山育ちの竜胆と不殺の彼岸花   作:トウチ亀

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第3話「More haste, less speed」
1話


 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、こんなことしてる場合か」

「阿保かっ! 今までの苦労が全て水の泡になろうとしてるんだぞっ! ここまで来て今更引き下がれるかよ……!」

 

 夜も間近な夕焼けに包まれる東京都の外れに、人の気配を排斥した工場跡があった。

 広い空間に一つ天井からぶら下がる光源は、埃にまみれたその場所を薄暗く照らし出している。

 無造作に机に置かれる銃と次々と燃えるドラム缶に投げ込まれる文書の塵が舞うその光景は、おおよそ平和と謳われる日本の姿とはほど遠い。

 まさしく隠れ蓑としてはこれ以上ないほどの場所に、若い男二人が居た。

 

「ビジネスも命あっての物種だろ。この国マジでやべぇ。最後のシマだってついこの間潰されたばかりなんだぞ。だとしたら次に狙われるのは間違いなく俺達だ。違うか」

「だから再起のための後始末を今してるんだろうがよっ! そのためのカネ、顧客のリストの回収、証拠の隠滅! 全部今後の為に決まってんだろうが! それとも裸一貫で国外に出て野垂れ死にたいってのか!? あぁ!?」

「……チッ」

 

 都市の気配は遠くに押しのけ、人を拒絶し隠れ忍ぶ夜闇で充満したその構図は奇しくも、この国がひた隠しにする本当の姿と酷似している。

 

 そしてそんな場所に居る二人の男の正体は、もはや語るまでもない事実だ。

 薬物、武器、情報。罪状は数あれど、彼らの罪は多くの人間を巻き込んでしまったその一点にのみ集約される。

 

 しかし、余裕がないという点においては些か同情の余地があろう。

 

 なにせこの二人を駆り立ててるのは――潜む未知の存在への『恐怖』なのだから。

 

「先日起こしたビルの爆破……俺達のシマだ。だがあれだけ大掛かりだって言うのに俺達の痕跡はおろか目撃者まで皆無と来ている。加えてそれが『ガス爆発事故』と報じられている現状……この意味、わかるだろ?」

「……この国にいるっていう『処刑人』どもの都市伝説か。最初は眉唾ものだと思っていたが、今となっちゃ笑うに笑えねぇ。今だってどこで見てるかわからねぇ」

 

 そしてだからこそ、冷静さを失った男たちではこれすらも知り得ない。

 

 この工場跡を観測するドローンの存在にも。

 

 その一部始終を肉眼で捉えている――彼らが『処刑人』と呼ぶ存在を。

 

「――――そうだな。案外近くにいたりするかもしれないぞ」

「え――」

「な――」

 

 暗がりから突如聞こえた虚を突く気の抜けた声と、空気を叩く銃声が重なり合う。

 

 意識をその体ごと貫く鈍痛と衝撃。

 聞く人が聞けば誰かを彷彿させる様な緊張感のないソレを聞き届けた男二人は返す言葉もなく、赤い弾丸によって瞬く間に意識を刈り取られた。

 

「この二人はクリーナーに回収して貰うとして本題は……あちち……よし、まだ燃やされていない。顧客のリストと差し押さえ前の取引現場の情報……他の人みたいに殺したりはしないから、これくらいは勘弁してくれよ……?」

 

 灯かりの向こう側、暗がりの中から溶ける様に現れそう独り言ちるのは、『処刑人』という名称に似つかわしくない一人の少年だった。

 

 紺色の学生服に黒縁の眼鏡をかけ着飾る気のないその姿はお世辞にも『地味』としか言いようがない。

 

 そんな彼を『処刑人』たらしめるのは他でもない――その手に握られた拳銃と刃の存在であった。

 

「こちらカナメ。たきなにクルミさん。文書は処理される前に回収した。それと下手人も。早速クリーナーを手配したいんだけど……撒いて来た護衛はどうなってる?」

『勘付かれてるな。数は五人。装備は防弾だが……お前とたきななら問題ないだろ』

『こちらたきな。敵を捕捉しています。合流しますか、カナメさん』

 

