木組みの街の探偵さん   作:アユムーン

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依頼その4 一時休業→復活のいちご飴

今日の物語はいつもの探偵事務所から始まる…のではなく、別の場所から始まります

 

カランカラーン♪、ドアが開かれベルを鳴らしながら…お客さんが来店した

 

それを迎えるのは

 

「いらっしゃいませー」

 

黒い着物に白いエプロンを着た露だ

 

ここは喫茶店『甘兎庵』

 

「やっぱり私の見立て通り、和服も似合うわね!!」

 

カウンターからサムズアップする千夜の働く喫茶店である

 

今露がここに入るのは依頼ではありません…なぜこうなったかというと

 

パン作りの後、今日はどっちの家にいくかのリゼVS千夜のじゃんけん対決が行われ、その日はリゼが勝利して後日千夜のところでご馳走されるということになりました

 

リゼ宅でご飯をいただき、泊まるように言われたが依頼が来るかもしれないということでなんとか帰ってきた

 

そして後日約束通り甘兎庵に向かった時のことです

 

「こんにちは、ご相伴をあずかりに来ましたー」

 

「いらっしゃい、一旦こっちに座って待っててくれるかしら?」

 

いつものカジュアルスーツで来店し、そのままカウンター席に通される途中

 

「あんこもこんにちは」

「…」

 

店内の中心に置かれているお立ち台にいる甘兎庵の看板兎のあんこを撫でる

 

瞳を閉じて気持ち良さそうに撫でられたあんこはそのまま露の胸元に飛び込み、抱っこされたまま座席に向かう

 

「最近はどうですか?」ナデナデ

「…」

「なるほど、裏の界隈はまだまだ不安定と…いつもお疲れ様です」ナデナデ

 

などというあんことの会話を楽しみながら千夜を待っていると…

 

「あんた、また痩せたね」ズボッ

「はひゃぁ!?」ビックゥ!!

 

背後から腰周りを触られ奇声を上げる(なんとかあんこは落とさなかった)

 

「ただでさえひょろいもやしがこれ以上痩せてどうする気だい!?」

「ど、どうもしませんよ…店主さん」

 

腰周りに手を突っ込んだのは甘兎庵の店主であり千夜のお婆ちゃん

 

「店主?お婆ちゃんと呼びな!」

「お、お婆ちゃん」

「それで?ここに来たってことは遂にウチの従業員のなる気になったってことかい?」

 

間違いなく千夜の圧しの強さはこのお婆ちゃんからの遺伝だと思いつつも反論する

 

「ち、違います!私は探偵ですっ」

 

「ふん、毎日食い繋ぐこともできないのにかい?」

 

「!なぜそれを」

 

「あんたがここに来るって時は大抵千夜があんたが痩せてるって気づいた時さ」

 

「た、探偵ばりの推理力…」

 

※ただの経験故です…などと話していると

 

「そうなのよお婆ちゃん!また露君ったらご飯食べれなくなってるの!」

 

用事を済ませた千夜が帰ってきた

 

「う、宇治松さん…言わないでって言ったのに」

 

「あら?今さらでしょう?」

 

「うぅ…」

 

「それにリゼちゃんのお家でもバレたって連絡もらってるわよ」

 

ちゃっと取り出した携帯にはリゼからのメッセージで『逃げたからそっちで頼む』という連絡が写されていた

 

「いつの間にそんなに仲良く」

「露君関係で意気投合したのよ」

「えぇ…それにしてもそっちで頼むっていうのは?」

 

困惑する露を他所に千夜は携帯をいじりながら言いはなった

 

「露君しばらくここに泊まってね」

 

「えぇ!?でも!依頼があるかもしれないの「はいこれ」えっ?」

 

リゼの所と同じ言い訳で逃げようと思った露の目前に携帯がつき出された

 

「!、これって」

 

写し出された画面はメール画面で宛名はリゼだが

 

『再三の忠告を破ったお前に罰を与える

 

 ウチかその甘兎庵で最低でも体重が戻るまで泊まり込め 

 

 万が一逃げたり、拒否した場合今後一切事務所への援助は打ち切る

 

 分かったら事務所の鍵をリゼかそこのお嬢ちゃんに渡せ』

 

という文が…これは

 

「だ、旦那様…」

 

