「ただいま〜」
誰かが家にやってきた様だ。リビングに現れたのは眼帯をしたキル姫だった。
……このキル姫も見覚えあるなあとぼんやり眺めていると、そのキル姫が挨拶をする。
「おや、どうやら目が覚めたみたいだね。僕はイチイバル、覚えているかい?天才美少女戦士のイチイバルさんだよ」
ドヤッと口で付け加えながら言うイチイバルに、流石のギャラルも思い出す。この、なんというか、変な喋り方は凄い覚えがある。
「コマンドキラーズね?」
「いや〜覚えていてくれて嬉しいよ。まあ今は違うんだけどね」
コマンドキラーズ。この世界の神々の力を
なるほど、元コマンドキラーズのみんなが使っている家ということなのだろうか。何か買ってきたのか袋を持っている彼女は、そのままキッチンの方に向かっていった。
パンとスープも食べ終わり、食器は私が片付けますと言いロジェが洗いに行ったので、特にすることもなくぼーっと座っている。
すると、また家に誰か来たようだ。
リビングにやってきたのは、金髪のキル姫……を脇に抱えたカイムだった。
「……何、やってるの?」
「別にミュルは遊んでるんじゃ……って、やっと起きたんだ」
わーっと抵抗しようとした彼女はそのままに床に転がされる。いたたと頭をさすりながら起きた彼女、ミュルグレスもやはり元コマンドキラーズの一人だ。
「私はミュルグレス、覚えてないだろうから特別に……って」
と何か名乗りをしていたミュルグレスの邪魔、というか無視してカイムはギャラルを抱きしめた。
突然のことに、元々ぼーっとしていた頭は更に思考が回らなくなり、何が起きているのか分からないがなんか凄いことが起きているという感覚だけが残り、沸騰してしまうのではないかというくらい真っ赤な顔になる。
「……まあ、いっか」
この無口な男がギャラルのことをとても心配していたことは、ミュルグレスも分かっているので文句は言わないことにした。
「これで役者は揃ったな。そろそろ話してもらおうか」
「………?」
アンヘルが真剣なトーンで何かを言っているが、聞こえているはずなのに頭に入ってこない。
そのまま蒸発してしまいそうなくらい熱くなっているギャラルにようやく気がついたカイムは慌てて離し、アンヘルの隣…ギャラルの反対側の隣へと座った。
「まあそう慌てないでよ。待たされたのはこっちもだしさ」
少ししてロジェとイチイバルも戻ってきて、テーブルを挟んで反対側のソファに三人並んで腰掛けた。
……コマンドキラーズ、これしかいなかったっけ?なんかもっといたような。
「そうだよ、本当はこれだけじゃないさ。そのことも、これから説明するよ」
「あっ、声に出てたの?」
「独り言にも気づけぬか。明日にした方がよいか」
「そもそも、何の話なの?」
何やら自分の知らないところで話が進んでいるようで、追いつけていない。
「これまでのことと、これからのこと、です。お互いに何があったのか、ギャラルさんが起きてから話そうということになつていたんです」
「うーん……」
何か引っかかる言い方だと感じる。確かにギャラル達に何があったのかを話すのはおかしな流れではないのだが、これからのこととはどういうことだろうか。それに、聞くのではなく話す……?
何処となく不穏な気配に、少しずつ頭が回り始める。
「……まあ、いつの間に雪が降ってるし、結構経ってるのよね?今って何月?」
「6月です」
「………」
ロジェが即答した。即答したのだが……その答えは聞き間違いだったのかと思う。6月?雪が降っているのに?ストーブ使うほど寒いのに?
「ギャラルよ、アレが雪に見えるか?」
そう問うてきたアンヘルの視線は、窓の外に向けられている。白いモノが舞っている。どう見ても雪だろう。むしろ雪でないのなら……なんだ?
アンヘルに聞き返そうとして、口を開こうとして、固まる。それを知ってしまったら、もう後戻りが出来ないだろうと直感が告げている。舌が動かない。駄目だ、聞くな。
「塩だ」
「………え?」
聞くよりも先に、アンヘルが答えを告げてしまった。それも、意味不明な答えを。
塩が……舞っている?雪のように?なんで?どうして?
「この世界では塩が舞うのが常識かと思ったが、やはりそんなことはないようだな。そろそろ聞かせてもらうぞ、
「そんな、そんなことって……」
そんな現象、一度も見たことも聞いたこともない。間違いなく異変の類だ。
自分がラグナロク大陸から離れていた間に、ミッドガルドが旅をしている間に、ラグナロク大陸にも大きな異変が起きていたのだ。
ようやく全てが終わっていたと安堵していたギャラルへと、冷たい現実が突きつけられた。