ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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神の使いである司教マナの死と共に、この世界の理の全てが音を立てて崩れ落ちようとしていた。
空からは異形の"敵"が舞い降り破壊の宴を開始する。

そして"敵"で埋め尽くされた帝都の空にカイムは舞い上がった。血を吐き、最後まで足掻き続けるために。


第十二章 混沌
第1節 堕胎


 カイム達は帝都へ向かった。ヴェルドレの"声"で、彼らが帝都へと進軍していることを聞いていたからだ。

 帝都に入ってすぐのところで、カイム達は合流する。お互い何があったのかを改めて伝えようとして、一同は固まった。

 赤い空にかかる分厚い雲を割るように光が溢れ出す。それは幾つも現れていく。その光から何かがゆっくりと降りてくる。

 ……赤子だ。それも人間の。いや、そんなはずはないのだ。地上から人間の赤子だと認識できるということは、それだけの巨体なのだ。

 胎内から子供が生まれるように、頭からゆっくりと降り注ぐ。世に生を得た喜びを分かち合うかのように、"敵"は産声を上げる。

 "敵"はそのまま空を飛び、帝都中へ広がっていく。そうして各地へと降り立っていく。

 

「この異常な光景!いったいどうなっているのだ!?」

 

 アンヘルが叫ぶ。それはこの場にいる……アリオーシュを除く全員が思っていることだった。

 カイムは再びアンヘルの背に乗り、ギャラルへと手を伸ばす。その意味を理解したギャラルもアンヘルへ急いで乗り、彼らは空へと飛翔した。

 

 空に上がり徘徊している"敵"は、何れもアンヘルよりも大きい。近くで見て改めてその存在感と気持ち悪さを実感させられる。

 "敵"は目の前に現れた敵を倒すべく、口から魔力弾を放つ。ゆっくりと、だがこちらを確実に狙って飛んでくる弾をカイムは剣で斬ろうとするが、ギャラルが止める。

 

「待って、あの弾から異様な魔力を感じるわ」

「ああ。我とてあれを食らって生き延びられるか……!」

 

 その弾が接近してきて、カイムもまた肌で感じる。今まで見てきたものとは一線を画すものだと。

 

「司教を倒せば終わり……ではなかったのか?」

 

 残された地上の者たちの中で、ヴェルドレが呟く。再び視線はエンヴィへと注がれるが、おぞましき者共をを見る彼女の目から、全てを察する。

 

「あの赤子は何者?……まるで天使のようだ……」

「あれが、天使……ですか?」

 

 呆然と呟くヴェルドレの言葉に反応する七支刀。なるほど神々しく見えるといえば聞こえはいいかもしれないが、アレはそんなものではない。

 何が起きているのか、何をすればいいのか。彼ら彼女らが固まっている間にも、赤子は生を得て地獄を作り出す。

 

「私は今、目が見えないことを救いに感じています……」

「これが、神のやり方ですか……?」

「……僕達……許されないのかな……」

 

 絶望と混乱が生じる戦場。彼の悲鳴が全てを物語っていた。

 

「世界はどうなってしまうのだ?誰か!誰か教えてくれっ!」

 

 

 上空。アンヘルの炎が、カイムの魔法が、ギャラルの放つ魔力が、"敵"の放つ弾が、互いの命を奪おうと飛び交っていた。

 "敵"は生まれたてだからなのか、幸い一体辺りは大して固くなく、こちらの攻撃が当たるたびに悲鳴を上げ地上へと堕ちていく。

 しかし問題はその数だ。この周囲を見るだけでも、百はいるだろう。

 

「退くな!理由はわからぬ。我の本能がそう告げている」

 

 それは地上で足を止めてしまっている仲間への叱咤か、背中にいる戦友達への激勵か、恐怖する自身を奮い立たせるためか。アンヘルが発した声は、僅かながらも勇気を振り絞る活力となる。

 

「……何なのよ、この赤子は!」

 

 無数の敵と戦うことそのものへの耐性は付いている。ここまでの道中だってずっとそうだった。

 しかし強大な力を持つこの赤子達は、その比ではない。その力も数も異様さも、何もかもが。

 

「もはや我らの理解を越えた世界。どうなっているのか、分かるのは神だけであろう」

 

 エンヴィの言葉が本当であるのならば、全ての元凶が神だと言うのなら。この事態を引き起こしたのはきっと神なのだろう。

 何が起きているか混乱が続いている中で、ただ倒すべき相手が、元凶がいると考えればまだ気楽なものだった。

 墜とせど生まれる"敵"は消えない。……戦いは続く。

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