超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

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 もうすぐガンブレ4発売!

 そんな訳で初投稿です。


記録98

 

 

 

「っ、なんだ? 今の気配は!?」

 

 タルタロスから少し離れた街の上空。脱走を図ったA.F.Oを打ち倒すべく、一人闘いに挑んでいたオールマイトは、突然感じた異様な気配に戸惑いを見せた。

 

先程、蛇腔病院方面から感じたトンでもなく強い気配。それがゴジータのモノだと確信し安堵したのも束の間、突然彼の気配に別の何かが吸い付くような、気味の悪いモノを感じ取った。

 

それが、オールマイトの動きを僅かに鈍らせる。

 

「隙アリ♪」

 

「ッ!!」

 

 首もとに迫る牙、手先を変化させて鋭い獣の牙で突き立てて来るA.F.O の一撃を、すんでの所で回避する。

 

幸い、肩の肉が抉られるだけで済んだ。痛む肩に手を当てながら回し蹴りを放つオールマイトだが、A.F.O は嘲笑の笑みを浮かべながら後ろへ下がる。

 

 未だ空を飛べないオールマイトは、歯を噛み締めながらビルの屋上へ降り立つ。

 

痛みはある。だが、それ以上の憤りがオールマイトを突き動かす。

 

「アレも貴様の仕込みか! A.F.O !」

 

「……やれやれ、新しい力を得て感覚が鋭くてなっているのかな? 君の言わんとしている事、イマイチ良く分からないよ」

 

「惚けるな! 死柄木弔の気配が変わった。今私の目の前にいる貴様と同質なモノに! 彼に、一体何をした!!」

 

「志村転狐だよ。酷い奴だなぁ、嘗ての師の血族をすっかりヴィラン扱いかよ」

 

 ギリッ、と。何処までもシラを切り、人を嘲笑うA.F.O にオールマイトの御していた感情が荒波立つ。

 

 死柄木弔は既に取り返しがつかない程に罪を重ね、引き戻せない程にヴィランとなっている。それは仮令(たとえ)目の前の男が元凶だとしても、もはや庇えない程に。

 

だからこそ、オールマイトは許せなかった。恩師であり、先代O.F.Aの継承者であった志村菜奈が、苦渋の選択の果てに決断して実子と決別したというのに。

 

その決意を、覚悟を、この男は弄び、踏みにじった。

 

だから。

 

「まぁ、本当は志村転狐じゃなくても良かったんだよね。ただ、長女の方は些か成長し過ぎていたから、染めやすい新しい子の方を用意して貰っただけで」

 

「─────は?」

 

 愚痴を溢すように吐き出すその言葉に、思考が停止する。

 

「流石に少々面倒だったよ。良い歳した男に少しずつ価値観を歪ませ、ヒーローに対する怒りを自覚させ、自身の子にさえそれを強制する。あくまで自分の意思で、進んでそうさせる様にね」

 

 ニィッ、口元を歪ませて宙に浮かぶA.F.O 。その言葉を正しく理解したオールマイトはその顔を憤怒に染め上げる。

 

「A.F.O !! 貴様は、貴様は何処まで人を、命を弄べば……!!」

 

「言った筈だぜオールマイト、僕は君が嫌がる事になら全力を尽くすってさ! 喜んでくれたかよ、僕の十数年掛かったサプライズ!!」

 

 瞬間、オールマイトの思考は怒りで染め上がる。目の前の悪意を消す為、殺意を滲ませてその拳を振るおうとした。

 

 狙い通りだと、跳躍してくるオールマイトにA.F.O は不気味に嗤う。相変わらず挑発に乗せやすいと、嘲り、嗤いながら隙だらけの胴体に向けて左手の形状をドリルへ変える。

 

如何に力に目覚めようと、感情に支配された人間の動きは単調で読みやすい。

 

オールマイトの得た力の正体は未だに理解できていないが、それは今頃ゴジータの個性を奪っているであろう死柄木と同化を果たせば済む話。

 

 これで完全無欠な魔王としての自分が完成する。迫り来るオールマイトか自身の間合いへと入り、双方避けられない距離へと入った。

 

その時。

 

「─────あ?」

 

