ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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巨大化し、今にも世界を飲み込もうとする"敵"
終わりゆく世界を前に、カイム達は最期の戦いを仕掛ける。

全てを覚悟するギャラルにカイム達は最期の希望を託す。
終焉の力を宿したキル姫を乗せ、ドラゴンが"敵"に向けて飛び立った。


第6節 終焉

 二人を背に載せた赤いドラゴンは、雄大な翼を広げ真紅の空へと飛び立つ。待ち受けるは無数の赤子と母体。背後の赤子をゴーレムが止めている間に、少しでも進むためにと全速力で空を漕ぐ。

 彼らの間に言葉はない。思い残すことはないから。例え成功しようが失敗しようが待つのは死だ。世界が滅びるかどうかの違いだけであり、カイムとアンヘルもそれを理解した上で付き合っているのだ。これしか世界を救う道はないから、そうする以外の選択肢などない。

 アンヘルを止めるべく、赤子は口を開く数えきれないほどの魔力弾を飛ばす。ドラゴンの紅蓮の炎が魔力弾と相殺されるが、それでも膨大な数の魔力弾を撃ち落とせるほど無尽蔵に撃てるわけではない。

 カイムも剣を抜き落としきれない弾を弾いていく。弾く度に剣は傷つき、最後には折れてしまうが新たな剣を抜き再び振るう。最期の戦いなのだから、もう遠慮などいらない。

 ギャラルはただ母体を見つめ、静かにその時を待つ。ギャラルホルンというキラーズの全てを解放するのだ、道中で中途半端に力を使うわけにはいかない。

 膨張していくお腹を支えきれないのか、母体は地に伏せる。仰向けのまま巨大な腹を広げたままだ。降りるならその腹の上が一番だろうとアンヘルは目星をつける。

 カイムはふと背後を見ると、"敵"が追いかけてきている。セエレの"声"も感じない。足止めも終わったのだろう、次々と赤子はその口を大きく開き追いかけてくる。弾を撃ってこないのは幸いだろうか。

 

『追いつかれるぞ!』

「我の翼ではここまでか……?」

 

 弾数が減っていくが、同時に迫ってくる赤子の数が増えていく。背後からのはまだいい、眼前に迫ってくる"敵"は壁となっていく。このままでは辿り着けるかさえ怪しい。

 もう、彼女を母体へ送り届けるのはここまでだろう。そう判断したアンヘルは、最期の言葉を遺し全てを託した。

 

「行け!ギャラルホルン!今度こそ、お前の力で世界を救うのだ!!」

 

 もうアンヘルの巨体では通れないだろう、"敵"の隙間目掛けてギャラルは背中から飛び出した。

 少女の影が見えなくなっていく。無事に辿り着けるだろうかと心配しそうになるが、それも不要だと判断する。ギャラルホルンはやり遂げる、絶対に。

 その確信と共に、大口を開いて迫る赤子の群れへと焦点を戻した。

 

 ギャラルは"敵"の群れから飛び出し、もはや原型が分からないくらい膨らんだ母体へと飛んでいく。

 ギャラルの小さな身体よりも、ドラゴンの大きな身体をお気に召したのか誰もギャラルを追ってこない。代わりに聞こえてるのか、ドラゴンの断末魔。アンヘルとカイムもまた、ギャラルのために、世界のために命を落としたのだ。

 勢いのまま母体へと迫り、その丸い腹の上にギャラルは落ちていく。そのまま腹のてっぺんへと降り立ち、神器ギャラルホルンを取り出す。

 祈りと共に、全てのキラーズの力を出し演奏する。一定の区域だけに効果を及ばせるというのは、ただ世界を終焉に導くのとは難しさが違う。全力を出しながらも繊細さを求められる難解な業だったが、彼女の心の中は不思議と穏やかだった。

 重々しいギャラルホルンの音が、帝都を中心に世界へと響く。人間を滅ぼすべく蹂躙していた"敵"も、ただ操られるままに戦っていたアンデッドナイトも、最後まで抵抗を続けていた連合兵も、ただ震えて座っているヴェルドレさえ、その不思議な音色に立ち止まる。

 母体の周囲にいた"敵"は非常事態だと理解し、アンヘルを貪るのをやめ母親の元へ帰ろうとする。腹の上に立つ脅威を食らうべく進んでいく"敵"は、しかし辿り着くことはなかった。

 次々と上がる悲鳴。理解のできない、常軌を逸した現象。ただ過程を全て飛び越えて、"敵"は死んでいく。それは不死身のアンデッドナイトでさえも例外ではない。笛の音の及ぶ、全ての範囲で同じ異変が起き始めた。

 それは生命体に限らず起きていった。"敵"に捨てられ落ちていくドラゴンの亡骸も、最後まで少年を守るべく戦ったゴーレムも、宿主をなくしたキラーズの武器さえも、帝都の街も人も草木も、例外なく死へと飲み込まれていく。

 

「……成功、したのね」

 

 それは、鳴らしているギャラル自身も例外ではない。成功したという喜びと共に、力が失われていく身体。母体の腹の上に倒れ込んでしまう。

 鳴らすものを失ったギャラルホルンの音は止まる。しかし世界に起きた変化は止まらない。母体も例外ではなく、その身体は崩壊を始めていく。

 

「やったよ、カイム」

 

 眠りへと誘われるように、ギャラルは目を閉じる。その中には、これまで共に戦ってきた者達の姿が浮かんでは消える。

 崩壊する母体の腹からは、集めていた"おおいなる時間"が解き放たれた。凝縮された時間は空へと解き放たれ、巨大な渦を作る。時間という形ないものが解き放たれた結果、空は滅茶苦茶に輝いていく。

 

「虹……」

 

 ギャラルホルンは、手を伸ばす。少女にとって一番好きな景色は、虹だった。美しくも禍々しい虹へと手を伸ばしながら、崩壊する"敵"の中へと消えていった。

 

 

 the girl sees a rainbow in Demise

 

 

 The power of demise will stop the broken clock and save the world

《終焉の力によって壊れた時計は破壊され世界は救われるのだろう》

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