自分より強い上位種に愛されるの良くないですか!? 作:糖分至上主義
今年も梅雨が明けまして、暑い夏と電気代に脅えながら過ごす時代がまいりました。
ところで私は祖母の煮物、特に里芋の煮っころがしが好きなのですが、あとひと月ほどで帰省するので楽しみで仕方ありません。
皆様には記憶の味がございますでしょうか。私は自分で料理を作る度に思い出が想起されます。
八月一日 晴れ
今日から宿題の日記を書いていくことにした。
何日かサボっちゃったけど、今日から書けば大丈夫だよね。
今日は一日勉強をして終わりました。晩御飯は春巻きと煮物でした。人参はちょっと苦手。
明日も一日幸せに過ごせますように
八月二日 くもり
今日は朝から図書館に連れて行ってもらえた。
なんでもご本を読んでおくのが将来役に立つのよ、だそうだ。
カードを作ってお母さんといくつかの本を借りて帰った。
明日も一日幸せに過ごせますように
八月三日 晴れ
今日は友達のまさし君が遊びに来た。本当はお勉強をしなきゃいけないけどちょっとくらいなら大丈夫だよね?
まさし君と一緒に林まで行くとたつや君とはるき君もいた。
秘密基地を作るらしい。みんなは隊長とか軍曹とか将軍とかって呼びあってた。僕は新人らしい。みんなと棒を振り回しながら林を進むと、石が積まれてるヘンテコな場所に出た。みんなでお宝を探したけど何も無かった。僕は塾だから早めに帰らなくちゃいけない。帰る前に明日も遊ぶ約束をした。今日はいつもより早く布団に入ろうと思う。
八月四日 晴れ
昨日より早い時間に林に行くとみんなが待っていて僕が最後だった。
今日も秘密基地を作るために探検するんだ!
色々探したけど今日は小さなお家を見つけた。昨日見つけたヘンテコな場所のさらに奥にお地蔵さんに守られてた。僕と同じくらいの大きさだから住んでるのはきっと小さな神様に違いない。
みんなはお宝があるかもって言ってたけど、何となく近づくのはやめた方がいい気がした。これがしんせーってやつだと思った。
八月五日 くもり
今日はお母さんに勉強の進みが遅いんじゃないのかしらと言われてしまった。
確かに最近はみんなと遊んでいたから今日は真面目に勉強した。
みんなとは遊べなかったけど明日の分まで頑張ったから、明日はあそべるかな。。
早くお風呂に入りなさい、と言われた。今日は疲れたから早く寝よう。
明日も一日幸せに過ごせますように
八月六日 雨
今日は雨降り。みんなとは遊べないや。
今日も勉強をしよう。
明日は一日幸せに過ごせますように
八月九日 晴れ
数日日記を書くのをサボってしまった。
勉強しなきゃ、お母さんが言ってた。
頑張っていっぱい勉強するのが僕のためらしい。それにみんなは僕とはもう遊んでくれないらしい。みんなも勉強で忙しくなるんだって。
そろそろ塾の時間だから準備しなくちゃ。
明日も一日幸せに過ごせますように
八月十一日 くもり
今日はまっくろくろすけをみつけた!
いっぱい勉強したから今日はお外で遊んでもいいよと言われた。
少し悩んだけど秘密基地をさがした林にいった。みんなはいなかったけど小さなお家にまっくろくろすけが座ってた。
話しかけてみると1人でさみしいから一緒に遊んで欲しいんだって。秘密基地を探すために一緒に探検した。まっくろくろすけはまっくろくろこお姉さんだった。
途中からまっくろくろこお姉さんに肩車をしてもらった。僕のことを見失わないようにするためらしい。僕はあしたから牛乳をいっぱい飲むことを決めた。お姉さんはひんやりしていてお花の香りがした。
明日も一日幸せに過ごせますように
八月十二日 晴れ
今日もまっくろくろこお姉さんと林を探検した。
最近お母さんは忙しそうにしていて、早くに家を出ていく。
昨日と同じようにお姉さんは小さなお家に座っていた。
お姉さんは昨日は被っていなかった真っ黒な帽子を被っていて、キレーだった。
今日はさらに奥の森まで行ってみた。手をニギニギされるのはくすぐったいからやめて欲しい。お姉さんにそう伝えると笑っていた。お母さんから女の子には優しくしなさいと言われていたので、僕は何も言えなくなった。女の子の笑顔を守るのがしんしなのだとご本にも書いてあった。
僕はしんしなのでお姉さんに子供扱いされてもへっちゃらである。牛乳は変わらずいっぱい飲もうと思った。
明日も一日幸せに過ごせますように
八月十三日 晴れ
明日から少しの間おばあちゃんの家に遊びに行くことになった。
そのことをお姉さんに伝えたら悲しそうにしていたから、すぐに帰ってくると約束した。ずっと待ってるとお姉さんは言っていたが、しゃこーじれーだということがわかった。お姉さんに気をつかわせるとはまだまだしんしへの道のりは遠そうだ。
今日は1日ゆっくりお姉さんとお話した。お母さんのこと。まさし君達と探検をしたこと。この前初めて図書館に本を借りに行ったこと。勉強をいっぱいした事。将来はお医者さんになりたいこと。なかなか帰ってこないお父さんのこと。
お姉さんはずっとうんうんと言っていた。本当はお姉さんのことも聞きたかったけど塾だから聞けなかった。去り際にぎゅっと抱きしめられた。お姉さんはひんやりしてたけどなんだかポカポカした。
八月十四日 くもり
今日はおばあちゃん家で1日過ごした。今日は勉強はやらなくていいっておじいちゃんが言ってくれた。おじいちゃんといっぱい魚を捕まえるわなをしかけた。明日は魚パーティーらしい。秘密だ、と言いながらおじいちゃんのくれた飴は大きくて舐めずらかったけど甘くて美味しかった。
お姉さんは今日もあそこで待ってるのだろうか。なんだかモヤモヤしていたけど、ご飯を食べ終わるとすっかり治った。今度お姉さんに教えてあげよう。
ー〇〇〇ー
「なあ坊や。最近どうだ。しっかり外で遊んでるか。あの子はこう、、頑固者なきらいがあるからな。嫌なことは嫌だと言ってやればきっとあの子も聞いてくれる。今の間にいっぱい遊んでおくんだぞ。」
夜。庭に面した廊下の窓を開けて、外を眺めるおじいちゃんが僕を撫でながらつぶやく。
「ううん、大丈夫だよ。お母さん最近忙しそうだけど毎日楽しいし。それにいっぱい遊んでるよ!この前だって林に探検に行ったんだ。」
それから僕が話をする姿を眺めながらおじいちゃんは優しそうに笑っていた。
「明日の朝は早いでな、そろそろ布団に入って寝ようか。」
おじいちゃんはそういうとトイレに歩いていった。
明日の朝は川にしかけた罠を引き上げたあと、山にも行くらしい。
なんでもご先祖さまに挨拶に行くらしい。
布団に入ろうと思い、網戸を閉めようとすると鼻先を甘い香りがかすめる。
庭には百合が一輪、風にそよいでいた。
なんだかふわりふわりと揺れている様がお姉さんを思い出させた。
真っ白い帽子と書いていた箇所を真っ黒い帽子と修正させて頂きました。