自分より強い上位種に愛されるの良くないですか!? 作:糖分至上主義
新作を書き始める前に情報を見たら31件もお気に入り登録がされていておどろきました(大感謝)
こちらの方もネタが思い着き次第あげれたらなと思います。
全話の続きは思い出したら(プロットが出てきしだい)書きます.....
早朝未明。
色の抜けたような髪胸元ほどまで垂らした男が着物の裾を引きながら、長い廊下を歩く。
手元に持った行燈からてらてらとこぼれる灯りが薄ぼんやりと蛍のように光っている。
ふと男が立ち止まり、ガラス戸越しに庭を眺める。
視線の先には夜露に濡れた椿の花がいじらしく下を向いていた。次第に差してきた陽光による的皪たる様はため息をこぼさせるには十分すぎ、視界を曇らせた。
しばし立ち止まっていたが足裏に感じる冷たさから再び歩き出す。
廊下を右手に曲がり、庭に囲まれるようになっている廊下を足音らしい足音を立てずに歩いていく。
中頃にある襖までたどり着くと、一度行燈を置き、襖を開けると手早く室内へと入る。
室内には、住みに置かれた簡素な箪笥と葛龍と行灯があるばかりで閨としての役割を果たすだけのものに見える。
そして中央に2組の布団がしかれている。片方は男が先程まで入っていた布団でとうに冷えきっている。
ではもう片方はと言うと、銀色にきらめく髪を持った幼子がすやすやと眠っていた。彼女は只人ではないほど美しく、また、それは額から生えている赤い角を見ればさらに際立ったものとなるだろう。
「ヒナ、ヒナ。朝ですよ。少し早いですが今日は新年の挨拶があるのでしょう?そろそろ起きなければトンド様が起こしになりますよ」
「あやつなど、、、待たせれば良い。それより、、儂はこの寒さが耐えられぬ。。。布団に入った、、、温めてくれやせんかの?」
「私もそうしてあげたいですが、ダメですよ。それよりも庭の様子が一段と綺麗でしたよ。雑煮を食べながら一緒に眺めませんか?」
「んむ、、それは確かに、、、抗いがたし。。それじゃあ起きるから、、、抱かえておくれ」
はいはい、と喜悦滲む声で返しながら抱き抱え、布団から引きぬく。
しかし今度はコアラのように抱きついてきて一向に離れなくなってしまい、仕方がないので抱きなおして再び廊下を帰りだす。
これはおヒイ様と"私"のよくある1日である。
「ようやく帰りおったか。あの足早地蔵めが。毎年毎年日が空ける前に人の家に訪問しおってからに」
「まあ、そのように行っては行けませんよ。あの方とてこれからホウボウを練り歩かなければ行けませんからね。あの方の場合は、是とすれど苦に思うこともなさそうですけどね」
目の前でそう話すヒナ。
この山一体を納める鬼神として、この地域に陽の光が差し込む前に挨拶回りを受けるのは恒例行事となっている。
前日までの酒盛りや乱痴気騒ぎの収め訳、果てには神主からの大祓詞を受けたりなど忙しなく、このように不機嫌さが露骨に出ている。
今は鬱憤を晴らすかのように御節を食べているが、昔はものすごい悪鬼で目につく人間を祟り回っていたらしい。
正直こんなに可愛い見た目をしているから忘れそうになるが、実際に生贄を捧げられては都度育てて送り主に押し付け返していたようだ。そして生贄になった人間は大概が自分を差し出した人間皆殺しにしていたらしい。
麓の町に行くと悪鬼伝承としてしっかりと残っているし、彼女のそばにいるだけで悪感情が肥大化していくらしいので、悪意を育てて送り返してやったと笑っていた。
そんな彼女だが今はお腹も満たされたのか箸を置きこちらにもたれかかってきた。
「ほんにユズルの手料理は美味しいの。なんぞつこうとるんか」
