なおストック。
『次のニュースです。平和の象徴『延空木』の完成の目途が立ち、これに伴い――』
ふと、ステンドグラスが並ぶ棚に並べられた小型テレビが映すニュースに目を向けると、ここ十年において日本で起きた最大の事件とされる『旧電波塔事件』の特集が流れている。
延空木――かつてスカイツリーと呼称された電波塔に代わる建造物の完成に伴って、過去の事件の映像やもう何度も聞き慣れたニュースだ。
つまりはいつも通り。
気にならないワケではないが、此方もまだ勤務中の身。
その行方が気になりつつも僕――竜胆要人は電源を落とし業務を再開した。
「うん、レジ誤差なし。ズレはありませんね」
「お疲れ~」
東京都墨田区某所の一角。
夕焼けに呑まれた住宅街を彩る洒落た喫茶店『リコリコ』の一日が今、終わろうとしている。
そんな中、締め作業の最中だというのに酒盛りとかの結婚雑誌を広げて婚活に精を出す若緑色の着物を着た女性――中原ミズキさんへの苦言を隠すことなく告げた。
「あの、ミズキさん。前々から聞きたかったことがあるんですが」
「あー、なにー?」
「一応確認なんですけど、真剣に男探す気はあります?」
「なんで?」
「うお」
結果、殺気を込めて凄まれた。
別に反応があれば何とでも良かったのに、どうしてこんなドストレートな話題に触れてしまったのだろうと軽く後悔しつつも、吐いた唾は戻せないのでこの話題で進めながら座敷の整理などの閉店作業を進めていく。
「あの、実際ミズキさんってすっごい美人じゃないですか。少なくとも街を歩けば必ずどこかの男の目に留まるくらいには。食べモグの評価だってミズキさんありきだとは思うんですよ」
「……そりゃ、まぁ」
「平時の仕事だってなんやかんや真面目にこなすし、いつも美容雑誌とかファッション誌を真剣に読んでいるから自分磨きだって余念なく努力してるのも知ってます。あと僕と同じ眼鏡属性ですし」
「…………さ、さっきからどしたカナメ。まさか惚れ――」
「けど僕はその真剣さが肝心な男に伝わらないと思うんです」
「上げて落とすのやめなさいよぉ!」
「それも絶対に」
「なんで念押した!?」
がぁーっと酒気で赤くなった顔を更に真っ赤にしてまくし立てるミズキさん。此方があれやこれやと改善案を提案しようにも当の本人が終始コレなのだから救えない。酒浸りなその姿に一体何人の彼氏候補が撃沈されていたか。
この婚活に取り憑かれた妖怪をどうにか出来ないかと店の中を見渡せば、部屋の奥から出てきた長髪と特徴的な肌黒の巨漢――ミカ店長へと視線を向けた。
「店長もそう思いませんか? 僕としては世話になっている人には結婚して所帯もって幸せになって貰いたいんです」
「言いたい事はわからなくはないが……にしては割りと歯に衣着せない物言いだったが。良い大人が涙目だぞ」
「あ、ホントだ。そんなつもりは全くないんですが……改善が見られないから、現に今も相変わらず酒浸りなんでしょうし」
「そんなことない! この前もデートしました!」
「それも確か破局を迎えることなく終わりそうなんですよね」
「……」
「あの、なんか言ってくれないと……」
無言で酒瓶を此方に構えるミズキさん。
普通に恐怖体験なのでやめて貰いたいものである。
「あー結婚したい。ちゃんとした家庭に入りたい」
「……そして良い男を取り逃すのを繰り返すこと十回目、と」
「こらそこぉっ! 正しくは九・五回目よ! 二度と間違えないで頂戴!」
「ブルーになり過ぎて途轍もない奇妙な数値になりましたね」
どういう定義で数値化したんだろうかソレは。しかも追いかけた男の数を計算に入れないあたり、その焦り具合が身に染みて感じ取れる。
