超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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皆さんは、影の地で誉れを保ていますか?
私は最初の平原でミキサーに掛けて毒沼に捨てました。

そんな訳で初投稿です。


記録92

 

 

 

「クッ、何なんだ今の衝撃は!?」

 

 積み重なった瓦礫を吹き飛ばし、蛇腔病院だったものから這い出てくるエンデヴァー。

 

荼毘との交戦中に引き起こされた大規模な地震、それにより倒壊する病院の瓦礫に埋もれてしまった彼は、得意の炎を全身から噴き出すことで瓦礫を吹き飛ばし、どうにか地上に脱出する事が出来た。

 

 瓦礫に呑まれた際に身体のあちこちに傷が付いているが五体は無事、身体も個性も十全に動けるエンデヴァーは、地上にいる仲間に連絡をいれようとして………絶句した。

 

「何だ………この光景は!? 街が、消えている!? あ、あのデカブツがやったのか!?」

 

 目の前に広がる更地となった大地。そこにある筈のビルや家屋は消し飛び、ただ無惨な荒野だけが広がっている。

 

彼処にはまだ大勢の人々やヒーロー達がいた筈、最悪の状況を予想して身体から血の気が引いていくエンデヴァーは、顔を青くさせながらインカム越しに通信を飛ばした。

 

「こちらエンデヴァー! バーニン、聞こえるかバーニン! 焦凍ぉ!!」

 

 聴こえてくるノイズの音、繋がらない通信にエンデヴァーは言葉にできない焦りを募らせ。

 

一度向こうへ合流するか? いや、このデカブツを放っておくわけには行かない。しかし、焦凍や他のヒーロー達の事も気掛かりだ。

 

 長らくトップヒーローとして君臨し、だからこそ今回の作戦の陣頭指揮を任されていたエンデヴァーをして、即決出来ない程に状況は混迷を極めていた。

 

其処へ。

 

「何処へ行く気だよエンデヴァー!」

 

「っ、荼毘!」

 

 死角から押し寄せてくる蒼炎、それを鬱陶しく思いながら自らの紅炎で迎え撃ち相殺。目の前に立ちはだかる荼毘はニタニタと────それでいて何処か必死な────凄絶な笑みを浮かべている。

 

「えぇい! 邪魔をするな! 今は貴様に時間を割く余裕はない!」

 

「─────おいおい、そんなつれない事を言うなよ。そんなに自慢の最高傑作の事が大事か? 流石は万年No.2、拗らせてんねぇ」

 

「………自分の息子の安否を気にして何が悪い」

 

 先程感じていた違和感。自分に固執し、自分を付け狙う男、荼毘。何故こうもこの男は自分に粘着しているのか。

 

同じ炎を操る個性だから? それとも他に別の理由が? どんなに考えても出てこない答えに更に苛立ちが募っていく。

 

そろそろ本気でどうにかするべきか。何やら頭を抑えて俯く荼毘に、エンデヴァーは先手必勝の構えを取った時。

 

「へぇ、心配なんだ? 最初の子供は見捨てた癖に」

 

「────────は?」

 

 荼毘の口から零れた言葉、小さく掠れた声でありながら、その一言はエンデヴァーにこれ以上ない程に重く、鋭く叩き込まれた。

 

クックックと、笑みが溢れる。呆然と惚けた顔を晒すエンデヴァーを目の当たりにして、荼毘の顔は更に喜悦に歪む。

 

 懐から取り出した瓶。蓋を外し、中の水のような透明の液体を頭から被ると、荼毘の黒髪から色が抜け落ちていき、灰のような白髪が露になっていく。

 

 その瞬間、エンデヴァーは自身の心臓が鷲掴みにされるような錯覚を覚えた。早まる鼓動、眼の瞳孔は開き、呼吸は浅くなっていく。

 

「───嘘、だ」

 

「いいや? 事実であり、現実だぜ、お父さん」

 

 愕然となるエンデヴァーに荼毘(息子)である燈矢は歪んだ笑みを隠そうともせずに。

 

「感動の再会だ! 咽び泣いて喜べよ、なぁ!? お父さん!」

 

 無防備を晒すNo.2に特大の炎を叩き付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────クソ、が。滅茶苦茶やりやがって」

 

 更地と化した街並み、人の営みの痕跡は破壊し尽くされ、無惨に砕かれた残骸だけが残されていた。

 

ビルも家屋も等しく吹き飛ばされ、抉られた大地の端で泥まみれの爆豪は悪態を吐きながら立ち上がる。

 

「爆豪、無事か?」

 

「見て分かれ」

 

 爆豪の怒号で咄嗟に反応した焦凍が穿天氷壁で壁を作った事が幸いした。お陰で彼のいる場所は余波で吹き飛ばされてはいるものの、全員が軽傷で済んでいた。

 

「先生は? 他の皆は大丈夫なの!?」

 

「ケロ、麗日ちゃん落ち着いて」

 

 先程まであった日常風景、その光景が一瞬にして崩壊した。これ迄体験したことのない異常事態にウラビティ(麗日)は愕然となる。

 

隣ではフロッピー(蛙吹)が宥めているが、彼女も動揺を隠しきれていない。

 

 ………不謹慎ながら、飯田は安堵した。既にこの街一帯の住民達の避難は完了し、幸いな事に一般市民の人的被害はゼロに近しい。

 

