータは表情を変えること無く迎え撃ち、これを打ち倒していく。
「ゾロゾロ出てくるなぁ、まるで巣をつつかれた蟻みたいだ」
悪気はなく、何となく思い付いた感想を口にする。それに反応した構成員は更にその貌を憤怒に染め上げるが………悲しいかな、その慟哭と怒りの攻撃はゴジータに通じる事はなく、片手間に一蹴されてしまう。
チラリと右を見れば、なにやら息巻いていた幹部らしき構成員が上鳴によって無力化されており、その隙をついてエッジショットが駄目押しの一撃を見舞っていた。
エッジショット。自らの肉体を紙の様に薄く細くさせ、構成員達の肺に小さな穴を開けていく。安静にしていれば一週間程で完治する怪我だが、身動きするだけで激痛を与えるその攻撃はゴジータからみても中々にエグイ。
他にも同じ学徒である
「いいね。この分なら俺の出番は無さそうだ」
「なにバカな事を言ってんのよ!」
この分でいけば自分の出番はないんじゃないか? 冗談混じりの呟きは、しかし隣に降り立つヒーローに聞こえてしまう。
「アンタも一応ここの拠点攻略を任されているんだから、真面目に取り組みなさい」
「分かってるよミッドナイト先生。学生達も頑張ってるんだ。そろそろ本格的に俺も参戦するよ」
嘗ての恩師からの叱責、こんなやり取りも懐かしいと思いながら、改めてゴジータは目の前の巨大山荘を見据える。
「────それで、どう? 此処に死柄木弔はいそう?」
「………まだ分からねぇ、もし奴が俺の細胞を取り込んでいるのなら、その気配は日本の何処にいても分かる筈だ」
今回の作戦の行動前、ゴジータは予め塚内に自身の気の感知能力についてある程度説明している。表向きは個性の能力の一つとして、強い力を持つ相手の気配を感じ取れるという体で。
あれからゴジータも自身の修行を続けていて、今ではある程度の気の感知は出来るようになっている。流石に数百規模の人間が入り乱れての乱戦では余程突出した力を解放しない限り、其処まで細かく感じられる事はできないが……。
「じゃあ、やっぱり向こうが当たりの可能性も……」
「有り得なくない話だな。けど、相手は長年地下に潜っていたヴィラン組織だ。流石のホークスも短期間で其処まで調べるのは無理があったか」
今回の作戦の土台となったホークスによる情報、その内容は組織内の派閥から人間関係、果ては拠点の数や構成員の総数から幹部と事細かく兼幅広く暗号化されていた。
そして、ゴジータの細胞を元にして造られた薬───通称【G細胞】がこの山荘に最も多く流通させていたことも、知る事になった。
ただ、組織の中枢であり、A.F.O.の後継である死柄木弔の居場所だけ確定する事が出来なかった。分かっているのは超常解放戦線の最重要拠点である群訝山荘と、A.F.O.の古くからの盟友とされる殻木球大が創設したとされる蛇腔総合病院のどちらかというだけ。
周囲に人気がなく隠れるのにうってつけの山荘、そして自身の細胞を利用しての劇薬が此処に運ばれていると知ったゴジータは、蛇腔総合病院から80キロ程離れたこの群訝山荘へ対応する事となった。
山荘の中には今回の最大の功労者であるホークスもいる筈、早いところ彼と合流しようと、ゴジータが一歩踏み出した………その瞬間。
地下の議事堂へ続く隠し通路と思われる所から爆発が起きた。舞い上がる砂塵、中から現れたのは、ファットガムと彼に抱えられた
ボインと軽い音と共に地面に着地するファットガム、その軽快な動きから、爆発による怪我は無いようだ。ツクヨミも同様だが………その表情は何処か暗い。
「クソ、あんの尖り顔、やっぱり薬を隠し持ってたんやな」
「ファットガム、ツクヨミ、無事!?」
「ミッドナイト先生、それにゴジータか。済まない、折角周りの注意を引いてくれたのに………失敗した」
自分の不甲斐なさを悔やむツクヨミ。すると次の瞬間、隠し通路のあった場所から巨大な影が現れる。
「革命の旗よ、今こそ掲げよ! 虐げられてきた者達よ、怒りの雄叫びを挙げろ!! 我等超常解放戦線は、此処から始まるのだ!!」
それは、黒く、肥大化した肉塊。人型の形を保ちながら、黒い炎を身に纏うその様は、ヴィランというより怪物の類いに等しい。
獣の如き叫びを挙げ、大気を震え上がらせる。恐らくは例の薬を服用したらしき男は、凶暴化した思考で眼下の獲物を見る。
「強き者として弱き者を導く。それが我々、解放戦線の役割なのだから!!」
ファットガム達に向けて、拳を振り下ろす。そのあまりにも巨大で、ツクヨミのダークシャドウですら及ばなかった暴力。ミッドナイトが腕を交差して目を閉じるが………。
衝撃は来なかった。
「強き者……ねぇ、その理屈で言えばお前ら全員俺に頭を下げる事になると思うんだが、そこん所どうなのよ」
金髪碧眼となり、黄金の炎を身に纏ったゴジータが不敵に笑みを浮かべ、片手で防いでいた。
◇
─────同時刻、蛇腔総合病院。地下深く根差していた脳無生産工場、半世紀以上前からA.F.O.の友として個性の研究に明け暮れていた男、殻木球大は嗤う。