「毎日かわらないでしょうに。まあ強いて言うなら食べてくれる人の為を思って作っているくらいですかね」
「ん〜、ほんにお前はいじらしいの。儂を喜ばせてどうしたいんじゃ!」
そして彼女にツバキと名付けられた私は128代目の生贄にして最後の生贄として伝承にも残っている丁稚です。
伝承では鬼の怒りをおさめただとか、特別な法力で封印したなんて書かれていますが、その実一目惚れからの神隠しにあった正真正銘の生贄です。
なんやかんや127代目までは町に返されて「鬼憑き」として暴れ回ったり、「御仏に助けられた」として祭り上げられてるんですが、私はしっかりと隠されています。
お恥ずかしながらこの醜い容姿がいたく心をくすぐったらしくトントン拍子で婚姻の契りまで果たしましたね。
「私を攫ったのは貴方でしょうに。ヒナがしたい事をただ言ってくれればできる限りを尽くしますよ」
「じゃあ今すぐ抱きしめるがよい。儂は寒いのは好かんのじゃ!」
さて、このまま1日互いに抱きしめあってのんびりと過ごすのもいいですが、せっかくの新年ですので下で行われているお祭りにでも行きませんか?
私、昔っからお祭りだとか花火大会だとかの催し、好きなんですよね。
「というわけでヒナ、お祭りに行きましょう!私は御籤を引いてカステラが食べたいです」
「ふぬぅ。。まあでえとみたいなもんじゃし、良しとするか。ほれ、ちょっと待っとれ。着替えて来るでな」
彼女は真っ赤な着物に金色の帯が好みですからね。きっとその装いでしょう。私は私で髪を結わえるとしますか。。
ヒナが長髪がいいと伸ばさせてくるのはいいのですが、普段は面倒でひとつ結んでいます。しかし私は知っているのです。彼女が団子のようにまとめた髪型に簪を刺しているのが好きなことを。
「待たせたの。それじゃあいこ、うか、、、のおぉ?」
「ええ、行きましょう。お手を拝借」
「ええのぉ!やはりツバキの髪は白くて綺麗じゃから伸ばしている方がええが、綺麗に結わえると一段と映えるの!」
「ヒナも綺麗ですよ。しかし短く肩で切りそろえていますが、髪の毛は伸ばさないんですか?」
「ふぬぅ、そうじゃな。儂も伸ばしてもええが力を解放すると自動で髪も伸びるでな。そうなるともう大変じゃ。かと言って常に力を出ておるとそれはそれでつかれるしのお」
「やはり信仰が減っているからですか、、、?」
「そうじゃの。もう信仰なんぞほとんど残っておらん。いくら祟り神といえど所詮は信仰をガワに肉を得とるだけじゃからな。まあ儂はおまえがおる限り、弱くはならんから心配するでない」
人にバレない様に人に化けたヒナと手を繋ぎ山道を降っていく。
足音だけが響く静かな山道も次第に終わりが見えてきて、車のエンジン音と人間の匂いに包まれた道路へと降り立つ。
ホッと人心地。
ツバキは昔から異形のもの(特に存在するだけで他者に影響を与えたるタイプ)の目を引くため、こうしてヒナとくっついていないとすぐに連れ去られてしまう。
というのもツバキは常に"癒す"ナニカを生み出し続けるので孤独を抱えたものには無意識のうちに引き寄せられて行くのである。
ある時は渡り鴉に肩を掴まれて空の旅に案内され。(一瞬目を離した隙に攫われた。ヒナがブチ切れながら石を投げて打ち落とした)
またある時は化け狸にたらふく酒を飲まされ持ち帰りにあい(ヒナはツバキの魂と契約して式にしているので居場所がわかる。当然ブチ切れてボコボコに殴った)
さらにある時は旅行先の山神が一目惚れしたと押しかけてきたり(ヒナが追い返したが、不定期に結界付近にやってきて外に出そうとあれこれ画策している。)
