ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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僕、セエレ。

みんな僕の妹のマナを探しにこんな谷まで来てくれたんだ。ありがとう!でも本当はマナはお母さんに……う、ううん。きっと見つかると思うよ!きっと!


セエレの祈
第1節 岩の道


 マナがいなくなったという谷へやってきたカイム達。しかしセエレはテンションが上がっているようで、スキップしながら進んでいく。

 カイム達から少し離れていっていることに気がついたレオナールが声をかける。

 

「セエレ、ふざけているとあぶないですよ」

「ごめんなさい……でも僕、本当に嬉しいんだ!みんな、僕の妹をさがすためにここまで来てくれて、ありがとう!」

 

 随分なご機嫌なのか、いつもより早口でまくしたてるセエレの様子に、明らかに苛ついた様子で妖精が口を開く。

 

「なあなあ、無邪気でカワイイぼっちゃんよぉ!エルフにいっぺん食われてきてください。マジで!」

「妖精様、冗談でもそんなことは言ってはダメです」

「なんだよ、胸以外誇るとこのないキル姫さんよぉ?今のが冗談に聞こえるか?」

「むっ、胸……!?」

 

 苛ついてるだけあって、いつもよりスラスラと暴言が吐き出される。胸以外誇るとこのないキル姫こと七支刀は、顔を真っ赤にして停止してしまう。そして、残りの二人のキル姫もそこはカバーしてくれない。理由は言わずもがな。

 因みに、妖精が言ったエルフというのは当然アリオーシュのことである。隙あらばセエレを食べようとしていることにはみんな気がついているのだ。

 そんな何処か弛緩した空気の中で、アンヘルがいち早く気がついた。

 

「そっちへは行くな!」

「うわあああ!?」

 

 しかし警告は間に合わず。突如空から落ちてきたゴーレムにセエレが吹き飛ばされてしまう。危うくぺしゃんこになっていたところだ。

 

「ゴーレム!?このゴーレムは……」

 

 ギャラルは、セエレの契約しているゴーレムのように対話はできないのかと思いカイムの様子を伺うが、カイムの視線はゴーレムではなく隠れている魔術師に向けられていた。

 

「あれは帝国の付与魔術師……彼らがゴーレムを操っているのでしょう」

 

 同じく気がついたヴェルドレが指摘する。魔術への造詣が深いヴェルドレだからこそいち早く気がついたのだろう。

 セエレを保護すべく走り出したレオナールと、彼に付いていった七支刀、そして食べるチャンスだと二人を追い越そうとするアリオーシュ、この三人以外はゴーレムと対峙する。

 

「ゴーレムをいくら倒しても傍らの付与魔術師が再生してしまうぞ。まずは魔術師から倒すがよい」

 

 付与魔術師は赤いローブを纏っている。エルフの血を塗ったローブなのだろう。

 ギャラルは月光と闇を構え飛ぶ。カイムもギャラルが向かった目標とは別の魔術師目掛けて走り出す。残ったエンヴィは時間稼ぎのためにゴーレム目掛けて攻撃を仕掛けた。

 ゴーレムの両腕には巨大な剣が付いており、それを振るいエンヴィを切り裂こうとする。動きは緩慢に見えるが、実際はかなり速い。巨体だからこその錯覚に気をつけながらも、エンヴィは攻撃を躱していく。

 ギャラルは上空からの奇襲を仕掛ける。ゴーレムを操るのに精一杯だったであろう魔術師は避けることもできず、容易く一刀両断される。それからまだ周囲に二人残っていることを確認し、一人はカイムに任せればいいだろうと再び飛翔する。

 そのカイムは、付与魔術師の放つ魔弾を鉄塊で防ぎつつ真正面から近づいていく。攻撃を全て弾かれることを悟った魔術師は逃げようとするが、カイムの足からは逃れることもできず叩き斬られる。一刀両断とはならないが、身体がくの字に折れそのまま勢いで壁に叩きつけられる。更にもう一人目掛けて走り出す。

 

「セエレ、大丈夫ですか!?」

 

 アリオーシュを行かせないように見合ってる七支刀をよそに、レオナールは倒れているセエレを介抱する。

 

「レオナール?……僕、大丈夫だよ。それより、さっきのゴーレムは?」

 

 レオナールが振り向き確認すると、ゴーレムは土塊へと還っていた。どうやらあのゴーレムを操っていた付与魔術師は全滅したようだ。

 一旦合流し直したカイム達だが、ギャラルがみんなに告げる。

 

