今日の任務を共にするリコリス――井ノ上たきなさんは相当に優秀と耳にしていた。
というのも『セカンド』の一つ下に位置する部隊である『サード』が置かれる環境というのが中々に狂っているというのが主な理由だったりする。
リコリスの活動の中核を担う治安維持活動の大半は彼女ら『サード』のリコリスによって行われるものだが、これが下手な『セカンド』の任務よりも過激で生き残るのが難しい環境だったりする。
……非常に胸糞悪い話だが、要するに消耗品とか肉壁同然の扱い。
この仕組みには思う所があるのだが、とにもかくにもだ。そんな環境から這い上がってきた人間が弱いなんてことは基本的には在り得ないと思っている。
思っていたのだ、つい先程までは。
……具体的に言うと、今回の潜入任務で狭いコンテナの中に入るハメになるまでは。
「これって間抜けなんだか利口なんだか……」
「なるべく動かないでください竜胆さん。敵に気づかれます――言っておきますが、ご飯はありませんからね」
「僕そんな食い意地張ってる様に見えるのか……?あーいや、不思議なことに今言った二つは必ずしも矛盾しないんだなって」
「……?何か矛盾するのでしょうか」
「噛み合わないなぁ」
実際、ただの現実逃避である。だがそれもどうか許して欲しい。
現状を鑑みて井ノ上さんと比べたら戦闘経験が少ない自分から見ても、これは無いよなぁ、なんて些か無礼な事を思い浮かべてしまっているのだから。
言うなれば――すし詰めなんて生易しく感じる程の密着状態。
女の子特有のか細い息遣いが耳に近く。同色の制服から伝わってくる布ずれ音と、温かく柔らかい肌の感触が否が応にも伝わってくる。
視界は密閉された視界はようやく暗闇に適応して、明らかに挙動不審な僕を見ても涼しい顔をしている井ノ上さんを髪が触れそうな距離で見据えていた。
「…………」
意外にまつ毛が長いんだ、とか。
クールな外見をしていて割りと柔らかい印象を抱く瞳だな、とか。その他の女の子特有のアレやコレや。
そんな仕事とは関係の無いことが次々と頭の中に浮かんでは消えていく。
曰く、人間は五感の一つが閉じれば他の感覚が敏感になるとかならないとか。
……いくら荒事に慣れようが、僕はあくまで基本的な男子高校生である。だからこのシチュエーションは何だかこう、胸にくるものがあるのだ。
というかコレ、千束にバレたりしたらかなりマズイことになるのではなかろーか。
「何でこう、いつもミズキさんの甘言にこう易々と乗せられるかなぁ……」
想起されるのはつい先日。
それは世にも珍しい、いつもの飲んだくれが珍しく飲んだくれにならなかった夜の会話だった。
『――リコリコの予算が底を尽きかけてるわ』
『地味に一大事ですね』
『よってカナメ、金策よ。具体的には『DA』から支給される仕事の予算の一部をちょろまかす……っ!』
『いつにも増してイカれてるなミズキさん……! それで酒が入ってないとかそれこそ嘘だろ!』
『正常なマインドで金が稼げたら苦労しないわ。ええ、婚活と一緒よ!』
『正気に戻って辞書引き直してください! てかそんな暴挙がまかり通るわけ――』
――まかり通った。
放任主義なのか杜撰なのか、それともフザけてるのか。まさかこんな形で予算の簒奪が成立してしまうとは思いもしなかった。まさかの事態である。
……いや、一時期リコリコの経営難を助けていたのは『DA』からの補助金によるものも大きかったと最近になって耳にしたし、案外そこら辺は融通が利くのだろうか。
まぁ、此方で用意できる『予算』の節約のためにこんな事になっているから、間抜け云々はあながち間違いでもないんだけど。
というか、さっきからコレ本当に成功するのかという強い疑問が僕の胸中の大半を占めている。
「――そろそろです。竜胆さん、念のため戦闘準備を」
「ウソでしょ」
それで良いのか裏社会。
思わずこぼれ出そうになった呆れを含んだ台詞をどうにか呑み込みながら今回の仕事――武器商人の拠点制圧について、井ノ上さんとの打ち合わせ内容を密かに頭の中でおさらいするのだった。
◇
「アレが……」
