超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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何が宿将ガイウスじゃい。

お前なんか邪帝ガイウスじゃ!

そんな訳で初投稿です。


記録93

 

 

 

 ────数ヵ月前、神野事件から数日後。

 

「俺の力?」

 

「そう、ずっと君の個性の力は金髪碧眼であの黄金の炎を纏い超人的なパワーを引き出すものだと、そう思われてきた」

 

 とある海岸。珍しく休日が被り、波打ち際で釣りを嗜む二人。釣糸に垂れ下がるブイを眺めながら、オールマイト(八木俊典)は呟く。

 

「けど、その認識は違った。先の戦いで確信したよ。ゴジータ、君のその超人的な力は個性によるものではないね」

 

 責めている訳ではない。オールマイト自身もその由来故に個性であるO.F.Aを世間からひた隠しにしてきた。

 

 けれど、先の神野での戦い……A.F.Oとの決戦の際に自身が目覚めたあの力、体感して気付いた。ゴジータが纏う白い炎は個性による力ではないということ。

 

「【気】それがオールマイトが目覚めた力の総称さ」

 

「気、か。中国や仏教に記されている仙道みたいなモノかい?」

 

「まぁ、似たようなもんだと思ってくれればいい。それで、それを聞いてアンタはどうするつもりだ?」

 

 個性によらず、人間自身の努力で引き出せる後天的な力。それだけを聞けば無個性の人々も希望を見出だせると思ったが、世の中そんなに甘くはない。

 

この力を扱うには途方もない修練が必要だ。絶え間なく過酷な鍛練を続けられる忍耐と精神、一度使えたオールマイトだからこそ理解できる其処に至れる程の道程の険しさ。

 

個性という異能ではなく、肉体と精神。その両方を極限まで追い詰めないと至れない領域、それが【気】という力の結晶体。

 

「別にどうもしないさ。ただ……ちょっと寂しく思っただけさ」

 

 【気】という力を扱うには相当な修練を必要とする。それが、まだ年若いゴジータが扱える異常さ。いや、それこそがゴジータの個性である《超》の真髄なのかもしれない。

 

けれど、そんな過酷な日々を送って来たであろうゴジータの苦悩を、何も解ってあげられていない。だから寂しいと落ち込むオールマイトをゴジータはくつくつと笑う。

 

「別にアンタが気落ちする必要はないだろ。俺はただ、目標の為に背伸びをし続けてきただけ。そこに同情の余地はないよ」

 

「そう、だね」

 

「それに、今は違う。以前も俺が自分を鍛えるのは趣味だって言ったろ? これでも、昔を思えば随分と成長してるんだぜ?」

 

 そういって笑うゴジータは、年相応の青年のソレだった。それを目の当たりにしたオールマイトは良かったと心の底から安堵する。

 

「エンデヴァーも切っ掛けさえあれば目覚めそうなモノなんだけどなぁ。面倒ごとが片付いたら教えてやろうかな」

 

「ゴジータ」

 

「ん?」

 

「君は、昔とは成長したと言ったな。なら、一つアドバイスをくれないか?」

 

「アドバイス?」

 

「あぁ、一体どうしたらそんな風に強くなれるのかなってね」

 

 オールマイトの何となく口にした問い、それをゴジータは───。

 

「よく 動き

 よく 学び

 よく 遊び

 よく 食べ

 よく 休む」

 

「人生を楽しく過ごす為、己に負けない為に勤しむ事、それだけの事さ」

 

 何て、やはり笑いながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、どうやら上手く出来ているみたいだな」

 

 全身に力が滾り、それが白い炎となって噴出する。これ迄の自分の努力が実を結んだ事を、文字通り身を以て体感しているオールマイトは、自身の掌を見て満足げに頷く。

 

パワーとスピードこそは全盛期(O.F.A保持)よりも劣るものの、並大抵のヴィラン相手にはそうそう後れを取ることはない。そう確信できる程の力の滾りが自身の内に渦巻いているのが分かる。

 

尤も。

 

「…………」

 

「ま、そう簡単にはいかないよね」

 

