超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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ヒロアカの大団円も後少し。

今月中には終わってしまいそうで、少し寂しいです。

そんな訳で初投稿です。


記録89

 

 

 

「クソが、何で俺が後方なんだよ」

 

「ケロッ、仕方ないわ爆豪ちゃん。私達学生は街の住民の避難を任せられてるのだから」

 

 蛇腔病院のある山、その麓にある街にてヒーロー達による大規模な避難誘導が開始されて早数十分。

 

戦闘が病院内で留まらない事を危惧し、万が一の備えとして行われた避難誘導は、現在も急ピッチで進められている。

 

 街の住民全てを安全地帯に逃がすべく奮戦しているが、如何せん数が多い。故に事態が分かっておらず、所々から不満の声を挙げる市民に早速爆豪はキレ始めていた。

 

他のクラスメイト達がドウドウと宥めているが、彼の機嫌が直ることはない。何せ、自分と同じヒーローの卵とされているジェントルが、病院への突入部隊に選ばれているのだから。

 

「────了解、こっちも避難を進める。全員聞いて! 今エンデヴァーから通信が入った! 現在蛇腔にて戦闘が開始された為、避難を急がれたし! 病院からの避難も考慮して進めるよ!!」

 

 緑谷へまとめ役であるバーニンからの通達、これに声で返して避難を急ぐ。今は人々の安全確保を第一に考えて行動するべきかと、爆豪も渋々ながら了承している最中。

 

緑谷の視線が病院へ向けられた。

 

「緑谷、どうかしたか?」

 

 様子のおかしい緑谷に轟が声を掛ける。

 

「────来る」

 

 額から汗が流れ落ち、何かを感じ取った緑谷の頬が引き吊る。

 

次の瞬間、病院の方角から大地が揺れる音が響いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そら、今度はこっちからいかせてもらうで!」

 

 四体のハイエンド、何れも手練れの脳無を前にその男は狂悦の笑みを浮かべる。歯を剥き出しにして飛び掛かる様は獲物を前にした獣のソレ、当然脳無達はこれを迎え打つが、男の速さに届かず悉く空を切る。

 

「コイツ、速イ!?」

 

「ちゃうねん、お前らがノロマなだけや」

 

「ッ!?」

 

 陰も踏めぬ高速移動、気付けば背後に回り込まれた脳無はただ無造作に腕を振るうだけ。

 

それも空振りし、気付けば脳無の懐には獰猛な笑みを浮かべた男が───。

 

「杏くん、パス!」

 

 頭部が触手の脳無を炎の羽織りが特徴的なヒーローが、鞘から刀を抜いてその刀身に焔を纏わせて一閃する。

 

ゴウッと燃え盛る炎と共に切り捨てられた脳無は、再生する余地なく地に倒れ伏す。残心と共に刀を鞘へ納めると、炎の様な男は後ろにいるジェントルとミルコへ視線を向けた。

 

「ジェントル、ミルコの方はどうだ!?」

 

「今、仙豆擬きを呑ませた所。効果が出てくるまで後数分といった所である」

 

 今回の作戦の折り、ゴジータから予め特定人数のヒーローに仙豆擬きの事を伝え一人につき二、三粒の仙豆擬きを手渡している。

 

 作戦の際にほぼ確実に出るであろうヒーロー側の重傷者に対しての救済処置。保険代わりの秘薬をミルコに呑ませたジェントルは、内心動揺しながらも平静に努めながら進言する。

 

事実、ミルコ自身は気を失っているものの、傷は徐々に塞がりつつある。とは言え、血を流しすぎた今の彼女では仮に快復しても戦線への復帰は厳しい所だろう。

 

「ウム、ならばこの場は我等で乗り切るしかないな。───善院!!」

 

「なんやねん!」

 

整列(・・)させる。最大加速、いけるか!?」

 

「当然、誰に言っとるんや!」

 

 加速し続け、その速さで脳無達を翻弄する善院なるヒーローに簡単な作戦を伝えると、再び男は抜刀する。

 

「ジェントルはミルコを頼む。俺は善院と共に脳無を討つ」

 

「りょ、了解!」

 

 初の実践。それもこの大規模な戦闘のある戦場で、それでもヒーローとして仕事を全うするジェントル。

 

そんな彼を見て、男はジェントルをもう只のチンピラヴィランと侮る事はなかった。芯の通った男の顔をするジェントルに、気を失っているミルコを預けるに足ると判断した男───炎獄杏寿郎は刀に炎を纏わせて巨体の脳無へ斬りかかる。

 

「壱ノ型、不知火!」

 

 ゴウゴウと燃え盛る炎を武器に纏わせて、袈裟斬りに斬り付ける。善院の動きに翻弄されて気を逸らされた脳無は、炎獄の炎の刃が直撃し。

 

(コレハ、傷ガ灼カレテ………再生、デキナイ!?)