 A.F.O の横を、何かが横切った。鳥より大きく、どちらかと言えば人影の様なモノ、突然の横入りに両者が困惑しながら横切った何者かを見ると……。

 

ステインがいた。その手に鋭くなったガラスの破片を握り締め、そこに付着した赤い液体へ舌を伸ばす。

 

瞬間、A.F.O の体が硬直する。痺れ、身動きが取れなくなり、防御も回避も出来なくなった悪に。

 

「叩き込め、オールマイトッ!!」

 

「お、オォォオッ!!」

 

 オールマイトは再び握り締めた拳をA.F.O の顔面へと叩き込む。

 

 吹き飛び、瓦礫の下へ埋もれ行くA.F.O 。咄嗟の一撃とはいえ、確かな手応えを感じたオールマイトは、横槍を入れた人物へ視線を向ける。

 

「ち、マスキュラー(・・・・・・)め、もう少し加減出来なかったのか」

 

「………君は」

 

着地が失敗したのか、無人の家屋へ落下してしまった人物───ステイン、自身を此処まで投げ飛ばした囚人に悪態を吐きながら、立ち上がる彼にオールマイトは目を丸くさせる。

 

「ステイン、何故、君が………」

 

「惚けるな、オールマイト。………来るぞ」

 

「ッ!?」

 

 突然の乱入者に驚くのも束の間、A.F.O を殴り飛ばした方向から殺意と悪意が膨れ上がるのを感じ取ったオールマイトは、再び白い炎を身に纏って身構える。

 

 瞬間、瓦礫が爆発し、中から巨大な肉の塊が湧き出てきた。

 

「────あぁ、もう良いよ。いい加減飽きた。君との長い付き合いも、此処で終わりにしよう」

 

 それはこれ迄A.F.O が奪って来たすべての個性の解放。移動と破壊、それに注視して形成していくその形はまるでロケット。

 

 今更オールマイトに拘る理由もない。新たな魔王へ進化するべく、A.F.O は最後の手段へ移行する。

 

───即ち、全因解放。

 

「オールマイト、君の底はもう見えた。今の一撃を受けて分かったよ。君のその力は確かに大したモノだ。が、それでも嘗ての君には程遠い」

 

「──────」

 

「さぁ、このまま潰れて挽き肉になると良い。僕は弔と………いや、新たな僕と融合し、真なる魔王へ至って見せよう!」

 

 火が灯る。ありとあらゆる個性が混じり合い、反応を引き起こし、反重力にも似た推力を生み出し、オールマイト───否、その先にある蛇腔へ向けて進行を開始する。

 

迫り来る熱量、マトモに受ければ木っ端微塵になるのは明白。しかし、それでもオールマイトは不退転の姿勢を崩さず。

 

拳を握る。そんな彼を、A.F.O は鼻で嗤う。

 

「無駄だ。O.F.Aを、与一の力を失くしたお前に、僕を止めることなんて────出来やしないのさ!!

 

 それは、正しく奴の言う通りだ。個性(O.F.A)を失った事でオールマイトは嘗てのように拳一つで天候を変えたり、超人的な力は失っている。

 

けれど。

 

「────そうかな」

 

 笑う。オールマイトは、迫り来る巨大な()を前に、不敵に笑い、拳を掲げる。

 

「やってみなくちゃ………分からんさ!!

 

 踏み込み、飛翔する。音を超え、ありったけの力を拳に乗せ、オールマイトは真っ直ぐA.F.O へと突き進み。

 

そして………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「甚田ァッ!!」

 

 頭を鷲掴みにされた嘗ての教え子を前にして、相澤が悲痛の叫びを上げる。

 

本当だったら、もっと遠くへ離れておくべきだった。死柄木の個性である【崩壊】に注視し、自身の個性で使えないようにしてやる。なんて考えたのが間違いだった。

 

 甚田は、ゴジータは自分の懸念を吹き飛ばせる位に強く、そして凄いヒーローになった。あの日、ヒーローに興味はないと断言した生徒が、今ではNo.1ヒーローとして活躍し、誰よりも前に出て闘っている。

 

 誰よりも自身の力に苦悩していた生徒が、自分の意思でヒーローになると言ってくれた時、そして卒業時に雄英から巣立っていく時も。

 

