ただ目の前の"敵"を倒すために、彼らは走り始める。地上に降り立つ"敵"だけでなく、この地で散っていったであろう帝国兵もアンデッドナイトとして蘇り再び地に足を付ける。
「どうせ一度死んだ身……いつ何処で朽ち果てようとも悔いはありません」
「そんなこと言わないでください。生き延びれるのなら、それが一番ではないですか!」
覚悟を決めたレオナールと、まだ迷いの残る七支刀。魔法がアンデッドナイトを消し飛ばし、その間を駆け抜け"敵"へ刃を向ける。
「……死んだ身というのなら、私だってそうです」
「ゴゴーッ、シヌ、カナシイ」
ゴーレムの拳が眼前の骸骨共を粉砕し、ゴーレムの腕を蹴りエンヴィが"敵"へと肉薄する。
七支刀の刃が"敵"を裂き、エンヴィの黒奏槍が貫く。しかし僅かな違和感を覚える。
更にレオナールが"敵"へ向けて魔法を放つが、光が"敵"へ触れる前に消滅してしまう。一瞬だけだが、光る防壁のようなものが見えた。
「魔法が効かない?」
「レオナール様は骸骨兵の相手をお願いします。赤子は私達が!」
七支刀が、エンヴィが、ゴーレムが、赤子を斬り貫き潰し殺すたびに悲鳴が上がる。何もかもが異様なこの空間の中で、更に彼らの心を蝕むばかりだ。
「ク・アボーイル・レヴェ・ヴォーレー・セレ・ヴェー
イーレー」
ヴェルドレが必死になっては呪文を唱え続ける。それは抵抗するためというより、神に祈るためのような。いや、祈るべき相手は神だろうか。一体何に縋ればよいのか。
抵抗を続ける彼らの元へ、赤いドラゴンの影が降りてくる。そこから飛び降りる二人の人影。魔法が効かなくなった"敵"への空中戦は限界があると一度地上へと戻ってきたのだ。
「もうおぬしを引き止めるものは何もない。すべてを焼く尽くしてやろうぞ!」
降りてきたカイムには、笑みが浮かんでいた。それはいつも通りの、殺戮への喜びが見て取れる笑み。
だがそれを否定し引き止める者などいない。むしろこの状況ならばありがたいまである。
「殺すことで生きる意味を見出すおぬしこそ、この世界
にふさわしい男かも知れぬな」
「……頼りにしてるわよ、カイム!」
"敵"の放つ魔力を避けるたびに、地上が抉られていく。ただ闇雲に戦うだけでは追い詰められるだけだと、彼らの足は自然と帝都の中央に向けられていく。
アンヘルの炎とレオナールの魔法がアンデッドナイトを蹴散らし、"敵"の攻撃を躱しながら肉薄し堕としていく。一つまた一つと赤子の断末魔があがる。
何が正しいのか何が間違っているのか、普通の倫理観など置いてけぼりにされてこの異常な世界で彼らは戦い続ける。
丘陵地帯での戦いに生き残ったのだろう連合兵が帝都へと向かうが、怯え竦み、勇気を振り絞り進めば"敵"の餌食となる。
この異様な戦場で生き残り進めるのは、奇しくも異常な集団であるカイム達だけなのだ。
「焼ける匂いがするわ。くっっくくくくく……あっははははははははは!」
そんな世界の行末になど微塵も興味のないアリオーシュも、気分を高揚させ殺戮へと飛び込んでいく。
「ギャラルが……ギャラルなら、出来るかしら」
「どうした?何か策でもあるのか」
一つ、ギャラルの中に作戦が浮かんでいた。しかしそれは安易に実行できるものでもないし、そもそも現状を突破しなければいけないものだ。
迷いながら発された呟きに、アンヘルは問いかけるがすぐには答えは返ってこない。
「……少し考えさせて」
「まずは突破しなければいけませんね。このまま無駄死にするくらいなら」
「世界が悲鳴に包まれています……早くあの忌まわしき臭いの怪物を殺さなくては!」
カイム達は進んでいく。しかし状況は変わるのだった。アリオーシュがカイム達から離れていくことに、誰かが早く気がつければそうはならなかったのかもしれない。