ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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僕、セエレ。

帝国のグリフォンにさらわれた僕は、コロシアムに連れてこられちゃったんだ。
助けてカイム!僕はここに居るよ!


第5節 足跡なき誘拐

 アンヘルはカイムとギャラルを乗せ飛翔していた。セエレの"声"を頼りに探すためだ。

 

「声は聞こえぬか?」

「うーん、流石に聞こえないわね」

 

 "声"ではなく声も聞こえないかと思いギャラルも連れてきたのだが、上空から地上の何処かにいるセエレの声を聞くのは流石に難しい。

 空を徘徊している魔物達がアンヘルを堕とすべく妨害をしてくる。魔力の弾や音波を避けつつも、あっさりと散らしていく。

 

『あははははははっ!きれーい』

 

 アンヘルの放つ火球が魔物へと直撃するたびに炎が爆ぜ、花火のように散っていく。

 その様を地上から眺めつつも、きれいだと声を上げるアリオーシュは不気味そのものだ。命が散る様をきれいだと感じる感性は、少なくともその場にいる者の中ではアリオーシュしかいないだろう。

 アンヘルが空の魔物を相手している間、地上でもセエレを探すべく移動はしていた。それぞれ理由はあるものの、セエレを助けたいという意思はあるのだ。

 

「私が助けたら……私のもの?いただける?」

 

 まあ、アリオーシュは助けたいというより食べたいだけなのだが。

 

「私が助けたら……?な、何でもありません!」

 

 そんなアリオーシュの言葉に、レオナールも変なことを連想してしまう。生唾を飲み込み興奮を抑え煩悩を振り払う。

 

「別に誰のものでもないでしょう。まあ、助からずにくたばってくれたほうが楽ですが」

「楽、ですか。そう思うのなら、最初から探さずに待っていた方が楽なのでは?」

「……それは、そうですけど」

 

 痛いところを突かれたエンヴィは目を逸らし、それ以上は答えなかった。

 素直に助けようと言えないのは、自分のことを優しいと言う周りの視線を否定したいからで、でもそれを必死に否定しようとするのは肯定するのと大差なくて。

 色々と分かっているからこそ、それ以上言葉は出ないのだ。

 

「アンヘル、あれを見て。……コロシアム?」

 

 アンヘルが戦いに集中している間にも、地上を観察していたギャラルは気がつく。何やらコロシアムのようなものが見えることに。

 

「あれは亜人共の居住区か。……あそこは狭い、お主らの足で進め」

 

 そう言いつつもコロシアムの前まで急降下し、カイムとギャラルの二人を地上へと降ろす。そのままアンヘルは再び上空に戻っていき、突然の襲来に慌てて武器を構えるゴブリン共へ、二人は剣を構える。

 どうやらここの警備に当たっているゴブリン共は普通のゴブリンしかいないようだ。それを確認したギャラルは月光と闇を勢いよく振り上げる。その剣に込められた炎の魔法が放たれ、近づいてくるゴブリンの足元からいくつもの火柱が上がり消し炭に変えていく。

 とてつもない炎に驚き足が止まるゴブリンだが、カイムは炎の柱の間を走り抜け頭目掛けて一閃。鉄塊の鈍い刃が頭部を砕き即死させる。

 我に返ったゴブリン共は一斉にカイムへ襲いかかろうとするが、体格の小さなゴブリンに合わせて作られた小さな刃物をカイムへ届かせることはかなわなかった。

 カイムの身長よりも長いその刀身で、迫るゴブリンの集団へ思いっきり振られると次々と吹き飛ばし砕く。少し扱いづらいが、その重さから繰り出される一撃は並大抵のものではなく、群れ相手にも気軽に蹴散らせる。カイムが気に入るのも当然の武器だった。

 しかしそれだけ巨大な鉄の塊を振れば、どうしても隙は出来る。僅かな隙目掛けて襲いかかろうとするゴブリンだが、ギャラルがそれを見逃すはずもなくいち早く迫り真っ二つに斬り裂いてしまう。

 もはやこの二人を止めることは出来ないのだろう。本能的に理解するも、逃げ場も存在しないゴブリン達は狂乱の中で迫る。しかし結果は火を見るよりも明らかで、出来上がったのは死体の山だった。

 

『相手が人間でなければこうも躊躇せずに殺せるんだな』

「どうしたの?」

 

 カイムの意味深な視線に気がつくが、当然カイムはその理由を口にはしない。

 

『救いたい、助けたい。口で幾ら綺麗事を言ったとしても、お前も変わらないな』

「……ねえ、カイム。別にギャラルは、殺したくてしてるわけじゃないの。確かに殺しているという事実は変わらないけど、それはきっと違うことだから」

『そうやって言い訳するのは、違わないと分かってるからじゃないのか?』

 

 信頼とは違う、奇妙な二人の関係。本来なら全く相容れないはずの二人が隣に立つ。

 カイムの考えていることは分からないけど、付き合いもそこそこあるしなんとなく分かるようになってきているから、それっぽいことを言ってみたが果たして満足してくれただろうか。

 少し弛緩した空気になったが、まだ入口の敵を片付けただけで肝心のセエレは中にいるようだ。

 

『セエレ……どうか無事でいてください……』

『セエレちゃん、今度こそポックリ逝っちゃってるといいですねー。うははははー!!』

 

 相変わらずな様子の"声"を聞きながら、どうにか侵入できないか探すが鍵が見当たらない。

 それなら手段は一つしかないだろう。

 

「ねえ、カイム。……ここに降りる必要あったかしら?」

 

 結局そうなるのなら、別にここで暴れる必要はなかったのでは?とギャラルのジト目が語っている。

 いきなり中に侵入して、外の警備と合流されると面倒だから。そういう理由もあるが、正直なところ敵がいるから戦うくらいのノリで暴れただけだ。

 

「まだセエレも無事のようだ。二人共、行ってこい」

 

 再び地上へと降りてきたアンヘルの背に二人は乗り、空へと戻る。そして……

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