超なオイラのヒーロー記録【完結】   作:アゴン

99 / 106

今回は一方その頃なお話。

そんなわけで初投稿です。


記録99

 

 

 

『オールマイト………いえ、俊典さん。アンタには言っておこうと思う』

 

 ある日、彼とコンビを組んでいた頃。何時ものようにヴィランを退治し、人々の平和と安寧を二人で守っていた帰り道、彼は言った。

 

『俺、実は嘘つきなんですよ』

 

 自分はとある人物に憧れを抱き、成れないと解っていながら突き進む愚か者。憧憬に焦がれ、同時に恐怖し、それでも止まる事を止めなかった愚か者だと、彼は自嘲の笑みを浮かべてそう溢した。

 

その所為で多くの人達に迷惑を掛けた事、恩師を何度も泣かせた事、沈んでいく夕陽を眺めながら、彼は懺悔をするようにそう語った。

 

『今でこそ、自分なりに折り合いを付けているけど……俺が偽者であることには変わらない。そんな俺が果たして本当にNo.1ヒーローなんて肩書きを背負って良いものかな、そう思ってさ』

 

 No.1ヒーローという肩書きを重荷と感じることはない。ただ、申し訳なさがゴジータというヒーローの胸中に渦巻いていた。

 

自分は偽者で贋作。それを理解できるのはゴジータ(後藤甚田)唯一人、そんな何もかもが嘘の自分が、果たして日本ヒーローの代表に立ってしまって良いのか。

 

そんな新米No.1ヒーローの苦悩を、オールマイトは少しばかりの沈黙の後に答えた。

 

『偽者か、それってそんなに悪いことなのかい?』

 

『………は?』

 

『君が仮令(たとえ)誰かの偽者だったとしても、君がこれ迄数多くの人々を救ってきた事実は変わらない。君のお陰で、今日も沢山の人々の笑顔を守れた。そして私も、君のお陰で体の不調を克服しつつある』

 

『それは………』

 

『いいかい、はっきり言わせてもらうぜ。君は自分を偽者だと言うが、私達にとって君こそが【ゴジータ】なのさ!』

 

『っ!』

 

『誰がなんと言おうが、その事実だけは変わらない。………分かった様な口を叩いて済まない。けれど、これだけは忘れないでくれ』

 

『君は、既にヒーローなのだから!』

 

 未だ完治しきれていない体の痛みに耐えながら。オールマイトは両手を広げて高らかに謳う。

 

君はヒーローで、君こそがゴジータだと。今の甚田にとって、それはとても重く、それでいてとても嬉しい言葉で。

 

『………へへ、そっか』

 

 その笑みは、年相応の青年の照れ笑いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ、ぐぐぐ………」

 

 押されている。迫り来る死、全ての個性を解放させて一つの巨大災害へと変貌を遂げたA.F.O 。

 

奴を止め、打ち倒すために単身………己の拳一つで打ち砕かんとするオールマイトだが、予想以上に重く硬い感触に苦悶の表情を浮かべる。

 

『はは、ハハハハハ!! やっぱりそうだ! オールマイト、君にはもう嘗ての力はない! どれだけゴジータの力を真似ようと、所詮は猿真似!! もはや君に僕を止めることは出来ないよ!!』

 

「っ! ぐ、ぅぅっ!!」

 

 様々な個性が互いに干渉し合い、その結果相乗効果を果たし、歪んだ斥力力場を形成させる。其処から生じる弾き出す力と、凄まじい放電にオールマイトはその身を焼かれるが、それでも負けないと歯を食い縛る。

 

『もうじき弔………いや、もう一人の僕がゴジータの個性を奪い、魔王となる。仮に君が此処で僕を食い止めようと、もう僕の邪魔をする者はいない!!』

 

「───そん、な、事ぉッ!!」

 

『いい加減理解しろよ! 君のこれ迄の努力は、何もかもが無駄だったのさ!!』

 

 押し負ける。既に個性を………O.F.Aの全てを使い果たしたオールマイトに嘗ての様な超パワーは無い。

 

“気”という力で補っても、目覚めたばかりのオールマイトには其処までの膂力は持ち合わせていない。

 

だから、A.F.O の言葉はその全てが真実で。

 

「………分かってないな、A.F.O ッ!!」

 

『───あぁ?』

 

 だからこそ、気付けない。

 

「逆境を乗り越えてこそヒーロー、笑ってピンチを乗り越える。それが、私達だ!!

 

 ヒーローは、何時だってピンチをぶち壊す者。

 

 此処が今の限界だと言うのなら───更に、その向こうへ。

 

『───何だ』

 

 此処で漸くA.F.O は気付く。

 

(オールマイトが纏う白い炎が───紅い?)