「さっき飛んだとき、他のゴーレムも見えたわ。三体はいたかしら」

「手間をかけさせおって!カイム、素早く済ませるぞ!」

 

 アンヘルの言葉に頷いたカイムは、すぐさま走り出してしまう。ギャラルも慌てて彼の背を追い行ってしまう。

 そして、アリオーシュがご馳走を逃したイライラをぶつけるために走り出し、一人にさせないようにと七支刀も追いかけて行ってしまう。

 

「ったく!なんでこのガキは生き残るんだよっ。ゴミのくせによぉ」

「……はあ」

 

 呆れた様子でため息を吐くエンヴィ。正直妖精が悪態をつく気持ちは分からないこともないのだが、こうも堂々と暴言の嵐が出てくるのは全く理解できない。

 

「まずは帝国のゴーレムを倒しましょう。ゴーレム、セエレを守ってあげてください」

「セエレ、マモル……」

 

 カイム達とアリオーシュ達が向かったゴーレムは彼らだけで大丈夫だろうと考え、残りの一体へと向かおうとする。レオナールも側にいたいだろうし一人で行こうとしていたが、彼はそんなエンヴィを止めた。

 

「一人では危険です。私も向かいましょう」

「いいのかぁ?あんたの大好きなセエレちゃんと二人きりになれるんだぞ?ヤるチャンスじゃないか」

「ぐっ……そんなことはしません。それに、皆の安全のほうが大切です」

 

 好きだとかやるだとかエンヴィはいまいち理解できてないが、いちいち呆れる様子を見せていたギャラルは何か察している様子だった。

 まあ理由はどうあれ、自分には関係ないことだろうと見ないことにしておく。

 二人が向かうと、ゴーレムは迎撃しようと巨大な剣を振り下ろしていく。大きく飛び退き避けるものの、付与魔術師はゴーレムの近くで待機している。隠れても無駄ならいっそゴーレムの近くにいるというのは、間違った判断ではないだろう。

 

「あいつら魔術効かないぜぇ?どうするだよレオナールさん?」

「私とて、剣は振れます」

 

 そう言い、戒めの塔を抜く。エンヴィはその剣の形状に違和感を覚えたが、とりあえずは目の前の魔術師共をどうにかすることが先決だ。

 レオナールは再びゴーレムの剣の間合いへと近づいていく。少し離れた位置からエンヴィも近づこうとするが、ゴーレムが腕を横に振り薙ぎ払おうとする。エンヴィはそれを難なく飛び越えながらレオナールの様子を見ると、妖精の羽根のようなものが背中に浮かんでいた。レオナールは妖精と契約した関係で、そういう魔術も使えるらしい。

 そのまま懐へ潜り込んでしまえばこちらのもの。大ぶりなゴーレムの攻撃は懐へいる相手への攻撃は出来ないし、歩いて距離を通ろうにも足は遅い。

 付与魔術師達は慌てて魔弾で迎撃しようとするが、契約者とキル姫相手にそんな攻撃は今更通用しない。数が多いならともかく、今回も四人しかいないようで防ぐのも簡単だ。

 あっけなく殺された魔術師達と、崩れていくゴーレム。しかし、そこでようやく先程感じた違和感の正体を掴む。

 

「レオナール、血が……」

 

 レオナールの両手の手のひらから血が流れている。魔術師が切ったわけでもないだろうし、傷ができてる理由は一つ。今彼が振るっていた戒めの塔だろう。

 無理矢理彼の手からその剣を奪い確認してみると、持ち手の形状がおかしい。このまま斬れば、反動で手が傷つく形状になっている。

 

「私は、罪深い人間なのです。……こんな形で償いきれるとは思っていません。しかし、しなければならないのです」

「おもしれぇよなこいつ!こういうのなんて言うんだっけな?マゾヒストってやつだ。あーでもそれで死ぬのはやめてくださいよレオナールさん。オレも死んじまうんだからさあ」

 

 レオナールの言う通り、こんなことしてなんの償いになるのだろうか。そして、誰にも償いきれないと分かった上でなお償いをすることを強要してしまうほどの罪。

 七つの大罪の一つを背負わされたエンヴィにとって、興味のある話でもあった。

 

「そこまでして償おうとするあなたの真面目さは、少し妬ましいですね」

「私のような人になって、良いことなどありませんよ」

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