ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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圧倒的な数の"敵"の前にアリオーシュが倒され、レオナールもまたカイム達に道を作るべく爆死した。

彼らの死に後押しされ、ギャラルホルンもまた覚悟を決める。世界を守るための残された可能性に賭けるべく、皆に作戦を提案した。


第4節 最後の希望

「ねえ、レオナールは死んじゃったの?僕のせい?」

 

 進んでいく中で、セエレが呟く。それは誰に向けて放たれた言葉だろうか。

 ギャラルは最後まで持っていた悩みを、ようやく振り切った。レオナールの覚悟がギャラルへと新しい風を運んだのだ。

 

「みんな、少し話があるの」

「ようやく腹をくくったか?して、何をするつもりだ」

「……世界を終わらせるわ」

 

 神器ギャラルホルンを握りしめ、言う。これがギャラルにとって出来る、唯一にして最大の作戦なのだ。

 

「終わらせるだと?血迷ったか」

「いいえ。"敵"の侵食を受けている一帯だけに限定してするの」

「馬鹿な、そんなことが出来るのか?」

 

 突拍子もない作戦に、ヴェルドレは呆れたような困惑したような、なんとも言えない調子で追及する。

 ギャラルホルンというキル姫の強さは散々見てきたが、そんな世界を変えるようなことを為せるとは思えない。

 

「ギャラルのキラーズ、ギャラルホルンはラグナロクの始まりを告げたと言うわ。それは戦いの始まりであり、世界の終わりでもある。そういう解釈が出来るキラーズだからこそ、可能性はあるわ」

「また神話か。寓話に頼らなければ何もできないとは、人類とは……もろいな」

 

 アンヘルの言葉はいつも通り人類を侮蔑するような言い方だったが、その優しい慈しむような声音からはそうとは聞き取れなかった。

 

「それに、ギャラルは此岸と彼岸を繋げたことだってあるのよ。それくらいできるわ」

「そうか、それしか策がないのなら賭けようぞ。ただその策、ここいら一帯を終わらせるということは……」

 

 アンヘルは言いにくそうにそこで止める。ギャラルが限界までこの作戦をすることに悩み続けていた理由を察したからだ。

 この周囲一帯を終わらせる、つまり死なせるということは共にいる自分たちも、更にはギャラル本人も例外なく死ぬのだろうということだ。

 

「ならば、私はここに残ります」

「エンヴィ……」

「私も一度は死んだ身です。存在しない者に阻まれるなんていい気味です」

 

 作戦が成功しようがしまいが死ぬからか、最初から生き残るつもりなどなかったのか。エンヴィが笑みを浮かべてそう言う。

 その視線の先は大量の"敵"。二人の死によって稼がれた時間も失われつつある。だから再び時間を稼ごうと考えたのだ。

 

「そんな!エンヴィまでいなくなっちゃうの?」

「……大丈夫ですよ、セエレ様。わたくしも残りますから」

 

 静かに見つめていた七支刀の発言に、エンヴィは驚き振り返る。

 

「生きて、エンヴィも一緒にラグナロク大陸に行くと約束したではないですか」

「……そう」

 

 この大量の"敵"相手に死ななかったとして、どうせ死ぬのだ。その約束は絶対に果たせないものだと分かっている上で言っているのだ。

 七支刀はいつも通りの柔らかな笑みを浮かべているようで、その目は覚悟に満ち溢れていた。死地へ向かう自分へ生き残ると言い聞かせるためか、渋るセエレの背中を押すためか。

 それを察したエンヴィも、余計なことは言わないようにした。

 

「ありがとう」

 

 どう転んでも生きて残る道はないとはいえ、自ら殿を務めるのには勇気がいるはずだ。

 二人に感謝の気持ちを伝えると、ああそうだとエンヴィはもう一度ギャラルを見て、言い忘れていたことを伝えた。

 

「あなたの強さも優しさも、羨ましかったですよ。ただそんなあなたを支えられるのがカイムだけだというのは、妬ましいですが」

 

 ギャラルからカイムへと視線を移す。カイムは、時々エンヴィから感じていた視線の正体をようやく知った。

 そんな嫉妬の感情への興味はないし、そもそもそんなに妬ましいことか?と理解は全くできなかったが。

 

「さあ、行ってください!ギャラルを最後まで、守ってあげてください!」

『ああ。言われなくても守るさ』

 

 ただ、エンヴィの残した想いを受け取り頷く。もうお互い残す言葉はないと、稼ぐ時間を無駄にもしないために二人を置いて母体へと走っていった。

 迫る無数の"敵"を前に、二人は武器へ全ての力を込める。生き残るための戦いではなく、時間を稼ぐための戦いだから。

 

「……でも、良かったのですか?ついていけば、帰れた可能性はありました」

「アリオーシュ様やレオナール様の犠牲を踏み台にして逃げるつもりはありません。それに、ギャラルホルン様もエンヴィ様も、皆が立ち向かうと決めたのです。……それに、待ってる戦いのほうが得意ですからね」

 

 そう語る七支刀に、後悔の表情はなかった。

 神器の刀身が、激しく回転を始める。風を巻き込み、激しいエネルギーの嵐が生まれていく。神器を天に掲げると、まるで天変地異でも起きたかのように、とてつもない嵐が天を裂く。

 エンヴィもまた、悪魔の血の力を全て解放し黒奏槍込めていく。赤い光が槍を包んでいき、生物のように脈打ち始めていく。

 二つの強大なエネルギーへと、それでも臆さずただ捕食するために集まってくる"敵"へ、ただ一体でも多く巻き込むために引き付ける。

 二人を丸呑みしようと、その巨大な口が開かれて眼前へ迫るその瞬間、七支刀は神器を振り下ろす。そしてその嵐の中へ、エンヴィは黒奏槍を投げ込む。二つの力が混じり合い、赤黒いエネルギーをまとった嵐は、迫る敵全てを破壊した。

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