転生者は最強の海兵を目指………え、海賊になる? そんなぁ   作:海軍支部三等兵

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プロローグ

 気が付いたら島にいた。

 何を言ってるか解らないと思うが、俺だって解らない。少なくとも地球でないことは確かなようで、この世界では大陸は一つしか存在しない。

 赤い土の大地(レッドライン)と呼ばれる地球を一周した大陸により分断され、後は島がポツポツと存在する程度。

 正しく海の世界と呼ぶに相応しく世界の軍隊は海軍が主で、後はそれぞれ島を一つの国として国軍と、多分大陸には陸軍もいると思うが世界の秩序を守っているのは海軍。

 そして世界を乱すのは海賊。

 海にはとんでもない怪物が平然と住み着き、異なる世界だけあり理解不能な物理法則が起こる海を棲家としているだけあり、その脅威は陸の山賊とは比べ物にならない。同時に陸の軍隊と海軍ならば当然海軍の方が強い。もちろん例外もいるらしいが。

 現状、この世界の戦力は海賊と海軍に二分されている、と言ってもいいだろう。そして海賊が完全に悪か、と言われると微妙なところだ。赤髪、白髭と呼ばれる海賊は上納金が払えず世界政府の保護を受けられない島々を縄張りとすることで守っているらしい。

 『世界政府』直属の新聞社は記さないが、『世界経済新聞社』はそういった部分も書いている。俺はこっちと契約してる。

 

「また新しい海賊が………嫌な時代になったもんだ」

 

 5歳が考えることじゃない、とよく言われる愚痴をこぼし自分を投げ捨てる。

 『海賊王』ゴールド・ロジャーの死後、彼が残した財宝を求め多くの海賊は海へと旅立った。迷惑な話である。気のいい酒呑みから、ゴミクズみたいな奴等まで。

 海賊を自分から捕まえに行く気はないが、父が海兵だし俺も海兵にでもなろうかね。力を持ってないと明日にでも死んでるかもしれない世界だし。

 でも平和な海とされる『東の海(イースト・ブルー)』に勤務したいな、ここらでポンポン現れる海賊ですら彼処じゃ雑魚らしいし。まあそもそも俺はその海賊団の下っ端にすら勝てないのだが。

 なので若い内から修行して強くなる、なろう太郎を目指そうと父に弟子入りしようとしたら、なんかたまたま来てた海軍の偉い人が豪快に笑いながら連れてかれた。

 猛獣ひしめく無人島に……。

 

 

 

無人島生活一日目。

 

 馬鹿なのかな、あの爺?

 5歳児を猛獣の棲家に連れて行って何をしろと? 生き残れ?

 うん、馬鹿だろ。

 幸いというか、前世より文明の劣る世界で過ごしただけあり、免疫は現代日本に暮らしていた時よりは高い。なるべくきれいな川の水を啜り、朝露を集め過ごす。腹が減った。

 

 

無人島生活二日目。

 

 落とし穴を掘る。何もはまらなかった。木の実は渋いけど食えないことはない。食える野草を見つけ、木の皮で作った鍋で煮込む。松の葉は意外と栄養があって煮出して茶にしたりして風邪予防になると前世のばっちゃんが言ってた。不味い。

 タンパク質がほしい。

 虫を食った。

 

 

無人島生活三日目。

 

 水で汗を流し、その後すぐに泥を塗りつけ日焼け対策。匂い消しにその辺の草の上を転がり肉探し。兎、速い。

 

無人島生活四日目。

 

 最悪だ。

 拠点にしようとしてた洞窟に熊がやってきた。俺の残り香を感じたのか暫く辺りを見回してやがった。匂い消しが功を奏したのか見つからなかったが…………。

 海沿いを拠点にするか、魚とか蟹が手に入るかもしれないし。とりあえず虫や蛇に気をつけるべく頑張ってハンモックもどきを作った。

 

 

無人島生活五日目。

 

 帰りたい。

 

 

 

無人島生活六日目。

 

 何だあの蟹!?