なんにせよこんな調子では今回も長続きはしなさそうだ。
「……」
「何どうした、まさか惚れた!?」
「いや、黙っていれば美人なのになぁーって」
「アンタはほんとにさっきからさ……慰めてんの? ぶっ飛ばされたいの? アンタの中で私の女性像ってどんなになってるワケ?」
「腐った小野小町みたいな香りがする」
「クリティカルヒットしたわ今」
直後、日本酒が入ったグラスではなく酒瓶を直接イッキ。案の定ミズキさんは倒れた。
一体全体何を見せられているんだろうか僕は……うん、流石にやり過ぎたか。
「……カナメ」
「……別に口撃の意図は無かったんですけどね……」
背中と膝裏に手を回し、座敷に横にしてから毛布をかけてやる。簡単な枕を作って、起きた時に備えて水と酔い止めを用意しておいてやる。
仮にも女性に腐った云々は言い過ぎだったか。ミズキさんだって婚期を逃したくて逃しているわけではないのだろう。まぁだからと言って、僕だけの問題じゃない気がするが。
しょうがないので、通っている学校にそれとなく年上好みの生徒に向けて噂を流しておくくらいのサービスはしておこう。
「ミズキさんって十代もイケますかね」
「鬼畜か。今はそっとしておいてやれ。ほら、例の試作だ」
「おお、ありがたく」
エスプレッソと一緒に差し出された羊羹をありがたく頂戴しつつ、ミカさんが優しさを感じさせる柔和な笑みを浮かべならカウンター越しに呟いた。
「なにか?」
「いや、お前さんが此処で働く様になってどのくらいだ?」
「あー……そうですね。もうそれなりに働かせて貰ってます……どうでしょうか、ちゃんと馴染めてます?」
「十分すぎる程だ」
店長が座敷で空っぽになった酒瓶を抱きながら撃沈しているミズキさんへ苦笑いを浮かべ、釣られて僕もこれまでの経緯を思い出してつい笑ってしまった。
――半年くらい前の話だっただろうか。
閉店ギリギリまで居座って、成り行きで片付けを手伝ったところにアルバイトの誘いを受けたのは。
『日課』の息抜きにこの周囲をぶらぶらしていたところに、とある美少女に誘われるがまま提供された和菓子とコーヒーが本当に美味しかったから……そのまま常連として居ついてしまった。
何故って――本当に、此処で出会う人たちは皆良い人たちばかりだった。
良心のまま、善き在り方の人たちが楽しんでる様が、とても眩しくて。
そんな人たちに報いたかったから。
常連さんも、店長も、ミズキさんも――そして『あの子』も。
「――む」
噂をすれば玄関の向こう側、
基本的に常連を相手にしている店なうえ、今日は平日である。ならば、おそらく一人。
「どうしたカナメ」
「いえ、そろそろ帰ってくるかなって」
「嬉しそうじゃないか」
「ん゛っ、あ、い、いやぁー、全然? 店長もアイツみたいにそんな冗談言うんです――」
「はぁーい! こっそり再登場! 錦木千束、ただいま帰還いたしましたー!」
ばぁんと勢い良く開かれたリコリコの正面入り口から登場した赤い制服を着た元気の具現化みたいな女の子が静けさの欠片もない登場をした。
名を、錦木千束。
喫茶店リコリコの看板娘にしてこの店の稼ぎ頭。笑顔と太陽が女の子になったら、きっとこんな感じなんだろうなって思わせる魅力が、眼前の少女にはあった。
そのつぶらな赤い瞳と視線が重なる。
すると――玄関から入った時なんかとは比べ物にならないほど綺麗な笑みを浮かべられて、つい視線を逸らしてしまう。
思わず昂った鼓動をどうにか抑えつつ、一気に乾きを訴えてきた喉をエスプレッソで潤しながら返事待ちであろう錦木さんへと言の葉を放った。
「竜・胆・く~ん! シフトお疲れーい!」
「おかえり。そしてこっそりの要素はいずこへ」
