ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第2節 見知らぬ世界

 雲が裂かれ、久々に覗いた太陽が世界を照らす。人々は突然のことに驚き空を見上げる。

 しかし照らされた光は太陽ではない。未知の光が世界を照らし、その中から巨大な物体が落ちてくる。人の姿を象った巨大な像。それは女性の姿をしていた。

 落ちてくる母体は教会へと向かい落ちていき、教会とその周りの建物を破壊しながら着地した。

 しかし人々は気が付かない。光の中から現れたもう一つの影に。

 

「ここは……神の国なのか?」

 

 

ラグナロク大陸

 

 

 白に包まれた未知の世界、異端な光景を見て呟くアンヘルだった。

 しかしギャラルは何処となく見覚えのある光景に違和感を覚えた。確信ではなく違和感で止まったのは、見覚えのあるはずなのに全く見覚えのない光景だったからだろうか。

 落ちた母体は立ち上がり、まるで天に救いを求めるかのように右手を大きく伸ばす。長い舌を垂らしたまま立つその母体は、誰から見ても不気味な存在だっただろう。

 

 "母"は歌い出した。鐘の音が聞こえる。

 

「何なのだ、これは!どうすればいいのだ?!」

 

 音が波紋となり広がる。不気味で異様で破滅的なそのウタは、世界へ広がっていこうとする。三人は直感で理解する。あのオトの波紋に触れたら最後、命はない。

 ギャラルは神器を構え、演奏を始める。音になら音で対抗出来るのではないかと考え、相殺すべく鳴らし始める。

 鐘と笛の音の波紋がぶつかり合い、消滅する。どうすればあの母体を破壊できるかは分からないが、まずは音を消していくしかない。

 ギャラルの音が届くように、母体から付かず離れずの距離を維持しながらアンヘルは周る。

 母体は動かない。ただひたすらに音を鳴らす。鐘の音が響く。鐘、鐘、鐘、鐘。鐘の音。

 音は絶えない。ただ世界を滅ぼすべく音は鳴り続ける。魔力を伴ったその歌は、ギャラルホルンの笛の音さえ超えようとしていた。終末を告げるその音さえも、超える。

 音の波は膨れ上がる。止まらない。全く違う音のぶつかり合いに終わりは見えない。何も手伝えないカイムは歯がゆい気持ちになるが、何を考えたところで何もできない。

 

『何か、手伝えないのか?何か!』

「……やってみよう。出来るかは分からぬが!」

 

 アンヘルは吠えた。今自分に出せる音などこれしかないだろうと思い、必死に吠える。ドラゴンの咆哮はオトとなり、そして母体の歌と打ち消しあった。

 演奏に集中し続けるギャラルと、咆哮をあげ続けるアンヘル。必死に戦い続ける仲間達へ、何もできないならばと祈る。圧倒的な強さで戦ってきたカイムが、初めて無力さを打ち付けられた瞬間。

 祈るという行為を散々馬鹿にしてきたが、なるほど自分の心を落ち着かせるための行為なんだなと知る。

 オトとオトの激しいぶつかり合いは終わらない。永遠に続くかと思えた衝突は、やがて止まる。

 

「お、終わった……?」

 

 肩で息をしながら、ギャラルは安堵と戸惑いを込めて呟く。突如始まった常軌を逸した戦いに、混乱だけが残されていた。

 

「いや、まだだ。来るぞ……!」

 

 しかしアンヘルは、母体の中で膨れ上がる膨大な魔力を感じ取る。戦いが終わったのではない。終わらせに来たのだ。

 規則正しさというべきか、曲を作るようにリズムを取って飛んできていたオトだったが、直後に放たれたものはそんなものではなかった。

 鐘が鳴る鳴る鳴る鳴る鳴る鳴る鳴る鳴る鳴る鳴るなるなるなるなるなるなるなるなる

 デタラメで、なおかつ莫大なオトの嵐に応えるべくギャラルはギャラルホルンに全ての魔力を込めひたすらに鳴らし、アンヘルもまた自分の鼓膜が破れるのではないかと感じる程度には全力の咆哮を上げる。

 三つの音のぶつかり合い。出鱈目で意味不明で支離滅裂な音の嵐が世界に響く。

 

 やがてオトは止まった。お互いのオトが止んだ。

 "母"は崩壊を始めた。振動と共に表面からボロボロと粉が落ち始め、塊が剥がれていく。その振動は大きくなっていき、母体を構成していたものは消滅していく。

 もはやそれが"母"だったのだと理解出来るものはいないだろう。

 少し距離を取り、その様子を三人は眺めていた。永きに渡った戦いが、終わったのだ。

 

「やったぞ!ついに……」

 

 アンヘルの言葉が途切れる。翼が不規則に動き、鼓動も異様な程早くなっている。

 空を飛ぶことを維持できなくなり、ゆっくりと落下を始める。

 

「アンヘル!?」

『しっかりしろ、アンヘル!』

 

 このままだと三人とも地上へ叩きつけられるだけだ。カイム手を握ったギャラルは飛ぼうとして、身体が言うことを効かないことに気がつく。

 先程の戦いで、全てを使い切ったのだ。もう、飛ぶことさえもできない。

 二人共その手を固く握ったまま、重量に引かれ落ちていく。ただ、落ちていく。

 

 ただ、落ちていく。

 

 

 the End of killers

 

 

 Thank you for reading!

 本当に、本当に、ありがとうございました!




 常軌を逸した戦いとその結末を目撃していたイチイバルは走る。待つのは希望か、新たな絶望か。


 これは呪いか、それとも罰か。
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