そんな中、海の上では封印の神殿が帝国軍により破壊されようとしていた。止めるべく奮闘するカイム達だが、封印は破られてしまう。
ふと、カイム達に聞こえる子供の悲鳴の数が減ってくる。時間稼ぎに徹する帝国の艦隊に足止めされながらも、嫌な予感は膨れ上がってくる。
エンヴィの推測通りなら、犠牲にされている子供達は封印を破壊するためのもの。それがなくなるということは、封印を破壊し終わった……とも取れる。
その予想を肯定するかのように、帝国軍は撤退を始める。カイムは追撃しようとアンヘルに攻撃させるが、ギャラルは神殿へ向かうことを選択する。
「これは……」
神殿への入り口は開かれ、内部には人一人残ってはいない。そこにあるのは力を失った魔法陣だけ。
封印に詳しくないギャラルでさえ、もう破壊されてしまったのだと理解できる光景に膝から崩れ落ちる。
アリオーシュの蛮行も、封印の破壊も阻止することは出来なかった。あるのは静けさを取り戻し始める海だけ。やはり、自分の力では何も出来ないのだ。
「まだ封印は残されています。諦めるには早いと思いますよ」
「……そう、よね。うん!」
エンヴィの言葉にギャラルは立ち直る。正直口だけの慰めでしかないと思っていたエンヴィは、立ち直ったことに逆に驚く。
そんな彼女らに遅れて、3人の契約者も神殿に降りる。しかしアリオーシュは封印そのものに興味はないようで、きれい、きれい、きれいと呟いている。
「……封印は?」
「破壊されたようです」
レオナールの質問にエンヴィが答えた。レオナールは次々と帝国に封印を破壊されている事実に肩を落とす。
「封印を作るも人間、壊すも人間。愚かな独り遊びをいつまで続ける……?」
アンヘルの嫌味に、ギャラルはふと考える。なぜ封印を守るものと破壊するものの2つの勢力に分かれたのか、その理由を知らない。
またエンヴィはバカバカしいと感じるが、それは口に出さない。封印を作るのは人間だが、壊すのは神だ。決してこれは独り遊びではない。人間が神の独り遊びに興じるような種族であれば、こんなことは起きてはいない。
『フリアエは無事なのか?』
封印が次々と破壊されている様子に、カイムはフリアエの身が心配になる。一応七支刀とヴェルドレもいるが、どちらも護衛としては信用しきれない。
「心配するな。最終封印は無事だ。今のところ女神の悲鳴は伝わってこない……」
アンヘルの言葉にホッと胸をなでおろすカイム。そんな彼にギャラルが声をかけた。
「妹のことは心配なのよね?」
『当たり前だ。何を今更……』
「やっぱり、みんな家族のことは大切なんだ」
そう言うギャラルの顔は笑っていたが、どこかぎこちない笑みのように見えた。
封印の女神となった妹を案じ、両親の仇を討とうとするカイム。帝国に弟達を殺され、その帝国と戦うレオナール。子供を殺され癒えない傷を負ってしまったアリオーシュ。
形はどうあれみんな家族のことは大切なのだ。だがギャラルはその家族を知らない。仮に知っていたとしても、キル姫になるよりも前のことや、なってしばらくの間の記憶は残っていない。少しだけ寂しさを覚えていたのだ。
「ええ、弟達のためにも戦わねばなりません。また後手にまわることのないように、はやく砂漠へ戻りましょう!」
レオナールの提案に、それぞれ動き出す。破壊された神殿を後に、砂漠へ向かうのだった。