ドラッグオンドラグーン 終焉の角笛   作:Ruve

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第7節 剣の舞

 家に帰ってから、ぐったりとソファに腰掛けるギャラル。その様子を見たアンヘルは心配そうに声をかける。

 

「何があったのだ?」

「……レギオンと戦ってきただけよ」

「ほう、強かったか?」

「その辺の帝国兵よりは」

 

 元より一回り大きくなっている身体に、見た目よりも素早い動き。武器は持たないけれども強力な拳に、魔法一発では蹴散らせない硬さ。

 ただ今覚えている疲れは、どちらかと言うとカイムとミュルのせいだ。それはつい先程のこと。

 

 家に近づいて来ると聞こえる剣戟の音。何事かと思い慌てて走ろうとするギャラルをイチイバルが止める。

 

「ちょ、ちょっと!?もしかしたらレギオンが……」

「いや、あれはカイムとミュルだね。これで四日連続だよ」

 

 呆れた様子のイチイバルを見て、ギャラルも何となくだが察する。あれだ、これは多分カイムが"運動"しているだけなのだろう。

 平和……ではないものの、戦う必要のない状況にあってもまだ戦おうとするのはどうにかならないのだろうか。

 呆れた二人が様子を見に行ってみると、家から少し離れた広場で二人が戦っていた。使っている武器もよく見れば模造刀だ。

 ギャラルよりも少し小さいミュルは、体格で勝てないことが分かっているのか素早く距離を詰めながらの一撃を放ち、反撃されないように距離を取り直す。しかしその顔には焦りの表情。

 ミュルは剣技よりも、神令された神、雷神トールの力を乗せた強力な攻撃を得意とする。だからこそどうしても力任せの一撃になってしまうのだが、対してカイムは剣術のプロと言っても相違ない。攻撃がすり抜けるかのように受け流されている。

 

「これは四戦四敗だね」

 

 剣に詳しくはないイチイバルでも、見ていれば分かる。どう見ても勝ち目はない。

 いつまで経ってもまともに攻撃を当てることができないことに焦れたのか、ミュルは動きを変える。攻撃を受け流されたのを確認すると、そのまま滑るように背後へ周り距離を取らずにもう一撃振ろうとする。しかしカイムはそれをすんなりと避けカウンターで剣を腹に当てる。

 吹き飛ばされながらも距離を取り直し、構え直すミュルだがそこにイチイバルが割って入る。

 

「そこまでだよ。今のはミュルの負けだね」

「なっ!まだミュルは戦えるし!……ていうか、二人共帰ってたんだ」

 

 戦いに余程集中していたのだろう、どうやらイチイバルとギャラルが観戦していたことに気がついてなかったのだ。

 反対にカイムは気がついていたようで、ギャラルを見て笑う。

 元からカイムは本気を出していなかったが、ギャラルが来てからは見せつけるために遊んでいたのだ。

 

「ほら、カイム君の服も買ってきたよ」

 

 イチイバルがそう言って、服の入った紙袋をカイムへと渡す。しかしカイムは受け取らず、代わりに模造刀をギャラルの方へと放り投げる。

 突然の行動に驚きながらもしっかりキャッチすると、カイムは改めて服を受け取り家へと向かっていった。

 

「……そうだ!ギャラルも剣を使えるんだろ?ミュルと戦え!」

「いや、僕達は今帰ってきたばかりなんだけどね?」

 

 負けた鬱憤をギャラルへぶつけようとするミュルへ、止めようとするイチイバル。

 

「ええい!問答無用!」

「!?」

 

 ギャラルへ向かって一直線に走り始めるミュル。巻き込まれないようにイチイバルは飛び退き、ギャラルは慌てて剣を構える。

 ギャラルはカイムほど剣が上手くはないだろう。一直線に向かってくるミュルの行動はそう言っているようで、少しだけカチンと来たミュルは真正面から受け止める。

 少しだけギャラルの方が大きいとはいえ、カイムに比べたら誤差程度の体格差。お互いの剣は動かず膠着状態になる。

 

「へえ、中々やるじゃん……!」

「ギャラルだって散々戦ってきたのよ。あまり舐めないでもらおうかしら!」

 

 つい先程ギャラルの戦いぶりを見てきたイチイバルは、確かに彼女が強いことを理解している。

 しかし、得意としているのは奇襲による一撃必殺であり、同程度の実力の者と剣で斬り合うような戦いが得意そうには見えなかった。折角だし見ていこうと二人の様子を見ることにする。

 先に動いたのはギャラルだった。僅かに力を緩め膠着状態を崩す。突然力を弱められたせいで、力任せになっていたミュルの姿勢が一瞬だけ崩れる。

 その隙を逃さずに勢いよく押し返し剣を弾く。返す刀で追撃しようとするが、そのままミュルは後退し躱す。しかし開いた間はギャラルが飛んで詰める。姿勢を整え直す時間もなく来る追撃を大きく横に飛んで躱し、構えを取り直すが姿がない。

 すぐに上だと気がついたミュルは見上げようとするが、眩しさで目が眩む。逆光を背にして降ってくるギャラルに、それでもミュルは何とか一撃を防ぐ。

 しかし重力を味方につけた一撃は重く、剣は地面に叩き落されてしまう。衝撃に耐えきれず崩れた姿勢を整え直そうとするが、首元に突きつけられた剣先に固まる。

 

「……ギャラルの勝ちよ」

「飛べるのズルいなあ」

 

 率直な感想を口にしながら、ミュルは敗北を認めるのであった。

 

 というのが、つい先程あった話である。

 

「意外と楽しんでおったな?」

「まあ、負けたくはなかったかな」

「そんなにムキになることないじゃん」

 

 同じく居間にやってきたミュルも、どかっとソファに腰掛ける。

 

「ムキになってたのはどっちかしらね?仕掛けてきたのはそっちでしょ?」

「ミュルは別に遊びだし。本気じゃなかったし〜」

 

 完全に子供の喧嘩の雰囲気になっている二人にアンヘルは呆れるばかりだ。

 カイムは自室に向かったきりだし、ロジェは夕飯の支度を始めている。今までも碌でもない面子と旅をしていたが、これからも碌でもない面子といることになりそうだな……と考えていると、イチイバルが遅れて来た。

 

「まあそのことはともかく、少し話があるんだ」

「レギオンのことよね?」

 

 アンヘルを通じて状況を把握していたのか、狙ったかのようにカイムが降りてくる。見てみれば早速着替えている。

 

「ふひひ、似合ってるわよ」

『それより話とは何だ?』

「む〜……」

 

 ギャラルの反応を無視しながら腰掛けるカイム。ロジェがいないが、後で話せばいいだろうととりあえずこの五人で話す。

 レギオンが今までにない行動を取っていたこと、そしてそのレギオンを統率する存在がいる可能性。どちらも重要な案件だ。

 

「早めに動いた方がよさそうだな」

「ミュルも明日は空いてるよ〜」

 

 とりあえずまとまった意見は、明日は全員で各地の捜索をするということ。

 カイムがレギオンとの戦いを楽しみにしてニヤけた笑みを浮かべる。慣れている二人はともかく、ミュルとイチイバルは若干引いている。

 そんな頃に全員分の食事を用意したロジェが現れ、夕食になる。こうして日は暮れていく。

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