「無限の彼方」
「結局どこまで行くんだよ」
某ネズミの国のおもちゃ映画でも観たのだろうか。
僕の返答に満足したのか、相変わらずニコニコと笑みを浮かべながらカウンターに座りこんだ。
――僕の、隣に。
口内に残ったエスプレッソの後味は相変わらず爽やかだが、今はどこか甘ったるい。
「良かったぁ、先に帰っちゃうかと思ったよ」
「……お陰でこんな時間だけどね…………あの、申し訳ないけどちょっと近いかなぁって」
「あ、そういうこと言う奴にはもっと近づかせていただきます。っていうかミズキはどしたの?」
「アレはまぁうん、察して」
誰にでも自分を見つめ直す時間は必要だ。
少なくともアレは触らなくて良い類の神である。そして酒と男を貢げば鎮まる割りと俗っぽいタイプの――あ、なんか色んな所が全部やわっこい。
「千束。カナメはな、お前の為に締め作業も終わらせて、こうして余暇を作ってくれたんだ」
「ウェ、ちょ店長――」
やわわなたわわに支配されていた頭が店長の一言による警笛で一瞬で舞い戻る。
確かにそんな狙いもあったが今この場面でそれを明かすのはマズイ、今この小悪魔に僕の支配権を譲ったりしたら――。
「……へー、へぇーへぇーへぇー? どういうことかなー竜胆くぅーん」
……こんな風に体の良い玩具にされるのは目に見えているのだから。
「じゃあ、こっちは片づけがある。二人はゆっくりしておきなさい」
「ウソでしょ」
最悪だ。いや、ある意味で最高はある意味で最悪だ。なんてセッティングしてくれたんだあのガングロ眼鏡親父。
だが隣の刹那主義の小悪魔はそんなこと知るかと言わんばかりに、此方へ爛々とした笑みを浮かべて僕の恥ずかしい裏話への追及をしてきた。
このリコリコでほぼ二人っきりの、この状況で。
「ねーねー教えてってば~」
「ええい、さっき先生が言っていたことが全てだ」
「えー、私は竜胆くんの口から聞きたい」
「……羊羹あげるから許して」
「駄目。羊羹は貰うけど」
ん、おいし、などと呟きながら店長の試作を頬張る錦木さん。何か言ってやろうという考えは――本当に美味しそうに羊羹を食べる彼女の様子を見て、霧散した。
…………ちくしょう、間違いなく腹立たしいのに、何で視界に収めるあらゆる仕草をこんなに可愛いく出来るんだ。魔女か、魔女なのか。
「ねぇ」
そして噂をすれば。
カウンターの上で組んだ両腕に顔を埋め、魔女の本領発揮だと言わんばかりに――脳が痺れる様な声を頭の中で残響させる。
二人っきりというこの状況によるバイアスか。
あるいはこの目の前の美少女が意図して作り上げたものか。
そして悪戯っ気全開ながらも、何かを期待する様に上目遣いで此方を見つめる姿に、酔いでも回ったかのようにくらっと来る。
「なんで、待ってくれてたの?」
……ここまでされては、仕方があるまい。
ミズキさんを気絶させたのもそうだ。店長のセッティングは流石に予想外だったが。
据え膳食わぬは男の恥――とまでは言わないが、男を見せなきゃなるまい。
「その――一緒に、帰ろ」
「――――うん」
つま先から頭のてっ辺まで熱々の血が全身を巡っているのを感じ取りながら、突っ伏しながらパタパタと脚を揺らし、声にならない声が僕の耳に届くと――また理性のタガが外れかける音がする。
「――単純に、女の子を夜道で一人帰らせるわけにはいかないからほんとに他意は決して、……ない……多分……ごめん、これ以上は許して」
「えー言ってくれなきゃ―、千束さんわかんないかなぁ……ね、もう一回言って?」
「もう知らん」
「あはは、ごめんごめん――嬉しかったよ、君の口から聞けて」
……ほんとマジでやめろよぉ! いちいち可愛いんだよ畜生!
