第1節 迷路
ギャラルが目を開くと、そこは見知らぬ要塞の中だった。周りを見渡すと、近くにエンヴィの姿が見える。
だが同時に帝国兵も次々と襲いかかってくる。カイムから借りた剣、古の覇王を振り兵を蹴散らしながらエンヴィの元へ向かう。
「エンヴィ!」
大声でエンヴィの名を呼ぶと、彼女の目がこちらを捉える。お互い合流するために武器を振り、一段落したところで顔を合わせた。
「ここは何処なの?まだ海上の要塞?」
「多分ですが空中要塞です。カイム達は別の場所に転移したみたいですね」
海上要塞に侵入したのは、カイム、レオナール、セエレ、ギャラル、エンヴィの五人だ。そして五人ともあの魔法陣に入ったはず。
今この場にはいないが、彼らも空中要塞の内部にいるはずだと推測する。
「私達が近くにいたのは幸運です。早くみんなを探しましょう」
「ええ。特にセエレは危ないわ」
ゴーレムと契約したとて所詮は子供。武器の扱いに長けている訳でもないし、力も極端に跳ね上がっていることもない。
ゴーレムを呼び出せるので、今もゴーレムがセエレを守ってはいるだろうが危険なことには違いない。カイムとレオナールは自衛が出来ないほど弱くもないし、契約者同士なので"声"で連絡も取れるはずだ。
"声"が使えるのはセエレも同じだが、動けるかどうかも分からない。
エンヴィが前衛で、ギャラルがサポートをしつつ戦闘。そういう陣形を取り迫る帝国兵の波を払う。敵の本拠地とも言える場所なだけあり、敵の数も練度も今までとは桁違いだ。
二人が要塞の中を進んでいくと、何かの衝突音のようなものが響く。帝国兵もその音がする方向へ向かう者も多い。そちらにゴーレムがいると考え、帝国兵を薙ぎ払い進んでいく。
「コゴーッ。セエレ、マモル」
再び激しい衝撃が起こる。更にギャラルにはゴーレムの声も聞こえた。
「ゴーレムがいるわ。きっとセエレも」
エンヴィはコクリと頷くと、黒奏槍を床に突き刺す。氷は前方へと広がっていき、強引に道を開いていく。
エンヴィが作った道をギャラルが駆け抜けていくと、そこには予想通りゴーレムと、側にセエレの姿が。エンヴィも続いてやってくると、気づいたセエレが二人に声をかける。
「ギャラルにエンヴィ!二人共大丈夫だった?」
エンヴィがむっとして反論しようとするが、ギャラルがそれを止める。
「大丈夫よ、ありがとう。セエレは勇者だもんね?」
「うん、二人のことも僕が守るからね!」
「………守られてばかりに見えますけどね」
納得の行かないエンヴィは小声で毒づく。実際、ゴーレムはともかくセエレ自身はまともに戦えてないのにこの態度なので、こういう態度になるのもは仕方ない。
「セエレは二人の"声"がわかるよね?」
「カイムもレオナールも無事だよ。先に下に降りただって」
ならばこの階に用はない。ゴーレム、ギャラル、エンヴィの三人でセエレを守る形で進んでいく。ゴーレムが盾となり、隙間からのエンヴィの鋭い刺突とギャラルの援護で道は開かれていく。
下りの階段を発見し降りていき、続いてカイム達を探す。幸い"声"でお互いの居場所を確認できるので、合流するのにそこまで時間はかからなかった。
「セエレ、無事でしたか?」
「平気だよ!」
互いの無事は報告はしていたが、それでも心配だったレオナールがセエレへ駆け寄る。
彼がいるなら大丈夫だろうと、ギャラルは彼らの側を離れカイムの元へ。
「カイムは……無事のようね」
『当たり前だ。そんなことよりフリアエを助けなければ』
全員揃い、盤石の体制でカイム達は要塞内を駆け回る。もはや帝国兵など敵ではない、圧倒的な戦力の前に為す術もなく散っていくだけだ。
だからこそギャラルは耳を立て、次の階段がある場所を探そうとしていた。そんなギャラルに聞こえてきたのは道を示す足音などではなく、歌い声。
「ラララ、ララ、ララララ……」
それも幼い少女の声。少なくともフリアエの声ではない。
……そこで気がつく。セエレの妹が天使の教会にいるということ、そしてその人物が司教ということ。
「待ってカイム、司教の声がするわ」
「司教……マナですか?」
「マナがいるの!?」
カイムもフリアエの元に向かいたいとは思ったが、全ての元凶がいるならそっちを捕まえたら全てが解決するだろうと考えた。エンヴィも特に断る理由もないし、フリアエ探しよりも司教を優先することになった。
ギャラルの案内に従っていく先には、赤い服をまとった少女が歌いながらくるくると回っていた。赤い少女が……司教マナが。