 成人男性と同じぐらいあったんだけど!?

 

 

 

 

無人島生活二十三日目。

 

 帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい。

 

 

 

無人島生活五十六日目。

 

 慣れてきた。

 この世界の人間って鍛えれば船のマストぶん回せるようになるみたいだしなぁ、流石に無理だが俺もだいぶ野生になれた。

 餓死しそうな時に誰かが果実をおいてくれてたし、多分死なないように見守ってくれて入るのだろう。だとしても許さねえがなあの爺。

 

 

無人島生活八十七日目。

 

 長い野生生活のおかげが気配が読めるようになってきた。地面の中に隠れているモグラやハリネズミを捕まえたり、兎の逃げる方向を先読みして食事にありつく。

 此方を監視している気配にも気付いた。あの人が俺が動けなくなる前に食事をくれた人だろう。感謝………。

 

 

無人島生活百二十四日目。

 

 狼を拾った。

 今の俺なら拠点を取り戻せるのでは、と洞窟に向かった過程で見つけた。グチャグチャにひしゃげた親らしき狼の死体に縋り付いていた。

 足に怪我をしている。

 このままでは熊か、他の動物に食い殺されるだろう。

 前世の自分を思い出して噛まれながらも拾った。

 

 

 

 

 

 熊というのは独占欲が強い。一度得た獲物は自分のものとする。

 己が殺した生意気な狼の子供、怪我をして動けないそれを夜の楽しみに取っておこうと冬眠の備えに餌を集めていれば、戻ってきた時には居なくなっていた。別の生き物の匂い。盗まれたのだ。

 途中、やけに匂いが擦り付けられた地面を見つけた。そこから匂いが殆ど消えた。

 それは匂い消しのためだったが、熊からすれば己の縄張りであるはずの場所に匂いを擦り付けた敵対行為。

 怒りに満ちた熊は僅かな残り香を探し、血の匂いを感じ走り出す。

 

「は、え!? み、見つかった!?」

 

 妙な鳴き声で驚く猿のような生き物。全力で逃げようとしている。何だ、弱いのか。

 背を向けた無防備な背中に追いつき、爪を振り下ろす。

 

「!?」

 

 抉ったのは地面だけ。

 かわされた?

 

 

 

 躱せた!

 兎達を追う時に見る意識の流れ………とでも言うべきなにかを感じ取れた。

 だから解る。少年に向けられた敵意。食い殺してやるという食欲混じりの殺意。

 この島において捕食する側であり、見つかる前に逃げていた少年からすれば恐ろしい威圧感。今すぐにでも逃げろと全身の細胞が訴えかける。少年は上着に狼を包み袖を腰に結んだ。

 

「ゴオオオオオオ!!」

 

 一撃でもまともに喰らえば死ぬ猛攻。先読みの力で回避していくが、反撃の手段がない。

 子供の腕力では熊の分厚く頑強な肉の鎧を突破できない。

 

(なんか、何時もより疲れる!)

 

 これまで先読みは獲物を見つけるのと、逃走ルートの先読みの短時間のみしか使ってこなかった。殺されるかもしれないという恐怖で精度も落ちている!

 熊の爪が少年の頬を抉る。

 

「がっ!!」

 

 激痛により、集中力を必要とする先読みが完全に使えなくなり、熊の体当たりを食らう。熊からすれば体当たりですらなくただ体が当たっただけ。それでも少年を吹き飛ばすには十分で、地面を転がる少年は立ち上がることもできない。熊がノソノソと近付いてくる。

 

「きゃう! わう!」

 

 と、少年が咄嗟にかばったおかげで無事だった狼が吠える。小型犬と混ぜてもわからないサイズの狼と咆哮などで、当然熊が止まるはずはない。

 狼は怪我した足で無理矢理這い出てウゥゥと威嚇する。熊は鬱陶しいとばかりに前足を持ち上げ振り下ろそうとし……

 