 

 オールマイトを覆う可視化された白い炎、それが彼の闘志に反応したのか、血のように紅く染め上がっていく。

 

それに伴って、圧していた筈の均衡がいつの間にか拮抗へ、そして徐々に押し返されていく。

 

『っ、ふざけるなァッ! 此処へ来て逆転なんて、そんなの、フィクションだけの……!!』

 

“違うよ、兄さん”

 

『ッ!?』

 

“これは、空想(フィクション)なんかじゃない。俊典君が、甚田君が、ヒーローが、決して負けないと意思を紡いできたモノ、その集大成だ”

 

(────与、一)

 

“兄さんは個性の性能に負けたんじゃない。紡いできた人の意思、可能性に負けたんだ”

 

 瞬間、A.F.O が張っていた力場が砕かれ、弾かれた様に後ろへ吹き飛んだ。その光景に、周囲で目にしていた人々は驚愕し、宙に浮かぶ(・・・・・)オールマイトに目を剥いた。

 

「───往くぞ、A.F.O !!

 

 力を高める。白から朱へ、立ち昇る炎は天を衝き、軈てその全てがオールマイトの拳へと集約されていく。

 

「UNITED」

 

『オール、マイトォォォォッ!!』

 

飛翔する。それを目の当たりにしたA.F.O は迎撃の触手を伸ばしてくるが、オールマイトは深紅の軌跡を描きながらこれを掻い潜る。

 

「STATES OF」

 

 触手の槍、雨の如く降り注いでくるそれを避けるオールマイトだが、其処は既にA.F.O の射程圏内だった。

 

 嗤う。こと此処に至って、最期まで自分の思うがままだった宿敵を嘲笑いながら、A.F.O はその肉体を変異させる。

 

 全身を顎の様に開き、其処から未知数のエネルギーが収束されていく。避けるのは無理、オールマイトの脳裏に一瞬だけ防御の選択が浮かぶが……。

 

(やっちまえ、俊典!!)

 

「はい、お師匠!!」

 

 確かに聞こえた師の言葉に後押しされ、より強く力を込める。

 

『因果の果てに消えろ!! オールマイトッ!!』

 

 光が迫る。周囲の建物を呑み込み、跡形もなく消し飛ばす滅びの極光。そんな、死の具現化を前にして。

 

オールマイトは微塵も怖れなく笑う。

 

「SMASHッ!!」

 

 ぶつかり合う力と力、それは端から見れば光と光のぶつかり合い。

 

全身の血が蒸発するのを感じながら、それでもオールマイトは突き進む。

 

「更に!!」

 

(((向こうへ!!)))

 

 聞こえてくるのは、歴代の継承者達の声。弟子(デク)に譲渡し、消え行く筈だった自分の内に微かに残ったO.F.A の残滓。

 

欠片だった筈の彼等が光り輝き、自身の裡で一つに成るのを感じながら、オールマイトは力を振り絞る。

 

「Plus───Ultraァァァッ!!!」

 

 朱から虹へ、紡いだ力を結集させたその一撃は、A.F.O の放つ極光を打ち消し。

 

 変異して膨大な肉の塊となったA.F.O、 そのど真ん中を────ぶち抜いた。

 

『与一、あぁぁ……与一ィィィ………』

 

 瓦解していく。その口から、嘗ての弟の名を口ずさみながら、A.F.O の肉体は灰となり、崩れていく。

 

 長らく続いてきた因縁の決着、それを見届けようとするオールマイトだが………。

 

「ぐっ……!」

 

 全身に走る激痛、身体中の筋肉が断線していくような感覚に見舞われたオールマイトは、堪らずたたらを踏む……。

 

「オールマイト!!」

 

 それを駆け付けたステインがオールマイトの脇下に潜り込んで支える。

 

「やったな、オールマイト」

 

「───いや、まだだ」

 

 諸悪は打ち倒され、一つの終止符は打たれた。けれど、オールマイトの顔には未だ険しさがある。

 

「ヒーロー殺し、ステイン。君が、どうして此処にいるのか、何故私を助けてくれたのか、その是非は今は問わない」

 

「……………」

 

「だから頼む! 私を、向こうへ連れていってくれ!!」

 

 全身を引き裂かれるような痛みがある筈なのに、オールマイトは強い眼差しでとある方向へ指を差す。

 

そこは蛇腔病院、他のヒーロー達が今も命を掛けて戦っている戦場。

 

「それは………何のために?」

 

 既にオールマイトは満身創痍。A.F.Oとの死闘と、最後に見せたあの紅い光を身に纏った反動か、オールマイトの身体は既にズタボロ。

 

個性───O.F.Aも今の一撃で自身の裡から消滅している。仮に戦場に着いても、盾になる事位しか彼には出来ないだろう。

 

「友のため」

 

 しかし、それでも力強い返事をしてくるオールマイトにステインは押し黙る。

 

 辺りを見渡せば、偶々無傷だった大型単車が視界に入り。

 

「その願い、承った」

 

 ステインは不敵に笑みを浮かべて頷いた。

 

 




今回のおすすめBGM。

つ“You Say Run”



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。