 無骨な机から目的のものを引っ張り出すことが出来た彼は、耳の通信機から現状を伝達する。

 

「よし、じゃあ手筈通りに初弾は僕が決める。陽動するから、たきなは適当に散らして欲しい。クルミさん、相手の逃走ルートわかったりする?」

『もうやってる。ついでに逃走用と思わしき車は既にマーキングした。逃げられたとしてもすぐに追いかけられるぞ』

「おお、ありがとうクルミさん。じゃあたきな、応戦しよう」

『了解……言っておきますが、今回爆発オチはナシですからね』

「しないってば……なるべく」

 

 保証はしないんですね、とどこか呆れ気味にぼやく黒髪の少女と少年の会話にはいまいち緊張感というものが足りていない。

 とてもじゃないが『処刑人』などという物騒なあだ名には不釣り合いな空気を纏っていると言えるだろう。

 

 だが――。

 

 

『来るぞ、まずは二人だ』

 

 

 迫る戦いの気配が、二人の暗殺者(アサシン)としての側面が表出する。

 

 

「殺しはなしだからな、たきな」

「カナメさんこそ、これ以上ナイフを()()()()()()()()()()

 

 

 ――こうして、一つの夜が終わる。 

 起こるはずだった事件はこうして未然に防がれ、誰に知られることもなく、顔も知らない誰かの日常の中に溶けていく。 

 もっとも下手人に達にとってもっとも幸運なことは――殺しを良しとしない暗殺者という矛盾がこの場に存在したことであろう。

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、今回は安く済みそうで良かったな二人とも」

『毎回手配してくれるお陰で『喫茶リコリコ』(ウチ)は常時素寒貧だがな』

「加えて前回の爆破の分で大分持っていかれてるんですよ、カナメさん。前回分取り戻したとしてもこれでは釣り合いません」

「…………」

 

 すっかり夜もふけた今は現場を離れて、嵐が過ぎ去ったが如く静寂に包まれる中、僕らから依頼によって出動した『クリーナー』が乗った白いバンが去っていくのを手を振りながら目で追う。

 ……もっとも、その中心にいる僕はたきなとクルミの叱責によってとても穏やかと言える心境じゃないのだけれども。

 

 そ、そっちがその気ならこちらにだって考えがあるぞ、うん

 

「……ふ、不可抗力というものがあってだな二人とも。毎回言ってるが爆破するのはいつも僕でなくて敵側が手榴弾やらロケットランチャーやらを持参してくるのが原因で――」

『弾頭斬る奴が人外染みたスピードで迫ってくればそりゃあそうだろ。お前はもう少しプレッシャーをコントロールすべきだな。ナイフ振ってる時と普段とじゃ人相違い過ぎるんだよお前』

「そこに千束さんと一緒に出動した日なんかは目も当てられません」

「僕にどうしろって言うんだ……!」

 

 つーかいつの間にそんな仲良くなったんだ二人ともっ……!

 いやまぁ、千束が良く使う事後処理業者の『クリーナー』に掛かる費用が馬鹿にならないのはまぁ、わかる。

 今回の戦場となった工場跡は半ば放棄されていたこともあって弾痕やら負傷した敵の護衛などを回収するだけだったので安く済んだ。

 

 だがこれで爆破によって窓ガラス割ったり、人目のある場所で暴れた結果周囲のものを破壊したあかつきには、たきなの言う通り目も当てられない。

 

 ……経費で落ちないって何かの冗談じゃないのだろうか。

 理由はあくまで『喫茶リコリコ』という『DA』の支部が取る独自の方針だかららしいが、それで表向きというか隠れ蓑である喫茶店としての営業がギリギリに陥るっていうのは本末転倒だろう。

 

 千束の方針にお金が無いという予想だにしない障害というか、割としょうもないことに足を引っ張られるという現実へ僕だけでも嘆いた方が良いのだろうか。

 

