山育ちの竜胆と不殺の彼岸花   作:トウチ亀

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12話

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――体は剣で出来ている。

 ――血潮は鉄で 心は硝子。

 ――幾たびの戦場を超えて不敗。

 ――ただ一度の勝利はなく、

 ――ただ一度の理解もいらず。

 ――剣は此処に独り。

 ――墓標の丘で鉄を喰む。

 ――故に、その生涯は意味が不要(いら)ず。

 ――偽りの身体は、

 

 

 ――――きっと、剣で出来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「〝――――〟」

 

 祝詞と共に黒い暗殺者、『殺人貴』の身体が造り替わる。

 筋肉はその組成から変わっていき。

 神経はその不要分から廃し替わっていく。

 蓄積された年月が、共感する理念が、『彼』が生きていた痕跡さえ呑み込み、消し去っていく。

 脳に仕掛けた引き鉄。言霊により引きずりだされたそれらはその名の通り、たった一つの業を振るう為だけの剣と化す。

 

 それは呪いであり祝福。人の鋳型に抑え込んだ武器のカタチ。

 最適化はやがて言葉から式へ。

 その式は肉体を、本来あるべきカタチへと変状させた。

 

 暗殺者という在り方においてはあってはならない絶対宣誓。

 (まが)つ風そのものではなく暴風を生み出す嵐の眼。

 その体は本来、たった一人を殺すためだけに存在し、たった一つの業を放つためだけに鋳造されたモノである。

 

 それは、即ち。

 この『DA』本部での戦闘が発生して以来、暗殺者が初めて見せる()()()()()()構えであった。

 

「――――」

 

 弓の弦が如く引き絞られ後退する右腕。照準を合わせるが如く沈められた体。

切っ先は未だに縦横無尽に駆ける赤き華の乙女へ。

 大地を掴む両脚は重く、空を切るような軽やかさを以て斬撃という仮想の質量を敵対者へ錯覚させた。精錬されたソレは、負傷による衰えを一切感じさせない。

 けたましく喚く戦場の最中で静かに灯る銀色。暗い粉塵に覆われたその場所でなお、その古刀はその輝きを失うことはない。

 

 事実、それは。

 彼がこれまで振るってきた鈍ら同然のナイフを優に超える得物であり。

 尋常ならざる『触覚』をも持つ彼がそれを握ればどうなるかなど、図るまでもない。

 武器としての階位の違いとは即ち――『殺人貴』を新たな領域へと引き上げる。

 

「――ッ、――」

 

 千束は知らない。

 たきなから又聞きはしていたが、実物として認識するのは初めてだった。

 彼女を圧倒し、彼を一度は斬殺せしめた『殺人姫』を撃退した竜胆要人の絶技を。

 

 強引に引き延ばされる体内時計は、千束に息を呑む間させ与えない。

 その身に起こり得る可能性に憂慮する本能が与える錯覚は確かに、錦木千束の持つ時間流へ干渉する。

 

 せめてもの迎撃手段として千束は拳銃(ガバメント)を構えるが――。

 

 

「〝■■〟」

 

 

それでも、遅い。

 

 

〝――――〟(■■示幻)

 

 

 ――その断片を開放させた真名は。

 

 

 ――――絶速の突きを以て、その赤い美貌を呑み込んだ。

 

 

「――、え――?」

 

 それは誰の声だったか。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()音に、誰もが一度その理解を放棄する。

 

「砲、弾……?」

 

 呆然と呟くサクラのその言葉は、眼前の非現実をこのうえない現実として鮮明に、的確に捉えていた。

 叩きつけられたソレの場所に、ではない。

 人体が人体によって放たれた『剣技』であんな吹っ飛び方をして良いのか、とか。

 あんなの喰らった最強のリコリスは無事なのか、とか。

 そういった当然の如く列挙すべき事実を全て通り越したうえで、この場にいるリコリスは目の前の出来事に対する理解を拒んだ。

 