山道こそ最も警戒すべき場所なので、ヒナは気が気ではない。それはそれとして襲ってきたら喰い殺してやる気概だし、実際毎年何匹か喰い殺している。
信仰が衰えたとはいえ、余程大物が来ない限りは蹴散らすつもりだし、大物が来ても自分の領域内に入れば負ける気は無いのでヒナも別段止めたりはしないのだが。
「今年は人が多いですね。何かやっているのでしょうか?」
「寒い。あまりにも寒いのじゃ。それにここは人の念が多くて鬱陶しいのぉ。」
(それにチクチクと嫌味ったらしく威嚇してきおってからに。儂だってお前みたいな青二才と顔合わせたくなんぞないわ!ツバキがおらなんだら捻り潰してやるのに)
(うっさいなぁ。少年趣味のクソババアが。こっちだって可愛い子供たちが居なければすぐにでもけりだしてやりっつーの。さっさと出てけちんちくりんが)
「ダメですよ、ヒナ。あまりに石切様に失礼なことをしては。我々は勝手に踏み入ってる側なのですから」
ヒナはここの神とすこぶる仲が悪かった。
古くからここに住まう祟り神と、新しく(1200年ほど前)越してきた悪縁切りの神とでは仲良くなれるわけもないのだが。
それよりも自分のことを少年趣味ということが気に入らなかった。本人的には至って真面目に愛している(当時1×××歳と7歳)のだから、そのようなことを言われる趣味は無いのだ。ないったら無い。ただ自分を見ても恐れずに、なんだったら「全て好きにしていいですよ(意訳)」などと言いながらふわふわした雰囲気を醸し出さええたら我慢できる方が少ないに決まっている。そう心の中で高らかに宣言した。
ツバキは少し言い回しや言葉選びこそ変態チックだが、1000年以上一緒にいるのであれば普段のことなど全てわかってしまうし覚えれてしまう。
ヒナはうなじが見える髪型にすれば露骨に視線が上に行くし、なんだったら顔を埋めて思いっきり呼吸もする。
簪や服などは全てヒナが買い与えたものであるし、家からは基本出さないので必然的に二人の世界で生きていくことになる。極めつけは当時6歳の村八分で虐められていた少年に名前を与え、大切に保護し、丁寧な刷り込みをしたおかげでツバキはヒナにされることを拒まない。
立派な光源氏(の原典)なのである。
社で参拝を済ませた二人は、それから何事もなく祭りを堪能した。それはもう堪能しすぎて、普段より人が多いことなど
「よりひっつく口実になって悪くない」程度に流してしまうほどに。
「あそこで人が溜まっているから普段より人の流れが悪いんですかね」
「焚きあげか、いいのう。あそこで温まって帰るとしよう」
焚きあげの周りには人が輪を成して温まっており、多くの人が立ち止まっている。
しかし火の手前で何やら占いのようなものを無料でやっているらしく、普段より人が多いのはコレに立ち寄った人が溜まっているからであった。
「不思議ですよね。御籤を引いて未来を見て、神様に良い未来を願って、その上でああやって人の手で未来を予見してもらっているのですから。今を生きる人と言うのは大変なのでしょうね」
「未来に対する不安なんぞ昔から変わりゃせんのじゃ。まあ今の世は、我々のような祟りの原因を別の要因で確立し、星の満ち干きを因果によるものでないと導き出し、明日の機構をも予見できるようになったのじゃからな。原因がない不安というのは、それはそれで恐ろしかろうよ」
「そういうものなのですかね」
どこか達観した物言いをするヒナを見ていて、なんだか胸の奥が締め付けられる気はしたツバキは彼女を胸の方に掻き抱く。
「おお?どうしたのじゃ?寂しくなったのか?愛いやつじゃの」
