超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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誰かコナミ君INブルアカな二次書いてくれないかなー。

そんな訳で初投稿です。


記録90

 

 

 

 ─────神野で起きた戦い。ゴジータとオールマイトという日本が誇るスーパーヒーローの活躍もあって、巨悪であったA.F.Oは敗れた。

 

その日から、A.F.Oの盟友である殻木球大は死柄木弔、⬛⬛⬛の調整と並行し、ある脳無の開発に心血を注いでいた。

 

 それは、対ゴジータによるもの。超常社会と呼ばれ、ヒーロー飽和社会となった現代で尚、異質且つ強すぎたNo.1に対する僅かな対抗策。

 

手掛かりはあった。殻木球大には机上の空論を現実に落とし込める程の技術と知識があり、なにより…………彼女との面識があった事が最も大きな幸運だった。

 

 何せ、彼女の事は生まれる前(・・・・・)から知っている。胎児の時に異形型の個性因子を埋め込めば、どの様な結果が産まれるのか。当時は個性に関する一つの興味本位でしかなく、結果姫野葵はその家系とは異なる人為的で先天的な異形型の個性という分かりきっていた結果(・・・・・・・・・・)と共にこの世に産まれ落ちてきた。

 

 そう、殻木球大は既に姫野葵の生体情報を手に入れていた。何せ、殻木が彼女をそうなるように仕向けたのだから。

 

生まれも、差別も、何もかもが殻木球大によるもの。彼女が人類稀に見る頭脳の持ち主であること以外、姫野葵の半生は元より決められていた。

 

 当時はつまらない結果で生まれたつまらないサンプル。その時の殻木にとって姫野葵はそれだけの存在に過ぎなかった。

 

しかし、ゴジータという突出したヒーローが現れた事により、その価値は覆る。敵に対して苛烈になれる新たなNo.1には、後生大事にしている家族ごっこの連中がいて、その中にはあの姫野葵の名前があった。

 

 調べて同性同名の同一人物だと知った時は、殻木は神に感謝した。これで邪魔者を排除する手段が整った。後は状況を作り出すだけなのだと。

 

 ワープの個性を持った蛙型の小さな脳無にピョン吉と名を与え、摸倣品にはオリジナルと同じ名前と使い捨ての役割を与える。

 

意識も記憶も人格もない、伽藍堂な肉人形。No.1ヒーローの足止め、ただその為に生み出された脳無擬き。

 

 オリジナルと同様に戦う力などなく、盾にもならない出来損ない。しかし、それでも殻木には確信があった。

 

これで、A.F.Oの時代が再び訪れる。ゴジータという人間性を知るが故の確信、後は全てマスタピース(死柄木弔)が終わらせてくれる。

 

 そしてその先では彼が、A.F.Oが全てを変えてくれる。

 

来るべき未来を夢想して、殻木はただ血に染まる屍の山を積み重ね続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────なんで?」

 

 群訝山荘。未だにヒーローと超常解放戦線の構成員達が激闘を繰り広げる中、No.1ヒーローであるゴジータは全ての意識を目の前の女性に向けていた。

 

 女性は、自分がよく知る人と似ていた。

 

………いや、似ている処ではない。同じなのだ。体の所作から自分の名前を呼ぶ声、浮かべる微笑みまで、その全ての情報がゴジータに目の前の女性が姫野葵だと認識させていた。

 

彼女から感じ取れる気の性質も。

 

 だから、ゴジータの思考に数秒間の空白が生まれるのもまた、必然だった。

 

「ゴジータッ!!」

 

「ッ!?」

 

「今、公安に確認を取った!! 姫野葵は今もあの施設にいる。この場に彼女がいる筈が無いんだ!!」

 

「な、に……!?」

 

「確りしろ!! 目の前のソイツは偽物だ! 姫野さんじゃない!!」

 

 ホークスに叱咤され、我に返る。そう、ゴジータが真に想っている姫野葵はこの場にはいない。彼女は今も、今回の作戦が行われている事など露知らず、公安達の監視下の下、子供達と共に生活している。

