超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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ヒロアカの終わりが近付いてきて寂しい。
でも、どんな結末なのか楽しみなのも事実。

そんなわけで初投稿です


記録87

 

 

 

 某県にある蛇腔総合病院。A.F.O.の懐刀とされる殻木球大、彼の身元とそこにいるであろう死柄木弔の拘束、逮捕を目的とした大規模作戦は遂に開始された。

 

離れた場所からでも聞こえてくるヒーロー達の雄叫び、恐らくは脳無と呼ばれる人造のヴィラン達との交戦が始まっているのだろう。

 

 避難誘導に勤しむ学生達、他の学生達同様後方での活動を決められた彼等は、自分達に出来る事を全力でまっとうしようとしていた。

 

緑谷や爆豪もその学生組の一人、今一つ危機感の伝わっていない市民の避難誘導を行いながら、ふと現場である蛇腔総合病院へ視線を向ける。

 

どうか作戦が上手く行くように。そう念じる緑谷だが、彼の淡い願いは敵うことはなかった。

 

『気を付けて、巨悪が目覚めようとしている。その身に大いなる力を携えて』

 

 聞こえてきたのは初代の声、どういう事なのか聞き返す間もなく、彼の声は聞こえなくなり。

 

それに呼応する様に、病院の方からズズズと地響きの様な音が聞こえてきた………そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────同時刻、群訝山荘。

 

ヒーローによる超常解放戦線への強襲。それはこれまで幾度となく雄英へ奇襲を仕掛けていたヴィラン連合への意趣返し。

 

 多数の名だたるヒーローに初手を取られ、崩された解放戦線は何とか建て直そうと必死に抵抗を試み、遂には切り札とされる劇薬の投与に踏み切った。

 

超常解放戦線の前任、異能解放戦線のトップであるリデストロ。父親であり、偉大なる革命家と敬うデストロの血を引く四ツ橋力也は、重大な副作用のある劇薬【G細胞】を自らに投与し、ヒーロー達の前へと現れた。

 

 肥大化した巨躯、血走った目付きには僅かな理性を宿し、敵対するべき存在を捕捉する。自分達の革命は此処からだと、戦意が挫け掛けた同志達に呼び掛ける。

 

しかし、その目論見は通らない。何故なら、解放戦線が切り札としているG細胞、そのオリジナルであるゴジータが、彼の前にいるのだから。

 

「やれやれ、我ながら情けない話だ。まさか俺の力が薬で手に入ると思われているとか………しかもどう見ても粗悪品、分かっているのか? お前ら、奴等のていのいい使い捨てにされてるんだぜ?」

 

 G細胞を投与して得られるのは身に余る莫大な力と謎のエネルギーの活性化現象、しかし力を手にしていられるのは十数分という短い時間だけ。

 

本来であれば白く透明感のある炎は薬の影響か薄暗く淀んでおり、しかもその副作用は使用者の命を著しく削ってしまう。ゴジータからすれば劣化コピー処の話ではない、それこそコピーするのならかの人造人間の産みの親(Dr.ゲロ)の様に完全に模倣して欲しいとすら感じてしまう程にゴジータから見たG細胞なる薬物は酷い粗悪品だった。

 

「我等の悲願が敵うのならば、我等の革命が成就するのならば、この命、惜しくはない!! 貴様達の様な旧体制にしがみつく俗物には、分かるまい!!」

 

 全身を個性で黒く染め、薬で更に膂力を底上げされた腕での凪払い。その暴力の一撃をゴジータは片手で難なく流す。

 

「御大層な謳い文句どうも、けどお前の言う革命ってのは結局は弱肉強食の理屈だろ? 旧体制とか宣う割りに、随分と思想が原始的じゃねぇか」

 

解放戦線が掲げる理想は個性がまだ”異能“と呼ばれていた時代、異能の自由行使を当然の権利として主張してきたモノ。

 

しかし、実態は個性の有無、特にその能力の強大さで社会の新たな上下関係の構築を目的としたテロリズム。弱いものは強いものに従い、強い者はより強い者に従うという、単純化と言うには剰りにも拙い要素が多すぎる仕組みとなっていた。

 

解放戦線は今の社会を護ろうとするヒーローや、それに殉ずる者達を旧体制の悪しき存在と吐き捨ててくるが、ゴジータから見れば旧体制処か野蛮に過ぎた。

 

「黙れ!」

 

 振り上げたリデストロの両腕が大地を叩く。その力は文字通り大地を割り、その衝撃は地形すら容易く変えていく。激しく上下する地面は軈て隆起し、ゴジータ達を空へと巻き上げた。

 

「ちょ、は、弾むぅぅっ!!」

 

「きゃぁッ!!」

 

 周囲の大地を変動させ、その威力は敵味方問わず巻き込んでいく。地割れに巻き込まれた同志に目も呉れず、リデストロは空へ舞い上がるヒーローへと睨み付ける。

 