『相澤先生、三年間お世話になりました。俺、これからは一人のヒーローとして自分なりに頑張っていくよ』

 

 結局、自分は何もしてやれなかった。精々口煩く小言を言ったり、救助を主軸にすると言うアイツに僅かな助言とコネを紹介しただけ。

 

『───それは違う。甚田、お前は最初から完成されていた。他でもないお前自身の力で。俺は、結局自分の物差しでしかお前を見てやれなかったからな』

 

他の卵達とは違い、お前は最初から完成されていた。そう、自嘲気味に笑う己に。

 

『でも、見ていてくれた。色々と問題ばかり起こして、一人分かった気になっていた俺を、アンタは最後まで教師として見守ってくれた』

 

『覚えておいてくれよ、先生。子供ってのは、案外見守ってくれるだけでも………嬉しいもんなんだぜ』

 

 そう笑って去っていくアイツの背中を、俺はきっと忘れる事はないだろう。

 

 ────ゴジータは、後藤甚田は、将来大きなヒーローになる。

 

多くの人々を救い、時には世界を救い、【希望の象徴】として、オールマイトすら超えて、もっともっと力強く飛び立っていく。

 

そういうヒーローに、なる筈だった。

 

「イレイザーヘッド! ダメだ、危険すぎる!!」

 

「離してくれマニュアル、俺は、アイツは、俺の生徒なんだ!!」

 

 そんなアイツが、此処で終わって良い筈がない。俺を庇うなんて……あって良いわけがない。

 

 マニュアルの制止を振りほどこうとして、片足を失くしても立ち上がろうとする。誰か、アイツを助けてやってくれ。灰色に変化し、ひび割れるゴジータを見て、相澤の口から断末魔の様な叫びが響いた。

 

 「ゴジータから、手を離せぇぇッ!!」

 

 その時、緑の稲妻を迸らせながら、緑谷出久が吶喊してくる。先の一撃の反動も未だ収まっておらず、グラントリノの制止を振り切って飛翔する彼は、ゴジータから死柄木を離そうと一直線へ迫る。

 

「隙だらけだ糞野郎!!」

 

 その隣へ光の爆破をまぶしながら、爆豪が追随する。初めて放った【かめはめ波】で精も根も底をついた状態で、それでも闘えると死柄木へ迫る。

 

「なにヴィラン相手に良いようにされてんだ! 目ェ覚ませゴジータ!!」

 

「寝てる場合やあらへんな。俺等も行くで委員長!」

 

「当然だ!!」

 

 そこへ更に目を覚ましたミルコが、炎獄が、善院が、ゴジータの名を呼びながら駆けていく。ゴジータを助けるため、No.1ヒーローだからとか、そんなんじゃなく、ただ助けたい一心で駆けていく。

 

「────マキア」

 

 そんな彼等が、死柄木のたった一言によって蹂躙されていく。

 

「ハァァァッ!!」

 

 雄叫びを上げ、跳躍。着地しただけで周囲を滅茶苦茶に破壊し、吹き飛ばしていくその怪物は、デク達を吹き飛ばしていく。

 

「っの、デカブツがァァッ!!」

 

「邪魔すんじゃねぇッ!!」

 

 白い炎を纏い、力を解放させたマキアは正しく災害。腕を一度振るうだけで辺りは薙ぎ倒され、周囲のヒーローは吹き飛ばされていく。

 

四肢が折れた。片目が潰された。瓦礫の礫によって脇腹は穿たれ、振るわれる暴力に蹂躙されていった。

 

しかし、それでも彼等は止まらない。ゴジータを助ける為、死柄木を止める為、彼等は進んで地獄へ向かう。

 

そこへ。

 

「流石はヒーロー飽和社会。ヒーロー共が蛆の様に涌き出て来よる。───ならば」

 

「お、おい。アレって………」

 

「更なる絶望をくれてやろう」

 

 蛇腔のあった方角から舞い上がる砂塵、其処から現れるのは黒いハイエンドの脳無達。

 

 殻木の手により、遠隔操作でありながら完全なる起動を果たした(A.F.O )の忠実な(しもべ)達。

 

 マキアの蹂躙を受けて、もう殆どのヒーローに抗える術はない。多くのヒーローの脚が竦み、恐怖で震え上がり……。

 

「このぉッ!! 退きなさいよ!」

 

「ピクシーボブ!?」

 

 ヒーローの前進は止まらない。

 

「ソイツは、ゴジータは、アタシが前々から唾付けてたんだ! 男なんかに奪われて堪るかァ!!