 

 何を隠そう、サクラは――『殺人貴』を起点に()()()()()()()()()()()に、そんな感想を零したのだ。

 

 

「……オイオイ……こんなのが、剣術だって言うのか……?」

 

 斬撃の跡、というよりそれは『亀裂』であった。

 偶発的なものでなく、意図的に、物理法則に則って生み出されたであろうソレ。

 『殺人貴』が放った斬撃の軌道は千束を吹き飛ばしたばかりか、その彼女の背後にまで及んでいる。

 文字通り()()()()()()()()()()()のだ。

 その威力と効果を示すように、戦闘の余波など微塵も感じさせていなかった廊下の一部が今では見るも無残な姿を晒して崩壊している。

 

 あり得ない、と目の前の光景に戦慄する。

 一人の人間に向けるべくでない異常な火力を目の当たりにした彼女たちは、誰もがその空気に呑み込まれていた。

 これじゃ技ではなく化生のまやかしの類だ。

 人間に出来て良いものではない。それが出来る人間を、同じ人間として容認してはならない。

 

 そして一同は同時に理解した。

 人間という枠組みでにおける思考ではなく、霊長という知のある獣が有する本能として、目の前の在り得ざる事象を強制的にその論理が組み立てられた。

 

 

 彼の剣は――物質、非物質を問わずにその綻びを伝達し内側から破壊するのだ、と。

 

 

「〝――――〟」

 

 だが、『殺人貴』もその代償は大きい。

 混乱の渦中にて、彼は膝を着いた。

 その口からは夥しい血が。火傷と裂傷によって傷ついた右腕は内出血と骨折によって紫に染め上げられている。

 

 もっとも、それを隙と見なすものなど此処にはいない。

 あの絶技を見せられてなお人の型を保つソレに、隙など見出せるものなど誰もいない。

 

 ――だから。

 

「〝――、――〟」

 

 

 ――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、終ぞ誰も見ることは無かった。

 

 

「――っ、! 千束さんは――ッ!?」

 

『最強』の脱落にいち早く復帰したのはたきなだった。

 最後の希望に縋るように。手探りの暗闇で唯一の光源を失ったが如く、その視線は必死に赤い影を探している。

 

 こんな光景を見れば本格的に、この本部には彼女しか対抗できる存在がいない。

 そうなれば本当に『DA』は壊滅の一路を辿るだろう。

 司令塔が機能しなくなれば、それがどうなるかなんてわからない。

 愕然とするフキとサクラを置いて、たきなは誰よりも速く廊下のスロープの外を伝って千束が叩きつけられたであろう場所に昇っていった。

 

「千束さん、千束さん……!?」

 

 必死になって、たきなはその名を叫んだ。

 ……寮の扉などは酷い状態だが、当の本人である千束は比較的無事であった。

 

 ――鉄製の扉を打ち破り瓦礫の山と化している現状と比べれば、だが。

 

 血を流しその白い髪に鮮血にまみれた頭は重く、俯いている。

 コンクリートに叩きつけられた衝撃によって頑丈な制服は一部が破れ、特に『殺人貴』の技を受け止めたであろう右腕はどういうことか、ズタズタになった右袖以外は白い柔肌を晒しているだけで外傷らしい箇所は見当たらない。

 

 ……それを果たして無事と呼んでいいのか別だが、千束ほどの使い手ならば無事と言っても差しつかえないだろう。

 戦場における『負傷』への解釈は、それほど多くはない。

 致命傷を負って倒れるモノ。

 欠損を伴ってもなお動くモノ。

 

 

 そして――()()()()()()()()()()()戦闘における最善のコンディションを保つモノだ。

 

 

「なんで、リリベルは成す術もなかったのに……」

 

 コトは簡単だ。

 神速すら見切る千束の『眼』。

 

 その神がかった視界はあろうことかあの速さで放たれた突きを見切り、()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 一歩、なんて表現すら生易しい。千載一遇どころの話ではない。