 

 ジュウッと斬られた所が焼き付き、再生の阻害となっている。コイツは危険だと詰襟の男へ拳を振り下ろすが……。

 

「遅い! ニノ型、昇り炎天!」

 

 炎獄は体を回るようにして最小限の動きでこれを躱し、返す刀で斬り上げる。

 

腕を斬り落とされ、脳無は顔をしかめる。既に痛みなどなく、ただ苛立ちだけが募っていく。自分達は生み出された傑作、王を守る尖兵にして超兵。

 

目の前の弱々しい人間とは一線を画す存在、だと言うのにどうしてこうも自分の力が上手く働かない。

 

「苛タダシイ、腹立タシイ! ムカツク、ムカツクムカツクムカツクムカツクムカツクムカツクムカツクナァッ!!」

 

「喧しいわボケ、いい加減死んどけ」

 

 瞬間、ゾクリと冷たいなにかが背中に流れるのを脳無は感じた。それは生前なら分かっていた筈の寒気、生物的に言う本能による予兆。

 

 本来であれば避けられるそれを、脳無はハイエンド………他より優れた性能である彼等だからこそ気付けなかった。

 

 既に、自分達は奴らの術中に嵌められているという事を。

 

 見れば、これ迄自分達を翻弄していたすばしっこい奴の姿がない。女型の脳無が探すと、既に奴はミルコ達の所に下がり、獣の様に身を低くしていた。

 

「見せたるわ文字通りの能無しども、コイツが俺の………善院直哉の瞬間最大速度や」

 

 善院直哉。ヒーロー名【マッハスピード】、誰が付けたか通り名は駿神。

 

その個性上、純粋な速さだけならインゲニウムすらこえ、日本ではゴジータを除きホークスと並び二番目の最速の名を持つ男。

 

 彼の最大最強の武器は、速さ。加速に加速を重ね、残像すら置いていくその速さは正しく現代の韋駄天。

 

「見ろや、これが俺の……ライダーキックや」

 

音の壁を超え、ソニックブームが周囲の機材を粉砕していく。シリンダーに詰められた未だ目覚めぬハイエンド達、それらを吹き飛ばしながら繰り出される一撃は、整列されていた脳無達を貫通し、粉々に打ち砕いていく。

 

「アカン、やっぱパクりになってまう。いっそのこと本当にライダーデビューしてみようかな」

 

 音速を超えた影響か、全身から血を流しながらも平然としている男───善院。そんな彼には目に入れても痛くない二人の可愛い姪っ子がいて、彼女達の自慢をする事が毎日の日課である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、大体制圧出来てきたな」

 

 眼の前に広がる超常解放戦線の構成員とヒーロー達の戦いは、終始ヒーロー側の優勢で進んでいた。厄介な個性を持つ幹部の者には対策の取れるヒーローやゴジータが担当し、それ以外ではヒーロー達が連携を以てこれに当たる。

 

作戦前に決めた班決めやチームワークが上手く噛み合った様で、ゴジータは満足げに頷いた。

 

 特に、マッドマン(骨抜柔造)シーメイジ(小森希乃子)の二人の活躍は凄まじく、足場を緩くさせるマッドマンにキノコの胞子を浴びせる二人のコンボ技は中々に悪辣………もとい、効果的だった。

 

───というかシーメイジの個性、普通に呼吸器官まで影響及ぼしていてヤバい。アレ、下手したら自分にも効果があるんじゃないか? なんて、ゴジータはシーメイジの個性の凶悪さにちょっぴり慄いた。

 

「後は、ホークスが例の劇薬を回収してくれるのを待つだけ………と、来たな」

 

 施設の奥から翼のはためく音が聞こえてくる。振り替えると、両手に大きな箱を抱えたホークスが悪戦苦闘しながら此方に向かってきている。

 

 彼の仕事振りを考えれば、恐らくアレでここにある薬は全て回収したのだろう。重たそうに運ぶホークスを見かけたツクヨミが個性であるダークシャドウと共に駆け寄り、ファットガムと一緒に手伝っている。