 唐突に空へ巻き上げられ、無防備を晒してしまう。ミッドナイトとリデストロの視線が重なり、鋭い視線がグニャリと喜悦に歪む。

 

不味い、振り抜かれる巨大な拳に直撃と死を予感したミッドナイトだが、次の瞬間彼女の体は何かに包まれる様な浮遊感を体感する。

 

 気付けば、ミッドナイトはゴジータに抱き抱えられていた。

 

「よっと。はは、こりゃいいや!」

 

振り抜かれたリデストロの腕の上を、滑らかに滑り落ちていく。緊迫とは掛け離れた笑みを浮かべるゴジータに、リデストロは苛立ちを募らせるが、彼の動きを先読みする様にゴジータの蹴りが炸裂する。

 

「ほれ、大人しく寝ておけ」

 

「ブッ!?」

 

 顎を巻き込んでの蹴り上げ、脳震盪を狙ったゴジータの蹴撃はリデストロを青天井にぶっ飛ばす。ズズンと、地面を揺るがす振動を起こしながら倒れるリデストロを背に、ゴジータは優雅に地面へと着地する。

 

「リデストロに続け! ゴジータを、奴さえ殺せばヒーローは瓦解する!!」

 

「今の奴は両腕が塞がっている! チャンスだ!」

 

「数で責め立てろ!! 休む暇を与えるなー!!」

 

 そんなゴジータに今度は解放戦線の構成員が数で押し潰しに掛かった。何れも社会に隠れて個性の訓練に励んできた精鋭、その強さは情報を流してきたホークス曰く、一部のヒーローすら上回っているとのこと。

 

「ちょ、ゴジータ! 私は良いから早く迎撃を……!」

 

嘗ての教え子の足手まとい、それだけはゴメンだとミッドナイトはゴジータの腕の中で踠くが………。

 

「悪いなミッドナイト先生、少し大人しく(ヒロイン)しててくれ」

 

「んなッ!?」

 

 ゴジータは、下手に解放して連中の攻撃に巻き込まれるのを恐れ、そのままの状態で迎え撃つ事にした。両腕が使えず、ましてやお姫様抱っこのまま、押し寄せてくる悪意と敵意の群れを前に、不謹慎ながらミッドナイトの頬は紅く染まった。

 

押し寄せてくる解放戦線の猛攻、ある者は毒液を吐き出し、ある者は指をマシンガンの如く飛ばし、またある者は両腕を肥大化させて殴り掛かってきた。

 

 その悉くをゴジータは捌いていく。殴り掛かってきた者にはクルリと体を回転させて避けて見せ、すれ違いざまに横っ面に一撃。

 

指を飛ばしてくる者はそのことごとくを見切り、飛び越えて踵落としで昏倒させ、毒を吐いてきた輩には普通に蹴り返して顎を蹴り、気絶させる。

 

他にも向かってくる構成員達を蹴り技のみで圧倒していく。その戦い方はまるでミルコの様で、その威力と機動力は彼女すら越えていた。

 

 一秒にも満たない刹那的時間、瞬きの間に精鋭を何人も撃破してしまう。それを目にした者達は改めて思い知る、ゴジータの圧倒的な強さとその反則具合を。

 

「よし、この辺はあらかた片付いたな。悪かったなミッドナイト先生、無遠慮に触っちまって」

 

「い、いやその……別に? 気にしてないし」

 

 抱き抱えてから一分も経っていない筈なのに、ミッドナイトの表情が何処か紅い。どうしたのかと訊ねようとも、起き上がる敵側の首領にゴジータの視線は其方に向けられる。

 

「成さねばならんのだ。この革命は、我等デストロの悲願! 個性の、異能の解放こそが今の人類には必要なのだ!!」

 

「その割にはオールマイトがいた頃は目立った活動はしてなかったみたいじゃねぇか? なんだ、お前らの言う理想ってのは相手を見て言ってんのかよ、ダッセ」

 

 どれだけ高尚な理想を語っても、リデストロが口にしている言葉に説得力は無かった。オールマイトが全盛期の頃は今はその時ではないと息を潜め、今決起しているのもG細胞という劇薬があるからだ。

 

言い訳ばかりの組織。確かに個性社会についてあれこれ問題や不満を抱えている者は少なからずいるだろう。だが、それら社会問題を盾にされて尚、解放戦線の言葉には何も感じられなかった。

 

「言い訳を探してんのなら俺が与えてやるよ。長年息を潜めていたお前らは、企み虚しく遂に俺達によって駆逐される。どうだ? この上なく分かりやすい幕引きだろう?」

 

「き、貴様ァ! 何処まで我々を馬鹿にすれば……!」

 

 両腕を掲げ、エネルギーを収束させる。極大のストレスを抱えたリデストロは、それに見合ったエネルギーを体内から放出………並びに圧縮し、凝縮していく。

 

「周囲の人間ごと粉々になってしまえ、ゴジータ!!」

 

 黒い稲妻が火花のように迸り、そのエネルギー量は計り知れない。G細胞の影響で通常より更に強大に膨れ上がったソレは周囲の空気を震わせ、軽く地響きすら起こしている。

 

