ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第1章 帰る場所
第1節 目覚め


 身体を起こす。柔らかいベッドの上で目を覚ます。何だか、悪い夢をずっと見ていたような気がする。

 

「さむっ」

 

 思ったより寒くて、すぐに布団を掛け直した。何だか身体が凄く重い気がする。窓から外を眺めると、雪が降っていた。ああ、それは寒いなあと思いながら目を閉じる。

 全部、夢だったんだ。そうだ、そうに決まっている。異世界になんか行ってないし、旅なんかしてないし、皆を犠牲になんかしていない。そんな話なんか無かったんだ。

 壁に立てかけられた月光と闇が、仄かな熱を放っている。アレを布団の中に入れたら湯たんぽの代わりにになるだろうか?

 ……ぐるぐると思考をする。都合の悪い事実を考えないように、都合の良いことだけを考えて。けれど、現実逃避も無理矢理終わらせられることになる。

 ドアが開く。赤い髪の少女……キル姫が顔を出す。つい反応して目を開けてしまう。

 

「あっ、あの、起きましたか?ギャラルホルンさん……」

 

 誰だろうか。見覚えはある気がするのだが、名前までは出てこない。

 ただ、自分の名前を呼んだのだから向こうはこちらのことを知っているのだろう。

 

「……誰?」

「ロジェスティラです。こちらでお会いするのは初めてですね」

 

 こちら……というのは、ラグナロク大陸のことだろうか。やはり、会ったのは以前の世界での出来事なのだろう。

 

「でも、目が覚めて良かったです。こちらに来てください」

「……」

 

 月光と闇を手に取り、彼女に連れて行かれる。

 やはり、ここは知らない場所だ。自分の家ではない。しかも、雪が降っているというのも変な話だ。ラグナロク大陸での最後の記憶はハロウィン前夜。その時期に雪が降るほど冷えるだろうか。

 つまりだ、やはり現実なのだろう。ミッドガルドを仲間達と共に駆け回り、その仲間達が死んでいき、そして最後は……

 階段を降りていくと、リビングへと案内される。そこには先客が一人。赤い髪に黄色の瞳。けれど気になるのはそこではなく、背中に赤い翼が生えていること。

 その人のことは間違いなく初めて見る。ロジェスティラの仲間にこんな人、いただろうか?

 女性が読んでいた本を机に置き、視線をこちらに向ける。

 

「ようやく目が覚めたか。心配させおって」

「え……?」

 

 その声に聞き覚えがあった。いや、そんな程度の話ではない。ずっと共に旅してきた仲間の一人。

 ……意識してみれば、その女性から生えている翼も大きさは違えど見覚えがある。

 

「アンヘル?」

「……どうした?」

 

 間違いない、アンヘルだ。

 きょとんとした表情でギャラルを見ていたアンヘルだが、何かを分かったようで一つ咳払いから話し始める。

 

「この姿か?ただの深化だ、気にするな。最初は我も驚きはしたが、三日も経てば慣れようぞ」

「そ、そう、何だ……?」

 

 もう何から何まで分からないことばかりで、ギャラルの思考が止まり始める。

 

「そうだ、ギャラルホルンさんはお腹空いてませんか?ご飯を作りますので少し待っていてください」

「……」

 

 そう言ってばたばたと居間から出ていくロジェスティラを見送ってから、何となくアンヘルの隣に座る。

 何度も彼女の背に乗せてもらってきたから、くっついてると何だか安心する。

 

「カイムは?」

「外で剣を振っておる。身体を動かしてないと落ち着かないそうだ」

「そっか」

 

 カイムもアンヘルも無事だった。そのことに安心感を覚え脱力し、アンヘルへ寄りかかる。

 そんなギャラルのことを気に留めず、アンヘルは読書を再開した。穏やかな時間が流れる。こんなに静かで落ち着けるのは、何時ぶりだろうか。ミッドガルドでは、最初から最後まで戦い続きだったし、休みを取っても野営だったしで疲れはたまる一方だった。

 ストーブも効いていて温かい。目が覚めたばかりなのに、また眠ってしまいそうだ。

 

「また寝るつもりか?三日も寝れば十分だろう」

「三日……?」

 

 そういえば、さっきもアンヘルは三日も経てば……と言っていた気がする。どういうことだろう?といまいち回らない頭で考えようとする。……言葉通り、自分が三日も眠り続けていたのだと理解するのに少し時間がかかった。

 

「ギャラルはそんなに寝てたの?」

「ああ。中々目が覚めないお前に、カイムも慌てておったぞ」

「へえ、見てみたかったなあ」

 

 あのカイムが慌てている姿、見たことはないが何となく想像は出来てしまう。

 そんな想像にぬひひと笑っていると、ロジェスティラが返ってくる。

 

「お待たせしました。……こんな物しかありませんが、大丈夫ですか?」

 

 そう言って出したのはパンとコーンスープ。三日も寝た後と考えると物足りない気もするが、贅沢を言える立場でもない。

 

「ありがとう、ロジェスティラ」

「はい。……それと、私のことはロジェで大丈夫です」

「分かったわ。ならギャラルのことは、ギャラルって呼んで」

「分かりました、ギャラルさん」

 

 ギャラルはパンへと手を伸ばす。

 分からないことだらけだが、今だけはゆっくりとしていたいと思い詮索はしない。穏やかな時間は、少しだけギャラルの心を癒やすのだった。

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