「秘密組織の一員が金欠に困らせられるって事態を容認して良いのか『DA』……?」

『別に良いんじゃないか? 俗っぽい弱点があった方が親しまれやすくて』

「どこの何に向けた親しみやすさなんですかそれは……」

『そんなのボクが知るわけないだろ。どうなんだカナメ』

「おおう、そんなキラーパスを僕に向けるな。むしろなんで僕が知ってると思って――ん?」

 

 しばらくこの集中砲火に耐えなきゃならんのかー、なんてことを考えてゲンナリしていると、端末が震えていることを感知する。

 

 そして画面を見て――ぴしりと顔全体が引き攣ったのが否が応でもわかった。

 

「どうしました、カナメさん」

「あ、いや……これってさ。どういう意味なのかなって」

「……これは……」

 

 僕の端末を覗いて来たたきなも同様に驚きを露わにする。

 

 ……まぁ無理もないことだ。

 なにせたきなにとっては仕事以外で滅多にお目にかかることは無い人物。

 そして僕にとっては、初対面が初対面だったので仕事以外となるとどうしても苦手意識を感じてしまう相手だ。

 端末が示す着信相手は他でも無い現在の『DA』の元締め――楠木さんからの連絡だったからである。

 

「……出ないんですか」

「……物は相談なんだがたきな、このままスルーするって言うのはアリ? ナシ?」

「ナシですね」

「だよな……」

「当たり前です。むしろ選択の余地は最初からないかと」

 

 最近たきなが手厳しい気がする。

 

『成程な……今カナメの端末を確認した』

「勝手に確認しないで」

 

 そしてさらっと『DA』謹製の特殊端末に仕掛けられた高度なセキュリティを攻略するのもやめて欲しい。

 

『まぁ聞けよ、そもそもそんなに気負う必要ないだろ。ぶっちゃけ組織的に見ればお前の働きっぷりは棚から牡丹餅ってレベルじゃない。言い方は悪いが偶然拾ったにしてはあまりにも出来過ぎているくらいだ』

「何を根拠にそんな……リコリス全体の数を見れば僕の働きなんて雀の涙ほどじゃないのか」

『サードからセカンドへの昇格させる育成例。そしてどのリコリスと組ませても何の問題もなく任務を遂行する……それを戦闘に参加せずたったの半年でそれほどの成果を上げたんだ。個人としての成果として見ればこれ以上ない逸材だろ』

「……」

 

 それを言われると何も言えなくなる。

 とはいえ、リコリスの皆が少しでも死なない様に尽力したという結果であって、別に『DA』への忠誠とかそういうのがあるわけじゃない。

 

 戦えるとは言え女の子が撃ち抜かれる光景なんて、死んでもみたくないし。

 

『もっとも、お前がボクらの知らない所で何かやらかしたとなれば話は別だがな』

「………………そんなことないぞ? うん」

『よし、自首しろカナメ』

「あとでじっくり聞きますからね」

「ぎょ、御意……」

 

 なんだこの王道パターン。僕を中心に話題展開すると八割ぐらいの確率で説教か怒られるかの二者択一を迫られるルールでもあるのだろうか。

 

 だが確かに上司からの電話をスルーするというのも人としてどうかと思うので、おそるおそるとだが通話ボタンを押す。

 

「…………ハイ」

『遅いぞ』

「……ただいま竜胆要人は席を外しておりまして――」

『ほう。じゃあ今こうして電話を受けているのは誰なんだろうな』

「ごめんなさいごめんなさい。緊張していつもの電話対応が出来ずにっ……」

「カナメさんって一度はふざけないと気が済まないんでしょうか」

『いや、アレは多分限りなく素に近い状態でやってるからなおタチ悪いぞ』

「そこ、うるさいぞ外野……!」

 

 ただただ必死なだけである。

 

 そもそも、別に僕は楠木さんが嫌いってワケじゃない。かといって好感を持てるかと言われればそれもまた微妙と言わざるを得ないのが正直な所だけども。

 

 しかし、自分の使命と責任に忠実さは間違いなく本物だ。その点においては尊敬に値するだろう。

 時に冷酷な判断力が必要な組織の長という立場においてはこれ以上ない適任だ。

 

