自分より強い上位種に愛されるの良くないですか!? 作:糖分至上主義
それはそれとして不定期な猛暑に夏を越えられなさそうな気もしています。
前話をお読みくださった皆様方ありがとうございます。
それからの日常はまさに光のようであった。
夏の間はこちらにいること。もう少ししたら学校が始まること。親がどこにも連れいてっいてくれないこと。
あとは何を話しただろうか、、、話している間は何もかもが楽しかった記憶がある。
晩夏の暮れ、夏休みも終わりが近づいてきておりその日は明後日には帰ってしまう。明日も帰る準備などで来れないだろうこと、来年も来るということを話しいつもより長く彼女と話していた時だった。
今まで「お前」だの「あんた」だのと呼んでいたが急に彼女の名前が気になった。
「あんた名前なんて言うんだよ。俺は夕陽」
「私の名前は、、、名前は紫陽花」
なんとなく彼女の浮世離れした風貌と紫陽花という名前は合わない気がした。彼女はなんというか、路傍にひっそりと生えているシロツメクサのような雰囲気だったからだ。
冬休み。彼女に会おうと祖父母の家にやってきたはいいものの、山には雪が積もっていた。これにはさすがに危険だと思い、しかし彼女に会いたいという気持ちから山の麓まで行って一人で話をすることを続けた。
それ以降の年は夏は彼女の元に、冬は一人で麓へ。ということを繰り返した。
彼女と出会って7年目程たった頃であった。中学校にあがり彼女の腰ほどであった身長は彼女の胸程度まで伸びており、以前ほど見上げることもなくなった。その頃にはすっかり彼女とも親しくなりどこか遠くを眺めていた彼女も私を見てくれていたような気がしていた。
「毎年ここに来ているが紫陽花は普段何をしているんだ?日がな一日中庭を眺めているわけではないだろう。」
「普段は昔のことを思い出したり、草木や動物と話しているわ」
「草木や動物、、ってそれじゃ俺以外の人とも話さねえのかよ。」
「えぇ、あの人たちは私のことを忘れてしまった。いいえ、もう"知らない"のかもしれないわね」
嬉しさと寂しさが混じったような顔で呟く彼女を見ながら薄らと抱いていた疑問が確信にかわり出した。
「ところで紫陽花。どうして紫陽花は、、、出会った時からずっと同じ姿なんだ?それに昔っていったって、、、」
「そうね。さすがにバレてしまうわよね。いえ元々隠す気はなかったのだけれども。あなたが思いの外熱心に通い続けるから。」
その時初めて彼女と目が合った。いや、視られたという確信を抱いた。
感じたことのない圧と妙な既視感、懐かしさが込み上げてきた。
(知ってる?以前こんなことがあったような...)
一瞬思考の渦に呑まれかけるも続く彼女の声で頭が冴えた。
「あぁ。そういうことだったのね。私も随分と昔のことだから忘れてたのかしら。いや、あの子のせいかもしれないわね。ごめんなさいね、今まで気づいてあげられなくて。いっそいじらしいくらいにあなたは存在を表明していたものね。」
普段見ていた彼女と明らかに表情が違っていた。嬉しさと悲しさがごちゃ混ぜになったような表情と暖かな雰囲気を漂わせており、なにか甘い香りと相まって"酔って"しまった。
頭がガンガンと殴られたように痛む。焦点が定まらず視界が揺れる。耳が遠くなり汗も止まらない。
吐き気が、、倦怠感に襲われ動きたくないと脳が悲鳴をあげるが同時に心臓がニゲロと暴れだした。
20歳の梅雨入り頃、紫陽花が咲き誇る時期に迎えに行くわ。あの日のように
そこからどう帰ったのかは分からない。
聞く話によると夕方フラフラと山道を下ってきたらしい。
何が起こったのか分からない。記憶にあるのは彼女の元に行き軽く話した内容と、意識が遠のく前「20歳、梅雨、迎えに行く」と言っていたことだ。断片的で確証は持てないがおそらくそう言っていた。
あれほど慕っていた。いや恋をしていたかもしれないのに今は少し会うのが怖い。しかし明日会いに行ってみればなんてことはなくただの白昼夢だったという希望的観測もやめられない。私はどこかオカシくなっていたのだ。
次の日、あんなことがあったというのに少し胸の中がスっとしていて彼女に会いに行こうと考えていた。
なんてことはない。彼女に昨日何があったかを尋ねればいいのだ。
そう能天気に考え山に行こうとした時、祖父に言われた一言でしっかりと目が"冷めた"
「お前なんぞ香水でもつけとんけ。花の甘い香りがすごいぞ。この悪ガキめ。」
コウスイ。香水?そんなものつけてないし、中学生がそもしも持っているわけが無いしこんなところでつける意味もない。
祖父は笑いながら庭の畑をいじりだしたが、私の体は震えが止まらず帰り支度をし始めた。
「ありゃ、今年はもう帰んけ。まあお前も友達とあそびたいやろうしな。」
「おん。友達と遊びたいから帰るわ。ところでじいちゃん、山の上に誰か住んどるか。」
「あ、山の上ぇだぁ。あんな辺鄙なとこ住むやつがあるけえ。どないしたんや。」
「いや、山の方に人がいたような感じがしたから誰か住んどるんかと思ってさ。」
「、、、昔っから山はカミさんのもんだ。そりゃ近いところには用事があって入るが奥の方にゃ用事でもなければいかん。ただの気のせいじゃろ」
やはり彼女は人ではないナニカだったみたいだ。
彼女に気に入られでもしたからか今までは許されていたのだろう。しかし昨日彼女の正体に気が着いてしまったからか、はたまた何かしら気に触れることをしたためか怒らせてしまったに違いない。
幸い彼女はあの家から出ることはできないと言っていた。近づかなければ大丈夫だと自分に言い聞かせ夏の秘め事と初恋は静かに終わりを迎えた。
あれ?純愛異類婚姻譚は?