超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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もうすぐエルデンリングDLC開幕。

そんな訳で初投稿です。


記録91

 

 

 

「────ゴジー……タ?」

 

 目の前で消失したNo.1ヒーロー、そのあまりにも予想外な光景にトップヒーローのホークスですら唖然となって言葉を失う。

 

最強不敵、希望の象徴と言われ、オールマイトを超えたヒーロー。そんな彼が影も形もなく消えてしまった。

 

 大規模のヴィラン組織の摘発、その最中の消失は他のヒーローにも動揺の波紋となって広がっていく。生死不明、行方も不明となったゴジータ。

 

そんな事実を前に最初に我に返ったのは……やはり、ホークスだった。

 

「いや違う! 恐らくゴジータは何処かに飛ばされたんだ!」

 

「ホークス!?」

 

「思い出せ! あの黒い泥は神野で確認された転移系の個性によるものだ! だったら、今も何処かで生きてはいる!」

 

 精一杯の言葉。姿を消され、動揺する前線を建て直す為にホークスが紡いだその言葉は、浮き足立つヒーロー達に一先ずの落ち着きを取り戻した。

 

次に司令塔へ確認の通達を行おうと、近くにいたファットガムから予備のインカムを受け取る。あの出鱈目トンチキヒーローの事だ、きっと生きている筈だとホークスは可能性に縋るが。

 

「──か、カハハハ」

 

 小さくか細く、それでいて嘲笑の笑いが酷く耳に障った。

 

「や、やったぞ、賭けに勝った! ハハハ、ザマァないなヒーロー供、この戦い……我々の勝利だ!」

 

それは作戦開始の時、チャージズマ(上鳴電気)によって無力化された幹部の一人。エッジショットによって肺に小さな孔を開けられ、動きを封じられていると言うのに、その笑みは悦びに歪んでいた。

 

「賭け……だと?」

 

「そうさ。我々は最初から捨て駒だった。足止めで、殿で、蹴散らされるだけのただの囮。全てはNo.1ヒーロー、忌々しいNo.1ヒーローを舞台から排する為のギミックだったのだよ!!」

 

 幹部は言う。スパイであるホークスに然り気無く情報を与え、ゴジータの配置を誘導していた事を。偽りの情報ではなく、こちら側の真意を悟られない程度に加減しての小出しの情報漏洩は、戦うよりも難儀したと。

 

「公安の狗である貴様との騙し合いは、流石に骨が折れた。何せ此方は出せる全ての情報を出し、且つお前に真意を悟らせない為に立ち回らなければいけないのだからな」

 

「ッ!!」

 

「バレていないとでも思ったか! バカめ、貴様等ヒーローは仮令(たとえ)我等のシンパであっても信用してはおらんよ」

 

 ヒヒヒと嗤い、今度こそ幹部は意識を失う。地に埋まる彼を見ていると、司令塔から全ヒーローへ通信が届き、それに耳を傾けたホークス達は今度こそ動揺の坩堝へと叩き落とされる。

 

『群訝山荘にいる全ヒーローに通達! 動ける者は大至急蛇腔へ向かい、現場のヒーロー達の援護をせよ!』

 

『繰り返す! 蛇腔にて大規模の崩壊現象が確認され、中心地より巨大ヴィランが出現! 被害甚大!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⬛⬛⬛⬛⬛ッ!!!」

 

「ええい! いきなり現れてわめき散らしおってからに、煩くて敵わん!」

 

 眼前に現れし巨人、天蓋を突き破り瓦礫を撒き散らし、雄叫びを上げるその姿はまるで怪獣。人の枠組みすら逸脱したその巨大さにマッハスピード(善院直哉)は吐き捨てながら距離を取る。

 

 今頃ならあのウザったいイカレ博士を自分のスピードで捕えられた筈なのに、肝心の博士(MAD)は気色悪い笑みを浮かべて、巨人の肩に佇んでいる。

 

腹立つ顔、やはり一発顔に蹴りを入れておくべきだったと口惜しく思いながら、善院は委員長(炎獄)の下まで下がる。

 

「スマン委員長、シクッた。野郎、トンデモない伏せ札を隠しておきよった」

 

「どうやらそうらしい。なんて禍々しい気配、あれは最早脳無の様な怪人の範疇には収まらないな」

 

 正しく怪獣。岩のような頑強な肉体を誇り、その巨大な体躯は【王】をあらゆる脅威から護る為の肉の盾。

 

下がり際に蹴りを入れて分かった。この怪物は生半可な攻撃ではビクともせず、戦力差は恐竜と蟻同然になったと、善院は確信する。

 

「委員長、一先ずは逃げようや。此処であの化物が出てきた以上、狭い地下では分が悪い。身動ぎされただけで圧殺されてまう」

 

「───どうやらその様だ。よし! 脱出するぞ! 足の速い善院はミルコを、ジェントルは俺と共に来てくれ!」

 

「りょ、了解!」

 

「相変わらずの即断即決、さっぱりしとるでホンマ」

 

 未だ全容は明らかにならず、地下から現れる巨人。その大きさを前に怪我人を抱えた状態で、更に地下での戦闘は不味いと即座に判断した炎獄は病院からの撤退を決意。

 

インカム越しに各ヒーローに状況の伝達を行い、離脱。背後から聞こえてくる殻木球大の耳障りな嗤い声を背に、二人は全速力でその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────な、何だよこの地響き!?」

 

「地震か!? いや、それにしたって様子が変だ!」

 

 蛇腔病院周辺の街、地元住民の避難を終えたヒーローの一人が足下から来る違和感に困惑し、その小さな困惑は押し寄せてくるより強い地響きによって動揺へと変化していく。

 

嫌な予感。これ迄なかった現象を前にヒーロー達は勿論、駆り出された学生の仮免ヒーロー達も同様に空を仰ぐ。

 