ただそこにいるだけで巻き起こす災害、人の形をした厄災を前にゴジータはやはり態度を変えることはない。

 

 放たれるエネルギー。地を抉り、燃やしながら迫る黒く凶悪なストレスの塊を前に、ゴジータは黄金の炎を身に纏い、金髪碧眼となって軽い足取りで前に出ると……。

 

「そら、返すぜ」

 

周囲を破壊し尽くすエネルギーの塊を、オーバーヘッドの要領で蹴り返す。

 

「────へ?」

 

 間の抜けた声、目の前で起きた出来事を理解できていないリデストロは、返された己のエネルギーを防ぐことなく………。

 

爆発。周囲を破壊し、爆炎に包まれるリデストロを静かに見下ろし、ゴジータは改めて戦場へ向き直る。

 

「次」

 

 冷たい声色で射抜かれた解放戦線の面々は、ただそれだけで恐怖し、身動きが取れなくなっていた。

 

(………こっちは取り敢えず順調、か。後は中にいるホークスパイセンが例の薬を抑えてくれれば)

 

 今頃は、中で今回の功労者であるホークスがG細胞という劇薬の確保に動いているだろう。

 

群訝山荘での決着は近い。けれど、何故かゴジータはイヤな予感を感じずにはいられなかった。

 

 残された敵連合、死柄木弔と荼毘。未だに姿を見せていない奴等は恐らくは此処ではない蛇腔総合病院、そこでは今頃エンデヴァーを筆頭に数々のトップヒーロー達が連中の逮捕に勤しんでいる筈。

 

彼等の実力を疑っている訳ではないが………何だか胸騒ぎがする。己の内に広がり始める違和感、これ等を払拭する為、ゴジータは進んで構成員達の逮捕に乗り出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エンデヴァー、例のジジイ見付けた。取り敢えず蹴っ飛ばしておくな」

 

『その男も複製された個性による偽物の可能性がある! 見誤らぬよう気を付けろ!』

 

「蹴り飛ばせば分かることだ!」

 

 蹴り飛ばした扉に巻き込まれ、地に伏している殻木球大。ヴィラン連合の戦力の供給元にしてA.F.Oの盟友、表では清廉な人格者を演じ、その裏で夥しい数の命と尊厳を弄んできた狂人。

 

人よりも老いる速度が遅いその老人を前に、トップヒーローの一人であるミルコが、嬉々として飛び掛かる。

 

 既に病院内では脳無達がエンデヴァー達の行く手を遮っていて混戦状態に陥っており、今彼女の所に来れる者はいない。

 

エンデヴァーは本物かどうか確認しながらと言うが、状況を考えればそんな暇はない。どちらにせよ、目の前のジジイを動けなくすれば目標の半分以上は達成される。

 

 ならば蹴り飛ばすのみ。脳筋、それ故に最短の最適解を導きだしたミルコは、殻木を蹴り飛ばそうと跳躍する。

 

「や、止めてぇぇぇ!! ワシ本物、本物だからァァッ!!」

 

「安心しろ。蹴れば分かる!!」

 

 振り抜かれる脚、それは間違いなく殻木へと叩き込まれる………筈だった。

 

「キュイッ!!」

 

ミルコの足先が殻木の背中に迫る直前、小さな脳無が彼女の背中へと体当たりを繰り出し、その一撃は殻木の白衣の背中部分を破るだけに終わった。

 

(───コイツっ!?)

 

 ミルコでも予期しなかった動き、それは自分を生み出した殻木への情、或いは別のものか。

 

「モカちゃん、ありがとう。お陰で準備、その前段階が完了したぞ!」

 

「ッ!!」

 

 気付けば、殻木の手には端末が握られていて、何かを操作している。直ぐにそれを潰そうと再びミルコは地を蹴るが………。

 

「本来であれば、一体だけでも多くのヒーロー達を屠れる性能を持つ。残念ながら神野の様なS.ハイエンドを作れることはなかったが、それでも一つ一つがワシの丹精込めて造り上げたハイエンド達!!」

 

「させっかよ!!」

 

それよりも早く、シリンダーの中にいる脳無達は目覚め。

 

「目覚めよ、我が愛しき傑作達よ! ヒーロー達を………蹂躙せよ!!」

 

無数の黒い腕が、ミルコに向かって殺到していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいぜ、ドクター。後は賭けに勝てるかどうかだ」

 

 遥か冥府の底(タルタロス)にて、狂える悪意が喜悦に微笑む。

 

 

 

 

 





Q.同じ群訝山荘に班分けされ、ワンチャンゴジータとの絡みを期待していたMt.レディ、そんなゴジータが目の前でミッドナイトをお姫様抱っこでヒロイン扱いされている現場を目の前で目撃してしまった彼女の心境を答えよ。

A.「オ・ノーレ」

 「ちょ、どしたんMt.レディ!? 血涙ながれてんで!?」

 「恩讐の念……恐るべし」




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