 ……だからまぁ、僕が楠木さんに苦手意識を持つ理由は他にあって。

 

 まぁそれも聞いてればわかる。

 

『全くお前という奴は……聞いたぞ。『DA』から直接の依頼にクリーナーを使ったようじゃないか。貴重な生きた情報源を引き渡した以上、それに見合うものは用意してあるのだろうな』

「相変わらず情報の伝達が早いことで……その点は問題ありません。敵の持っていた顧客リストとまだ『DA』が差し押さえていない取引現場が記された文書を燃やされる前に回収したので」

『よし、それで良い……いささか独断専行のきらいはあるが、命令はこなす。私を丸め込もうとする度胸と判断力……やはり千束の指揮下で扱うには惜しい人材だな、お前は』

「そ、そうですか……」

 

 これである。

 僕はなんというか、以前楠木さんが言った『高く評価している』云々という影響もあってか、『DA』から直接来る依頼だったりをこなす機会が多々あったりする。

 

 そのたびにこの隙あらば『喫茶リコリコ』から引き抜こうとしているんじゃないかと言わんばかりに勧誘を行うこの人の言動に、僕は冷や冷やさせられるのだ。

 

 主に僕の後方に控えている千束が今度こそ文句を言うどころじゃなくなりそうな気がしてきて。

 そして千束がそうなったら今度動くのは店長だろう。その構図が完成する頃にはきっと、『DA』本部を舞台にした阿鼻叫喚の地獄絵図と化すのは目に見えている。

 

『動揺が手に取る様にわかるぞ竜胆要人』

「わかってるならソレやめて下さい……何と言われようと、僕は千束の元を離れる気はありません」

 

 だが生憎と僕の活動方針はこれに尽きる。

 情けないことに貰ってばかりで、まだ千束に返すべきものを何も返してないのだ。

 

 僕が『DA』へ向かうことがあるとすれば、心の底から千束が僕を『DA』に引き渡したいと願うか。

 

 

 ――――千束に貰った色んなものを返せる機会を得た時だろう。

 

 

『慌てるな。独断専行のきらいがあると言っただろう。お前が本来の性能を発揮できるのは千束のもとだというのなら、態々戦力の低下を招く理由もない』

 

 どうだか……仮にそうじゃなくとも別に気遣いとか思いやりがないワケじゃないのに、温度の無い鉄の人間みたいな振る舞いを行うのはいささかどうかと思うが。

 

 組織の運営に必要なことだ、と言われればそれまでだが僕自身彼女のやり方に思うところがあるのもまた事実。

 仮にリコリスが最終的に行きつくのが楠木さんの様な振る舞いであるのなら、千束はともかくたきなを見ている以上笑えない話である。

 

『前回も言ったがな、我々はお前を評価しているのだ、竜胆要人。良くも悪くもお前は組織内で異端であり、際立つ存在だ』

「……楠木さんが言うと僕が問題ばかりを起こしている様に聞こえるのですが……」

『前と比べて随分無駄口を叩く様になったな。あのバカの影響か?』

「ごめんなさい」

 

 凄まれたので大人しく黙っておくことにする。

 

『性差というのはどれだけ組織改革を行っても湧いて出てくる問題のようでな。お前が男だから、我らリコリス側として戦うことに疑問を抱くヤツがいるのだ。下らないことにな』

「……と言いますと」

()()()()()()()()()()()()()()ということだ。そのことをゆめ忘れない様にしろ。その場にいるであろうたきなにその能天気な頭へ叩き込んで貰うと良い』

「……待ってください。話の趣旨が全然見えてこないのですが……何が始まるので?」

『話は以上だ――忠告はした。あとはお前次第だ』

 

 話しは以上だ、と一方的に切られた。

 

 ……これもまた、あの人が苦手だと感じてしまう理由の一つ。

 何か伝える意思はあるのに、肝心な部分をぼかして伝える秘密主義。

 

 だから、あの割腹自殺未遂からそれなりの月日が経っているのにイマイチ信用出来ないのである。

 