視線が向けられるのは蛇腔病院、トップヒーローであるミルコの負傷の連絡を聴いてからパタリと通信は途絶え、嫌な空気だけが充満していった。

 

 やがて、不安で詰められた空気は病院の爆発と共に弾け飛び。

 

「ブルァァァァァッ!!!」

 

 巨人が天地を震わせる雄叫びを上げ、ヒーロー達の前に姿を現す。

 

あまりにも異様、あまりにも巨大。自分達を見下ろす巨大なヴィランはヒーロー達へ視線を向けると。

 

バカンッと、その顎を開く。

 

迸る光り、辺りを赤紫へ変えるその光りを前に……。

 

「死ぬ気で避けろ!!」

 

 爆豪の叫び、しかしその怒号は巨人の放つ光りによって掻き消され……。

 

この日、一つの街が日本の地図から姿を消した。

 

「んふ、ンフフフ、ンフフフフ!」

 

 嗤う。

 

「凄い! 凄いぞ我が最強傑作よ! お前の寝起きの欠伸で、ヒーローどもを蹴散らしおった!!」

 

巨大なる怪物の肩で、悪意の天才は嗤う。

 

「良いぞぉ、その調子でヒーローどもをこの世から消し去ってしまぇぇ!!」

 

狂喜に嗤い、愉悦に嗤う。両手を上げて喝采を上げる殻木、そんな彼の隣に一人の青年が並び立つ。

 

「っ、おい、あまりでかい声を出さないでくれよ。此方は寝起きなんだ」

 

「おぉ、それはすまなんだ。しかし見ろ死柄木弔、これがお前の望んでいた景色だぞ!!」

 

 シリンダーから目覚め、痛む頭を抑えながら現れるのは、調整を終えた死柄木弔。その眼下に映る景色を見て。

 

「おー、こりゃあ確かに………良い景色だ」

 

何もかもを破壊し尽くした光景、更地と化した景色に感嘆の声を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お、おい、何だ今の衝撃は!?』

 

 聞こえる。

 

『向こうの空が赤黒く光ったぞ、確かあの方角は……!』

 

 聞こえてくる。

 

『蛇腔病院、だったか。確か今彼処ではヒーロー達による大規模ヴィランの掃討作戦が開始されている筈』

 

 マキアの咆哮が、友人(殻木)の喜悦の笑い声が、そして死柄木弔(僕の器)の目覚めの鼓動が。

 

「ふ、フフ、フフフフフ!!」

 

 笑いが零れ、止まらない。向こうで看守の何人かが喚いているが……聞こえない。

 

「アハハハハ! そうか、やってくれたか! ありがとう、解放戦線の諸君!」

 

 彼等の声が聞こえてきたと言う事は、賭けに勝ったと言う事。あの目障りなNo.1ヒーローは消え、【G細胞】に適応した二人が目覚めたと言う事。

 

もう、ここで大人しくしている道理はない。高々と笑い声を上げて拘束を引き千切るA.F.Oは鋭い触手を伸ばし、自分を監視しているカメラをずっと狙い済ましていた機関銃ごと凪払う。

 

 同時に聞こえてくるサイレン。隔壁が下りたり、遠くから看守達が防衛システムを起動しているが………関係ない。

 

自分にとって最も厄介な存在、ゴジータが宇宙の彼方へ消えた事で自分の目論みはほぼ10割叶ったのだから。

 

「残るは消化試合、イージーゲームって奴だ」

 

 電磁波と衝撃強化、その他諸々の個性を掛け合わせてのエネルギー照射。頭上に向けて放たれたソレはタルタロスの強固な隔壁を破壊し。

 

跳躍。A.F.Oは久方ぶりのシャバの空気を肌で感じ取った。

 

「サービスだ。囚われている彼等も解放して上げよう」

 

 指から生える触手を鋭利な刃物へと変え、タルタロスを切り刻む。すると内部のあちこちから聞こえてくる歓喜の雄叫びにA.F.Oは気分が良さそうに口許を歪めた。

 

「さぁ、ここから始めるとしよう。僕の………最高の魔王になる為の物語を!!」

 

 浮遊し、加速する。目標は蛇腔、其処にいる新たな自分(死柄木弔)との融合を果たし、自分は新たなA.F.Oへと昇華する。

 

これから始まる自分の物語、魔王として世界に君臨することを夢見る少年の気持ちで空を往くA.F.O。

 

 最早自分を阻めるものはもういない。そう、もういないのだ。

 

─────なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、良い着心地だ。流石だデイブ、相変わらず良い仕事をしてくれる」

 

『………本当に、君がやるのかい』

 

 何故、お前がいる。

 

『君は、もう充分戦った。君のお陰で多くの人が救われた。後継者も現れ、君の出来る事はもうない筈。なのに!』

 

「違うぜデイブ。それは違う」

 

 嘗ての様な大柄な体躯はなく、精々中肉中背の一般人。そんな奴が嘗てのヒーローコスを身に纏い、ビルの屋上で佇んでいる。

 

「誰かが泣いている。誰かが苦しんでいる。助けを求める人がいる限り、ヒーローは必ずやってくるのさ───そう、故に」

 

 苛立ちが募る。憎悪が加速する。折角の気分が台無しだと憤慨したA.F.Oは、無能で無意味な無個性人間へ殺意を向ける。

 

しかし崩れない。膨大な悪意と殺意を前にしても、二本角を携えた嘗てのNo.1は不敵に笑みを浮かべ。

 

 

「私が来たッ!!」

 

 

 

 

 

 






Q.
A.F.Oは外の様子をどうやって知ったの?

A.
聴覚をこっそり強化して、看守の遣り取りを盗み聴きしてました。

セコイですね。

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