 

 言われてゴジータも気付く、意識を集中すればここから遠く離れた所、施設のある土地で元気に過ごしている姫野葵本人の気が確かに感じ取れた。

 

 安堵、からの更なる疑問。ならば目の前の姫野葵も同然なこの女性は何なのか、戸惑いながら彼女をどうするか思考を巡らせた時───それは起きた。

 

「ゴペァ」

 

「ッ!?」

 

 自分の足下にへばりついていた蛙の脳無の口から、ドパッと黒い泥が溢れ出す。不味い。迫る泥を前に初めて危機感を抱いたゴジータは、瞬時に足下の蛙を引き剥がそうとするも。

 

「甚田」

 

「クッ!?」

 

 そんな彼を、姫野葵に似た何かが抱き付いてくる。華奢な体だ。自分がよく知る、少し力を入れただけでも壊してしまいそうな、小さく脆い命。

 

「吹き飛ばせゴジータ! 其処から離脱しろ!!」

 

 ホークスの指示は的確で、何処までも彼の言う通りだった。吐き出される黒い泥は瞬く間に広がり、ゴジータに抱き付く女性ごと呑み込もうとしてくる。

 

 ホークスの言う通り、ゴジータなら気を解放するだけで自身に纏わり付く全てを吹き飛ばすことが出来た。

 

 いや、今からでも十分間に合う。泥が自分を覆い尽くす迄にまだ数秒程時間がある。気を解放し、周囲ごと吹き飛ばせば………。

 

「甚田、ご飯、美味しい?」

 

「~~~~~~ッ!!」

 

 出来ない。出来なかった。自嘲気味に笑う彼女を見て、ゴジータの決断は一瞬鈍ってしまった。

 

 何故なら、仮令(たとえ)違った偽者でも、その顔と声が自分を欺く罠なのだとしても。

 

ゴジータに、目の前の女性を振り払う選択肢などありはしなかった。

 

 だから、せめて……!

 

「────バリヤー!」

 

 泥が二人を完全に呑み込む直前、ゴジータは自身と姫野(偽)を包むように気を球状に変化させる。

 

 しかし泥はバリヤーを張った二人ごと呑み込み、瞬く間に小さくなっていく。

 

「ゴジータ!!」

 

 ホークスが駆ける。翼をはためかせ、手を伸ばす彼の視線とゴジータの視線はその一瞬だけ重なり。

 

「───すまん、ミスった」

 

 沈痛な面持ちで苦笑いを浮かべるゴジータ。彼は姫野によく似た女性と共に泥に呑み込まれ。

 

其処には役目を終えてグズグズと自壊していく蛙の脳無だけが残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────ッ!?」

 

 蛇腔総合病院。殻木球大の本拠地であり、全ての脳無の産みの親である彼は、モニターに点滅していた反応が消えた事を確認すると、その口元を大きく歪ませる。

 

もうすぐヒーロー達はここに来る。このままでは自分は捕まり、A.F.Oの復活の芽は完全に摘まれてしまうだろう。

 

 長らく続いた研究と野望の日々、それがもうじき終わりを迎える………だと言うのに、殻木の表情は何処までも喜びに打ち震えていた。

 

「よぉ、やっと面が見れたな。お前が例の殻木球大やな。ブッサイクな顔をしとるなぁ、俺が顔面ボコって整形させたる」

 

 そんな彼のもとに現れる一人のヒーロー、全身から血を流していながら、一切闘志が萎えていない速さ特化のヒーロー、【マッハスピード(善院直哉)】。

 

ギラついた眼差しで殻木を射貫くが、小心者である筈の殻木は全く動じた様子はなく、プロヒーローを前に不気味に笑う。

 

「何がおもろいねん。クソマッド、自分の野望が潰えたと分かって可笑しくなったか?」

 

「ふ、んッフフフフ、いやなに、ついお前達が滑稽でな。つい笑ってしまったのだよ」

 

「あぁ?」

 