「はい、今回の現場ですね」
合流した井ノ上さんと一緒に電車を降りてしばらくの、東京都某区某所。
湾内の潮の香りが風に乗っている。微かに聞こえてくるさざ波が、人の気配を覆い隠すこの場所を満たしている。
足を運んだその先には、荒んだコンクリートと砕けて汚れ切った硝子が特徴的な廃墟同然のガソリンスタンドがあった。
『旧電波塔事件』以来、再開発が進められた東京近辺にはこういった如何にもな廃墟がそこかしこで跋扈する様になっていた。
世界最高峰の治安維持率を誇る日本。
そんな『スパイ天国』な看板に吸い寄せられた多くの武装集団、武装組織はこういった建造物をこぞって根城にしている。社会的な名義が消滅している場所というのは、ソレだけで都合が良いのだ。
此処もその一つ。
違いを挙げるなら、そういった隠れてる連中を影から討つ役割を持つ僕達が利用していることだろうか。
……いやはや、それにしても、だ。
「思ってたより大きいな」
「銃取引における銃の製造、それを直接卸す言わば元締めなので当然かと」
「あー……いつの時代も儲かるのは金を掘る人じゃなくてツルハシを売る人とかそういう」
横から装備の確認をしている井ノ上さんから差し込まれた補足説明になるほど、と納得した。望遠鏡で確認できるその景色からは、それなりの数のコンテナを積んだ船の姿が確認できる。
まぁ取り扱われているモノがモノだ。警備は手厚く、モノを護る隔たりは堅く頑丈であればあるほど良いということなのだろう。
「竜胆さんは、こういった案件の経験は」
「他のリコリスと一緒に組んでやるのは初めて」
今回の仕事における事の顛末はこうだ。
何やら武装組織同士の橋渡しとして武器取引を行おうとしている。
『ラジアータ』で精密な情報操作がされているとは知らずに、この日本という国を安全かつ大量に武器を売り捌ける穴場スポットとして狙いを立てた。
俗な言い方をするなら、新しい市場の開発だ。
そうやって、利潤の流れを自分たちで取り仕切ってしまえば、少なくとも利益においては損をするということはない。ビジネスの立ち上げという点では、裏も表も変わらないのだ。単に適用されているルールと倫理観が違うだけで。
そこで今回の任務だ。
武器取引における重要拠点の制圧及び取引する組織、傭兵たちのリストの確保。
まとめると奇襲と情報収集――雑に言うと営業妨害である。
……この界隈の営業妨害とはナイフとか銃とかが火を吹くからシャレにならないが。
――と、そんな物騒な事を考える前にだ。
「えーと、業務開始までまだ時間はあるよね?」
「ありますけど……『DA』本部から何か連絡でも?」
「いやいや、ご飯食べよって思って」
「え」
「え?」
ごそごそとリコリス御用達の戦術鞄から青の包みを二つ取り出す。
が、此方の返答がよっぽど意外だったのか、ぽかんと思考が止まった様な井ノ上さんの表情からは見事なまでに鉄面皮が崩れ落ちている。
……まずかっただろうか。いや、業務が終わる頃にはとっくに夕餉の時間帯に突入しているだろうし、こしらえていない腹で戦闘を始めるよりはよっぽど良いと思ったからが故の提案だったのだが。
それに井ノ上さんの顔色からして、まともに朝食を摂ってない様に見えるし。
「……これから戦闘なのですが?」
「? それでもお腹は減るじゃない。あ、これ井ノ上さんの分ね」
「あ、どうも……いや、そうじゃなくて。何故お弁当なのですか……?」
「相当困惑してるな……もしかしていらなかった?」
腹が減っていたら動く体も動かなかろうと、作って来たのだが。
もしかして赤の他人が作ったモノは口に出来ないタイプなのかもしれない。
…………そっか。
「う……えっと……わかりました、いただきます」
「おお……! ありがとう……!」
「この場合、お礼を言うのは私では?」
「いやいや、人に作って食べて貰える感動って言うのにまだまだ慣れなくてね。何分、一人飯の期間の方が長かったものだから、つい」
「なんですかそれ……いただきます」
訝し気に眉を寄せる井ノ上さん。だが弁当の包みを広げた蓋を開けた瞬間、それらの険しさというべきものは一気に霧散した。