 

「よし、後はここを片付けて俺も蛇腔に急がないとな………嫌な予感がするし」

 

 それはゴジータのヒーローとしての勘かなのか、先程から妙な胸騒ぎがする。敵連合の主戦力である荼毘がいないことも気になるし、早く向かった方がいい気がする。

 

近くにいるミッドナイトに声を掛けて後は任せてもいいか訊ねようとした時、ふと足下に違和感を覚えた。

 

「───あ?」

 

 視線を下げると、其処には一匹の小さな蛙のような脳無、触れられるまで全く気付けなかった事にゴジータは一瞬呆けてしまう。

 

(なんだこの脳無? まるで気配が感じられ……!)

 

 いや違う。問題なのは其処ではない。目の前の小さな蛙に気付けなかった。平時は兎も角、戦闘状態である自分の感覚をすり抜ける程の脆弱な存在。

 

それ故の危険性(・・・・・・・)に気付き、一瞬にして警戒心を高めたゴジータは、その蛙の脳無を蹴り飛ばそうとして………。

 

「甚田」

 

 思考が止まる。

 

「久し振りね。甚田、ちゃんとご飯は食べているの?」

 

 有り得ない。唐突に現れたその女性に、ゴジータは疎か周囲のヒーロー達ですらその場違いな程に穏やかな雰囲気を纏う異形型の女性に固まっていた。

 

それは、ゴジータの恩師にして育ての親。小さくて小柄な体には大きな愛情を秘めた………ゴジータが幸せになって欲しいと切に願う施設の子供達の優しい母親。

 

「─────姫野、先生?」

 

 姫野葵。有り得ないタイミングで、有り得ない人の登場にゴジータの体感時間は凍り付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────数ヵ月前。

 

「一応言っておくね。今の僕ではゴジータには勝てない。例えここにいる全員が束になっても、全く敵う事はなく、僕たちはあのNo.1ヒーローに敗北するだろう」

 

「おいおい、怒らないでくれよ。僕はただ現実を口にしただけだぜ? それに、考えなしって訳じゃない」

 

「彼は強いよ、あれこそ反則だ。どれだけ対策を練ろうともその全てを無為にするあの馬鹿げた力は最早一個人が持って良い代物じゃない」

 

「狡いよねぇ、納得出来ないよねぇ? 彼と戦うにはそもそも舞台の敷居が高すぎる。だからさ」

 

「天下無敵のヒーロー様には、舞台ごと消えてもらうのさ」

 

「10秒、君達にはゴジータの意識を可能な限り逸らして欲しい。この小さな二匹(・・)の蛙の脳無からね」

 

「あぁ、言葉が足りなかった。実際の時間での10秒ではなく、ゴジータの体感時間(・・・・)での10秒だ」

 

「勿論、その為には必要なリソースがかなり削がれる事になるだろう。君の自慢の兵隊達も、半数以上がやられるだろうね」

 

「それでも、あの忌々しいNo.1を葬れるチャンスがあるんだ。分の悪い賭けとは言いきれないんじゃないかな?」

 

「─────ありがとう、僕は良い友人を持ったよ」

 

 

 

 

 

 

 





最近、寒暖差が激しい為かまたもや咳が止まらなくなりました。

皆さんも体調管理には気を付けてください。


オマケ。


ゴジータの級友その①

炎獄杏寿郎

ヒーロー名は【焔武者】

雄英の入学当初から甚田の事を気に掛けていた人物。
圧倒的強さを持ちながら、それでも貪欲に強くなり続ける甚田に危機感を抱いていた彼は、その溌剌さとは別に慎重に対応するなど面倒見の良さを持つ。

個性は【発火】。手に持つ物体に炎を纏わせ、相手に叩き込むその技の派手さはエンデヴァー程の火力にこそ及ばないが、相手に決定的な一撃を与える。

因みに、ちゃんと銃刀法に則って資格をとっているぞ!



その②善院直哉。

ヒーロー名は【マッハスピード】

甚田の強さ、その異常性に入学してきた誰よりも早く気付いた男。
その他者を寄せ付けない強さに憧れ、それでも尚強くなり続ける甚田に多大な影響を受けた日本男児。

学生時代、周囲の人間が甚田を遠巻きにする中で甚田に絡む数少ない悪友。

最近は可愛がる姪っ子にウザがられている事。

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