「あー! あー! よしっ! 着替えて帰るか! うん!」
「あ、照れた」
「照れるわっ!」
◇
「もう起きていいぞ、ミズキ」
「ふー、空気を読む辛いわー。起きたらイイ感じになってるって、アイツらには大人の身にもなって欲しいわ。割とマジで」
喧騒が過ぎ去りしばらく。
座敷から起き上がるミズキはカナメが残していった飲み水で酔い止めを流し込み、等のミカは残響する二人の喧噪の余韻に浸る様に、玄関を見つめている。
介入する余地なんてありはしない。千束は勿論のこと、カナメも無意識だろうがそのように望んでいる節がある。
それを大人の二人が邪魔するのは、あまりにも無粋だった。
「付き合ってないのよね、アレで」
「ああ、一応な」
「マジかよ……ほんと……花の17歳と同い年の男が帰路を一緒にするなんてさぁ……クッソ羨ましいなアイツら!」
「泣くほどか」
再び酒盛りを始めようと言わんばかりの泣きっぷりは、普段から落ち着いた態度を崩さないミカから見ても流石に冷や汗ものだった。
念願の結婚前にアルコール中毒による急逝だけは阻止しなければ、と密かに決意を新たにしていると――どこか悲し気に、ミズキは呟いた。
「あーあ、こういう日が続けば良いんだけどねぇー」
「……そうだな」
「ねぇ――千束は、あのバカに伝えたの?」
――自分の心臓のこと。
その言葉にミカは、何も言えなかった。
千束の命は既に長くない。
否、本来であれば。普通であれば千束は現在の年齢まで生きる事すら出来なかった。
それでも彼女が生きているのは――この国がひた隠しにする闇が関わっている。
「多分だけどさ、アイツも薄々勘付いているわよね。私たちが隠していること」
「……ああ、知ってる」
「なら、こっちから言ってやるのがスジってものじゃない」
「だがそれでも――千束がそれを許さない」
「……それもそうか」
そして、店内を嫌な沈黙が支配し――電話が鳴った。
「――此方リコリコ」
この店で通常営業において使う事のない――この日本の深い闇と関わる『内線』の着信がレトロな受話器から店中に鳴り響いている。
ミズキはウンザリした様に。
ミカは慈愛に満ちた表情を引き締め、通常のリコリコでは拝めない『裏の顔』へと切り替える。
いつものことだ。
いくら幸福を積み重ねようとも、それを隔てる様にこの店は一本の電話で『夜』がやってくる。
あの太陽の如き女の子でさえ、この国の闇からは逃れられない。
「ミズキ、仕事だ」
――陽だまりはいつも、長くは続かない。
◇
「あー……今日も可愛かった……」
錦木さんと別れ、夜の帳が下ろされた帰路を辿りしばらく。
僕の脳内は不躾ながら――今日の錦木さんのことで頭がいっぱいだった。
思い浮かべれば笑顔笑顔。笑っていない場面なんてあっただろうかと言わんばかりに、ニコニコしている光景ばかりだ。
多少心臓に悪い場面もいくつかあったが、それもこうしている今では正しく怪我の功名。
しかもだ、今回ちゃんと次の約束も嗅ぎ付けることが出来たのだ。
――錦木さん、洋画なら何でも見る系?
――え、もしかして。
――しかもシリーズものなら割りと旧作まで見返すでしょ。
――ッしゃあ! じゃ今度観に行こう! 映画! 約束!