そんな様子に思わず口角が上がって、どこかで胸を張りたい自分がいるのがわかる。
まん丸の弁当箱の中心を陣取る卵焼きに、左右を固めるウィンナーと肉団子。それらを包み込むレタスと切干大根と、ここまでは普通だ。
井ノ上さんに注目して欲しいのは、その白米の部分である。
「しろくま」
「そう。しろくま」
弁当の半分を占める白米は、井ノ上さんが口にした様に成形してある耳や口、仕上げに海苔で目や鼻を構成している。
俗に言う『キャラ弁』と称されるソレは、とりわけ簡単なモノだが井ノ上さんの反応を見るに出来栄えは上々と言ったところだろう。
惜しむらくは、コレを見た千束の反応をリアルタイムで観測出来ないことか。
「コレを任務当日に?」
「そうだよ」
「なぜ……」
「成り行き。同僚の娘がこの前キャラ弁いいなーって言ってたからさ。『DA』の方針じゃあまり見れない感じだよね」
方針とは要するに『DA』の食事は栄養管理に比重が偏っているという事だ。千束から寮の話を聞いた時、まさか御宮の食事にありついているとは思わなかったが。
もっとも、家庭的な味付けの方が好きという千束の意見によって僕の料理方針にはさほど影響は及ぼさなかったワケだが。
「本当に食べて良いんですよね」
「勿論。あ、もし名残惜しかったら写真で撮って――」
「では遠慮なく」
「いきなり目!?」
白米で模した白熊の両目は無残にも箸で貫かれた。しかも正確無比、無情とも言えるくらいピンポイントで。
よ、よりにもよって何故そんな箸の突き立て方をしたんだ。
「ま、まぁいいや……で、肝心の潜入手段だけど。あ、食べながらで良いよ」
「はい。どういうワケか、作戦に使用する『予算』が削られて作戦変更を余儀なくされたので」
「…………ウン、なんでだろー」
もの凄く聞き覚えのある出来事が聞こえた気がするが、気にしない。肉団子を口に含みながら聞こえないフリをする。
認識さえしなければ資金難でちょろまかした事実など無かった事になるのだ。そこは『ラジアータ』と一緒である。
「ですので、臨機応変にいきましょう。私に良い考えがあります。簡単じゃありませんが」
「おお」
井ノ上さんの姿のなんと頼もしいことか。
千束と組んでいると基本的に行き当たりばったりな場面に出くわすので、こうやって順調に作戦が進行するのは、何というか新鮮味を感じる。
爆発とか、機銃掃射とか。あと爆発とか。
「取り合えず――コンテナの搬入に紛れて忍び込みます」
「なんて?」
「簡単じゃありませんので」
「簡単以前の問題では?」
何というか、早速嫌な予感がしてきた。
◇
「簡単でしたね」
「冗談じゃないぞ……」
ゆらり揺られて幾分か。
どうにかコンテナの荷物搬入に紛れて潜入出来た、のだが。奇策と愚策が紙一重であるという事がよくわかる潜入方法だった。
僕たちを運んだこのコンテナがこの組織所有のモノではなく、あくまでコンテナの中身が取引される『商品』だった事が幸いしたのだろうか。
「イタタタ……狭い所って便利だけど人間の居るべき場所じゃないって事がわかるな」
「既に作戦中なんですけど……見た目に反して能天気な所があるんですね、竜胆さん」
「大丈夫、腰痛なんて身体的な不調で不覚は取らないから」
「リコリス的には既にその状態が不覚なのですが」
潜入方法の立案者から直々の正論がその通り過ぎてぐうの音も出ない……やっぱりミズキさんの口車に乗って作戦における予算を妥協したのがいけなかったか、と身を以て実感する。
だけどまぁ、潜入という第一関門はどうにか突破出来たので良しとしておこう。
「それで、此処は船内で言うどこの位置づけかな?」
頭の中に叩き込んだ見取り図通り、辺りには典型的な貨物船の光景が広がってる。
埃っぽい天井や床。複数の電灯がぶら下がって、その下には無数の『商品』が入ったコンテナが整列させられている。
そしてその列の先にはがっちりと施錠された分厚い扉がそびえ立っていた。
「積み荷と一緒に積み込まれたので、船底に近い部分だとは思われます」
「モノはブリッジに?」