 宙に浮かぶその男は並みのヴィランとは隔絶した悪の権化、超常黎明期より悪意をもって君臨してきた魔王。

 

横っ面を殴り飛ばされ、地に叩き付けられた。無言でありながら相当キテ(・・)いる宿敵に、オールマイトは笑みで応える。

 

「────何故」

 

「?」

 

「何故、無個性の君が僕の前に立っているのか。何故、君がゴジータと同じ力を扱えているのか。────そんな事はこの際どうでもいい(・・・・・・)

 

「!」

 

 指から生える巨大な顔、不気味さと気色悪さに悪寒を感じたオールマイトは、即座にその場から跳躍。

 

瞬間、オールマイトのいた足場は噛み砕かれ、顔面兵器は獣のごとき動きで追随する。

 

「そんなに目立ちたいなら派手に殺してやろう。喜べよ、親友。君の活躍を後の世に伝えて上げよう」

 

「は、遠慮させて貰うさ!」

 

 電柱を、陸橋を、建物すら食い破って来るソレ。もう一種のホラーだろと呆れながら、オールマイトは実年齢とは年不相応な機敏な動きで避けていく。

 

「遠慮するなよ、僕達の仲じゃないか」

 

 指を翳せば、空気を圧縮した砲弾が飛んでくる。目には見えない砲弾、それを僅かな空気の揺れで感じ取ったオールマイトは、身を捩りこれも回避する。

 

瞬間、直撃した道路が陥没し、爆発。煙の中から無傷で現れるオールマイト、これにはA.F.Oも動揺した。

 

目に見えない筈の空気の砲弾、僅かな戦況の変化にも対応して見せた対応力。それは全盛期の頃ですら見せなかったオールマイトの変化だった。

 

「……どうなっている。これも、あの炎の力だと言うのか」

 

 確実に当たる筈だった一撃、昔であればそれで動きを止める牽制になった筈。これ迄とは明らかに動きの異なるオールマイトに、A.F.O は無意識に歯を食い縛る。

 

一方。

 

(不味い、感覚が鋭すぎる! 慣れていない力の感覚に私の体がついてこれていない!)

 

 オールマイトは、自身の努力で目覚めた筈の力に絶賛振り回されていた。

 

気という力は出力次第で如何様にも変化し、強化される力だが、扱うには目覚めさせた時以上に繊細な力加減が要求されてくる。

 

 O.F.Aを保有していた時とは勝手が違う力の発露、ゴジータの指示を受けてある程度の制御は出来ているが、細かい部分の所は相変わらず下手くそのままだった。

 

(加減を誤れば被害規模が周囲に拡散されてしまう! こんな膨大な力を、彼は常に制限していたのか!!)

 

 気という力を会得し、その領域に踏み込んだからこそ、ゴジータというヒーローの規格外さを改めて理解させられる。

 

その気になれば腕の一振で街を破壊してしまう焦りと恐怖、そして………全能感。こんなものを抱えていながら、ゴジータは平然と日常に溶け込んでいた。

 

何という精神力、なんという自制心。気という仙人染みた力を持ちながら、一切慢心せずヒーローとして活躍している。

 

 オールマイトは、心の底から尊敬の念を抱く。ゴジータというヒーローを、後藤甚田という一人の人間を。たとえそれが、歪んだ憧憬から生まれたものだとしても。

 

(本当、凄い奴だよ君は!)

 

 その憧憬に抱く気持ちに、何一つ偽りはないのだから。

 

「図に乗るなよ」

 

 地を蹴って飛び上がるオールマイト、A.F.O に向けて拳を握り締める彼の足元から、瓦礫を食い破った巨顔が迫る。

 

迫り来る二つの顔。不気味にせせら笑い、大きく口を開きながら向かってくるそれを。

 

「カリフォルニア──SMASH!!」

 

 回転し、自らを弾丸として放たれる一撃で以て貫き、吹き飛ばす。

 

「ほら、隙アリだ」

 

 がら空きの背中、無防備の其処へ向けて突き立てた指先が触手の槍となって強襲する。

 

赤黒く血のような槍、今度こそ当たる筈のそれは、宙を蹴ったオールマイトが回避する。

 

「─────は?」

 