「や、め………やめろぉぉ!!」

「───!!」

 

 少年の咆哮と共に放たれた()()が熊を……島中の動物の半数の意識を奪う。

 地面に倒れる熊と狼、そして少年。

 その場に新たに現れた人影。

 

「…………覇王色……これは、とんでもない逸材だな」

 

 覇王色…王の資質を持つ者は、自然と人を集める傾向がある。極限状態で見聞色の覇気に目覚めるなど才能のある彼が、もし何らかの理由で海賊へとなったなら…………。

 

「この子が海兵を目指してくれてなによりだ」

 

 5歳児とは思えぬ精神性に、才覚。きっと彼は、強い海兵になる。それこそ、中将………果ては大将だって夢じゃないかもしれない。

 

 

 

 

 海軍本部、外部スカウトのオウル・クロウ。

 かの英雄ガープに見初められ、若くして海兵として訓練を積んだかの少年は六式、生命帰還をも習得し、覇気をマスターした将来有望の海兵であった。

 海軍でも一部の実力者しか知らぬ覇気を使いこなし、更には覇王色を持つ。誰もが彼に期待した。

 正式に海兵となり、誰の下につき名を挙げていくのか、それが自分であったならと思うものも少なくなかった。

 そして彼が望んだ所属は…………

 

 

 

 

「やあ、君が噂の天才君だね。私はプリンプリン………よろしく頼むよ」

 

 高い懸賞金の海賊もさして存在せず、1000万ベリー()()が大物となる『平和の象徴』と呼ばれながらも『最弱の海』とも揶揄される『東の海(イーストブルー)』であった。

 

「はじめましてプリンプリン准将、自分はオウル・クロウ。若輩者ですが、頑張ります! あ、こいつは相棒のウォルフ」

「ワフ!」

 

 と、クロウの横に居た狼が吠える。

 

「短い間ですが、お世話になります」

「ふむ。ところで、どうして君はここに? 我々とて海軍として誇りを持っている。ここに現れたとて見逃す気はないが、君のような実力者ならもっと強い海賊も捉えられるだろう?」

「………良識をまずは身につけてこい、と。見習いの海に………あ、いや、ここを馬鹿にしているわけでは!」

 

 その言葉にプリンプリンは気にしなくていいと笑う。

 

「恥ずかしながら、強い海賊が少ない海の海兵、というのは事実だ。だからこそ、君のような若者が我々では手も足も出ない海賊を捉えてくれることを願っているよ」

「…………ありがとうございます」

「さて。では行こうか!」

「?」

「勇気ある住人が教えてくれた。恐ろしい海賊に支配された島があると! その島の村が滅ぼされてしまったらしい………不甲斐ないことだ。だからこそ、例え遅いと罵られようと我々は正義の味方として生き残りの保護、そして海賊の捕縛を行わなくてはならない! こう言っては情けなく聞こえるが、期待しているよクロウ伍長」




クロウ伍長(本部では三等兵)
高い戦闘能力と才能を兼ね備えた海兵。
ガープの修行から逃げるために一秒で地面を12回ほど蹴る走力を手に入れたり空を走ったり、拳骨に耐えるために体を鉄のように固くしたり、反撃のために銃弾並の抜き手を覚えたりとほぼ我流で六式、覇気を習得した。生命帰還も高い精度で行える。
本来はある程度の強さを得て安全な場所に住もうと思っていたが、Tボーンなど尊敬に値する海兵に出会い心を入れ替えた。
青雉派。
後の七武海。


ウォルフ
クロウの相棒。六式使いで覇気使い。
嘗ては島を支配していた狼一族の先祖返りでかなり大きく、クロウを乗せて走る。月歩の応用の水面走りは人魚をも抜き去る。後の七武海海賊団副船長。

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