もしここに市民がいれば、混乱はこの比ではない。目の前の現実に堪えきれず、暴動を起こす者が出てきても可笑しくはない。

 

 それだけの光景、それだけの悲劇。街を一つまるごと消し去られた現実に、飯田天哉は努めて冷静さを保つ事にした。

 

「────かっちゃん」

 

「あぁ?」

 

「なにかが……此方に」

 

 雄叫びが大気を揺らし、大地を震撼させていく。遠目から見てとヤバい奴だと分かっているのに、デクの視線は別に向けられていた。

 

一体なんだと、爆豪がデクと同じ方へ視線を向けた時。

 

「───今更、欲しいとは思わないが」

 

「「ッ!?!?」」

 

 背後から感じるおぞましい程の殺意と悪意、振り返った先にいるのは真っ白な髪が印象的な───。

 

「死柄木───弔!!」

 

「先生の頼みだ。貰うぜ、ワン・フォー・オール(O.F.A)

 

 万能感に浸され、力に陶酔した嘗てのヴィラン連合の長、死柄木。

 

彼の瞳には既に緑谷出久(後継者)の姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”私はもう、出しきってしまった“

 

 神野で起きた戦い。自身の全てを出しきり、自身に残されたO.F.Aを余さず使いきったオールマイト───八木俊典は、あの日から平和の象徴から只人へと成り下がった。

 

特別な力など持ちはしない。火を出したり、氷を操ったり、空を飛べる力などありはせず、天候を変える程の剛力なんて………持っている訳がなかった。

 

事実上の引退。その為の記者会見で、その為に彼へと後を託したのだ。自分のすべき事はもうないのだと、あの日に思い知ったが故に。

 

なのに………。

 

「今更出てきて何になる。無個性のお前が、ヒーローを気取って、それが何になる!? えぇ!? 八木俊典(・・・・)!?」

 

 目の前の木偶は、あろうことか戦うつもりでいる。嘗てのコスチュームを身に纏い、不敵な笑みを浮かべてマントを靡かせてビルの屋上で此方を見上げている。

 

不快。ただただ不快、ゴジータというNo.1ヒーローがいなくなった途端に姿を現す嘗ての平和の象徴。自分の役目を終えて隠居するだけの死に損ないが、何を勘違いして自分の前に立っているのか。

 

「良いだろう。死柄木弔を僕の器とする前の前哨戦………いや、オマケだ。先ずはお前を殺し、他のヒーローの見せしめにするとしよう」

 

 個性のないヒーローなんぞ只の頭のイカれた一市民でしかない。それが、五十代後半の老い耄れなんぞ案山子以下でしかない。

 

ゴジータという最大の障害を排した以上、全てがヌルゲー、つまりは詰みなのだ。

 

 全てが終わり、これからが始まる。先ずはその狼煙として目の前のオールマイトだった愚物を派手に消し飛ばそうと、A.F.O はその腕をおぞましく変形させていく。

 

 それは以前見せたプラズマ砲。加減も遠慮もなくした周囲ごと一掃するための破壊の一撃、狙いを定める必要もない。余波と衝撃で充分だと、A.F.Oはその力を解放させる。

 

迸るエネルギー、辺りを破壊し尽くすソレは間違いなく八木俊典に向けて放たれた。

 

「SMASHッ!!」

 

 しかし、それは腰から空に向けて振り抜かれた拳によって一蹴される。相殺? 否、振り抜かれた拳によって遥か空の彼方へと吹き飛ばされたプラズマ砲は、地上に当たることなく霧散する。

 

「──────は?」

 

 その光景に、A.F.Oの思考が停止する。あり得ない。個性のないオールマイトなんてただの案山子で、木偶人形で、今となっては何の価値のない存在だった筈。

 

 そんな只人が、自分の一撃を弾き飛ばした? 有り得ざる光景、目の前の現実に唖然となるA.F.O の前に………。

 

「言った筈だぜ、A.F.O。私が舞台から降りるのは、お前というやり残しを片付けた後なのだと!!」

 

 マントを靡かせたヒーローが現れる。何という高速移動、先程まで見下ろしていた筈の人間が、どういう訳か自分の目の前にまで接近してきている。

 

 防御しなくては。長年の直感に従い、自分に向けて振り下ろされる拳を前にA.F.O は腕を交差させて硬い鱗の個性で防御に入るが。

 

 その上から叩き込まれる衝撃に意識が飛ぶ。鱗は砕かれ、A.F.Oの横っ面に拳が捩じ込まれる。

 

 地面に叩き付けられた衝撃で呼吸が止まる。………なんて一撃だ。これが本当に個性を無くした人間の動きなのか?

 

(バカな、奴は確かに無個性の筈! なのに何故ここまでの力が引き出せる!?)

 

混乱する思考、定まらない結論、そんな中でA.F.O は見た。

 

「さぁ、立てよA.F.O。いい加減私達の因縁に終止符を打つとしようぜ!」

 

オールマイト(・・・・・・)ッ!!」

 

 全身を覆う白い炎、半透明で何処と無く神秘的なそれはA.F.O にとって忘れられないモノ。

 

 気の真髄。嘗て得たO.F.Aを失った代わりにオールマイトは遂にその境地へ辿り着いた。

 

 

 

 

 





色々と場面展開は多いですが、これ等は全てゴジータが消えて数分間の出来事としています。

滅び行くナメック星理論です。

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