 

「私情が過ぎる!?」

 

「だが、言わんとしている事は分かる! 我々は既に、奴から大切な仲間の個性を奪われているのだからな!!」

 

 プッシーキャッツを筆頭に、これ迄ゴジータに振り回されてきたヒーロー達、その全てがマキアと脳無に向かって突っ込んでいく。

 

 誰一人、ゴジータの敗北を認めてはいなかった。

 

 誰一人、ゴジータが敗れる事を想像してはいなかった。

 

 誰一人、ゴジータに全てを委ねようとしなかった。

 

 そして誰もが、ゴジータを助けようと奮起していた。

 

 ゴジータは、自分達の先頭を往く者で、生意気で、誰よりも強いヒーロー。

 

 だからこそ、誰もが叫ぶのだ。ゴジータ、と。

 

 他の誰が何と言おうが、彼が、後藤甚田こそがゴジータなのだ。

 

だから────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『個性に人格が宿る。確かに僕はそう言った』

 

 誰も届かない領域。後藤甚田の精神的深層領域に土足で踏み込んだA.F.O 。

 

死柄木弔の自我を塗り潰し、第二のA.F.O として再誕を果たした彼の魔王は………しかして、目の前の存在に唖然としていた。

 

『だが、それは遺伝子での話。世代を重ねた遺伝子の中に、当時の個性因子───その中に培われてきた人物の記憶が表面に現れているだけに過ぎない。それが、丸々別の人格が宿っているなど、それこそO.F.Aでない限り有り得ない! 誰だ、貴様は!!』

 

 吠える。目の前の存在は有り得ないと、否定の雄叫びを上げる自称魔王に彼はフッと鼻で笑う。

 

『『ハッ、お前がそれを聞くのかよ。俺の事は、お前もよーく分かっている筈だぜ?』』

 

 不敵に笑う目の前の存在、それは後ろで佇む後藤甚田が、目指し続けた理想の姿。決して負けず、折れず、勝利を勝ち取り続ける最強の戦士。

 

【ゴジータ】。テレビの向こうでしか見たことのない彼が、まるで本物同然の様に振る舞っている。

 

『────妄想の産物が、僕の道を阻むな!!』

 

『『違うな。お前が俺達の道を阻んでるんだよ』』

 

 精神世界の中、それ故に何でもありだと知っているA.F.O は、己の肉体を巨大に変化させ、右腕を歪に歪ませてゴジータへ殴り掛かる。

 

『『へッ』』

 

 しかし、ゴジータは片手で受け流し、体を回転させながらA.F.O の懐へ潜り込み、奴の顎を蹴り上げ。

 

『『そら、退去の時間だぜ。不法滞在人』』

 

 跳ね上がったA.F.O の顔面に勢いを乗せた拳を叩き込む。断末魔も恨み節の言葉を口にする間もなく、A.F.O は甚田の精神世界から文字通り叩き出された。

 

『─────あ』

 

 残されたのは、自分とゴジータ。消え往くA.F.O をやれやれと嘆息しながら見送ると、今度はお前だとばかりに甚田をその視線で射貫く。

 

冷たく、恐ろしい眼だ。こんな眼で睨み付けられたら、それこそ並みのヴィランは裸足で逃げ出すだろう。

 

況してや、ただのファンでしかない自分など、相対することすら………。

 

『───アンタは』

 

『『ん?』』

 

『俺の、【憧れ】か?』

 

 気付けば、そんな言葉が漏れていた。目の前にいるのは間違いなく自分の知るゴジータだ。憧れ、望み、願望のままそうであろうとした………嘗ての名残。

 

後藤甚田が理想としたゴジータ───詰まる所、自分の妄想から生まれた虚構の存在。自分と言う人間の脳ミソが生み出した偽者。

 