露の雇い主であるリゼの父からのメールだ

 

「ここまでなるまでに何度も注意はしたわよ。鍵渡してくれるわね?」

 

「…はい」チャリ

 

きゅっと唇を噛み締めながら鍵を渡す

 

「…ごめんね」

 

流石に少し罪悪感を感じたがここは心を鬼にして鍵を受け取る

 

「着替えや制服なんかは後で持ってきてくれるそうよ。だから暫くはウチから学校に通ってちょうだい」

 

「はい…」

 

今にも泣きそうな声色で俯く露…当然だ、露にとって探偵の仕事は生き甲斐であり、それを行う事務所は大切な場所、それを取り上げられたのだから

 

しかし

 

「とはいえなにもしないやつを家に置く気はないからね!とっとと着替えてきな!」グイッ

 

「えぇっ!!?」

 

店主は悲しむ露のことなど気にしないかの如く、その背を押して従業員スペースに続く扉に押し込み、ロッカールームへ

 

「一番奥のロッカーに制服が入ってる着付けはできるね?着替えたら店に出な!」

 

「は、働くんですか!?」

 

「当たり前さね」

 

というわけで、ここ最近は甘兎庵で働いているのだ

 

学校ではリゼから毎日健康チェックされ、ユラから「大変だね~」と笑われながらお弁当をもらい、放課後は甘兎庵で働く日々

 

体重もそんなすぐに戻ることはなく、多少増えた程度だ

 

「…はぁ」

 

毎日増えてくため息、自業自得とはいえ流石に堪えてきた

 

はやく太ろうと思っても買い食いやらするためのお金はなく、毎日のご飯も健康を考えられたメニューのため多量にカロリーをとることもできないし、お店のお手伝いも忙しいので毎日疲れてすぐに眠るという健康的な生活

 

太るということは痩せると同じくらいに大変なことなんだなぁと実感していたそんなある日のこと

 

「こんにちはー!」

 

元気な声と共にお客さんが来た

 

「!、いらっしゃいま「みんな!いらっしゃい!」!、保登さんに香風さんにお嬢様!」

 

俯いていた露がそちらを向いたところで千夜が先に出迎えた。お客さんの顔を見るとラビットハウスの三人が来ていた

 

「よう、ちゃんと働いてるみたいだな」

 

「確認に来たんですか?」

 

「違う、千夜から招待されたから来たんだ」

 

「リゼさんから話は聞いていました。露さんその制服お似合いですよ」

 

「ありがとうございます香風さん」

 

「そうですよねココアさん「…」ココアさん?」

 

ココアに同意を求めたチノだったが、当のココアからの反応はなく、じーっと露の顔を見てから

 

ガシッ!  

 

背の高い露の頬を掴んで自身の方へ引き寄せた

 

「?保登さ「露ちゃん、大丈夫?」!」

 

目線を合わせて露のことを案ずるココア

 

「そりゃ仕事で忙しいからな、しんどそうにみえ「それだけじゃないよ」え?」

 

リゼの言葉を遮る

 

「それだけじゃない、露ちゃん…泣きそうになってるから」

 

「!」

 

「やっぱりお家帰れないの寂しい?」

 

「…はい」

 

「(そっか、ココアは家を出てここにいるから…)」

 

リゼの思った通り、似た悲しみを感じたのだろう…だが

 

「そうだよね…けど、それだけじゃないよね?」

 

「!!」

 

ココアに更に核心をつかれて驚いた

 

帰れないことに加えて露の心に影を落としていることがもうひとつあった…だけどそれは

 

「なにか別のことで悩んでるみたいに見えたんだ」

 

「!!、なんで分かったんですか?」

 

「お姉ちゃんだからね!…でもそれは言えないかな?」  

 

「…はい」

 

よく分からない理由はさておき、その理由はあまり声を大にして言いたいことではない、それに対してココアは

 

「そっか、なら聞かない!」

 

あっけらかんとそう答えた

 

「!、いいんですか?」

 

「うん、無理に聞いちゃったら露ちゃんもっと辛いと思うから」

 

「…」

 

「早くまた探偵のお仕事できるといいね」

 

「はい、ありがとうございます…それじゃあ席にご案内しますね」

 

そして席に進む二人…の後ろ姿を眺める残された三人は

 