――うん、約束。
……途中から歓喜のあまり気絶するかと思ったが、そこは何とか堪えた。
本当に、良い一日だった。
あとは――ただ広いだけの我が家に帰るだけ。
「あぁー……こんな時に……」
それはこれまでに何度も味わってきた感覚。
街路を照らす灯かりがやたら寂しく感じて、自分が世界から切り離されたみたいに、地に足がつかなくなる。
夕飯の話をする学生が。
手を繋ぐ親子の姿が。
そんな幸せそうな姿を見てると、どうしても自分の帰る場所が途端に伽藍洞でちっぽけなモノに感じてしまっている。
――――親は気づいたら居なくなってた。
十年も前の話、まるで巣立った鳥の様に忽然とその姿を眩ませた。
写真も、戸籍も、跡形も無く。ただ『故人』という表記だけを無機質な書類の上に残して。
別に思う所があるわけじゃない。
ただ、こうしてリコリコで過ごして。
無条件に人に尽くして良いんだと知ることが出来て。
あの子みたいなのが世界に居ていいんだって、勝手に救われて。
そんな中、もし帰ったら父がいたとして――僕はどんな反応をするんだろう。
「おい君、コレ落としたよ」
「……あ、どうもすいません」
結構深めの思考に耽っていたのか、気づけば自宅付近。挙句の果てに物を落とすなど不覚も不覚である。
……はて、僕はいつハンカチなんていつ落としたのだろうか。
まぁいいや。
そして腑抜けていた僕の所為で時間を喰ってしまったことを、この目の前の善人に向けて全力で謝意を向けようと顔を上げつつ
「ところで――君の父は息災かな?」
――その一言に、胸に風穴が空いたかの様な戦慄が全身を巡った。
まさしく不意打ちだ。
今はいない両親のことを思い浮かべていたからか、胸の内に抉り込む様なその言葉に、先ほどまで胸に思い浮かべていた華やかな喧噪は、とっくの昔に鳴りを潜めている。
それは、何故だが妙に浮ついた印象を抱く人だった。
拘っているのだろう、丁寧に七分にセットした明るい茶髪と品のある着こなしのスーツを纏い、柔らかい声色は芯があってつい聞き入ってしまう様な振る舞いを感じるが――どことなく近寄り難い雰囲気を感じ取ってしまう。
そして何よりも注目を集めたのが、スーツの左襟に添えられている
ソレが何を意味するかはわからない。
わからない……本当にわからないが、此処にいては行けないと感じさせる妙な寒々しさを感じさせる装飾だった。
「……父の知り合いですかね? 生憎と、父は随分前に生死不明かつ音信不通でこっちが行方を知りたいくらいなのですけど……もしかして、どこにいるかご存じで?」
「…………どういうことだ?」
「あの……?」
――さっきから読めない人だな。
思考に耽る様に、その人は整った顔に手を当てている。その状況をこっちにも少しばかり説明してくれれば良いのだが、そんなリソースを割く暇もない様だ。
……うん、この人はちょっと苦手だ。
「――どうやら思い違いをしていたようだ」
「……何がですか?」
「考えていなかったワケじゃなかった……私の目論見では既に仕上がっていると思っていたんだが……まさか、本当に一般人として育てているとは」
頼むから自分の中で事を進めないで欲しい。
何というか、何でも良いからこの場からさっさと離れたくてしょうがない。
その読めない視線が自分に向けられているという事実に、無根拠な恐怖を感じてしまうのだ。
「おっと、時間を取らせてしまったようだね。ではこれで――夜道には気を付ける様に」
「はぁ」
そういって、男は去っていった。
街灯がその背中を夜の影の向こうに追いやり、曲がり角へと消えていくと――まるで闇に溶ける様にその場から居なくなった。
息が詰まるかと思った。ああいうのを住む世界の違う人間とでも言うのだろう。
あの浮世離れした雰囲気が何となくだが、気色悪い。
何より、この取返しの付かない様なことをした感覚が拭えないのが、どうしようもなかった。
「…………まぁいいや……帰ろ」
そうして誤魔化す様にして、まるで逃げるが如く僕は自宅へ急いだ。
「ああ、君かい? 急遽だが予定変更だ」
「……正直、想定外さ。『アレ』に人の心があったことが意外だった。なんにせよ、やむを得ない」
「迅速に――クリーナーの手配を、よろしくお願いできるかな?」
冷ややかな言葉は風に溶けゆく。
凶弾の夜は徐々に、未だに何も知らない少年へと着実に近づこうとしていた。
更衣室での光景
「こらこら、男子更衣室まではマジで駄目。色んな意味で」
「…………どうしよっか」
「何の葛藤なのソレ」
型月タグの追加に関して
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賛成
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反対
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どっちでも良い