「……一応、店長に報告だけしておくか」

「楠木司令が、なにか?」

「やらかし過ぎたツケが来たのかもしれないって不穏な忠告をな」

 

 なんて冗談めかして今の会話の全容を伝えてみる。いや、今の会話内容を鑑みれば大体そんな感じなのだけれども。

 

 だがたきなにとっては何かが引っ掛かるのか、思案する様に眉間を潜ませている。

 

 

 そしてそれは――ここしばらく僕に向けられるものと酷似したものだった。

 

 

「……楠木司令が、態々カナメさん個人にメッセージを……?」

「たきな。大丈夫?」

「…………いえ、大丈夫です」

 

 嘘だな。

 なにせここ数日ずっとこんな調子なのだ。

 僕は腹芸が得意ってわけじゃないが、それでも少なからず自分なんかを慕ってくれている子が何か悩んでいるかくらいはわかっているつもりである。

 

「……ごめんなさい」

「謝らないでいいよ。たきなは何も悪くない」

「……」

 

 ……まぁ、でもその所為か、あるいは僕が原因なのか。

 

 以前よりも自分の事を僕に話してくれなくなったのは――なんだか寂しいな。

 

「カナメさんは……」

「ん」

「自分が死にかけたことを、どう思ってるんですか」

「……どうってそんな急に――」

「真面目に答えて下さい……お願いします」

 

 ……お願いされちゃ答えないわけにはいかないな。

 

 とはいっても、僕の答えは変わらない。

 それがたとえ、たきなが望んだ答えじゃなかったとしても。

 

 最善を諦めるような答えは、今の僕では許すことは出来ないから。

 

「誰も傷つかなくて良かったと思ってるよ」

「……そうですよね。やっぱり」

「そう、たきなと同じだよ」

 

 そう、リコリスと同じだ。

 いざとなれば平気で命を投げ出す。命令とあれば自分の命をなんとも思っていない命令だってこなせてしまう。

 

 それが『使命』ならばと。

 それが生まれた理由ならばと。

 

 そしてそれが僕には――彼女たちのその在り方が容認できない。

 

「……違います」

 

 そう言ってたきなは背を向けてしまう。

 

 それ以上語ることはないと言わんばかりに。

 

『ミズキが迎えに来た。移動していいぞカナメ』

「……了解」

『そう落ち込むなよ。誰だって話したくないことはあるさ。年長者のお前は、たきなが話したくなるまで根気強く待てばいい。たきなの場合は特にな』

「……落ち込んでるように見えるのか、僕は」

『カメラ越しでも十分伝わってくる。ま、ボクからしたらどっちもどっちだけどな』

「……それどういう意味か聞いても?」

『どんぐりの背比べってやつだよ。似たモノ同士だよ、お前たちは』

 

 そう呆れ気味に呟く通信越しのクルミさんはある意味いつも通りで、僕の様に気負った様子はない。

 結局質問の答えにはなっていないが、それでもそんなクルミさんに沈んだ気持ちが少し和らいで、遠くなっていくたきなの背中を見つめる。

 

 こういう時、千束はどうするんだろう。

 冗談めかして伝えるのだろうか。それとも、僕にやってくれたみたいに助けてくれるのだろうか。少なくとも放置するなんてあり得ない。

 

 どうしたら、千束の様に出来るのだろう。

 

 それが出来なきゃ僕は――周囲の人たちに対する恩の返し方がわからない。

 

「……帰るか」

 

 日はもう、沈んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、現状私に出来るのはこれくらいだが……あとは奴ら次第だ」

「……司令、先程の言葉は事実なのでしょうか。彼が――」

「事実だ。幸いまだ時間はある。それに都合が良いことに、リコリコにはまだライセンス更新を済ませていないやつが一人いる」

 

 

「……千束ですか」

「そこが狙い目だ。竜胆はまだまだ使える。『DA』全体の利益を鑑みても、乗り越えなければならない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――竜胆要人の秘匿死刑をな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。

リコリコ再放送待ち遠しい。

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