封印の女神フリアエを救出するためにも、帝国領へ足を進めるのだった。
解放されたセエレは感謝をカイムとギャラルの二人の前でした。何度も頭を下げ、嬉しそうに喋る。
「あぁ!ありがとう!本当に、僕、もう……ありがとう!!」
セエレからぶつけられた真っ直ぐな感謝、慣れないものにカイムは少し笑いかけ咄嗟に目を逸らす。……照れているのだ。
そして目を逸らした先にはニヤけた笑みを浮かべているギャラルの姿が。少しだけむっとはしたが、そんな彼女の様子にも本気で怒りを感じることはなかった。
「セエレ……無事で良かったですね」
彼の無事に安堵したレオナールは、彼の側に歩み寄る。そんなレオナールに向けて、また頭を下げる。
しかし今度は感謝ではなく、謝罪の言葉。
「ごめんなさい。僕、みんなのジャマばかり……」
その直後だった、彼らの元に耳をつんざく様な悲鳴が届いたのは。それは"声"だったため、キル姫達は気づかなかったが契約者達は驚いた様子だ。
「……この悲鳴は!?」
「番人フェアリーの断末魔だ。……神殿の封印は3つとも壊滅らしい」
「残るは最終封印……女神のみ!?」
カイムは先程と打って変わった様子で、怒りを露わにしながら地面へ剣を突き立てる。ただでさえ神殿の封印が破壊されるたびにフリアエの負担は大きくなるのだ。しかも彼女は今イウヴァルトに拐われ、きっと帝国の所に。
「連合軍は最終攻撃を仕掛けるだろう。我らもゆこうぞ。決戦の場、帝国領土へ!」
「……決戦」
決戦という言葉に七支刀は息を呑む。長かった帝国との戦いの終わりが近づいているということを、改めて認識する。
「あぁ……また僕……僕のせいだね?僕が谷に行きたいなんて頼んだから余計な回り道を……」
状況を理解したセエレは、項垂れながら口を開く。そんなセエレへと、カイムは剣先を向けた。
『項垂れている暇があるのなら、その分戦え。それがお前に出来ることだ』
「……反省という名の良い訳ばかりしていても、事態は何も変わらぬぞ」
カイムの厳しい言葉と、アンヘルの優しい言葉。二人の言葉に励まされ、セエレはゆっくりと立ち上がる。
「……う、うん。わかった」
「セエレ、妹さんは……」
しかしレオナールは、結局見つけられなかった彼の妹、マナのことが気がかりだった。元々彼女を探すためにこの谷に来たはずだが、こうもなろうとは。
そんなレオナールの言葉に答えたのは、セエレではなくエンヴィだった。
「帝国領へ行けば会えますよ。司教なんですから」
「まだ言うのですか?そんな子供が司教だと……!」
「そうでないなら、この谷の何処かで野垂れ死んでると思いますが」
エンヴィの容赦ない、しかし現実的な言葉へとレオナールは押し黙る。彼女の足跡さえ分からなかったのは事実なのだ。
「セエレも、別に怖いなら無理して帝国領へ行かなくていいですよ。迷惑なので」
「うっ……も、もう迷惑かけないよ!だから付いていくよ。マナもいるんでしょ」
妖精の断末魔から途端に悪くなっていく空気にわたわたしていた七支刀は、何か一つ空気を変えられる言葉はないかと考え、思い浮かんだことを言った。
「みんな喧嘩はやめてください!……それより、この戦いが終わったらみんなでラグナロク大陸に来ませんか?平和でいい所ですよ」
「それ、中々いい提案ね。……ふひひ、カイムもそんな野暮ったい服じゃなくてもっとお洒落な服選んであげるわ」
「ラグナロク大陸ですか。そうですね、全て終われば……」
「私は神官長としての務めがある故行くことは出来ませぬが、見てみたいものです」
七支刀の提案に、少しだけ場が和む。しかしアンヘルは疑問を直球で投げかけてきた。
「……ラグナロク大陸へ帰る方法、分かっておるのか?」
「それは……」
完全に思い付きでの発言だったので、正直そこまでは考えていなかった。救いを求めるようにエンヴィへと視線を向けるが、呆れた様子でため息一つ。
「知りませんよ。私もどうやってこちらへ来たのかは覚えてませんし、覚えていたとして同じ手段が使えるとは限りません」
そう否定してから、でも……と付け加えた。
「行けるなら行ってみたいですね。セエレもマナも、こんな世界より平和な世界の方が似合ってますよ、きっと」
「……そうだね。うん、マナのことを助けて一緒に行くんだ」
今まで散々否定的な発言をし煽っていたエンヴィが、初めて見せた優しい表情にセエレも微笑んだ。エンヴィも決して悪い人ではないと伝わった瞬間だった。
「そうさな、方法を探す時間は幾らでもある。……だがまずは目の前の破壊を食い止めるのが先だ。改めて行くぞ、帝国領へ!」
未来への希望を持ち、士気も高まったところでアンヘルが仕切り直した。
カイム達は帝国との決着を付けるためにも、帝国領へと向かう。その先に待ち受けるものを知らぬまま。