 己の主である楠木が、なぜ竜胆要人の抑止力として錦木千束を当てがったかたきなは本能的に理解した。

 お互いを殺せるのはお互いのみ。

 

 

 だが『殺人貴』は――その楠木の策謀すら上回った。

 

 

「――ッけほ、けほ……ああ、もう、いったぁ……」

「……っ、よかった……!」

「……? たきな、そこにいるの……?」

 

 そして、千束に関して言えば間違いなく後者の人間であると言えた。

 叩きつけられた体から一気に排斥された酸素を覚醒した体が求め、喘ぐ。

 ほどなくして覚醒した彼女の意識に一瞬だけたきなは安堵を抱く。

 

「なんて無茶を……! 一歩間違えてたら死んで――千束さん?」

 

 しかし――同時に襲い掛かる拭いきれない違和感。

 目覚めた千束が口にした内容は、まるで自身の周囲が知覚出来ていない、意識が薄らいでる人間のソレ。

 現状、『殺人貴』は未だに稼働している。

 今は()()()()()()()()()()()()()()()()、それにしたってあの負傷で千束と競り合い、勝ち越す性能を発揮する彼に、次の猶予があるとは思えない。

 

 何よりたきなにとって――千束が此処から逃げられない可能性こそ憂慮すべき事態であった。

 

「――たきなァ!」

 

 そしてついに。

 

 

 『殺人貴』が、その稼働を再開させた。

 

 

「簡潔に言え! 千束はどうだ!?」

「意識はありますが、朦朧としてます! 今すぐ戦線に復帰するのは無理です!」

「……ッ!!! なら、私たちでどうにか時間を稼ぐ! お前は千束を見ていろ!」

「……!? 無茶です、本当に死にますよ!?」

「だったらどうにかしろっ! こうなったら何が何でもやるしかねぇ! 生きてんなら千束を何としてでも叩き起こせ! それでも駄目なら司令部に――」

 

 

「フキ先輩、来たっスよ……!」

「――急げたきな、早く!」

 

 

 眼下にて銃撃が開始され、戦場の気配が再び舞い戻る。

 既に猶予はない。始まるのは遅延行為であり、断じて戦闘ではない。

 戦闘の再開が意味することは、即ちたった今彼を相手にしている彼女らを喪失するカウントダウンの始まりを意味する。

 

 ……だが。

 

「……っ、んにゃろ、カナメ、くん、」

「っ、まだ動かないで! 頭を強く打っていたら大変ですから……!」

 

 千束の軽口とは裏腹に、その足取りはとてもじゃないが前線に立たせられるものではない。このまま戦闘に繰り出すというのは、ハッキリ言って自殺行為と言えよう。

 今だって立とうとして転倒しかけ、たきなに支えられている始末だ。

 

「……だったら、今必要なのは千束さんが起き上がれるまでの時間」

 

 ……幸い、頭部の出血以外には目立った負傷は見られない。

 なら、自分も戦線に加われば千束の目が覚めるまでの時間稼ぎにはなる筈だと判断し、千束を横たわらせ、戦場に向かおうとするが――。

 

「――駄目だよ、たきな」

「――――」

 

 碌に喋れもしない、朦朧としている意識の最中。

 此方が話しかけても聞こえてるのか聞こえてるのかすらわからない。

俯いたまま、焦点が定まらない赤い瞳は一方通行で、言葉が届くことなんて期待もできない有り様。

 

自分勝手で、自己中で、傲慢とも言える在り方には確かに――最終的には()()()()()()()()()()()()()()()()()、ありありと感じ取れる。

 

 

 似たモノ同士とは、誰の言葉だっただろうか。

 

 

「……千束さんもわかったでしょう。私ではカナメさんを助けられない。私じゃ、……二人には、なれない。だから少しでも、出来ることをやらないと」

「――けどそれは、今じゃない」

 

