歌うようにつぶやきながら、空間移動を続けるマナを要塞奥地に追い詰めろ!
「この"声"……そんな!」
マナを歌を聞いたセエレは、その声の主がマナであると確信する。エンヴィが言っていたことは本当なのだとショックを受ける。
しかし、進んだ先にはマナはいない。"声"もまた遠くから聞こえてくる。
「空間転移……やはり神の力でしょうか」
「この世界では、子供が空間転移できるのが常識ですか?」
エンヴィの、全ての黒幕は神であるという主張を飲み込みきれていなかったレオナールも、その事実を受け入れざるを得ない。
まだ疑っていたのかと呆れ気味のエンヴィは嫌味を吐くが、どうやらそれどころではなさそうだと気がつく。
先程まで司教の姿があった部屋、今自分たちがいるこの部屋を囲うように帝国兵が群がっている。誘い込むための罠だっただろうか。
「セエレ、マモル」
ゴーレムが我先にと進み巨大な拳で粉砕する。そうして空いた隊列の穴へカイムが飛び込み剣を振るう。
エンヴィも合わせて突っ込んでいき、魔法が得意な二人は後方から援護。戦力が整っているのを確認したからか、レオナールの懐から妖精が姿を現す。
「おいおい、大事な大事なセエレちゃんを守るのに必死だな?」
「契約者とはいえ子供です。守らねば……」
「そうだよな!大切な"子供"何だからしっかり守れヨ!ほら、ほら、帝国兵がやってくるぞ、苦手な赤い鎧のやつが突破しちゃうぞ!」
ここぞと楽しそうに煽り始める妖精に惑わされるレオナールだが、隙を見つけたギャラルがひょいっと隣に現れ、ガシッと鷲掴みにした。
「おいおい、オレっち殺したらレオナールも死んじまうぞ?」
「うるさい」
「ふげっ」
デコピンをお見舞いして、レオナールへ返す。すみません……と申し訳無さそうにするが、なんかもういい加減慣れてしまったので、いいわよと軽く流してから、振り向きながら迫っていた帝国兵を一刀両断する。
そうこうしている間に包囲網も崩れた。マナを追うために空いた道へカイム達は駆け出す。
「ギャラル、彼女の歌は聞こえますか?」
「聞いてみるから、帝国兵はお願い!」
カイムとエンヴィが自然とギャラルの側に行き、レオナールはセエレを守る形で戦う。
無尽蔵に湧く帝国兵共を狩るのはきりがない。司教を捕まえるのが先だ。
『天使は笑わない、天使はうつむかない、天使は病まない……ラララ』
声を辿り、またマナを発見したカイム達が彼女のいる部屋へ突撃するが、その姿は消えてしまう。
また空間転移を使ったのだ。更に待ち構えている帝国兵共を、全て相手にするわけにもいかないので手近な相手だけ斬り飛ばし再び走り出す。
『ララララ、ラララ、ララ、天使、ラ!』
始まったのは、鬼ごっこかかくれんぼか……姿を見つけたと思えば転移で要塞内の別の地点へ消えてしまう。
いつまでも捕まえられない現状に、一番焦りを感じ始めていたのはカイムだった。早くフリアエも助けに行かないといけないというのに、こうも遊ばれているとは……
『鬼さん、こちら!鬼さん、こちら!』
マナも分かった上でやっているのだろう、いつまでも捕まえられず彷徨うカイム達を挑発し始める。
しかし、カイム達は彷徨いながらも確実に帝国兵の数を減らしているし、要塞の構造も覚えてきていた。
「どうしてマナがこんなこと」
「分かりません。ですが、知るためにも彼女を捕らえねば」
行った場所がどこか、まだ探していないところはどこか。足止めが減っているのも相まって、司教を探す足は早まっていく。
『お母さんといっしょ!おっかああああさっんーーーーっ!!』
「!?」
突然の咆哮のような叫び声に驚き、ギャラルの足が少し止まる。しかし、逆に居場所を教えているようなものでもあった。
その態度が気になったカイムがギャラルへ寄るが、大丈夫と言ってまた走り出す。
要塞を探しに探してまだ手を付けていない端の部屋、そこに向かえば確かに司教マナの姿はそこにあった。
「見つかっちゃった!ララララ……」
ついに追い込まれてしまったマナだったが、カイム達を小馬鹿にするような笑みを止めることはなかった。