「今しがた寒くなってきたんですよ。それに貴方がいる私は不安など感じなくて幸せだなと。形のある幸せは逃がさないように知っっかりとどめておけと読みましたから」
しゃがむようにヒナを抱きしめるとやはり暖かく、なんとも面映ゆい気持ちになり少し抱きしめる力を強くする。
「そちらのお兄さん、良かったら貴方も占い、いかがですか?今日は次で最後にしますので無料で占いますよ」
どれくらい抱き合っていたのかは分からないが、気がつくとあれほどまで並んでいた人の輪はまばらとなり、占いの客もすっかり掃けてしまっていた。
ヒナの方をむくと行ってこいと言わんばかりの笑顔を向けられる。占いが終わったら帰ろうかと告げ、すぐそばにある椅子に腰掛ける。
「まずは手をお貸しください」
「はい」
「まあなんてスベスベとしているきめ細やかな手なんでしょうか。ずっと触っていたいぐらいですわ」
「そうですかね。そう言われると少し恥ずかしいですね」
少し肌に刺さる視線が鋭くなった気がする。
「そうですね。見えるのは、、、、白い着物を着た黒髪の乙女。良縁があなたを尋ねてやってくるでしょう。それ以外には、、、、大きな匣に鏡。ご自身を変える何かが起こります」
「あの、占いに手の甲をさすったりするのには何か意味が、、、」
「気にしないでください。こうすると浮かび上がってくる気がするのです」
ヒナが人差し指の側面を噛みだした。
「ああ、見えましたよ。これは、、刀、でしょうか。悪縁が断ち切られるんでしょうね。それにこれは雛人形でしょうか。将来は子宝に恵まれることでしょう」
「あ、あの。私はもういいので!ありがとうございました」
「そろそろ終わりですので。もう少しだけお付き合い下さい」
ヒナの周りに黒いモヤがうずまき出した。まずい。かなりまずい。あれは私が狛犬姉妹に求婚された以来久しく出てなかった嫉妬の渦。
「ふむふむ、なるほど。これは素晴らしい結果ですわ!ツバキ様。貴方は今後一生幸せになります。いや、致します!
どうぞ、私と結婚してくださいませ!」
占い師を名乗っていた老婆が私の名前を呼ぶと共に腕を胸元に引き寄せられ彼女に抱きとめられる。
はて、彼女は私よりだいぶ細く、ここまで女性的な乳房を持っていたのかと現実逃避しているとヒナの声にならない声が耳をつんざく。
「見ないと思ったらこんなところにおったんかこの性悪女め。はようツバキを離さんか」
「あら、小さくてどこにいたのか分かりませんでしたわ豆粒女。それとツバキ様は御自分の意思で私を選びましてよ。どうぞおひとりでお帰りになられては」
「どの口が言うとるんじゃきさんは。そのように顔を埋めさせたならツバキとて苦しかろうぞ。今ならその尻尾ブツ切りにして差し出したら許したらァ」
「まぁなんて品性のない野蛮なお方。あいにくと私これから婚礼の義を執り行うので帰りますわ」
連れさらわれては叶わないので反抗の意を込めて肩を叩く
「まあ、そんなに激しく私をお求めになられて。顔から炎がでてしまいますわ」
抵抗虚しく占い師に紛争していた彼女こと、葉桶ヶ山に住まう神、ヤツハケヌシ様にいっそうつ強く縛られて連れていかれる。
後ろから言葉にならない言葉を発しながらヒナが駆けつけてくるのでしばらくすると開放されるだろう。
この後にある熾烈な喧嘩をどうやって止めようかと、抵抗を諦め思考を集約させる。
これは私と「私、ヤツの優雅な!」ありふれた日常の一幕である。
ちなみにこの後ヒナに追いつかれたヤツハケヌシ様は、石切様が行司を行う無制限相撲で決着をつけることとなり、ヤツハケヌシ様に土をつけたヒナは向こう一年接触禁止令を出すことになるのであった。