 荒れる海のように激しく渦巻く戦渦の中、その言葉はしんと響き渡る強さがあった。

 もはや執念とすら言える執着を以て、この場を去ろうとしたたきなの裾を掴む。

 ギリギリと掴まれるそれは、とてもじゃないがこの場を離れられそうにない。

 

 彼だったらどうするだろう、とたきなは考えてみるが――そんな考えはすぐに振り払う。

 

 何故って結論などわかり切っている。

 

 似たもの同士なら、考えることは同じだ。

 

 

「――カナメさんと、共倒れする気ですか」

 

 

 依然、戦闘音が激しくなっている。

 一つ目の死線を迎えようとしている。春川フキというリコリスはこの本部においても隔絶した強さを誇るが、そんな彼女ですら『殺人貴』を前にすれば長くは持つまい。

 

「――それ、でも」

 

 だというのに。

 千束は、たきなの腕を離すことはない。

 

 戦闘の気配が遠くなる。言葉で切り離された現実はぎりぎりまで、千束の言葉を待つ。

 誰かは駄目で、自分はやってもいい。

 そんな子ども染みた言葉に、たきなは正面から向き合っている。

 

 

「――カナメくんを楽にさせちゃいけない」

 

 

 ――ほら、やっぱり似ている。

 誰かのためだったら自分が楽になっちゃいけないと考える辺りなど、本当に良く似てる。

 千束はきっと、最終的に誰も死ななければ良いと思っているのだ。

 

 だからこそ――その中にはどうしようもなく、自己というものが含まれていない。

 

 人には必ずあるハズの、自分が生きるのに必要な『席』というものが、錦木千束には存在しない。

 ……否、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、他者への異常とも言える献身を見せている。

 だから殺さない。

 それがたとえ善良な人を殺す手引きをした人達であっても、救うに値しない悪人であったとしても。

 それが()()()()()()()()、彼女にとっては等しく等価なのだ。

 

 

 それは本当に――鏡映しを見ているような、誰かが抱える矛盾と同じもの。

 

 

「今のカナメくんを許したら、楽にさせちゃったら、今度こそカナメくんは死んじゃう――そんなの、私はいや」

 

 

 ――何が彼女をそうさせるのか、たきなには測り切れない。

 散々、竜胆要人と言う男の歪みを指摘してきた千束だが、たきなからすれば彼女だって大概だ。

 根本的に自分が大事じゃないから、そんな言葉が吐けるのだ。

 

 

「そのためにたきなは、生きないと」

 

 

 ――――残される側の人間の言葉なんて、気にもしないで。

 

 

 

 

 

 

「千束さん――いえ、()()

 

 

 

 

 

 

 白熱する思考。下はえげつない事態になっているというのに、そこに関する認識すら今の千束の一言で全てが吹き飛んだ。

 勢い任せになにかトンデモナイことを口にした気がするが、たきなは気にしない。

 どうせ今の千束には聞こえやしないだろう。聞こえたところで、その状態では覚えているかどうかも曖昧だ。

 だから、関係ない。今から自分が口にすることは、理屈も理論もへったくれもなく、やりたい放題に振る舞った結果だ。

 

 そもそも、いい加減、たきなだって我慢の限界なのだ。

 

 

 いつもいつも二人だけの世界を作り上げるのもそうだが、心配している人達の気を微塵も知りもしないでそんなことを言う――!

 

 

「二人とも、馬鹿です。大馬鹿です。二人が少しくらい自分のことを慮ってればこんなことになっていなかった」

 

 思えば、この事態の始まりはそんな些細なことだった。

 小さなボタンの掛け違いによって生まれた皺が、徐々にどうしようも無くなって。

 

 ついにはもっとも恐れていた、錦木千束と竜胆要人の衝突という結果を引き起こすまでに至った。

 

 二人が自己を過小評価してしまったが故に、第三者による下らない横槍を招いたのだ。

 

「だから」

 

 

 

 