「くく、クカカカカ、ヒーロー共め、今更此処を嗅ぎ付けた所でもう遅い」
並ぶ幾つものシリンダー。その中の幾つかは空ではあるが、残された黒い脳無達はどれも精鋭。神野や保須市で投入した脳無よりも更に強化と調整を重ねたハイエンド。
残念ながらG細胞の投与こそ敵わなかったものの、一体だけでヒーロー数十人分の戦力となった怪物達。コイツらを解放しただけでヒーロー達は瓦解するし、何より此方には完成間際の
二人が目覚めれば、その瞬間に此方の勝利は確定する。後は向こうに仕掛けた
二人の目覚めまで後僅か、その間自分はこの拠点から離れる段取りを始めるとしよう。
お気に入りのペット型の脳無と共にひた走る。そろそろ脱出用の扉へと差し掛かった時。
「お、ジジイ見っけた」
トップヒーローの一人。No.4のミルコが、蹴破った扉と共にダイナミックにエントリーしてきた。
次回、兎跳躍
獰猛な兎、命を燃やして駆け抜ける。
オマケ
ゴジータになりたくて3
それから少しして、ゴジータは無事に本選出場の権利を獲得していた。
オルバの紹介のお陰で剣が無くともブシン祭の大会に参加できたゴジータは、剣を扱えない野蛮人等の前評判に気にもとめず対戦相手を悉く瞬殺し、大会に参加しているすべての剣士達の度肝を抜いていった。
魔拳士。そう異名として既に王国中に知れ渡っているゴジータは、本選であるブシン祭のコロシアムへと降り立った。
「噂の魔拳士、ゴジータさん。あなたが如何に強者であろうと………私は、負ける訳にはいかない」
相対するのは炎のように紅い髪をした女性剣士。王国最強を欲しいままにしているしている彼女だが、その表情は何処か苦しそうだった。
そして告げられる試合開始の合図。瞬間、足に魔力を込めた女性剣士────この国の第一王女は、鬼の形相でゴジータに斬りかかる。
文字通りの鬼気迫る勢い。しかしその奮われる一刀をゴジータは完全見切った様子で僅かに体を逸らせる事で回避し、スレ違う間際に足を引っ掻ける。
当然、バランスを崩した王女は凭れるが、それをゴジータが腕を掴んで支える。振り返る彼女の表情は戸惑っていた。
「ど、どうして?」
「アンタ、力を入れすぎだ。そんなんじゃ実力の半分も出せやしないぞ」
「!」
「アンタの背負っているものがどれだけ重たいモノなのか、俺には分からないが、それでも今此処に立っているのは剣士としてのアンタだ」
王女として、一つの騎士団を率いる者として、決して負けてはならない。負けることは許されない。勝利する事だけが自身の存在価値なのだと、何時しか重荷となっていた女性にとって、その言葉は初めて耳にしたモノだった。
「此処にいるのは俺とアンタの二人だけ、背負うのも結構だが、今はその荷を卸して目の前の相手に集中しろ」
「………どうして、どうして其処まで私を」
「勿体ないからさ」
「え?」
「折角強くなれる素質持ってんだ。責務に悩むのも結構だが、今は強くなることだけに集中しようぜ」
「───全く、何様のつもりなんだか」
気付けば、王女の表情は明るくなっていた。王女としての責務、政や王国を蝕む教団の魔の手、他にもシャドウガーデンなる者達への対処。
考える事は山程あり、やらなければいけないことも多々ある。しかし、今はそれら全てを棚上げして、王女は目の前の相手に集中する。
嘗て無い程に剣気は研ぎ澄まされ、魔力が集約されていく。立った一つの助言、たった一つのお節介で王女は一つの壁を越えた。
「覚悟なさい。今の私は、少し強いわよ」
「あぁ、それでいい。………こい」
「負けちゃった、かぁ」
気付けば、王女は空を仰いでいた。どれくらい打ち合えたのか、それとも一瞬で決着が着いたのか。何れにせよ負けたのは自分だというのに、王女の心境は今の空と同じく晴れ晴れとしたモノだった。
「ヨッ、立てるか?」
そんな自分の顔を覗き込んでくる男、ゴジータが手を差し伸べてくる。一瞬だけ戸惑う王女───アイリスは、次には笑みを浮かべてその手を取った。
「最後の一撃、悪くなかったぜ」
「………ねぇ、ゴジータさん」
「ん?」
「次も、私と戦ってくれますか」
「おう、そん時まで俺ももっともっと腕を上げておくよ」
あれだけの強さを持ちながら、まだ強くなるのかと呆れながら笑みを浮かべるアイリスはゴジータに改めて握手を求める。
「ありがとうゴジータさん、私もこれから頑張っていけそうです」
そう言って王女は踵を返して歩き出す。王国最強の魔剣士の敗北者。その事実は国中を揺るがせる話題となるが、この戦いを嘲笑う者は誰もいない。
何故なら今後、彼女が負けることは無いのだから。たった一人、剣を使わない魔拳士を除いて。
「───さて、次はアイツか」
コロシアムから去るアイリスを見送ると、ゴジータはとある場所へ目を向ける。
そこはコロシアムを一望できる場所、誰もいない筈のその場所で一人の剣士が此方を見下ろしている。
ジミナ・セーネン。今回のブシン祭においてゴジータに並ぶダークホース、不気味な雰囲気を纏う青年は、意味深な笑みを浮かべてゴジータを見下ろしていた。