「なんか、美味しいところもってかれた気分だ…」

 

「でも私たちも気づけなかった露君の気持ちをココアちゃんは気付いたのね」

 

「あぁ、すごいな、ココアは」

 

「はい…けどやっぱりココアさんずるい」

 

「そうだな/そうね」

 

そして三人も二人を追いかけた

 

 

甘兎庵の珍妙なメニューに驚きつつも、各々注文したメニューに舌鼓を打っていると…カランカラーン♪お店のドアが開かれた

 

「あの、すみません」

 

来店したのは幼い女の子、とてもここに一人で来る年代ではない

 

「いらっしゃいませ!…お父さんかお母さんは一緒じゃないですか?」

 

しゃがんで女の子と目線を合わせ、ココア達と話している千夜の代わりに露が対応する

 

「あの、ここに探偵さんがいるって、お姫様みたいなお姉さんに聞いたの」

 

「?誰だろ?」

 

お嬢様なら仕えているがリゼな訳がないので一瞬首をかしげたが、すぐに女の子の方を向き直す

 

「えっととにかく探偵は私ですがどうしたんですか?」

 

「私のぬいぐるみがなくなっちゃったの…それで探してたらお姉さんが探偵にお願いしてみればいいって、ちゃんおこづかいもあるの!だからお願いします!」

 

「!」

 

差し出されたポシェットには女の子の大切なものがたくさん詰まっていた

 

おもちゃの指輪、クッキーや飴玉といった中にちょこちょこ小銭が入っているようだ

 

「…ごめんなさい今は「行ってあげて露君」!」

 

申し訳ないが今探偵業は禁止されている…なので断ろうとした時、後ろから千夜が声をかける

 

「こんな小さな女の子のお願いを断れないでしょ?…はい」

 

そうして千夜から事務所の鍵を返された

 

「!、いいんですか?」

 

「依頼が来たのなら、仕方がないわ。リゼちゃんも黙っててくれるでしょ?」

 

「あぁ、私は今ぜんざいしか見ていないしな」

「私も今はあんみつに夢中です」

「私はあんこをモフモフしてるから知らなーい」

 

顔を見せずに答えてくれた三人

 

「…」グッ

 

鍵を強く握り、女の子の方を向き直り…ポシェットから飴玉を一つ取る

 

「今回の依頼『迷子のぬいぐるみを見つける』報酬はこの飴、その依頼お受けします!早速ぬいぐるみの特徴をおしえてもらってもいいですか?」

 

甘兎庵の制服でも常に持ち続けてきた愛用の手帳を取り出して、早速調査に乗り出した

 

…その後露は女の子を連れてぬいぐるみを探しに出かけ、残された面々は

 

「露ちゃん嬉しそうだったね!」

 

「そうですね、生き生きしていました」

 

「本当に探偵のお仕事が好きなのね」

 

「そうだな…そっか、そういうことか」

 

「?どうしたの?」

 

「ココアが言ってた露が悲しそうな理由なんとなく分かったんだよ」

 

「!、本当に!?」

 

「アイツここ最近依頼がなかったことで堪えてたんだ…親父さんみたいにできないから」

 

「露君のお父さん?」

 

「露ちゃんのお父さんも探偵だったの?」

 

「そうなんだ。ほぼ毎日依頼はきてたみたいだった。

 

それから露の親父さんは私の親父と昔馴染みで、それで仕事が忙しい時はウチに預けられてたんだ」

 

「そうだったのね…けど露君のお父さんって」

 

「…あぁ、ある日仕事に行ったきり帰ってこなかった」

 

「「!」」

 

知らなかったココアとチノが驚く

 

「なにがあったのかは知らないけどある日突然親父が露が連れてきて、これからここに住むって言ってな…それからしばらくの間のアイツは正直見てられなかった」

 

ろくに食事もとらず部屋に籠りきりで以前会った時とはまったく様子の違う露の姿は当時のリゼにとってのトラウマなのだ

 

「露ちゃん…」

 

「だから私も親父もユラっていう家のメイドもアイツが少しでも弱ってそうだったらどうしても過保護になるんだけどな…千夜もか?」

 

「私は露君が本格的に探偵を初めてから時々フラフラしてるのに気づいて、聞いて知ったの…けどそんなことがあったなんて知らなかったわ。でもお父さんのことはその時聞いてたわ」