そう問いかければ、井ノ上さんが武装である拳銃にサイレンサーを取り付けてるのを見る。
僕もそれにならって黒い手袋を装着し、腰からナイフを抜いて調子を確かめる様に振るった。
「通路側から施錠されているので側面のダクトから――」
「いや、斬るから問題ないよ」
井ノ上さんの反応を待たずに一閃。
ぴっちりと閉じられた扉の隙間に奔らせた刃先は金属板の性質などモノともせず、音もなく鋭利な切れ込みが入った。
扉を横に引けば、当然すんなりと向こう側の通路が露わになる。
「見張りは……いない。じゃあ井ノ上さん、取り敢えずこのまま真っ直ぐブリッジを目指す。見張りとの遭遇は出来る限り避ける方向で行こう」
「……」
「井ノ上さん?」
「あ、いえ……やけに手馴れているなと思いまして。噂では数ヶ月ほど前から『DA』に所属することになった協力者と聞き及んでいたので」
「それはまぁ、それなりに頑張ったからかな」
あれだけ千束が付きっ切りでコーチングしてくれたのだから、相応の成果を出さなきゃ男が廃る。
……それにしても噂、噂と来たか。
井ノ上さんの表情を見るに、どうにも口にしたこと以上に気になっている事があると見える。
「もっと血の気が多い、戦う事が大好きなナイフ野郎ぐらいには思ってた?」
「……はい」
「素直でよろしい」
「あと司令からは『破壊神』とも」
「ごめんやっぱり待って」
そ、それは色々聞き捨てならないぞ楠木さん……!?
いやまあ、確かに仕事の度に割とモノは壊すけども。けれどそれは大概ビビった敵側がロケットランチャーとか対物ライフルとか持ち出してきた結果なんですが。
「い、いつもは違うし……? ほら、僕はこういう戦闘スタイルだから楠木さんからはステルスな制圧戦を任されたりするし……? そもそも隠密が命の仕事でモノを壊すなんて御法度ですし……?」
「さっき鍵を強引に壊してましたよね? 任務の度にあの調子で『斬れば良い』なんて思ってるからそんな噂が流れるでは?」
「……ハイ」
一寸たりとも言い訳を許さない井ノ上さんの言い分に苦いものを覚えながら、前へ前へと進んでいく。なんかこう、口を開けば開くほど彼女の前では墓穴を掘る気がしてならない。
まるで井ノ上さんの追及を逃れる様に、通路から感じる外気の流れを辿る。目指すは外壁、側面からブリッジへと潜入するのだ。
だが進めど進めど、僕の隣で着いて来る井ノ上さんの表情はクールな外面を取り繕ったまま。
その視線は、僕が手元で構えるナイフを見据えている。
「……ということは、本当にナイフで銃撃戦を凌ぐつもりですか」
「そりゃ銃も使うよ。あくまで牽制、格闘補助用だけど」
「――……」
井ノ上さんが信じられないモノを見る様に此方を見ている。
まぁ、銃のやり取りをナイフでやり過ごそうとしているのだからその気持ちはわからなくもない。戦闘技術としてあまりにも時代錯誤で、効率が悪すぎる。
故に僕としては寧ろ銃火器の類は積極的に投入するべきである、と思うくらいには武装として個人的に推奨している。
だから僕の場合は単純に、どっちが死にやすいかという取捨選択の問題なのだ。
「あ、でも別に連携には支障をきたすつもりはさらさら――」
「――では」
「――敵を殺さない、というのも本当なのですね」
……ああ、成程。
それこそが先程から感じている視線、井ノ上さんの抱える疑念の正体。
参ったな、それは。
その点だけは確かに、この子にとっては死活問題だろう。
とりわけ殺人を組織の権限を以て許可するリコリスとしてこれまでの人生を過ごしてきた彼女にとってはなおさら。
だけど僕の口から出せる結論は、決して変わらない。
「――うん。敵も味方も、誰も死なせない」
なんて甘い考え。なんて無謀なことか。
荒事に慣れれば慣れるほど。この国の治安の裏に隠された世界に身を置けば置くほど、自分が口にした今の言葉がどれだけ荒唐無稽なことかを理解させられる。
だけど、その矛盾を。
そんな無謀を貫き通す覚悟と強さを僕は美しいと感じたのだ。
それを護る為に、僕は此処にいる。
「……理解できません。一般人という立場を捨ててまでマーダーライセンスを獲得したというのに。それに……それでは貴方が――」