 けど、甚田はそれを口にする事は出来なかった。

 

 何より、嬉しくて仕方がなかった。

 

 あのゴジータが、悟空とベジータの融合によって生まれた合体戦士が、自分の危機に助けてくれた。

 

感動しない訳がない。嬉しく思わない……なんて、そんなことは有り得なかった。

 

 仮令(たとえ)幻想だろうと、妄想だろうと、今自分の前に現れてくれたのが、堪らなく嬉しい。自身が涙ぐむのを自覚しながら、それ以上言葉に出来なかった甚田は、乱暴に自分の目元を拭う事しか出来なかった。

 

『『あー、まぁ詳しいことは俺にも分からんが。今分かっているのは別にある』』

 

『────え?』

 

『『ほれ、そろそろ聞こえて来ただろ?』』

 

 何処までも暗闇に包まれた世界なのに、其処から微かだが光が見えた。

 

“ゴジータ!”

 

 光の向こうから聞こえて来る幾つもの声、そのどれもが甚田にとって聞き覚えのあるものだった。

 

『『ほら、お友達がお呼びだぜ』』

 

『────』

 

 このまま光の方へ向かえば、自分はこの夢から覚めるのだろう。一刻も速く其処へ向かい、皆の所へ戻るべきなのだろう。

 

 しかし。

 

『────俺は、貴方に憧れた』

 

 それは、少しだけ先延ばす。

 

『俺は貴方に憧れて、貴方の様になりたくて、それ以上に怖かった』

 

『『─────』』

 

『貴方になりたくて、貴方みたいにカッコよくなりたくて、死ぬ程自分を追い詰めた』

 

 その過程で、沢山の人に迷惑を掛けた。幸せになって欲しいと願った人を、何度も泣かせた。

 

『『だから、自分なりのゴジータ()になろうって?』』

 

 その言葉に、後藤甚田(⬛⬛⬛⬛)は首を横に振る。

 

 自分なりのゴジータ、それを目指していいのだと、それでいいのだと、自分自身で納得し、受け入れた。

 

 けれど、こうして改めて憧憬を前にして思う。やっぱり自分は、ゴジータ(憧れ)になりたいのだと。

 

『『───欲張りだな。それでいて矛盾しているし、破綻している』』

 

 知っている。解っている。自分のこれは我儘で、エゴで、どうしようもない矛盾なのだと。

 

しかし、いや………だからこそ!

 

『それでも、この矛盾()を捨てたくはない』

 

 憧れは、理解から最も遠い感情だと誰かが言った。

 

 けれど、憧れが夢となり、それを追い続けるのならば、その憧れ()はきっと終わらない。

 

矛盾だとしても、破綻していても、自分は追い続ける。走り続ける。仮令(たとえ)、その果てに何の意味も価値が無いのだとしても。

 

この気持ちは決して、間違いではないのだから。

 

『『────正解だ』』

 

 気付けば、自分の服の端を誰かが掴んでいた。

 

『『お前の願いは間違いじゃない。お前の想いは間違いじゃない』』

 

 それは、嘗ての自分自身。病床に伏せ、ただ死を待つだけだった前世の俺。

 

(嗚呼、そうか。俺はお前を否定したかったのか)

 

 憧れるだけで何も出来なかった自分。きっと、心の何処かで前世の自分が今の自分であることを受け入れたく無かったんだろう。

 

(そりゃ、無意識に自分を傷つけてりゃ、心配だってされるわな)

 

『ゴメンな。お前だって、俺だろうに。ちゃんと見てやれなくて………』

 

 良いよ、と。小さく、弱い自分が笑うと光へと変えていく。

 

 それはA.F.O が狙っていたモノ、後藤甚田が生まれながらにしてこの時まで使えなかった【個性】。それが、俺の裡へと入っていく。

 

────立ち上がると、視線は高くなっていた。

 

『ありがとう。漸く、本当の意味で………俺は、自分の道を進めそうだよ』

 

 両腕と両足は太く、強くなっており、俺は後藤甚田へ戻っている事を自覚する。

 

さぁ、早く皆のところへ行こう。そう思い一歩足を進めるが………。

 