 

「そうなのか…!そうか!」バッ

 

顔を上げて千夜の方を見るリゼ

 

「!?どうしたんですか?」

 

「昔そんな弱ってた露が突然いなくなったんだ」

 

「えぇ!?」

「大丈夫だったんですか!?」

 

「大丈夫、なにごともなく帰ってきたよ。でもその日は今まで露を怒らなかった親父もめちゃくちゃ怒って、私もユラも泣いて怒って…それでどこに行ってたんだ?って聞いたんだ…そしたら

 

『和風喫茶店のお得意様ができた』って」

 

「!!」

 

「!!、それってもしかして」

 

「うん、それからアイツ将来は探偵になるって言って元気になったんだ…そのお得意様は千夜なんだな」

 

「えぇ…まだあんこが家に来たばっかりの時でカラスの拐われてどこかに行っちゃって」

 

そうして千夜は幼馴染みと共に泣きながらあんこを探していた、その時に露に声をかけられたのだ

 

「あんこがいなくなったって言ったら自分も探すって、遠慮してたら…僕は探偵だからって言って」

 

そして日が暮れるまで一緒に探してくれて、遂にあんこを見つけたのだった

 

「それから一緒にここに帰ってきたの」

 

店主から怒られて、その後に大福をもらって

 

「大福食べてる時にちゃんとお礼を言おうとしたら報酬はもうもらったからいいって言って、その日はそこで別れたの」

 

それからは露はよく千夜の元に顔を出すようにしていた

 

「あんこ、ちゃんといる?って言ってお店に来てたわ」

 

その時あんこがいなくなっていたら一緒に探して、いたら一緒に遊んでいた…楽しい思い出

 

「そうなんだ…じゃあ千夜ちゃんが一番最初の依頼人なんだね」

 

「そうですね」

 

「そうだな、それから探偵『義良露』を生み出した張本人ってワケだ」

 

「!!、そうかもしれないわね」

 

いつも助けてくれた大切な友だち、その友だちの大切な物が生まれるきっかけに自分が関わっている…それがとても嬉しかった

 

 

そして日が暮れた頃…近くのゴミ収集所にて

 

「!!、あったー!!」

 

くまのぬいぐるみを見つけた露が喜びの声を上げて、一緒に探してくれた収集所の職員にお礼を言ってから出る

 

「ちゃんと見つかってよかった…」

 

初めは女の子がぬいぐるみを持っていたことをはっきり覚えている公園を探したがみつからず、日が暮れそうだったので女の子に必ず見つけると約束をして家へと送った

 

その時ちょうど女の子のお母さんと会って話を聞くことができた

 

女の子は家にちゃんとぬいぐるみを持って帰っていたがなんとお母さんがボロボロだったので捨ててしまったという衝撃の詳言を得た

 

露は涙を流す女の子の頭を優しく撫でてからゴミに出した日を聞き、頭で日数を計算してからすぐに走りだし、ここにたどり着いた

 

「ゴミに出したのが最近でよかった」

 

見つけたぬいぐるみは少し汚れてしまって、腕がちぎれそうになっているがこれなら洗えるし、直せる

 

大切なお友だちの元にちゃんと帰してあげられる

 

「ちゃんとあの子の所に送ってあげますね!」

 

久々のお仕事が上手くいき、思わず人形を持ち上げて弾むようにスキップで帰路を進む露

 

そんな姿を少しはなれたところから見る人影が一人

 

「上手くいったみたいね、まったく世話が焼けるんだから…っていけない!そろそろタイムセールがっ!!」

 

リゼと同じ制服を着たふわふわの金髪にリボンのようなカチューシャをつけたお姫様のような人は露の姿に安堵の息を吐いてから、忙しなく駆けていったのだった

 

 

 

 

 

 




今回の報告書!

露「というわけで復活です!」

ココア「イエーイ!おめでとう!」
チノ「おめでとうございます」
リゼ「ったく、次やったらまたおんなじことするからな?」

露「あはは…肝に命じます」

千夜「それにしても女の子に露君のことを教えてくれたお姫様って誰かしら?」

露「んー?近くにいる気がするんですけど…」

スーパー内
???「へっくし!」

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