「そう――それで死んだら元も子もない」
それは巻き込まれた日から理解していたことだ。
命が紙より軽い。神の祈りは洗脳に、人の良識は道具になる。そんな奴らと張り合うには、ソイツらと同じ土俵に立つしかないのが道理なのだから。
だからこその――『誓い』が必要だ。
殺さない事を弱さとせず、強さとして信じ抜ける想いが。
「独りにしたくないって、思える人が出来たんだ」
誰も殺さない事を『強さ』と称した子の背中を思い出す。
その子は僕が抱える重圧に十年という歳月を経て耐え、ソレを護り続けた。
その赤い背中に――理解されず、独りで戦い続ける女の子の隣で力になりたいと願ったんだ。
……ああ、でも。
「ただね――井ノ上さんが自分の命を護れないと判断した時は、躊躇わず引き鉄を引いてほしい」
「……支離滅裂です。自分がどれだけ無茶苦茶な事を言っているか理解していますか」
「勿論」
敵を殺さずに仲間が死んだら、まるで鈍らの刃だ。
潰れた刃のままで一緒に戦えるほど、井ノ上さんが生きる世界は甘くない。
そして何より。
「キミはアイツらにくれてやって良い命じゃないからね」
少なくとも井ノ上さんか敵かを選ぶべき場面が来たら、僕はきっと迷わない。
誰かを傷つけるモノを扱う人間を倒す為に命を懸けて戦って、キャラ弁を食べてくれて、クールな割に強引な作戦を思いつく井ノ上さんを護る方が何十倍でも足りないくらい価値がある。
……と、いう事を彼女に説明したのだが。
何故だが、弁当を渡した時以上に固まっている。
「――」
「井ノ上さん?」
「…………いえ、わかりました。分別が出来る方で助かります」
「分別って……ま、気軽に行こうよ。思っている以上に人間って、自由だからさ」
ホントに、自由だ。そして自由とは時に、どんな武器よりも恐ろしくなる。
僕が誰かの命を奪った時。
環境に寄らない、僕の決定、僕の意思――紛れもない僕の
その奪った命に対して意味を、価値を、報いることが出来るのだろうか、と。
……そうやって思考に耽っていたからか、やがて扉に行きついた。
――だが。
「妙ですね」
井ノ上さんの言葉に思わず頷いた。
此処はブリッジに直接繋がっている。
つまりは敵が隠したいモノが取引直前ということもあって満載であり、またとないチャンスであることは確かなのだ。
だというのに、あまりにも
「これは弾痕、か?」
周辺の壁を見渡すと、まだ酸化して錆びついていない焦げ目のついた銃弾の痕がそこかしこに存在していた。
弾数からして、恐らく拳銃。明らかな戦闘の痕跡に、ナイフを握る手に力が入ったのが理解できる。
「――」
そして、その疑念は。
ブリッジへと繋がる扉の隙間から漏れ出る――大量の血が広がってくるのを確認して、確信した。
「井ノ上さん――ッ!」
直後――爆炎が視界を覆った。
※おまけ「キャラ弁を見た千束と某ファーストリコリスの反応」
「さてさて、お弁当食べよ」
「この状況で食うかよお前……」
「いやだってさー、カナメくんが夜なべして作ってくれたランチボォーックスだよ? 食べないワケにはいかないっしょ。ま、フキにはこの嬉しさはわかんないだろうけど」
「よしぶっ殺す……! その幸せそうなツラをブチ抜く! 今ここで!」
「うひひひ、それはこのお弁当を見てからにせよフキ。よし、今日はなにかな――」
――白熊を模した弁当を目にする二人。
「「!!??」」
直後、二人で弁当を激写した。
というワケで今回はここまで。話が膨らむぶん更新もショートに出来たらと思う今日この頃。
たきなが優秀だとは聞いていたが、『スタンドプレーが目立つ』という事は伏せられていた模様。
更新が遅れたのはマジのマジで不覚なので、更新ペースはちゃんと戻します。読者の皆さん体調にはホンマに気をつけてな……。
また、不在の間も感想、誤字報告、評価ありがとうございます。これからも気軽に送っていただければサイワイ。
型月タグの追加に関して
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