『『待てよ』』

 

『?』

 

『『肝心な事を忘れてるぜ』』

 

 ふと、ゴジータに呼び止められる。何だと思い振り返ると、何やら呆れた様子で肩を竦めていた。

 

『『ゴジータ(俺達)といったら、これだろうが』』

 

 そう言って、両腕を揃って右に伸ばす彼に後藤甚田はハッとなり。

 

『はは』

 

 彼の横、数歩離れた位置で鏡合わせのように腕を伸ばす。

 

『『時間がねぇから一度きりだ。しくじるなよ?』』

 

『大丈夫。ビデオで何百回と予習してきた』

 

 そう、そうだ。これが、これがあるからこそゴジータは最強の合体戦士へとなるんだ。

 

気を同じ、一切の狂い無く同調し。

 

『『『フュー………』』』

 

 伸ばした腕を回し、互いへ歩み寄る。

 

 数は3歩分。ぶつからないよう、歩数にも注意しなければならない。

 

『『『ジョンッ!』』』

 

 手をグーに変え、足の角度にも気を配り……。

 

『『『ハッ!!』』』

 

 この時、この瞬間。互いの指を重ね合わせる。

 

 瞬間。自分とゴジータが混ざり、合一していく。二つの魂が重ね合わせていくような感覚。

 

((まさか一発成功とはな。予習していたのは本当みたいだな))

 

 意識が遠退いていく。そんな中、彼の声が聞こえた。

 

((どうだ? 初めてのフュージョンは? 一度はやってみたかったんだろう?))

 

 嗚呼、そうだ。自分はゴジータに憧れたのと同じ位、このポーズをしてみたかったんだ。

 

 病院の窓の外で、はしゃぎながらあのポーズをする子供達の様に。

 

(………やってみて思うけど)

 

(やっぱりカッチョ悪いッスね。これ)

 

 そう言って笑う俺に、ゴジータもまた不敵に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────光が溢れた。

 

 罅割れ、色を失い、灰色と化したゴジータの裡から、目映い程の光が溢れた。

 

天へと伸び、暗雲を穿つ光の柱。中から弾かれる様に現れた死柄木弔(A.F.O )は誰よりも驚いた様子でその光を見上げていた。

 

 軈て、光は縮小し、一つの形へと成していく。

 

それは、人だ。人が光の嵐を身に纏い、そこに佇んでいる。

 

(────尻尾?)

 

 光の中から露になるソレに、デクは目を剥いた。

 

 その体には野生の強さを秘めた体毛で覆われていて。

 

 その髪は焔の様に紅く揺らめいていて。

 

 身に纏う光の嵐は、希望を抱かせた。

 

「何だよ……」

 

 死柄木弔は狼狽える。こんなのは知らない。こんなことは、予想していない。予定にすらない。

 

「何なんだよ、お前はァァァッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『とっくにご存知なんだろ?』」

 

 それは、身の程知らずの夢追い人。

 

 それは、憧れるだけだった者で。

 

 それは、ただ憧れに向かって走り続けてきた者。

 

「『俺は───』」

 

 そのどれもが自分で、矛盾を抱えながらこれからも走り続けると決めた者。

 

 その名は。

 

「『貴様を倒すものだッ!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 超なオイラのヒーロー記録

 

 

其之九十八

 

  【復活のフュージョン】

 

 

 

 






後藤甚田個性

【超】




なりたい自分(My HERO)

 病で死んだ少年が、その間際まで決して捨てなかったもの。

それは指針であり標。一度使えばそれっきり。

それが、戦闘民族サイヤ人(・・・・・・・・)後藤甚田に許された唯一の個性。

けれど、その一度だけで充分だった。
その一度で彼は自分の往く道に迷いはなくなった。

喩え嘘偽りだと蔑まれようと、彼の往く道にもはや迷いはない。

 進み続け。超え続け。いつか、理想へ追い付き、追い越せる様に。

更に、向こうへ。




※捕捉

戦闘民族サイヤ人でありながら、標準のサイヤ人より少食だったのは、無意識なストレスによるものであると推測される。

後日、人々の目には店一つの食料を平らげるNo.1ヒーローが目撃されたとか。

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