 今度はA.F.O が隙を晒す番だった。個性もなく、自分のような宙を蹴る個性のような挙動を見せるオールマイト。

 

気付けば、彼の拳が目の前に迫っており、我に返ったA.F.O は咄嗟に防御するも。

 

「個性ばかりに頼りすぎだぜ、親友!」

 

 オールマイトの一撃が、A.F.O の腹部に叩き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────へぇ、やるじゃん」

 

 眼前に迫る手、崩壊という死が形取ったそれを突き出され、震えるデクの耳に届くのは感心の一言。

 

「マキナの砲撃で有象無象のヒーロー達と一緒に消し飛んだと思ってたけど、存外しぶといじゃん。イレイザーヘッド」

 

「相澤先───ッ!!?」

 

 死柄木の視線に釣られ、デクの視線が其処へ向け………絶句する。

 

 右腕が歪に折れ、左足に至っては膝から下がない。全身血塗れになりながら、同じくボロボロのマニュアルに支えられながら、個性を発動させている相澤にデクは目を剥いた。

 

「緑谷………逃げろ」

 

「格好いいぜ、イレイザーヘッド。けど、流石に邪魔だな」

 

 個性を消され、崩壊も個性を奪う力も削がれた。

 

だからどうした? 今更、その程度の小細工で死柄木が止まる事はない。G細胞に適応された死柄木の肉体は、最早オールマイトの膂力すら超え、そこいらの人間なんて素手で飴細工の如く粉砕できる。

 

 ただ、死ぬ順番が変わっただけ。デクを視線から外し、相澤に向けて歩み始め………。

 

「させる、ものかぁ!!」

 

「飯田君!」

 

 個性を全力噴射した飯田の蹴りが死柄木の頭部に炸裂し。

 

「イェェェェェェッ!!!」

 

 プレゼントマイクの怒号が地表を抉る。

 

「死ねぇェッ!!」

 

 爆豪の爆破が轟き。

 

「凍れッ!!」

 

 焦凍の凍結で巨大ヴィランごと周囲を氷漬けにする。

 

「かっちゃん! 皆!!」

 

 相澤を守る様に陣を組む仲間に、デクも加わる。頼もしいと思う反面、顔色は悪い。

 

何故なら、彼等の何れもがこれで終わりとは思っていないからだ。事実、巨大なヴィランの目は未だに此方を脅威とすら認識していないようで……。

 

「はぁ、生きてたか。やっぱ雑な掃除ってのは細かいゴミがポツポツ出てくるからいけない。………仕方ない、か」

 

来る。そう身構えるデク達は。

 

「ここから先は、丁寧に片付けよう」

 

 溢れる悪意と殺意に、自らの死を予見した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────無理だ。

 

 今の俺達では、確実に殺される。

 

 一見抵抗出来ている様に見えるのは、ひとえに奴が手を抜いているからに過ぎない。

 

何時でも殺せる癖に、そうしないのは子供が虫を弄ぶのと同じ理屈。自分が愉しむだけの暇潰し。

 

今の自分達では、有効打は疎か傷一つだって付けられやしない。

 

 だから(・・・)、爆豪勝己は決断する。

 

『だから違うって、お前のはただ力んでるだけ。全身の力から、エネルギーをかき集めるのをイメージしろ。両手にエネルギーを集め、圧縮させるイメージを、だ』

 

『やってんだよクソが!!』

 

 この瞬間、この刹那に、一度たりとも成功しなかったモノ。

 

あの日、超巨大な隕石を貫き、破砕した光の柱。

 

 今の自分に出来るのか、失敗すれば自分が恥をかくだけでは済まさない。

 

殺意と極度の緊張の中で、爆豪は両手で印を結ぶ。

 

「かぁ……」

 

 最早死柄木の目に自分は映っていない。それでも爆豪は勝つ為、勝って皆を救う一手。

 

何もない筈の両手の空間に、小さな光が灯る。

 

 

 

 

 

 






ELDEN RING、面白ッ!!

っていうか、なんかホラー要素強めじゃね? 軽くトラウマになったマップがあるのじゃが……。

翁とか翁とか翁とか。

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