妹を探しているのに、どんどん敵が出てくるよ。
出ておいでマナ!こんなところにいちゃいけない!
そんな時、帝国のモンスターが僕の前に飛んできて……
帝国に属する亜人共が次々と現れる。魔獣使いが彼らに指示を出し襲撃させているのだろう。
しかしカイム達を阻む脅威とはならない。彼らの剣と魔法で蹴散らされていくのみ。
「こいつらはどこにでもわいて出てくる。小蝿のようにうるさいヤツらだ」
湧き続ける雑魚にうんざりしたアンヘルが呟く。連戦続きで無駄に体力を消耗させられるばかりで良いことなど一つもないが、カイムだけは殺戮を楽しんでいた。
剣を振る度に死んでいくゴミ共を眺めながら、次の獲物へと切り替え再びを剣を振る。ゴブリンは連携を取り、囲んで襲撃しようとするがギャラルが間に入り、陣形を乱していく。
「あまり無理しないでね」
『知るか。俺の好きなようにやらせてもらう』
二人を先頭に亜人は散っていくばかりだ。余裕が出来てきたからなのか、またセエレは自分のことを語りだす。
「僕ね、ほんとはマナをいじめる母さんのことが、こわかったんだ」
虐待を受け続けていたマナへの言い訳でもするように、そんなことを言い出したのだ。しかしその言葉を聞き届けてくれるものは誰もいない。その言い分が真実なのかはどうであれ、その事実へ関心を持つものはいないのだ。
「カイム!誰かのことをぶっちゃイヤだよ。泣かせるのは……ダメだよ」
「自分の手を汚してなければ、幾らでも言うことが出来るとでも?」
セエレの言葉に、苛ついた様子で反応するエンヴィ。言われたカイムにとっては微塵も興味のないことだったので反応さえしていないが、エンヴィにとっては頭に来る発言だったのだ。
「今まさに剣を振っている人にそんなことを言うのですね」
「ち、違うよ!そうじゃないんだ。大事な人に暴力しちゃ良くないって言いたかっただけなんだ」
それはそれで、なんというか中々酷いことを言っているな……と、亜人の脳天を貫きながら考える。言い換えれば、別に仲良くない相手、今戦っている帝国兵相手になら暴力を振るおうが知ったことではないとも捉えられる。
実際倒すべき相手だし、まともに会話が通じる相手でもないのだから間違いではないのだが。
「エンヴィ、彼はまだ子供です。そう責めなくとも」
「子供の頃からそんな考えを身に着けている方が、恐ろしいとは思いませんか?……あの純粋さもずる賢さも、少しだけ妬ましいと感じるくらいには恐ろしいと思います」
「その子供を導くのが、私達大人の務めです」
「はーっ?もしもーし、あんたが導くとか頭イカれちまったんですかー?自分がナニをしたのか忘れたとか言わないでくださいヨ?」
二人の口論に口を挟む妖精。あいも変わらずレオナールのことを煽ることだけは達者なのだが、エンヴィはいまいち何の話なのかが理解できない。レオナールがシたことが何なのか、知らないから当然なのだが。
「だからこそ、私はその罪を償うのです。一生を掛けて」
「あーぁ、つまらねえなあ。というかエンヴィちゃん?あのガキのことウザいと思うならサクッと殺っちまえばいいだろ?オレとしても大助かりだし、自慢の槍で貫いてくださいよ〜!……自慢の槍で、な?」
「……?」
妖精が自分へ標的を変えたはずなのだが、何処か違和感がある。この妖精は一体……
と考えてると、二人、いや三人に声がかけられた。七支刀である。
「いつまで喧嘩してるのですか?もう、帝国兵も片付きましたよ」
「ああ、すみません」
カイムとギャラルは少し離れていたようで、歩いて戻ってくる。すると、辺りには静寂が訪れた。これなら確かに、近くには帝国兵はいないだろう。
「"音"がありませんね。こんなところに……セエレの妹さんはいるのでしょうか?」
「この悪環境のもとで人間が生き残ることなど不可能だ」
アンヘルははっきりと断言する。分かりきったことではあるのだが、改めて言葉にするのは大切だ。
不安になったセエレが、マナを探そうと声を出す。いるはずもないマナへと。
「マナ!マナ!!いたら返事をして!僕だよ!セエレだよ!!」
そう声を張り上げながら歩くセエレ。少しずつカイム達から離れていくが、その時ギャラルが気がつく。接近している何者かの音を。
「待ってセエレ!まだ近くに敵が!」
と声をかけたが時すでに遅し。グリフォンが地上スレスレまで降りてきて、そのままセエレを掴み飛び去っていった。
遠のく悲鳴を前に呆然とする一同。が、すぐに正気に戻ったギャラルが追おうとするがアンヘルが止めた。
「待てギャラル、一人で行くのは危険だ。皆で追うぞ」
急いで追うために警戒をしながら移動し始めるカイム達だが、妖精だけは喜んでいた。
「ウキャキャ。傑作!いつもいつも可哀想なセエレちゃんは不幸を呼び寄せちゃいマスね。厄介ものはさっさと死ね!ぺっぺっ、死ねっ!!」