 この期に及んでの挑発。現在病院内の脳無の鎮圧は8割以上完了し、厄介なハイエンドなる黒い脳無も全て自分と級友が始末している。

 

 後は目の前のイカれた科学者と、その後ろに聳えるシリンダーの中に入る死柄木弔を捕まえるだけ。

 

ならば問答は必要ないと、身構える善院に殻木は声を上げて笑い出す。

 

「貴様等など所詮、ゴジータがいなければなにも出来ない木っ端よ! ゴジータのいない貴様等なんぞ烏合の衆も同然よ!」

 

「────そか、死ね」

 

 嘲笑いながら吐き捨てる殻木の言葉は、善院の沸点を振り切るには充分だった。

 

ヒーローらしからぬ殺意、しかしそれでも殻木の笑みは崩れる事はなく。

 

「バカが、死ぬのは───お前達だッ!!」

 

 地震。突如として起きる大規模の地震、突然の事に善院の脚は止まり、殻木の笑みは比例して深まっていく。

 

「死柄木弔、マスターピースはワシの最高傑作!! ワシのこれ迄の人生の全てを注ぎ込んだ存在!! であるならば!!」

 

「最高傑作と並ぶ最強傑作、それがコレよ!!」

 

 割れていく地面、その中から見える巨大なナニカ。

 

ギラリと光るソレと眼があった善院は己の生存本能に突き動かされ距離を取る。

 

 瞬間、現れ出でるのは巨大な腕。壁の様に聳える腕は、神話に出てくる巨人。

 

「主の代理として、この時だけ貴様に命ずる!! 死柄木()が目覚めるまでワシ等を守れ、ヒーローを蹴散らせ、マキア!!」

 

「⬛⬛⬛⬛⬛ッ!!!」

 

 天井を破り、崩れ落ちる瓦礫をものともせずに、巨大な怪物が咆哮を上げて眼を覚ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────マジか」

 

 その光景に、ゴジータは呆気に取られた。

 

 全てが闇に包まれる暗黒の世界。自分に抱き付いている女性は、今は子供の様に眠っている。彼女を起こさないように気を付けながら、ゴジータは自分の居る場所を理解していく。

 

 それはまだ昔、当時自分が小学校に入るよりも前だった子供の頃。恩師である姫野葵が持っていた資料に掲載されていた。

 

『………ねぇ先生、先生って宇宙に興味あるの?』

 

『え? あ、それ持ってきてたんだ。なぁに甚田、貴方宇宙に興味あるの?』

 

『────まぁ、多少は』

 

 いつか宇宙から来る脅威に備えて……なんて考えながら読んでいた宇宙関連の雑誌。それは嘗て太陽系に並ぶ一つの惑星だったもの。

 

 人の解釈と都合で勝手に枠組みに組み込まれ、そして外された異例の星。

 

【冥王星】

 

 ゴジータは今、太陽系から最も遠い場所に漂っていた。

 

 

 

 





登場人物解説。

姫野葵

後藤甚田の恩師。類い稀なる頭脳を持ち、一時は宇宙開発にも視野に入れていた天才。

その実態は後天的に当時担当医だった殻木により、胎児の頃に個性を移植されたデミ脳無と呼ばれる存在。

本来であればただの無個性の女性として生まれる筈が、移植された個性によって異形となった。

これが原因で葵は家族から蛇蝎の如く嫌われ、母親にすら謂れのない恨みを受ける事になる。

尚、殻木球大はこの実験を分かりきっていたものとして簡単に処理している。

 しかし、それでも頭脳面では自分の予想を裏切っていた為、脳無の母胎として確保しておくべきだったと後悔している。



姫野葵(偽)

 姫野葵の生体情報を基に生み出された脳無擬き。脳無というより人造人間に近く、短時間の内に創られた為、寿命や人間の機能が働いているのかすらも不明。

ゴジータの足止め、ただそれだけの為に生み出された存在。

ぶっちゃけゴジータはA.F.Oよりも彼女を生み出した輩に対して怒りを抱いている模様。

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