「――私が二人の代わりに、二人を大事にします」

 

 

 

 

 それがたきなの出した結論。

 二人に存在しない『自分の席』を、二人に決して介入できない自分が作り上げる。

 二人で完成しているからこそ、共倒れするしかないというのなら。

 二人が大事できないものを、自分が大切にしてやるのだ。

 

 だからこれは、そのために踏み出す最初の一歩。

 

 返答なんて聞かない。

 それにどう思うかなんて知らない。既に賽は投げられた。

 

 

 

 

 だってこれはたきなが――()()()()()()()()()()()出した結論なのだから。

 

 

 

 

「――、――!」

 

 背後の死線を振り切るようにたきなは飛び降り――普段の冷静さを以て戦況を把握する。

 

 落下中に捉えた戦況。

 既にサクラの戦闘は難しい。元の怪我から復帰してほどなく、ダメージだって抜けきっていない。誰もが千束の様に致命傷を負っていても動けるわけじゃないのだ。これこそが本来の正しい反応である。

 そしてほどなくして、フキも同様の事態に陥るとたきなは判断した。

 

 しかし――勝機はそこにある。

 自分では『殺人貴』に正面から勝つことなど出来ない。

 身に着けた技術は彼からの貰いもの。使わなければ同じ土俵に立つことすら許されない領域であり、同じ土俵に立てたところで既に勝負が決まる不条理がそこにはある。

 

 だから、()()()()()()

 一度殺した筈の相手。一度殺す予定だった相手。在り得ざる生還はその不可能を実現する。

 

 

 そこに()()()()()()()()()()()()()()()()()()、まだ勝機はある。

 

 

 

 

「――エリカさんっ!」

「――たきなッ!」

 

 

 

 

 たきなと同じく落下を共にするモノ。

 気弱そうな印象とは裏腹に、そのリコリスの制服の各所から流血を伴いながらも、まっすぐたきなを見据えるリコリスが居る。

 

 

 竜胆要人の技術を修めたリコリス――蛇ノ目エリカの存在であった。

 

 

「たきな、やるんだよねっ!? やれるんだよねっ!?」

「はいっ、絶対に助けます! それには協力を!」

「――うん!」

 

 落下中の会話、戦場が足下に近づく中、エリカは喜びで満開になった表情を伴いながら、眼下の彼を見据える。

 なんであなたが嬉しそうにするんですか、とたきなは聞く余裕もなく――最初にして最終フェーズへと突入する。

 

「は――――ァ」

 

 だから、模倣する。

 なぞるだけじゃ足らない。見据えるのはその大元、真作に至る贋作を、この体に宿す。

 もっと自由に。不可能という束縛から自身を開放するのだ。

 その体術の根源。その経験、技術、蓄積、骨子、理念、その全てを――複製する。

 

「づッ――!」

 

 文字通り、造りが変わっていく。

 井ノ上たきなのモノから竜胆要人のモノへ、変わっていく。

 それは骨や関節を逆向きに動かすかのような激痛。分不相応な体術は身を亡ぼす。井ノ上たきなでは、竜胆要人に並ぶ身体能力の行使に耐えることは不可能だ。

 

 だけど――関係ない。

 ここで出来なきゃ死ぬだけ。至る終わりは同じだ。なら、少しでも可能性のある方向へ全てを搾り出すだけだ。

 そして広げろ。

 もっと深めろ。

 

 

 竜胆要人が扱う業の効果を、解釈を――!

 

 

「――――よ、し」

 

 

 拙い、不細工だ。だが今はこれで良い。

 照準を合わせる。背中に背負う鞄には、千束に渡された『切り札』をいつでも抜けるように準備する。

 

 

 

 

 その目に『殺人貴』を見据えたその瞬間――『殺人貴』もまた、視線を上へと持っていった。

 

 

 

 

「カナメ――!!!」

 

 

 

 

 

 

 その視線に抗うように、たきなは引き鉄を引いた――!

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまで。

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